吐き気がする…。
下痢も止まらない…。
原因と正しい対処法を、お医者さんに聞きました。「病院に行くべき目安」も解説します。
腸閉塞など、深刻な病気のケースもありますので、注意しましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
吐き気と下痢の「よくある3原因」
吐き気と下痢の症状がある場合、
- 胃腸炎
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 月経前症候群(PMS)
が原因の場合が多いです。
以下、それぞれ詳しく解説していきます。
原因1.胃腸炎
サルモネラ菌、カンピロバクター等の細菌や、ノロウイルス、ロタウイルス等のウイルスに感染することで胃腸炎を起こし、吐き気や下痢の症状が生じます。
原因となる食品を食べてから一定の時間が経過すると、症状が現れます。
下痢や腹痛、吐き気や嘔吐、発熱、頭痛、寒気、倦怠感、血便等の症状が見られます。
胃腸炎の「対処法」
脱水症状を起こさないように、こまめに水分補給をしましょう。
嘔吐したものが喉につまらないよう横向きに寝るようにしてください。
病院に行く目安
- 1日10回以上の水下痢や
- 重い脱水症状
- 血便
- 呼吸困難、意識障害
がある場合は、病院に行きましょう。
病院では、対症療法により症状を緩和させる治療を行います。重症の場合は、抗菌薬を使用することもあります。
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「もしかしてこれって食中毒…?」
「変なものを食べちゃったけど、どのくらいで症状は出るの?」
食後すぐ・食後3時間後に症状が出るものから、翌日以降に症状が出るものまで、原因と対策を医師が解説します。
牡蠣が原因となることが多いノロウイルスや、鶏肉からの感染が多いカンピロバクター菌など、食あたりの原因になる食べ物についても解説しています。
症状がでるのはいつから?
発症するまでの時間や、症状の出方は、原因となる物質により異なります。
早い場合、食後30分から症状がでることがあります。
黄色ブドウ球菌(食後30分~6時間)
主な症状は、腹痛・下痢・吐き気・激しい嘔吐等。
人の喉の粘膜、毛髪、皮膚や鼻に存在します。
ウェルシュ菌(食後6~18時間)
主な症状は、腹痛・下痢・微熱等。
発症後1~2日で症状が改善に向かうケースが多い。
人や動物の腸管内、土壌等自然界に広く存在します。
腸炎ビブリオ(食後5~24時間)
主な症状は、激しい腹痛・下痢・吐き気・発熱等。
海水中に存在します。
ボツリヌス菌(食後8~36時間)
主な症状は、吐き気・嘔吐・嚥下障害・脱力感・言語障害・視力障害等。稀に呼吸筋が麻痺して、命の危機に晒される恐れもある。
海、河川、土壌等の自然界や、動物の腸内等、広く存在します。
サルモネラ属菌(食後6~72時間)
主な症状は、激しい腹痛・下痢・嘔吐・38度以上の発熱等。
動物の腸内に存在します。
※菌腫により発症時間は異なります。
セレウス菌(嘔吐型30分~6時間、下痢型8~16時間)
主な症状は嘔吐型の場合、吐き気・嘔吐。下痢型の場合、腹痛・下痢等。
土壌等、自然界に存在します。
病原性大腸菌(食後12時間~5日)
主な症状は、腹痛・下痢・発熱等。
人、動物の腸内に存在する病原性を持つ菌です。
ノロウイルス(食後1~2日)
主な症状は、腹痛・下痢・吐き気・嘔吐・発熱等。3日ほどで快方に向かう人が多い。
カキ等の二枚貝が原因になるケースが多いです。
カンピロバクター属菌(食後1~7日)
主な症状は、腹痛・下痢・吐き気・頭痛・倦怠感・発熱等。
牛、豚、鶏等の腸内に存在します。
アニサキス(胃アニサキス1~8時間・腸アニサキス数時間~数日)
主な症状は、腹痛・嘔吐・悪心等。
海産魚介類に寄生する寄生虫です。
腸管出血性大腸菌(4~9日)
主な症状は、激しい腹痛・水溶性下痢・血便。
重症化すると、溶血性尿毒症症候群等を起こす恐れがある。
病原性大腸菌の一つで、毒性・感染力が強いベロ毒素を作る菌です。
食中毒の「自分でできる対処法」
安静にして水分を補給する。
水分が摂れるようになったら、無理のない範囲で食事を摂る。
寝るときは横向きにする。
下痢をすると、水分と電解質が失われるため、それらを補給する必要があります。
また、下痢や嘔吐で体力を使い、胃腸も弱まっているため、消化がよく、栄養価が高いものを摂りましょう。(おかゆ、野菜スープ、うどん、バナナ等)
嘔吐したものが喉に詰まらないように、寝るときは横向きにしてください。
食中毒は人にうつるの?
通常、食中毒は人から人に直接うつるケースはほぼないと考えられています。
しかし、腸管出血性大腸菌(O-157)や、ノロウイルス、赤痢菌等は感染力がとても強く、人から人へ感染する可能性があります。
市販薬の使用は、基本的にNG!
自己判断での市販薬の服用はおすすめできません。
食中毒の原因である細菌やウイルスが体外に排泄されることを妨げ、逆に症状を悪化させる可能性があります。
薬を服用する際は、医療機関を受診しましょう。
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食中毒は自然に治るの?
食中毒の症状が軽い場合は、短時間で症状が治まり、自然治癒することもあります。
しかし、原因となる細菌等にもよるため、気になる症状が出ている場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
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病院に行くべき危険な症状
一日に10回以上、下痢や嘔吐が起こる
水分補給ができない(脱水状態)
血便
腹痛や下痢がずっと続く
高熱が出ている(熱が下がらない)
体に力が入らず、ぐったりしている
呼吸が不安定で、意識がはっきりしていない
上記のような症状がある場合、病院に行ったほうがよいでしょう。
病院を受診すると、まず原因を特定し、治療方針を決めるケースが多いです。
治療方法としては、点滴(脱水予防)、薬剤療法(抗生物質)等が挙げられます。
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▼参考URL
主な食中毒原因菌とその特徴|相模原市
「食中毒について」:みんなの医療ガイド:お知らせ - 全日本病院協会
食中毒の原因と種類:農林水産省
家庭でできる感染対策-食中毒Q&A-(食中毒Q&A):救急小冊子
原因2.過敏性腸症候群(IBS)
はっきりとした原因は明らかにされていませんが、感染性胃腸炎が治った後に発症することが多いです。
特に、ストレスや不安を感じたときに症状が強くなる傾向があります。
お腹の痛みや不快感、下痢や便秘、吐き気や嘔吐などの症状があります。
過敏性腸症候群の「対処法」
規則正しい生活、良質な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスをためないようにしましょう。
食事に関しては、暴飲暴食を避け、糖質や脂質の多い食品、香辛料などは控えましょう。アルコールやカフェインを含む飲み物も控えてください。食物繊維は積極的に摂りましょう。
病院に行く目安
過敏性腸症候群によって日常生活に支障がでているようであれば、受診しましょう。
病院ではまず、生活習慣を改善するための指導が行われます。
それでも良くならない場合は、症状に応じた薬物療法を行います。
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過敏性腸症候群とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
過敏性腸症候群の主な症状も紹介するので、当てはまるものがないかチェックしましょう。
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群とは、腹痛・腹部の不快感・便秘・下痢などを何度も繰り返してしまう病気です。
特にストレスを感じたときに発症しやすい傾向があります。
以前はなかった病気で、近年では若い人を中心に発症を増やしています。
検査で異常が見つからない点も特徴です。
過敏性腸症候群の症状チェック
お腹の痛み
お腹の不快感
下痢
便秘
吐き気・嘔吐
過敏性腸症候群の原因
根本的な原因は未だ不明ですが、発症にストレスが関わっていると言われています。
どの年代でも発症しますが、20〜30代の若い世代を中心に患者さんが増えています。
特に、ストレスに敏感な人、仕事が忙しい人に発症しやすい傾向があります。
過敏性腸症候群になりやすい人
不規則な生活を送っている
疲労・ストレスがたまっている
睡眠時間が短い
不規則な生活や疲労・ストレスは自律神経を乱しやすいため、過敏性腸症候群を引き起こしやすくなります。
過敏性腸症候群は自分で治せる?病院行くべき?
過敏性腸症候群の場合、腸自体に問題はないため、すぐに治療が必要なわけではありません。
ただし、長期間症状が続くと、それ自体がストレスとなって自律神経がさらに乱れる原因となります。過敏性腸症候群を疑う症状が続く場合は、病院で相談しましょう。
過敏性腸症候群の治し方
一日三回バランスの良い食事を摂りましょう
十分な睡眠をとりましょう
ストレスは溜めずに発散しましょう
定期的に運動をしましょう
市販薬を使ってもいい?
過敏性腸症候群に対する市販薬もあるため、症状が軽い場合は使用してもよいと考えられます。
ただし、市販薬を使用できるのは、医師による診断を以前に受けたことがある人に限ります。
また、市販薬を使用する場合は、自己流の治療で症状を悪化させる可能性もあると念頭に置いておきましょう。市販薬で症状が良くならない場合は、必ず病院を受診してください。
こんな症状は早く病院へ
排便のリズムが定まらない
ストレスを感じると便意を催す
急に便意を催すことが頻繁にある
腹痛を伴う下痢、便秘を数日間で何度も発症している
上記に該当する人は、医療機関の受診をおすすめします。
病院は何科?
過敏性腸症候群が疑われる場合は、消化器内科を受診しましょう。
まずは、他の消化器疾患がないかを確認することが大切です。過敏性腸症候群が疑われる場合、一度は胃腸内科、消化器疾患を受診することが望ましいでしょう。
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病院での治療法は?
生活習慣を見直しても症状が良くならない場合、薬を使用して治療します。
過敏性腸症候群では、一般的には消化管の機能を調節する薬や、プロバイオティクス(※)などが処方されます。
ガス型の症状に対しては、ガスを吸着する薬としてガスコンという薬が使われます。その他、漢方薬の処方で症状が良くなる人もいます。
また、ストレスが原因の場合や、うつ症状がある場合には抗不安薬や抗うつ薬を使います。
プロバイオティクスと抗不安薬を組み合わせた治療をすることもあります。
(※)プロバイオティクス…人間や動物の体に対して、良い働きをする生きた微生物のこと
原因3.月経前症候群(PMS)
はっきりとした原因は明らかにされていませんが、ホルモンバランスの乱れによって起こると考えられています。
月経前3~10日の間に情緒不安定になり、吐き気・下痢・便秘・めまい・倦怠感・強い眠気・むくみ・頭痛・腰痛・お腹や乳房の張りなどが起こります。
月経前症候群の「対処法」
無理をせず、リラックスして過ごしましょう。体を温め、血行を良くすると良いです。バランスの良い食事や良質な睡眠も大切です。
病院に行く目安
PMSの症状がつらいと感じている場合は、病院を受診しましょう。
ピルの服用により、一時的に排卵をとめる治療法や、鎮痛剤等による対症療法を行います。
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食べ物・飲み物の摂り方
気持ち悪くて、何も受けつけないときは?
何も喉を通らないときは、無理して食事を摂らなくても大丈夫です。
しかし、何も摂らずに吐き気や下痢によって水分を排出し続けると、脱水症状になってしまいます。
食べられない・飲めない症状が続く場合は、病院で点滴治療を受けてください。
食事の摂り方
吐き気が落ち着いたら、消化の良いものを食べましょう。
食材は小さく切り、煮る・蒸す・茹でるなどし、やわらかく調理すると良いです。
香辛料や酸味の強いもの、カフェインやアルコールは避けましょう。
水分の摂り方
水分補給は、吐き気がおさまっているタイミングで行いましょう。
一度にたくさん飲むのではなく、少量をこまめに摂ってくださいね。下痢や嘔吐の症状がひどいときは、経口補水液がおすすめです。経口補水液の摂取は医師、薬剤師、看護師、管理栄養士の指導に従って飲むのが安心です。
市販の吐き止め、下痢止めは飲んでいい?
吐き気や下痢の原因がわからないまま市販薬を服用するのは危険です。
自己判断せずに医師や薬剤師に相談してからにしましょう。
細菌やウイルスなどに感染して胃腸炎を起こしている場合、ウイルスや細菌が体内にとどまり、症状が悪化する恐れがあるからです。
この症状は要注意!
次の症状がある場合、早急に病院を受診しましょう。
- 症状がつらいと感じている
- 1日10回以上、水下痢をしている
- 血便が出た
- 脱水症状を起こしている
- 呼吸困難や意識障害を起こしている
病院な何科に行けばいい?
吐き気や下痢の症状がある場合、基本的には消化器内科を受診しましょう。
PMSに関しては、婦人科を受診すると良いでしょう。
深刻な病気の可能性も
吐き気や下痢は、先に解説した「よくある原因」以外にも
などの病気によって生じている可能性もあります。
深刻な病気を早期に発見するためにも、不安な症状がある場合は病院に行きましょう。
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2022-12-23
PMSってどんな症状が出るの?
つらいときはどうすればいい?
PMSの主な症状やセルフケア方法など、分かりやすく解説します。
病院へ行く目安も紹介するので、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
PMSとは
PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)とは、月経の3~10日前から始まり、月経が始まると解消する心や体の不調のことです。
PMSが生じる原因は明らかにされていませんが、排卵後に起きる女性ホルモンの分泌量の変化や、ストレスなどが影響しているといわれています。
PMSは誰でもなるの?
日本では、月経のある女性のうち約7~8割が月経前に何らかの症状を抱えています。
また、100人中5人程度の人が「生活に支障が生じるほどつらいPMS」であるといわれています。
思春期の女性でPMSを示す割合が多い、という報告もあります。
PMSになりやすい人は?
真面目
几帳面
我慢しがち
上記に当てはまる人は、PMSになりやすいといわれています。
PMSの主な症状
頭痛
腹痛(下腹部痛)
腰痛
めまい・のぼせ
吐き気
乳房の張り感、痛み
食欲低下
倦怠感
イライラする
など
生理が始まると、「症状が軽くなる」「無くなる」という特徴があります
「PMS」と「PMDD」の違いは?
生理周期に伴う心と体の不調をまとめて、PMS(月経前症候群)と呼びます。
その中でも心の不調が強く出る場合は、PMDD(月経前不快気分障害)と診断されます。
PMSの対処法
1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
お腹を温める
ストレッチや軽い運動をする
PMSの症状には、上記の方法で対処するとよいでしょう。
対処法① 1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
PMSの症状は、ホルモンバランスの乱れにより悪化しやすくなります。
主食・主菜・副菜の揃った食事をとることで、栄養をバランスよく摂取でき、ホルモンバランスが整いやすくなります。
和定食のイメージで食事をとると、栄養バランスが整いやすいです。
食事を抜くと、体のリズムが乱れやすくなり、エネルギー不足になる可能性があるので、きちんと3食とるようにしましょう。
対処法② 1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
ホルモンバランスを整えるためには、十分な睡眠時間を確保する必要があります。
毎日6~8時間程度、質のよい睡眠をとることを心がけましょう。
ただし、理想の睡眠時間には個人差があります。朝目覚めたときに疲れがとれていて、日中に眠気を感じない状態になるように心がけましょう。
「深い眠り」を得るためのポイント
朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる
昼寝は15時までに30分以内にする
夜は11時(遅くとも12時)には寝る
夕方以降は「カフェインを含む食品」を控える
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませる
飲酒は、就寝の3~4時間前までにする
就寝の2~3時間前に入浴する
就寝前はできるだけパソコン・スマホを触らない
対処法③ お腹を温める
お腹を温めると腹痛の緩和につながります。お腹にカイロをあてて患部を温めるとよいでしょう。
温かい飲み物を飲んで、体の中から温めることもおすすめです。
対処法④ ストレッチや軽い運動をする
PMSによる頭痛には、肩や首回りの筋肉をほぐし、血流をよくすることがおすすめです。
ストレッチや軽い運動で、体をほぐしましょう。
ただし、体を動かしていて、ズキンズキンと血流に合わせて頭痛が起きたら、体を動かすのをやめて楽な姿勢で休みましょう。
病院に行く目安
体や精神面の不調によって「つらい」と感じているときは、医療機関の受診をおすすめします。
特に、
PMSのつらい症状が毎月起こる
日常生活や対人関係に支障が出ている
痛みや倦怠感が重く、仕事や学校を休むことがある
といった場合は、早めの受診をおすすめします。
PMSが悪化すると、脳機能のバランスを崩し、うつ病を発症するケースもあります。
心当たりのある方は、放置しないようにしましょう。
PMSの治療法
PMSで受診した場合、病院では飲み薬・低用量ピル・漢方薬などを用いて治療をします。
低用量ピルを使うと、生理前と後のホルモンの量の差を軽減できるため、PMSの症状がかなり楽になります。
ただし、妊娠を望んでいる場合には、低用量ピルが使用できないため、生活指導を中心とした治療になります。
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