なぜか、夏になると死にたくなる…。
それは、季節性感情障害の「夏季うつ」かもしれません。
季節の移り変わりでうつ症状が出やすくなる理由を、お医者さんに聞きました。
夏バテとの違いや、やってはいけないNG行動についても解説します。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
夏になると「死にたくなる…」
毎年、夏になるにつれてしんどくなってきます…。なぜでしょう。
夏になると気分が沈みやすくなる場合、季節性感情障害の「夏季うつ」(※)の可能性が高いです。
※夏季うつとは、「季節性感情障害」の俗称です。
夏になると気温が上がって暑くなり、疲労が溜まりやすくなります。
この暑さによる疲労・ストレスなどから逃げられないことにより、「気分が沈む」という季節性感情障害の症状が引き起こされます。
このように、季節性感情障害は「事柄」として明確なストレス原因がないにもかかわらず発症するという特徴があります。
季節性感情障害とは?
季節性感情障害とは、季節の移り変わりの時期に発症するうつ病です。「秋から冬に発症し、春に落ち着く」パターンが一般的ですが、最近は夏場に発症する人も増えています。同じ時期に、毎年発症を繰り返す人が多いです。
心当たりは?「季節性感情障害」の症状チェックリスト
- 食欲低下
- 不眠
- 気分が落ち込んでしまう
- 気分の浮き沈みが激しくなる
- 常に不安感がある
- 考えがまとまらない
- やる気が起きない
- 倦怠感が強い
- 死んでしまいたい衝動にかられる
毎年同じ時期に、上記のような症状が出てくる場合は「季節性感情障害」が疑われます。
季節性感情障害(夏季うつ)になりやすい人の特徴は?
- 生活リズムが乱れている
- 睡眠のリズムが乱れている
- 気圧の変化に敏感
- 湿度上昇に弱い
- 日を浴びる時間が短い(特に梅雨の時期)
- 日照時間が短い地域に住んでいる
- 強い日差しを浴びている
- 冷房に常に当たっている
- 無理しがちな性格である
季節や居住地域、生活習慣により日を浴びる時間が少なくなると、精神を安定させる働きを持つ「セロトニン」が不足し、抑うつ症状が出やすくなります。
夏季に生じる季節性感情障害(夏季うつ)の場合は、強い日差しや屋外と涼しい部屋との気温差による疲労感・倦怠感により、症状が出やすくなると考えられます。
また、季節性感情障害は、女性に多いという特徴もあります。
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2022-12-15
作品紹介
専門学校を卒業したての新人美容師が、入社して1ヶ月でまさかのうつ病に...!
当時、研修担当だった副店長との関係に、毎日見えないストレスを感じていた。
「おこられないように...」「もっと努力しなきゃ...」そんな思いが、余計に自分の心を殺しにかかっていたことに気付きはじめる。
本作品の著者であるはんなみさんが、ご自身の実体験をもとに「うつ病で退職~再就職まで」を描いたコミックエッセイ。
この時の桜は
今でも覚えています。
当時はこんなにも桜がトラウマになるなんて
思ってもみなかったです。
続きます
次の話>
はんなみ さん
主にInstagramにいます。
少しだけ背中を押したい、すべての悲しい夜に届いて欲しい、そんなイラスト描いてます。
ブログ:今日も息をして生きる。
ツイッター:@k0npet0
インスタグラム:yowai_daihyo
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季節性感情障害(夏季うつ)と夏バテの違い
夏バテの発症には、「暑さによる疲労」や「イベント続きによる睡眠不足」、「外気と冷房との寒暖差による不調」など、はっきりとした理由があります。
一方で、季節障害は、何があったわけでもないのに「夏になると気分がすぐれない」「気分が落ち込んでしまう」という特徴があります。
夏バテの特徴
|
- まず体に不調が出てから、気力が奪われる
- 暑さによる疲労など、はっきりとした理由がある
|
季節性感情障害
|
- 精神的な症状が強く出る
- はっきりとした心理的な原因・出来事が見当たらない
|
夏バテの主な症状
- 睡眠が浅い・寝つきが悪い
- 疲労感が取れない
- 体がだるい
- 食欲低下
- 吐き気
- 下痢・便秘
など
夏バテの症状は、暑さによる「体の脱水」や、外気と冷房の効いた涼しい部屋との寒暖差による「自律神経の乱れ」などによって引き起こされます。
また、夏バテで食欲が低下し、栄養が不足してしまうと、免疫も低下して夏風邪などにかかりやすくなります。
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2022-11-25
全身の凝りがひどい…。
もしかして病気?
全身の凝りで病気が疑われるケースについて、お医者さんに聞いてみました。
自律神経失調症などの病気も考えられるので、心当たりがないかチェックしましょう。
「全身の凝り」の原因は病気?
最近、全身の凝りが気になります。何かの病気かもしれないと不安なのですが…。病気によって「全身が凝る」ことってあるのでしょうか…?
はい、病気による疲労感から、全身が凝っているように感じる場合があります。
ただし、疲労や運動不足が原因であることがほとんどです。
「全身が凝る病気」というのはありませんが、自律神経失調症などの病気で、二次的に全身の凝りを感じるケースが考えられます。
こんなケースは、病気の可能性が低いです
全身の凝り以外の症状がない
ストレッチやマッサージで凝りが改善する
久しぶりに激しい運動をした
慢性的な運動不足により、肩こり・首こり・腰痛などを発症し、全身が凝っているように感じる場合があります。
体を動かす習慣がないと、体全体の血流が悪くなり、体のさまざまな部分で冷え・こりを招きます。
病気が疑われる症状
突然肩こりが生じてすぐに消える
胸を締めつけるような感覚を伴う
めまい・頭痛・吐き気を伴う
上記の症状に該当する場合は、ただの凝りではなく、何らかの病気が疑われます。
こんな人は要注意
喫煙者
空気が汚染された環境に長くいる
お酒をよく飲む
肥満傾向
血圧・血糖値が高い
ストレスが多い
睡眠不足
運動不足
高齢者
更年期の女性
上記に該当する人は、全身に凝りを生じる病気のリスクが高いと考えられます。
全身の凝りを引き起こす2つの病気
自律神経失調症
慢性疲労症候群
病気① 自律神経失調症
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、心身にさまざまな不調をきたす病気です。
血流の低下・体の冷え・倦怠感を起こし、全身の凝りを感じるケースがあります。
全身の凝り以外に、
頭痛
便秘
のぼせ
動悸
イライラ
不安感
気分の落ち込み
などの症状があらわれることもあります。
自律神経失調症かも…対処法は?
つらいと感じる症状があるのであれば、病院で相談してみることをおすすめします。
身体的な症状が強く出ている場合は、「内科」で受診しましょう。
イライラ・不安感などの精神的な症状を伴う場合は、「心療内科」に相談してみることをおすすめします。
日常生活では、きちんと睡眠時間を確保し、食事からバランスよく栄養をとることを心がけましょう。
内科を探す
心療内科を探す
更年期は自律神経が乱れやすい
40代から50代の更年期の時期になると、女性ホルモンの分泌が低下し、自律神経が乱れやすくなります。
すると、全身の凝りを含む、自律神経失調症と似た症状があらわれることがあります。
病気➁ 慢性疲労症候群
慢性疲労症候群は、休んでも疲れが取れず、日常生活に支障をきたす状態が6ヶ月以上続く病気です。
血流の悪化により、全身が凝ったように感じる可能性があります。
全身の凝り以外にも、
倦怠感
集中力が低下する
不眠
頭痛
などの症状を伴います。
はっきりと原因が分かっておらず、検査をしても異常が見つからない場合に、慢性疲労症候群が疑われます。
慢性疲労症候群かも…対処法は?
慢性疲労症候群はセルフケアで改善することが難しいため、医療機関を受診しましょう。
放置すると抑うつ状態になることがあるため、早期の治療が大切です。
まずは、「内科」で受診することをおすすめします。
内科を探す
全身の凝りが「1週間以上続く」場合は病院へ
ストレッチや運動をしても全身の凝りが改善されない
全身の凝りが1週間程度続いている
という場合は、一度医療機関で受診しましょう。
治療せずに放置すると症状が悪化し、痛みが出てきたり、体を動かせなくなったりする恐れがあります。
病院は何科に行けばいい?
一度「内科」に相談して、検査を受けることをおすすめします。
全身の凝り以外に、精神的な不調やストレスが多い人は、「心療内科」で受診しましょう。
内科を探す
心療内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
季節性感情障害(夏季うつ)を治すためのセルフケア
- 毎日同じ時間に就寝・起床する
- 夜更かしをしない
- 栄養バランスのとれた食事をとる
- 疲れを感じたらゆっくり休む
- 深酒しない
- 適度に太陽光を浴びる(ただし、陽に当たりすぎるのはNG)
- 軽めの運動をする
季節性感情障害(夏季うつ)を改善するためには、生活習慣を整えることが何より大切です。
起床時間・就寝時間を一定にし、1日3食、毎日同じ時間に栄養バランスのとれた食事をとりましょう。
体のリズムを整えるには適度な運動も大切です。ストレッチやウォーキングなど、続けやすい運動を習慣にすることをおすすめします。
ただし、無理をすることはNGです。
「仕事・家事の合間に休息をとる」「十分な睡眠時間を確保する(6~8時間が目安)」など、疲労を溜め込まないようにしましょう。
病院に行く目安は?
- 「気分がすぐれない」状態が、何週間も続いている
- 気分が落ち込んで、何も楽しいと感じるものがない
などに気がついたら一度、病院に相談してみましょう。
放置していると、気分障害が悪化して、「何もできなくなってしまう」「仕事へ行けない」などの状態になり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
また、楽しみを感じなくなり、生きていることがつらくなってしまう心境に陥る場合もあります。
季節性感情障害は、季節が変わると回復することが多いですが、また同じ季節が来ると再発してしまうケースが多いです。症状に心当たりがある場合は、早めに対策することをおすすめします。
病院は何科?
病院は「精神科」または「心療内科」を受診しましょう。
迷う場合は、以下の基準を参考にしてください。
「死にたくなる」など、精神的な症状が強い → 「精神科」
「頭痛・下痢」など、体の不調を伴う → 「心療内科」
※両方の診療を行っている医院・クリニックもあります。
どんな治療をするの?
うつ病の治療には薬を使った治療が有効です。症状によっては、カウンセリングなどにより改善するケースもあります。
信頼できる医師の指示や指導を受け、カウンセリングなどが有効な場合は、受けるようにしましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2022-09-29
うつ病の治療って、どれくらい病院に行けばいいの?
やめどきはある?
「うつ病の通院頻度」について、お医者さんに聞きました。
自己判断で勝手に通院・薬をやめることの危険性や、転院する場合の注意点も解説します。
うつ病の通院頻度は?
個人の症状に応じて通院頻度は違いますが、
「早期」に発見した場合は、1〜2ヶ月に1度
「中等度」の場合は3〜4週間に1度
「重症」の場合は1週間に1度
のペースで受診するのが一般的です。
※上記はあくまでも目安です。主治医と相談をしながら進めていきます。
患者さんの希望に応じて、通院間隔の調整は可能です。
「通院するのが大変なので、受診回数を少なくしたい」「心配事が多いため、受診回数を増やしてほしい」などと相談することで、対応してくれる医療機関もあるでしょう。
基本的には、主治医の指示に従いましょう
通院頻度の希望を出すことは問題ありませんが、まずは主治医の指示に従うことが大切です。通院間隔・期間は、治療や症状に応じて決まっていくからです。
治療間隔を空けてしまうことで、
治療期間が長くなってしまう
症状がなかなか改善されない
症状が悪化してしまう
といったケースも考えられます。
病院はいつまで通うべき?
主治医が「通院しなくてもよい」と判断するまでは、通院を続けましょう。
個々の状況に応じてですが、うつ病の治療は数ヶ月から数年ほどかかるのが一般的です。
※上記の期間はあくまでも目安です。症状に応じて、これより長くなるケースもあります。
通院を終了する目安は?
下記のような症状の改善がみられ、日常生活を通常通り送れるようになってくると通院を終了するケースが多いです。
▼精神面
気分の浮き沈みがなくなる
不安感がなくなる
意欲的に行動ができるようになる
など
▼身体面
頭痛・消化器系の不快感の改善
睡眠がしっかり取れるようになる
など
上記とあわせて、薬の服用具合や受診の様子などを見て主治医が判断します。
勝手に通院をやめるのはNG!
勝手に通院をやめてしまうと、
症状をぶり返してしまう
症状が以前より悪化する
などのリスクがあります。
せっかくの治療が水の泡になってしまう可能性があるので、勝手に通院をやめないようにしてください。
うつ病の治療法
うつ病の治療には、
薬物療法
カウンセリング
などが行われます。
うつの症状によりますが、薬は「精神安定薬」「睡眠導入薬」「抗不安薬」などが処方されます。
カウンセリングでは、カウンセラーとの面談を定期的に行い、心の不安を取り除いていきます。
その他に、十分な休養をとり、環境を整えていくサポートも行います。
これらの治療により、精神面の症状(不安感・気分の浮き沈み・無関心など)、身体面の症状(不眠症・食欲不振など)が少しずつ改善していき、徐々に通常の生活を送れるようになっていきます。
薬を自己判断でやめるのは危険!
自分で症状が落ち着いたと感じても、医師の指示があるまでは、きちんと薬の服用を続けましょう。
薬はうつ病の改善のために処方されているので、主治医と症状を確認しながら進めていくことが大切です。
「薬をやめたい」「減らしたい」場合は、主治医にその旨を伝えてみるとよいでしょう。
勝手にやめずに、必ず主治医に相談してください。
うつ病の治療は保険適用になる?
通常、うつ病の治療は保険適用になります。
ただし、医療機関によって対応が異なる可能性があるため、一度相談してみましょう。
転院してもいいの?
うつ病はその場ですぐ治るものではないので、同じ医療機関で継続的に治療を受けることが基本です。
しかし、「ご本人がその医療機関と合わない」「症状がなかなか改善されない」といった場合は、転院が検討されることもあります。
勝手に転院してしまうことはおすすめしません。
ゼロから治療を受けることになったり、前の病院で合わなかった治療をもう一度行ったりしてしまうこともあります。
転院を希望する場合は、通院している病院で紹介状を書いてもらうことをおすすめします。
紹介状を書いてもらうことのメリット
紹介状には、「今までの症状」「治療内容」が記載してあります。
そのため、新しい医療機関に行った際に、いくつかの受診工程を省略でき、すぐに治療に入れる場合があります。
強いてデメリットを挙げるとすれば、紹介状を書いてもらうことにはお金がかかるということです。
紹介状の費用は、保険適用で3割負担の場合750円です。自立支援医療制度を利用している場合は、1割負担で250円となります。
精神科を探す
心療内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
大塚製薬|うつ病とは - 原因、症状、治療方法などの解説