アルコールを飲まないと落ち着かない…
「イライラする原因はなんだろう?」
「もしかしてアルコール依存症?」
アルコール依存症について、お医者さんに聞きました。
病気の深刻な問題点や治療法についても解説します。
監修者
経歴
2010年名古屋大学医学部卒。2018年同大学院博士課程修了。医学博士。
名古屋大学医学部付属病院精神科などを経て、現在は複数の企業と契約し、労働者の総合的な健康状態の向上を目指して、助言や指導、研修や衛生講話を通じた安全衛生教育などといった産業保健活動に取り組んでいる。
また、総合病院心療内科にも勤務し、がん患者の終末期医療も担当している。その他、Webマガジン「現代ビジネス」で、メンタルヘルスを主なテーマに、記事の執筆・監修を行っている。
初期症状は「イライラ」「落ち着かない」
お酒の飲み方を自分でコントロールできなくなった状態を、アルコール依存症といいます。
初期には、お酒を飲んでいない時間にイライラし、落ち着かなくなることが増えるといった症状が出ます。
アルコール依存症は、誰にでもおきる可能性がある症状です。
さらに症状が進むと…「離脱症状」を発症
離脱症状とは、アルコールが体内から抜けた時に起きる症状です。禁断症状と呼ばれることもあります。
離脱症状の例
- お酒を飲んでいないと手が震えてくる
- お酒を飲んでいないと眠れなくなる
- 寝汗
- 吐き気
- 幻覚(虫が見えるなど)
お酒を飲むと、これらの離脱症状は一時的になくなり、落ち着きます。
しかし、再びお酒が切れると、離脱症状の程度がいっそうひどくなるのです。
飲酒量が増えると「精神的・身体的症状」が出現
ひどくなった離脱症状を落ち着かせるために、さらに必要なお酒の量が増えていく…という悪循環に陥ります。飲酒量が増えると、次のような精神的・身体的症状が現れます。
- 不安感
- イライラ
- 集中力低下
- 動悸(どうき)
- 息切れ
- 血圧の上昇
など
さらに大量飲酒の習慣を続けると脳の萎縮も現れます。
アルコール依存症を「自分でやめるのが難しい」理由
アルコール依存症は、本人の意思とは無関係に、脳の中にアルコールを欲してしまう回路ができてしまった結果、生じていると考えられています。
そのため、アルコール依存症を発症すると、「お酒を飲むのはいけない」とわかっていても、「1杯くらいなら」「今日だけは」などと、アルコール摂取への欲求を抑えられず、つい飲んでしまうのです。
一度依存症を発症してしまうと、アルコールをやめることが難しく、依存症の症状が落ち着いても、再発しやすいのです。
アルコール依存症が呼び寄せる「深刻な事態」
アルコール依存症は、日常生活へも大きな影響を与えます。
仕事上では、遅刻や欠勤、集中力低下によるトラブルなどが生じ、家庭生活でもトラブルが多くなります。
別居・離婚・育児放棄に至るケースもあります。
また、お酒を飲んでいないと精神的に安定せず、イライラしてしまうため、周囲の人に当たる、手を上げるなど、犯罪につながることもあるのです。
治療には「周りの協力」が大切
治療に入る前の段階で、アルコール依存症を自覚している人はほとんどいません。
本人がアルコール依存症の可能性に気づいていても、問題意識が低い場合が多いです。
治療を始めるにあたっては、患者自身にアルコール依存症を認識させる必要があります。
そのためにも、家族や周囲の協力がとても重要になります。
アルコール依存症は、どう治療するの?
アルコール依存症の治療は、断酒が基本です。
断酒の際に、離脱症状が生じることもあるので、抗不安薬や睡眠薬が必要になる場合があります。
また、次のような合併症があるときは、内科的治療も並行して行う必要があります。
- 低栄養状態
- 体内の電解質バランスの異常
- 膵炎(すいえん)・肝硬変などの身体合併症
また、断酒を継続し、依存症と向き合っていくために、医療機関外部の援助・自助グループに参加するのも有効です。
自助グループには、アルコール依存症の人たちが集まります。
アルコールによる失敗や、治療のつらさ、治療における成功体験などを話し合い、共感し合うことで、お互いを支え合います。
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2023-01-30
膵炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
膵炎の主な症状も紹介するので、「膵炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしてみてください。
膵炎とは
膵炎とは、膵臓の消化液が漏れて、臓器を傷つけてしまう病気です。
この膵炎は「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分かれます。
「急性膵炎」とは、消化酵素によって膵臓自体がダメージを受けて、炎症が起こっている状態です。
「慢性膵炎」とは、食べ物を消化するための膵液が、長期間に渡って膵臓自身を溶かしてしまう病気です。
「急性膵炎」と「慢性膵炎」それぞれの症状
急性膵炎
▼軽度~中等度の症状
みぞおち周辺から左上腹部の痛み
背中の痛み
吐き気、おう吐(吐いても症状が改善しない)
発熱(37度~38度程度が多い)
食欲不振
腹部膨満感
▼重度の症状
血圧低下
皮膚が黄色っぽくなる
呼吸困難
精神が錯乱してしまうほどの激しい痛み
失神
慢性膵炎
腹痛を5〜10年ほど繰り返す
急にお腹や背中が痛くなることがある
下痢や便秘の症状がある
みぞおちを押すと痛い
だるい
食欲不振
吐き気、嘔吐
お腹の張り(膨満感)
体重減少(※)
※人によって異なりますが、6か月で5%以上を病的な体重減少とすることが多いです。
膵炎の原因
膵炎の原因には、「お酒の飲み過ぎ」「胆石が胆管で詰まる」などが挙げられます。
ただし、はっきりと原因が分からないケースもあります。
膵炎になりやすい人
お酒をよく飲む
タバコを吸う
暴飲暴食している
脂肪分を多く含む食品のとり過ぎ
就寝直前に食事をとることが多い
刺激が強い飲食物を好む
急性膵炎を疑う場合はすぐ病院へ
膵炎が疑われる場合は、「内科」で受診することをおすすめします。
急性膵炎を発症すると、命に関わるケースもあります。
特に毎日飲酒している方は、腰・背中あたり痛みを感じたら早めに受診しましょう。
内科を探す
慢性膵炎も放置はNG
慢性膵炎は症状が進行すると、インスリンの分泌量が低下し、糖尿病を発症する恐れがあります。
また、症状が悪化すると、膵臓ガンを発症する恐れもあるため、早めに受診してください。
膵炎の検査・治療法
医療機関では、必要に応じて血液検査、内視鏡、エコーなどを行います。
そこまで痛い検査はありません。
膵炎の治療は、
鎮痛剤の投与
輸血
絶食
などをおこなって症状の改善を図ります。
安定するまで集中治療の管理が行われるため、入院が必要になるケースが多いです。
病院は何科?
依存症を専門としている精神科や心療内科で治療を行います。
心療内科を探す
アルコール依存症の予防のためにできること
アルコール依存症を予防するには、習慣的な飲酒をやめ、飲む日よりも飲まない日を増やす“機会飲酒”を心がける必要があります。
お酒を適度に楽しむ分にはいいですが、飲み過ぎていいことはありません。
自分の体はもちろん、周囲との人間関係もボロボロになる恐れがあります。
やむを得ず習慣的な飲酒をする場合でも、純アルコールは1日平均で20g程度の摂取(※ビール500ml、もしくは日本酒1合程度)に止めるといいでしょう。
お酒に弱い人、女性、高齢者など、場合によっては、より少量の摂取が適当な場合もあります。(最近では、少量のアルコール摂取でさえ身体に悪影響を及ぼす可能性がある、という報告もあります。)
お酒が好きな人は「自分は酔わない」と思い、飲みすぎてしまう傾向があるので注意が必要です。ついついお酒を飲み過ぎてしまう人は、周囲の人から「飲み過ぎ」、「酔っている」などと注意されたら耳を傾け、自分の飲酒習慣を振り返ってみましょう。
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2020-05-21
初めて心療内科に行くけど…実際には何を話すの?
心療内科で初診を受ける際の流れについて、お医者さんに聞きました。
当日準備していくことをはじめ、初診でかかる料金、診断書はもらえるのかどうかも解説します。
心療内科の初診の流れ
初めてで緊張する方もいらっしゃるかと思いますが、基本は一般の内科などと変わりません。
問診→診察という通常の病院受診と同じ流れで行われます。
<治療開始までの流れ(一例)>
電話やウェブで予約
来院、問診表を書く
診察を受ける
必要であれば検査
治療の開始
心療内科の予約のしかた
電話予約が一般的かと思われますが、最近ではウェブ予約ができるところも増えてきています。
時間がなくて電話ができない、電話が苦手という方でも予約することができます。初診は日時が決まっているところが多いため、調べてから行くのがよいでしょう。
心療内科を探す
受診前に準備しておいたほうがいいことはある?
次のことが伝えられるように準備しておくと良いでしょう。
今、何に困っているのか
受診に至った経緯
いつから困っているのか
どのようなときに、どのような症状がでるか
思い当たるストレス要因 等
初診で聞かれること
(症状や状態にもよりますが)ストレス要因に関連するような質問をされる可能性があります。
例えば、家族との関係や本人の職業・仕事内容、交友関係や休日の過ごし方、趣味などの話です。あくまで関連のある事柄に対してなので、あまり言いたくないことは言わなくても大丈夫です。
いずれにしても専門家がお話を聞くので、安心して相談してみてください。秘密は守られます。
初診で持っていくもの
心療内科の初診には、次のものを持参すると良いでしょう。
保険証
お薬手帳(あれば)
現状「困っていること」や「医師に相談したいこと」を受診の経緯をスムーズに話せるようにメモを持っていくのもよいでしょう。
初診の費用目安
自己負担3割の方で、初診時は約2,500円~3,000円、2回目以降は1,500円程度です。
薬を処方された場合、診察とは別に薬代が5000円前後かかります。
検査を行った場合には別途1,000~3,000円かかりますが、検査の種類にもよります。
こんなときは、悩まず心療内科に相談してください
「ストレスで胃が痛い」「悩み事があり夜眠れず、不眠気味だ」「ストレスが多く髪が抜ける」「イライラが収まらない」などの症状がある場合は、早めに専門医に相談してみましょう。
心配事や悩み事、ストレスがあり、気持ちや情緒が不安定で「いつもと違う」と感じられているのであれば、受診することをお勧めします。
辛い、苦しい、不安な状態を長く我慢してしまうと、症状がより重いものになる可能性もあります。
早期受診のメリット
早期に治療を始めることで、治療期間が短く済む、正常な状態に戻るのも早くなる、通院の回数や医療費も安く済むというメリットがあります。
ストレスが要因の病気は特に、放置し続けることで症状が悪化してしまうケースが多く、うつ病もそのうちの一つです。
何よりも、軽い症状のうちに治療を受けた方が心身の負担もあまりかからずに済みます。
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はじめての心療内科「よくある質問」
「診断書はもらえるの?」「心療内科に行ってはいけないと言われるのはなぜ?」
心療内科に関するよくある質問にお答えします。
質問1.診断書が欲しいのですが…
休職等の申請に診断書が必要な場合、すぐにもらえるものなのでしょうか?
診断書は本来診断がついて初めて発行されるものです。しかし診断書は医師に申し出れば、比較的速やかに発行されるところも多いです。
休職や職場に提出が必要な書類として、すぐに必要な場面が多いためです。病院によっては別に窓口が設けられている場合もあるため、受診の際に確認すると良いでしょう。
質問2.よく「心療内科に行ってはいけない」と言われるけど…
「行ってはいけない」「行ったら最後」と言われているのは、なぜなのでしょうか?
「行ったら最後」ということはありません。
そう言われるのは、精神科や心療内科のお薬を服用すると、患者さん自身の判断で勝手にやめることができず、飲み続けなければならないことが要因となっている可能性があります。
もしくは、薬の副作用が強くて日常生活により支障が出るなどという想像での発言かもしれません。
また、精神科・心療内科に行って診断を受けた時に、自分が精神病患者なのだと認めてしまうのが怖いと思ったり、周りの目を不安に感じる方もいらっしゃいます。
精神科や心療内科は、重い精神疾患を持つ人が行く場所というネガティブなイメージが少なからずあるというのが背景にあるようです。
つらい時は我慢せずに病院に行った方が良いのでしょうか?
ネット上でも多くの情報が錯綜していますが、自分の体の声を聞き、本当に辛い、苦しいと感じていて、日常生活に支障が出ているのであれば、相談だけでもいいので受診してみてください。
実際に、精神的な症状や心身症が現れているにも関わらず、受診を躊躇している方が多くいらっしゃいます。
しかし、自己判断で市販の漢方薬などの薬を飲み続けていたとしても、根本的な治療にはなりません。その点、専門の医師に相談することで、症状の要因をふまえた治療を受けることができます。
一人で抱え込まずにまずは相談してみましょう。
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参考URL
・心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやすく解説!/ひだまりこころクリニック栄院
https://hidamarikokoro.jp/sakae/blog/心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやす/
・精神科・心療内科の診察料金 | こころみ医学
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/other/psychiatry/cost/
・診察にはどれくらいの費用がかかりますか? | 心療内科・精神科
https://namba-minato.com/faq/faq09/
・心療内科に行くべきかどうか迷う。受診すべき兆候とは?/神楽坂こころのクリニック
https://www.kagurazaka-mc.com/colum/psychosomatic-medicine/