「肩にしこりがあるけど、これは何?」
「粉瘤(ふんりゅう)」や「脂肪腫(しぼうしゅ)」など、考えられる原因を解説します。
まれに、しこりが悪性腫瘍(ガン)ということもあります。油断は禁物です。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
肩にしこりができた…これって大丈夫?
肩にできたしこりは、「粉瘤」や「脂肪腫」など良性疾患のことが多いです。
良性疾患の場合は、基本的には心配ないでしょう。
ただし、まれに悪性疾患(ガン)のケースもあります。
「良性のしこり」の特徴
- 周囲の皮膚とのしこりの境界がハッキリとしている
- 少しずつ大きくなる
- 皮膚の表面に異常はみられない
- 少し盛り上がっている
- 数mmから数cmの半球状
- 滑らかで軟らかいコブのよう
- 1個から多数同時に発生する
「悪性のしこり」の特徴
- 周囲の皮膚との境界がハッキリしていない
- 出血がある
- ジクジクしている など
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2021-08-06
「首にしこりができて肩がこる…」
「触ると痛いけど、大丈夫?」
どんな病気の可能性があるのか、お医者さんに聞きました。
病院に行くべき目安や何科で受診すべきかもあわせて解説します。
首のしこりと肩こり…この症状はいったい何?
よくある原因としては、感染症によるリンパ節の腫れが考えられます。
これは、リンパ節が病原体を食い止めようして起こる、生理的な反応です。
ただし、甲状腺の病気や悪性リンパ腫によって、首のしこりと肩こりが生じるケースもあります。
特に悪性リンパ腫は命に関わるため、しこりには注意が必要です。
大丈夫?病院行くべき?
首のしこりと肩こりの症状に気付いたら、念のため医療機関に行くことをおすすめします。
要注意!こんな症状は「悪性リンパ腫」可能性大
しこりを押しても痛みが少ない
しこりが動かない
痛みのないしこりが首に増えている
といった症状には、悪性リンパ腫を疑う必要があります。
がん細胞が全身に転移すると命に関わるため、早急に医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
首にしこりができて肩がこるときは、まず内科を受診しましょう。
※症状の状態によって、適切な診療科を紹介されることがあります。
内科を探す
考えられる2つの病気
首にしこりができて肩がこるのは、
リンパ節炎(風邪などの感染症)
甲状腺疾患
といった病気が考えられます。
病気① リンパ節炎(風邪などの感染症)
感染症によってリンパ節炎を発症すると、リンパ節が腫れ、首のしこりが現われます。
肩こりを感じるのは、リンパ節周辺の血流が停滞しているためだと考えられます。
リンパ節は、病原菌を体内に侵入させないよう見張っている場所です。
病原体の侵入を食い止めているときに、リンパ節の腫れが起こります。
しこりの特徴
押すと痛い
腫れ感がある
ズキズキする
赤く腫れる
触ると柔らかい
触ると左右などに動く
こんな症状にも心当たりはありませんか?
発熱
咳がよく出る
喉の痛み、腫れ
くしゃみが出る
寒気がする
リンパ節炎の原因
細菌やウイルス感染が原因です。外部から病原体が侵入してきて、起こります。
どんな人に多い?
免疫力が下がっている人に発症しやすいです。
ストレスや疲労が溜まっている人は要注意です。
また、糖尿病や肝臓病など基礎疾患を患っていると、発症しやすい傾向があります。
自分でできる対処法は?
安静にして休息をとる
消化の良い温かい食べ物で栄養を摂る
こまめに水分補給をする
といった対処で、体の免疫力を高めましょう。
痛みがつらいときは、市販の鎮痛剤を服用しても構いません。
ただし、熱が出て、腫れや痛みが強くなっているときは、早めに医療機関を受診してください。
この場合、細菌やウイルスに対する治療薬が必要です。
セルフケアのみで対処しようとすると、治療が長引いたり、手術が必要になったりするリスクもあります。
病院は何科?
リンパ節炎が疑われるときは、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
医療機関では、抗菌薬の飲み薬や注射などで治療します。
耳鼻いんこう科を探す
病気② 甲状腺疾患
甲状腺に病気(バセドウ病や橋本病など)を発症すると、首にしこりや腫れができます。
首が動かしにくいため、肩こりを感じる人もいます。
しこりの特徴
のどや首前面が腫れる
触るとしこりが大きくなっているのがわかる
見た目でわかるほど腫れる
こんな症状にも心当たりはありませんか?
倦怠感
よく汗をかく、もしくは体が冷える
何もしていないのに痩せる、もしくは太る
食欲が増す、もしくは食欲がなくなる
体がむくむ
生理不順
イライラする
眠れない
動悸
甲状腺疾患の原因
自己免疫機能の異常により、自分の甲状腺組織を攻撃することで、発症します。
しかし、なぜ自己免疫が異常を起こすのかはよくわかっていません。
現段階では、ウイルス感染が発症に関係していると考えられています。
どんな人に多い?
甲状腺疾患は女性に多い病気です。
バセドウ病は20〜30代の女性に多く、橋本病は30~40代の女性に多い傾向があります。
自分でできる対処法は?
ご自身で対処することはできません。
治療が必要な病気であるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
甲状腺疾患が疑われるときは、内分泌内科・内科を受診しましょう。
バセドウ病は薬物治療を、橋本病にはホルモン補充療法を行います。
甲状腺腫瘍は場合、手術が必要になるケースもあります。
内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
一般社 日本耳鼻咽喉科学会 頸部の腫れ・腫瘍
病院に行くべき?
「出血がある」「ジクジクしている」など、悪性疾患の症状が見られる場合は、早めに皮膚科へ行きましょう。
※ご自身で判断するのは危険なので、医療機関(皮膚科・形成外科など)で検査することをおすすめします。
形成外科を探す
「肩のしこり」よくある2つの原因
肩にできたしこりは
- 粉瘤
- 脂肪腫
が原因となっているケースが多いです。
それぞれ詳しく解説します。
原因① 粉瘤(ふんりゅう)
皮膚の下に袋状のもの(嚢腫:のうしゅ)ができています。
通常であれば皮膚から剥げ落ちるはずの角質や皮脂が、袋の中にたまって発生します。
大きさは、数mm~数cmです。
1個だけできる場合もあれば、多発する場合もあります。
残念ながら、粉瘤ができるはっきりとした原因はわかっていません。
粉瘤ができやすい体質の人は、体を清潔にしていたとしても発症してしまいます。
粉瘤のしこりの特徴
- 触ると動く
- 少しずつ大きくなる
- 少し盛り上がっている
- 半球状の形
- しこりの中央に黒い点のような開口部がある
- 強く押すと、臭くてドロドロとした物質が出てくる
押すと痛みを感じる?
通常は無痛です。
内部で炎症を起こしていると、押したときに痛みを感じます。
自然に治る?
粉瘤が自然に治ることはありません。
市販薬などもないので、取り除くには医療機関での治療が必要です。
放置するとしこりは徐々に大きくなります。
しこりの中央の開口部から細菌が入ると化膿し、赤く腫れたり痛みが生じたりします。
さらに悪化して膿がたまると、皮膚の表面を少し切り開き、膿を出す必要が出てきます。
粉瘤ができた場合は、皮膚科や形成外科を受診しましょう
原因② 脂肪腫(しぼうしゅ)
皮膚の下に脂肪細胞が大きくなることで、しこりが発生します。
刺激の受けやすい部位に起こりやすい傾向があります。
「手でよく触る」「洋服ですれる」などの刺激を受ける部位にできやすいです。
女性にできやすい傾向があります。しこりの大きさは数mmから10cm以上に及ぶものまでさまざまです。
脂肪種のしこりの特徴
- 触ると動く滑らかで軟らかいコブのよう(※かたい場合もある)
- 皮膚に異常はあらわれない
- 周囲の皮膚との境界がハッキリとしている
押すと痛みを感じる?
通常は無痛です。
押したときに痛むことがあります。
自然に治る?
脂肪腫が自然に治ることはありません。むしろ、徐々に大きくなることが多いです。脂肪腫に有効な市販薬もありません。しかし、そのままにしていても特に体への害はありません。
特に治療の必要はないですが、痛みが伴う場合は手術で取り除くことも可能です。
放置すると…どうなる?
脂肪種はどんどん大きくなる性質があります。
放置して大きくなった場合、全身麻酔での手術が必要になり、傷跡が大きくなる可能性があります。
脂肪腫が気になる場合は、皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。
「肩のしこり」は早めに病院で検査を受けよう
粉瘤や脂肪腫かと思っていたらまれに、悪性腫瘍(がん)だったというケースもあります。
ご自身で判断するのは危険なので、医療機関で検査することをおすすめします。
病院は何科?
肩にしこりがある場合は、皮膚科や形成外科を受診しましょう。
形成外科を探す
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2021-03-29
背中にしこりができている…!
これは一体なに?大丈夫?
しこりができる原因を、お医者さんが解説します。
「自然に治るのか」「悪性の場合もあるのか」などの疑問にもお答えします。
よくある2つの原因
背中にできたしこりは
脂肪腫(しぼうしゅ)
粉瘤(ふんりゅう)
の可能性が高いです。
原因① 脂肪腫
脂肪を作る「脂肪細胞」が異常増殖することで、触ると硬いしこりが形成されます。
1つの場合もあれば、前腕部・体幹・首など体のあらゆる場所にできるケースもあります。
誰にでも発症する可能性があります。
発症原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝が関係していると言われています。
しこりの特徴
皮膚に異常はなく、滑らかで、やわらかいこぶのような見た目をしています。
押すと痛いことがあります。
しこりの大きさは数mm~10cm以上とさまざまですが、多くが7.5cm以内のものです。
脂肪腫は自然に治る?
脂肪腫が自然に小さくなったり、消えたりすることはありません。
特に体への害はないので、気にならない場合は治療しなくても大丈夫です。
放置するとどうなる?
脂肪腫が大きくなると周囲組織を圧迫して違和感・痛み・痺れを引き起こすケースがあります。その場合は医療機関での切除をおすすめします。
病院での治療法
「通常手術」「スクイージング手術」など、外科手術によってしこりを取り除きます。
通常手術
しこりの上を、しこりの直径と同じくらいの大きさに切開します。そして、しこりを包む膜を破らないように、周りの組織から剥がして取り出す方法です。
スクイージング手術
脂肪腫の剥離・摘出用の器具が入る程度の必要最小限の切開(1~3cm以下)で、しこりを取り出す方法です。
原因② 粉瘤
皮膚の下に、袋状のできもの(嚢腫)ができ、通常は皮膚から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が、剥がれ落ちずに袋の中にたまってしまうことで、しこりが形成されます。
粉瘤は女性よりも男性が発症しやすいです。
できやすさには、生まれつきの体質が関係します。
しこりの特徴
しこりの中央に黒い点のような開口部がみられることが多く、強く押すと、臭くてドロドロとした物質が出ることがあります。
粉瘤は自然に治る?
粉瘤は自然に消えたりしません。
粉瘤は、徐々に大きくなります。
市販薬や塗り薬もないので、医療機関での切開手術が一般的な治療法です。
放置するとどうなる?
放置すると角質や皮脂がどんどん蓄積され、時間の経過とともに少しずつ大きくなり、破裂する恐れがあります。
しこりの中央の開口部から細菌が侵入すると、化膿するケースがあります。
膿がたまった場合、皮膚の表面を少し切り開いて、膿を出さなくてはいけなくなります。
病院での治療法
「へそ抜き法」と呼ばれる切開手術で、膿を出すことが多いです。
へそ抜き法(くり抜き法)
皮膚の表面から円筒状のメスを刺し込み、表面の皮膚と一緒に袋状になったできものの一部分をくり抜く方法です。
くり抜いた後は、内容物をもみだしながら、袋自体も可能な限りかきだします。
手術後の傷跡は、最終的にはにきび痕程度のへこみになり、目立ちません。
皮膚科を探す
悪性腫瘍の可能性は?
背中のしこりは「脂肪肉腫」といった、悪性腫瘍の可能性も考えられます。
放置すると、がん細胞がほかの組織に転移し、命に関わるため、早急な治療が必要です。
脂肪肉腫とは?
脂肪肉腫とは軟部肉腫の1つで、脂肪組織から発生した悪性腫瘍です。
放置すると腫瘍細胞が増殖し、他の臓器への転移のリスクが高まります。
治療を行えば、再発や転移は比較的少ないです。
悪性か良性かを見分けるには?
ご自身で判断するのは難しく、大変危険です。
医療機関で検査を受け、原因を詳しく調べましょう。
一般的に悪性腫瘍は良性腫瘍に比べて、しこりの成長スピードが早く、硬い感触であると言われています。
気になるしこりは、早期受診を!
早めに医療機関を受診することで、症状の悪化を防ぐことができます。
悪性腫瘍だった場合、命を落とす可能性もあるので、しこりが大きくなったり、炎症を起こしたりする前に皮膚科へ相談しましょう。
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 アテローム(粉瘤)
MSDマニュアル家庭版 脂肪腫
一般社団法人 日本形成外科学会
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。