ADHDの人と話が噛み合わない…どうすればいいの?
ADHDの人と話が嚙み合わない理由について、お医者さんに聞いてみました。対処法も紹介するので、ADHDの人とうまくコミュニケーションをとりたい人は必読です。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
ADHDの人と話が嚙み合わない理由
ADHDの人との会話が噛み合わない気がします…。なぜでしょうか?
ADHDの人にとって、
- 話が長い
- 会話の内容に興味がない
- 周囲の環境が騒がしい
ために、会話に集中できていない可能性があります。
理由① 話が長い
ADHDの人は、集中力が続かないことがあります。
そのため、話が長いと内容を記憶しておくことが難しくなり、会話が噛み合わなく感じる場合があります。
理由➁ 会話の内容に興味がない
ADHDの人が話題自体に興味を持てず、会話に集中できていない可能性が考えられます。
ADHDの人は、興味があることには高い集中力を発揮する一方で、関心のないことに取り組むのが苦手という特性があります。
興味のない話題だと、集中力が途切れてしまいやすいです。
理由③ 周囲の環境が騒がしい
周囲の環境が騒がしいため、会話に集中できていないというケースも考えられます。
ADHDの特性はさまざまですが、中には周囲の音に敏感な人もいます。
雑音で気が散ってしまい、目の前の人との会話に集中できないことがあります。
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2023-01-27
ADHDの人は話し方に特徴があるってホント?
ADHDの人の「話し方の特徴」を、お医者さんに聞いてみました。
セルフチェックリストも紹介するので、心当たりがないか確認しましょう。
ADHDの話し方に特徴はある?
ADHDの人は、話し方に特徴があるケースが多いと考えられています。
ADHAは3タイプに分けられますが、特に「多動・衝動性型のタイプ」の人は、特徴的な話し方であることが多いです。
ADHDのタイプ
特徴
多動・衝動性優勢型
動きが活発
落ち着きがない
感情を調節することが苦手
不注意優勢型
注意力の欠如により、ケアレスミスが多くなる
集中力が続かない
混合型
「不注意型」「多動・衝動性型」のどちらの特徴も持つ
タイプ別|ADHDの話し方の特徴
タイプ① 「多動・衝動性優勢型」の話し方の特徴
おしゃべり
話し出すと止まらない
会話の内容がコロコロ変わる
会話中の声が大きい
相手の話に割り込んで話し始める
ついカッとなって言い過ぎることが多い
「多動・衝動性優勢型」のADHDの人は、上記のような話し方をすることが多いです。
多動・衝動性のタイプは、「動きが活発で落ち着きがない」「相手の気持ちを考えることが難しい」といった特徴があり、これらが話し方に影響していると考えられています。
「多動・衝動性優勢型」の話し方以外の特徴
そわそわと手足を動かす
じっと座っていられない
静かに過ごすことが苦手
落ち着きがない
活発に活動し続ける
他者の活動を遮ったり邪魔したりする
衝動買いをしやすい
タイプ➁ 「不注意優勢型」の話し方の特徴
不注意優勢型の場合、話し方に際立った特徴はないことが多いです。
ただし、長い時間会話に集中できないことが多いため、下記のような特徴が見られます。
話を聞いていないように見える
きちんと理解しているか相手に確認される
不注意優勢型は、注意力・集中力の欠如によって、「ケアレスミスが多くなる」タイプのADHDです。
「不注意優勢型」の話し方以外の特徴
気が散りやすい
物忘れが多い
整理整頓できない
順序立てて物事を実行できない
指示されたことを遂行できない
継続して物事に取り組めない
タイプ③ 「混合型」の話し方の特徴
混合型とは、不注意型と多動・衝動性型のどちらの特徴も持つタイプのADHDです。
どちらの症状が強く出るかによって、話し方の特徴も異なるため、個人差が大きいでしょう。
「混合型」の話し方以外の特徴
忘れっぽい
落ち着きがない
順番を守れない
衝動的な行動をとる
ADHDは「会話が嚙み合わない」ってホント?
ADHDの場合、他者との会話が噛み合わなくなるケースがある※と考えられています。
特に、
長時間続く会話
興味がない内容の会話
自分の出番がくるまで話せない
など、ADHDの人が苦手な状況だと、会話が噛み合わなくなることが多いでしょう。
※個人差があるため、ADHDの人全てに当てはまるわけではありません。
ADHDは「おしゃべりが止まらない」ってホント?
個人差はありますが、ADHDの場合、おしゃべりが止まらなくなるケースもあると考えられます。
ADHDの人は、「他者の気持ちを考えて行動することが苦手」「自分の気持ちを上手にコントロールできない」等の特性により、ついついしゃべり過ぎてしまうケースが多いと考えられています。
特に、
他者の意見を聞く状況
自分が発言できる順番ではない状況
他者の発した一言が気になってしまう状況
等の場合、「しゃべりすぎ」という印象を持たれることが多いです。
何個当てはまる?ADHD診断テスト
▼「日常生活」で見られる特徴
必要以上にしゃべり続ける
じっとしていられない
他者の話を聞けない
ケアレスミスが多い
忘れ物が多い
計画的に物事に取り組めない
気が散りやすく集中力がない
▼「仕事」で見られる特徴
ケアレスミスが多過ぎる
注意力の欠如
身の周りを整理整頓できない
忘れっぽい
フットワークが軽い(活動的なタイプの場合)
アイデアが豊富に出てくる
上記に当てはまる特徴が多い人は、ADHDの疑いがあると考えられます。
※あくまでも目安です。正しい診断を受けるためには、医療機関を受診する必要があります。
診断を受けるべきか迷っている方へ
ADHDが疑われる症状が6か月以上続いている
日常生活に支障が出て、生きづらさを感じる
自尊心がひどく低下している
強い劣等感を抱いている
上記に該当する人は、病院で検査や治療を受けてみることをおすすめします。
ADHDを放置していると、日常生活に支障が出たり、うつ病などの精神疾患を患ったりする恐れがあるので、できるだけ早く診断を受けましょう。
ADHDの検査は、「精神科」や「心療内科」で受けられます。
ただし、医療機関により専門が異なる場合があるため、事前にウェブサイトや電話・メールで確認してから受診することをおすすめします。
受診時に医師に伝えるポイント
ADHDが疑われる症状が出現した時期
出現している症状について
うつ等の精神的症状が出現しているかどうか
現状最も困っていることについて
受診の際に上記の点を医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
精神科を探す
心療内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
特定非営利活動法人ADDS ADHDの会話の特徴は?子ども・大人別の会話例と解説
公益社団法人 日本精神神経学会
話が飛ぶ・自分の話ばかりな理由
ADHDの人の会話には、「話が飛ぶ」「自分の話ばかりする」といった傾向がみられます。
これらは、
- 特定のキーワードに反応してしまう
- 周囲の空気を読めない
といったADHDの特性が関係していると考えられます。
ADHDの人は脳機能の特徴により、特定のキーワードが印象に残って、その部分がクローズアップされやすいです。
そのため、会話の途中で本題からそれた内容を話し始めることが多くなり、一緒に話している人からすると「話が飛ぶ」と感じやすくなります。
また、多動・衝動性といった特性により、周りの空気を読まずに今感じたことを話してしまう傾向があるため、「自分の話ばかりする」と受け取られることがあります。
ADHDの人によく見られる会話の特徴
- 話題が飛ぶ
- 一方的に話し続ける
- 相手の話の腰を折る
- 早口
- 声が大きい
※個人差があります。
話が噛み合わない時の対処法
話が噛み合っていないと感じた際は、
- 「今はこの話をしているよ。あなたはどう思う?」
- 「ありがとう、その話についてはよくわかったよ。じゃあ、○○についてはどう思う?」
といったように、会話の流れに応じて軌道修正をしてあげましょう。
職場にADHDの人がいるときは…?
仕事の際の会話では、「簡潔にわかりやすく伝える」ことを心がけましょう。
その上で、
- メモを取る
- 復唱する
- 最後に見直す
- ミスを減らすためのマニュアルを作る
といった作業を一緒に行うことをおすすめします。
これらの方法は、ADHDの人に限らず、スムーズに仕事を進めていく上で役立ちます。
多動・忘れっぽい・過集中など、ADHDの人は仕事に支障をきたす特性があるため、少しでも落ち着いて行動できる環境を整えることを意識してください。
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2023-01-27
何度注意されても治らない…もしかして発達障害?
何度注意されても治らない場合に発達障害が疑われるのかどうか、お医者さんに聞いてみました。
セルフチェックリストを紹介するので、心当たりがないか確認してみましょう。
ミスを予防するための対策も紹介します。
「何度、注意されても治らない」のは発達障害?
メモを取る・行動を見直すなどの対策をしても同じ失敗を繰り返す場合は、「ADHD」「ASD(自閉症スペクトラム症)」などの発達障害が疑われます。
こだわりが強くて注意されても伝わらない
注意した内容を忘れている
不注意が多く、同じミスを繰り返す
といった発達障害の特性により、注意されても治らないケースがあります。
発達障害の人が特に「ミスしやすい」作業は?
これまでにやったことのない新しい作業
複数の工程が必要とされる作業
対人の対応
などはミスが起きる確率が上がります。
対人の対応は、マニュアル通りにいかないことが多いため、ミスが起きやすいです。
ADHDによく見られる特徴は?
集中力が持続しない
話の途中で別のことを考える
不注意が多い
忘れ物が多い
スケジュールや仕事の優先順位を忘れる
同じミスを繰り返す
落ち着きがない
人が話していてもじっと聞かずに動いている
待つことが苦手
衝動的な行動が目立つ
目先の利益優先に動いてしまい、長期的な損益を考えられない
整理整頓が苦手
上記のうち、半分以上当てはまる場合はADHDが疑われます。
当人のお悩み|何度注意されても治せないときは、どうする?
何度注意されても忘れてしまったり、失敗を繰り返してしまったりする場合は、下記の方法を試してみましょう。
注意を受けたらメモを取る
自分用のマニュアルを作る
ToDoリストを作る
対策① 注意を受けたらメモを取る
注意を受けた内容をメモに残しましょう。
同じ仕事を行う際に、メモを見返すことでミスを予防できることがあります。
また、ミスをした際にメモをとることで、反省の気持ちや再発防止に努めている姿勢を相手に伝えられます。
対策② 自分用のマニュアルを作る
後で見返せるように、作業ごとに注意点や過去のミスをまとめたマニュアルを作成しましょう。
写真を使って見やすくしたり、過去のメモをまとめたりするとよいです。
マニュアルを作ることで、過去の失敗を思い返し、再発を防ぐことができます。
対策③ ToDoリストを作る
その日に行う仕事をまとめた「ToDoリスト」を作りましょう。
流れをあらかじめ決めておくことで、落ち着いて仕事を進めることができます。
ToDoリストを作っておけば、急な仕事を振られてもスケジュールに組み込みやすいです。
周囲のお悩み|部下・家族に何度言っても治らない…対処法は?
発達障害の疑いがある人に注意するときは、下記の3点を意識するとよいでしょう。
簡潔に注意点をまとめる
注意した後は声がけをする
注意した次の日は明るく接する
ポイント① 簡潔に注意しよう
指摘や指示は短く簡潔に伝えましょう。
注意する際は、「どのようにしたらよかったか」を本人に考えてもらうとよいです。
注意するときに、感情的にならないようにしてください。指摘したい内容が伝わらない可能性があります。
特に、スケジュールが忙しくなると感情的になりやすいので、余裕をもって仕事を振ることも大切です。
ポイント② 注意の直後は声がけを
注意をして相手が落ち込むと、さらなるミスを招く恐れがあります。
過度に落ち込んでいないか確認して、声がけしましょう。
ポイント③ 翌日は明るく接しよう
仕事が終わったら気持ちを切り替えて接するとよいです。
注意した翌日は、笑顔で挨拶をしましょう。
何度もミスを繰り返して注意を受けると、人間的に否定されている気分に陥りやすいです。
過度な負担を与えないように、何度もミスを責めたり、緊張感のある空気を引きずったりしないようにしましょう。
ADHDを疑う場合、病院に行くべき?
頑張っているのにミスが続く
同じミスが多くて自信が持てない
といった場合は、医療機関で相談してもよいでしょう。
ADHDの人は集中力を多く使うため疲れやすく、怠けていると誤解されやすいです。
人に認められないストレスから、精神障害を発症する恐れもあります。
生きにくさを感じている人は、一度病院で相談することをおすすめします。
身近な人に受診を勧めたい場合は?
「身近な人がADHDの症状で受診したら仕事がスムーズになった」など、間接的に前向きな話を出してみましょう。
ADHDの人は活動的な一面もあるので、興味が出たら行動に移しやすいです。
病院は何科?
大人の発達障害は「精神科」または「心療内科」で相談できます。
※発達障害の診断を行っていない医療機関もあるため、事前にウェブサイトや電話・メールで確認してから受診することをおすすめします。
精神科を探す
心療内科を探す
【体験談】ADHDの診断を受けて変わったこと
小さい頃からADHDかもしれないと感じていて、大人になってから仕事がうまくいかずに生きにくさを感じていました。
診断書をもらってからは、自分の得意なことや苦手なことが再確認できたので、どのように生きればいいか考えやすくなりました。(22歳女性)
自分は他人よりも劣っているという考えが根強くありましたが、診断を受けて、これは特性の一つだと知って気が楽になりました。(39歳男性)
ADHDの診断を受けてから、障害者手帳をもらいました。福祉サービスの支援員の指導を受けて、特性を理解してもらいながら仕事ができるようになりました。(52歳女性)
自分自身は診断を受けてから気が楽になりました。ただ、親からは「ADHDだから~ができないだろう」と決めつけられるのでつらい面もあります。(18歳女性)
ヘルプマークを付けるようになって、周りの人から助けてもらいやすくなりました。精神的にも気持ちが軽くなった気がします。(26歳女性)
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 「発達障害」とは・