胃痛と肩こりに加え、背中の痛みもある…。
これって大丈夫?
どんな病気の可能性があるのか、お医者さんに聞きました。
病院に行くべき?受診するのは何科?などの疑問にもお答えします。
監修者
フェリシティークリニック名古屋
医学博士
河合 隆志先生
経歴
’97慶應義塾大学理工学部卒業
’99同大学院修士課程修了
’06東京医科大学医学部卒業
’06三楽病院臨床研修医
’08三楽病院整形外科他勤務
’12東京医科歯科大学大学院博士課程修了
’13愛知医科大学学際的痛みセンター勤務
’15米国ペインマネジメント&アンチエイジングセンター他研修
’16フェリシティークリニック名古屋 開設
なぜ?「胃痛・肩こり・背中の痛み」が同時に起こる原因
これらの症状が同時に起こる場合、「胃」や「心臓」の不調が考えられます。
「胃」の不調の場合
- 胃の痛みが背中側の方まで広がると、背中にも痛みが起こる。
- この場合の肩こりは、ストレスが原因の可能性が高い。
「心臓」の不調の場合
- みぞおち付近の痛みを、胃痛と勘違いしている。
- 心臓の神経は、首・肩の神経と経路が同じため、肩こりを感じる。
※心臓に不調が起こり、脊髄に刺激を伝える際、背中につながっている別の神経にも刺激となり、痛みを感じます(関連痛)
様子を見ても大丈夫?病院行くべき?
症状が一時的なもので繰り返さない場合は、さほど心配のいらないケースもあります。軽度の症状の場合は、自然になくなることもあります。
ただし、
- 耐えられるくらいの症状が3日以上続いている
- 症状を繰り返している
- 症状が重く、仕事に行けない
といった場合は、胃や心臓の病気を疑う必要があります。
心当たりがある方は、一度病院で相談しましょう。
受診するのは何科?
胃の不調か、心臓の不調か判断でません。
最初に何科を受診すべきでしょうか?
内科を受診しましょう。
内科を探す
考えられる2つの病気
胃痛に肩こりや背中の痛みを伴う場合
- 胃潰瘍
- 狭心症
などの病気の可能性があります。
病気① 胃潰瘍
胃潰瘍は、喫煙やストレス、ピロリ菌感染などが原因で発症します。
胃に炎症が起こることで、胃酸や消化酵素で胃粘膜が傷つきやすくなり、潰瘍ができます。
治療せずに放置すると、出血(吐血・下血)したり、胃穿孔(胃に穴が開く)などのリスクがあります。
<胃潰瘍を発症しやすい人>
- 40~50代の男性
- 更年期(50代)の女性
- 神経質な人
- ストレスを感じやすい人
- 非ステロイド性抗炎症薬を服用している人
主な症状
- 吐き気
- 胸やけ
- ゲップがよくでる
- お腹の張り
- 食欲の低下
- 吐血
- 黒い便
- 背中が痛い
胃の痛みは、食事から60~90分後に起こりやすいです。
自分でできる対処法は?
消化の良い食事を心がけてください。
胃の調子が戻るまでは、食物繊維や脂肪分の摂取を控えましょう。
煮る・蒸す・茹でるなどの調理法を心がけ、柔らかくしてから食べてください。
また、刺激物(アルコールやカフェイン等)の摂取も避けましょう。
上記の対処を行っても症状が改善しないときは、消化器内科の受診をおすすめします。
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なんだか胃の調子が悪い…
背中も痛いけど、これって関係あるの?
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病院に行くべき?受診するのは何科?
胃と背中の症状でお困りの方は、参考にしてください。
胃の不調&背中が痛い原因は?
原因として、
胃潰瘍
逆流性食道炎
機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)
などが考えられます。
原因1.「胃潰瘍」の特徴
胃潰瘍とは、胃の粘膜に炎症が起こる病気です。胃の背中側の方まで潰瘍が深く広がると、背中にまで痛みが及ぶこともあります。
なってしまう原因
ストレス、疲労過多等による自律神経の乱れ
ピロリ菌の感染
暴飲暴食や早食い
解熱消炎鎮痛薬(痛み止め)、抗凝固薬等の薬剤の長期間使用
熱過ぎる飲食物、冷た過ぎる飲食物、刺激が強い食品(香辛料、辛いもの等)の過剰摂取
喫煙
アルコール、カフェインの過剰摂取
脳疾患、肺疾患、腎臓疾患 等
なりやすい人
40~50歳代の男性
更年期(50歳代)の女性
神経質な方やストレスを感じやすい方
症状の特徴
胃の鈍痛が、主に食事中や食後に生じることが多いです。
その他には、
背中の痛み
貧血
胸焼け
酸っぱい感じがするゲップが出る
吐き気
吐血
黒色便
といった症状があります。
どう対処すればいい?
まずは病院で検査を受けましょう。
その上で、胃への負担が少ない食事を摂るように心がけてください。脂肪分が多い料理、肉中心の食事、アルコールやカフェイン、香辛料等は避けましょう。
喫煙も控えましょう。
病院に行く目安
胃潰瘍が疑われる症状がある場合は、病院に行きましょう。
特に、体重減少、吐血や下血(黒っぽい色)、貧血があらわれている場合、早急に受診してください。
胃酸を抑制する薬を用いた治療や食事療法が行われます。胃に穴があいてしまった場合(穿孔性潰瘍)は、手術が必要になるケースもあります。
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原因2.「逆流性食道炎」の特徴
胃酸や胃の中の食べ物が食道に逆流することで、食道で炎症が起こる病気です。
食道は背中に近い部位のため、炎症が起こると、背中痛を感じやすくなります。
なってしまう原因
胃酸の過剰分泌
胃から食道までの逆流を阻止するシステムの異常
脂肪分が多い食品の過剰摂取
なりやすい人
肥満傾向の方
早食いしてしまう方
食べ過ぎてしまう方
症状の特徴
胃の痛みが、空腹時や夜間にあらわれることが多いです。
その他には、
背中の痛み
胸焼け
酸っぱい感じの液体が口に戻ってくる感覚
胸の痛み(締め付けられる痛み、つかえ感)
咳が出る
ゲップが多くなる
といった症状があります。
どう対処すればいい?
まずは病院で検査を受けましょう。
その上で、肥満の場合は、食生活を改善して、減量に取り組んでください。アルコール、コーヒー等の刺激物の摂取や喫煙を控えましょう。
枕を少し高いものを利用し、少し頭を高くしたり、寝る際に左側を下にして睡眠をとると、胃の症状が緩和される傾向があります。
病院に行く目安
逆流性食道炎は疑われる症状がある場合は、病院に行きましょう。
胸焼けや過度のゲップといった症状がある場合は、特に注意しましょう。
胃酸の分泌を抑える薬剤を用いた治療と、生活習慣の改善指導が行われます。
薬物による治療で改善が見られないと、手術が行われるケースもあります。
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原因3.「機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)」の特徴
原因が見当たらないのに、胃に不調を感じる病気です。
なってしまう原因
強い緊張、ストレス
脳細胞の過労
胃の機能の低下
胃酸過多
ピロリ菌の感染
アルコールの過剰摂取
なりやすい人
ストレスを感じやすい方
喫煙者
睡眠不足の方
症状の特徴
胃の痛みや胃もたれを感じることが多いです。
その他にも、
背中の痛み
食後膨満感
排便異常(下痢、便秘)
食欲不振
吐き気
といった症状があります。
どう対処すればいい?
暴飲暴食、アルコールの過剰摂取は避けて、辛いものや甘いもの、香辛料、脂肪分を多く含む飲食物を控えましょう。
1日3食バランスのいい食事を摂り、ゆっくりよく噛んで食べるようにしてください。
睡眠時間を十分確保すること、ストレスを溜め込まないようにすることも大切です。
喫煙者の方は禁煙しましょう。
病院に行く目安
症状が週に1~2回以上起こる場合は、病院に行きましょう。
特に、吐き気が続いたり、黒っぽい便がみられる場合は注意しましょう。
胃酸分泌を抑制する薬や、胃腸の働きを活性化する薬で治療します。
その他、漢方薬、抗不安薬、抗うつ薬の処方や、生活習慣の見直しを指導されるケースが多いです。
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胃の不調かと思っていたら「膵炎」のケースも
膵炎は、膵臓が分泌している消化酵素が、何らかの原因によって膵臓自体と膵臓周辺の組織を消化してしまう病気です。
なってしまう原因
アルコールの過剰摂取
胆石症を患っている
※原因不明の突発性の場合もあります。
なりやすい人
50歳代の男性や70歳代の女性に多いです。お酒をたくさん飲む方や、胆石症を患っている方は、発症のリスクが高くなります。
症状の特徴
みぞおちの辺りに激痛が生じます。
その他には、
背中の痛み
吐き気
嘔吐
発熱
食欲不振
膨満感
といった症状があります。
どう対処すればいい?
膵炎は、早急に病院で治療を受ける必要があります。
膵炎が疑われる場合は、すみやかに病院へ行きましょう。
特に、上腹部の激痛、吐き気・嘔吐が続く場合は、危険な状態です。
入院して、絶飲・絶食をしながら、点滴(輸液)による治療が行われるケースが多いです。
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病院は何科に行けばいい?
内科、消化器内科の受診をおすすめします。
お医者さんに伝える5ポイント
痛みが始まった時期
どこが痛いか
どんな痛みか
便の形状や色
胃痛以外の症状の有無
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早期受診をすすめる理由
早期に病院を受診することで、重症化する前に治療を開始できるため、短期間での改善が期待できます。入院や手術をしなくても改善できるケースが多いです。
放置すると…
悪化して手術や長期の入院等 難しい治療が必要になったり、心不全やがんなど、重い病気に繋がる可能性があります。
発見が遅れると命に関わる恐れもあるので、不安な症状がある方は、病院に行くようにしましょう。
病気② 狭心症
狭心症は、生活習慣病による動脈硬化などが原因で発症します。
心臓の筋肉の血流が低下し、酸素不足になったときに痛みが起こります。
治療せずに放置すると、心筋梗塞になる恐れがあります。
<狭心症を発症しやすい人>
- タバコを吸っている人
- 太っている人
- 塩分や脂肪分、糖質の多い食事をよく摂る人
- 重度の貧血体質の人
女性よりも男性に発症しやすい傾向があります。
主な症状
- 首や肩、背中の痛み
- みぞおちの痛み
- 胸の痛み、圧迫感
- 息苦しさ
- めまい
- 吐き気
- 冷や汗
- 体のだるさ
みぞおちの痛みは、数分程度(長くても15~20分)続きます。
自分でできる対処法は?
狭心症は、ご自身で対処することはできません。
狭心症を疑う場合には、すぐに循環器内科を受診してください。
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放置はNG!続く場合は必ず病院へ
胃痛、肩こり、背中の痛みが同時に起こる場合、重い病気が隠れている可能性もあります。
悪化すると命に関わる恐れもあるため、症状が3日以上続く場合や、症状を繰り返す場合は、放置せずに病院で相談しましょう。日常生活に支障がある痛みは早めに受診しましょう。
特に、血を吐いた、黒い便がでる、胸が痛む、といった場合は、より深刻な状態です。
早急の受診をおすすめします。
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2022-10-27
最近、肩が痛い…。
つったような痛みなのだけど、これってどういう状態?
「肩がつったような痛み」がする原因について、お医者さんに聞いてみました。
狭心症・心筋梗塞などの危険な病気が隠れているおそれもあるので、心当たりのある症状がないかチェックしましょう。
肩に「つったような痛み」…これってどんな状態?
肩に「つったような痛み」を感じる場合、
肩周りの血流が悪くなっている
肩周りの筋肉が凝り固まっている
という状態だと考えられます。
これらは、運動不足やストレスの蓄積、体の緊張、冷え性などによって引き起こされます。
特に、同じ姿勢を続けているときに痛みが出やすいです。
改善しないまま放置していると、慢性的な肩こり・首こり・頭痛などを発症しやすくなります。
痛くて体を動かせないときは…
痛みで体が動かせないときは、無理に動かさずに、まずは楽な姿勢をとってください。
その後、深呼吸をしてリラックスしましょう。
つった感じがなくなり、肩周りを動かせるようになったら、肩甲骨をほぐすように、少しずつ腕を回しましょう。
慣れてきたら範囲を広げていき、徐々に大きく前・後ろに回してください。
このほか、
ホットタオルで肩周辺を温める
入浴をして体全体をほぐしてあげる
といった方法もおすすめです。
血流や筋肉の凝りの改善につながるため、痛みの緩和が期待できます。
痛みが続く場合は病院へ!
数時間〜半日程度しても痛くて腕を動かせない
温めても痛みがとれない
などの場合は、整形外科で受診しましょう。
何らかの病気が隠れている疑いがあります。
放置していると、症状が悪化して治療が長引くおそれがあるので早めに受診しましょう。
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考えられる3つの病気
狭心症・心筋梗塞
慢性閉塞性肺疾患
慢性肝炎
肩につったような痛みがある場合、上記の3つの病気が隠れている可能性も考えられます。
病気① 狭心症・心筋梗塞
血管が狭くなって酸素や栄養が行き届かず、心臓が正常に機能できなくなっている状態です。放散痛※により、肩に痛みが生じることがあります。
※放散痛…病気になった臓器の痛みが、そこから離れた別の部分にあらわれること。
主な症状として、
胸の締め付け感
息苦しさ
息を吸うとつらい
左肩・右腕の痛み
背中や胃の痛み
などがあります。
加齢や、糖尿病・高血圧症などが原因で、心臓や周辺の血管が動脈硬化を起こしていると、発症しやすくなります。
ほかにも、「喫煙している」「ストレスや疲労がたまっている」「睡眠不足」「お酒の飲みすぎ」などに当てはまる場合、発症リスクが高まります。
心筋梗塞かも、どうすればいい?
早めに医療機関へ相談しましょう。
まずは「内科」に相談してください。
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病気② 慢性閉塞性肺疾患
肺の機能が低下し、呼吸困難を引き起こす病気です。肺が硬直して横隔膜の働きが悪くなっているため、呼吸をして酸素を取り入れる際、肩周りの筋肉を多く使うため、痛みやつった感覚が起こりやすくなります。
酸素をうまく体に取り込めなくなるため、息切れ・息苦しさを感じます。
息苦しさが常につきまとっている
風邪ではないのにタンや咳が続いている
という人は、慢性閉塞性肺疾患の疑いがあります。
「長期間にわたり喫煙している」「空気が汚染されているところで長時間仕事をしている」といった人に多い病気です。
慢性閉塞性肺疾患かも、どうすればいい?
早期の診断と治療が必要です。
思い当たる点がある人は、早急に医療機関へ相談しましょう。
まずは「内科」に相談しましょう。
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病気③ 慢性肝炎(慢性の肝機能障害)
肝臓が慢性的に炎症を起こし、機能障害が続く病気です。
肝臓の近くにある横隔膜が痛み、肩こり・肩の痛みがあらわれる場合があります。
また、肝臓の機能が低下することにより、「体に必要な成分の合成ができなくなる」「有害な物質を解毒できなくなる」という状態になるため、倦怠感や免疫力の低下などを引き起こします。
脂肪分が高い食事が多い
お酒をたくさん飲む
という人は、肝臓の負担が大きいため発症リスクが高いです。
その他、「肝炎ウイルス」への感染により、発症するケースもあります。
慢性肝炎かも、どうすればいい?
セルフケアでは対処できないので、医療機関へ相談しましょう。
病院は「内科」に相談しましょう。
食生活の見直しも重要です。
脂っこいものは避ける
お酒を控える
などを心がけてください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
日本呼吸器学会 慢性閉塞性肺疾患SOPD