「食後に頭痛がする…」
「これは血糖値が原因?」
糖質の多い食事をとると、“血糖値スパイク”によって頭痛を引き起こす場合があります。
繰り返すことで「心筋梗塞」を招くリスクもあるため、放置は禁物です。
改善のための食生活・病院に行く目安をチェックしましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
血糖値が上がると頭痛が起きるしくみ
最近食後に頭痛があります。しばらくすると収まるのですが、これは何でしょうか?
食後の頭痛は、血糖値スパイクが原因となっているケースが多いです。
この症状は、
- 1日の食事が2回 (特に朝食を抜いている人)
- ドカ食い(1回の食事量が多過ぎる)
- 早食い
- 暴飲暴食
といった食べ方で起こりやすいです。
血糖値スパイクとは、食事による血糖値に急上昇によって「インスリン」が大量に分泌され、低血糖状態に陥る症状です。
低血糖になると、多量のアドレナリンが分泌されて血管が収縮し、めまいを伴う頭痛・激しい頭痛が生じることがあります。
また、上記の食べ方以外にも、運動不足・喫煙・睡眠不足・ストレス過多などが原因となって血糖値スパイクを招いてしまう人もいます。
合わせて読みたい
2022-05-30
「血糖値スパイクの自覚症状ってあるの?」
血糖値スパイクで現れる症状には、眠気・だるさなどがあります。
動脈硬化によって突然死につながるリスクもあるため、放置は危険です。
血糖値を急上昇させない食事を解説しますので、病気を防ぎたい方は要チェックです。
「眠気」と「だるさ」は、血糖値スパイクの自覚症状かも
血糖値スパイクの「自覚症状」
眠気
だるさ
頭痛
吐き気
気絶
※いずれも食後に起こる症状
血糖値スパイクとは、糖質の過剰摂取によって、血糖値が乱高下する状態を指します。
上記の自覚症状は、インスリンの大量分泌で「低血糖状態」になると起こります。
血糖値スパイクの場合、食後数時間経つと正常な状態に戻るため、健康診断で発見されにくい点も特徴です。
こんな食習慣の人は要注意!
食事の回数が少ない
食事を摂る時間がいつも違う
食後におやつをたくさん食べている
糖質の多いものを一気に食べている
自覚症状がある方で、これらの食生活に心当たりがある場合は、血糖値スパイクが疑われます。
痩せ型の人でも、血糖値スパイクは起こるの?
血糖値スパイクは、痩せ型の人にも起こります。
痩せていて筋肉量も少ないと、糖質をエネルギーに変える能力が低くなり、早食い・大食いなどで血糖値が急上昇しやすくなります。
血糖値スパイクの放置は、「突然死」を招く恐れも…
血糖値スパイクを繰り返すと、次第に血管が傷ついて「動脈硬化」を引き起こします。
これにより心筋梗塞・脳梗塞を発症してしまうと、突然死につながる恐れがあります。
また、血糖値の急上昇は、インスリンの分泌機能にも悪影響を及ぼしやすいです。
インスリンの作用が低下して血糖値が下がらなくなり、糖尿病を発症する人もいます。
血糖値スパイクは「繰り返さない」ことが大切!
血糖値スパイクの予防法
同じ食事量で食事回数を増やす
毎日同じ時間に食事をとる
食物繊維をたくさん食べる
ゆっくり噛んで食べる
健康への悪影響を防ぐためには、血糖値スパイクを繰り返さないことが大切です。
上記の食生活を意識して、血糖値の急上昇を予防しましょう。
その① 食事回数を5回に増やそう
朝昼夜の3食にプラスして、補食として2食を追加した5食を食べるペースだと、血糖値の上昇が安定しやすくなります。
ただし、食事量を増やしてしまうと意味がないので、1日の食事量はそのままに食べる回数を増やしましょう。
食事の間隔を開けすぎず食べることもポイントです。
その② 毎日同じ時間に食事をとる
毎日決まった時間に食事をとる習慣をつけましょう。
食事の回数・タイミングをできるだけ毎日同じリズムで行うと、血糖値が安定しやすくなります。
その③ 食物繊維をたくさん食べよう
野菜
海藻
きのこ
など、「食物繊維」を豊富に含んだ食品を意識して食べるようにしましょう。
食物繊維を多く含んだ食品は、血糖値の上昇がゆるやかです。
また、次の食事のあとの血糖値も上がりにくくなる「セカンドミール効果」も期待できます。
「食物繊維を最初に」食べるのがおすすめ
糖質の少ないものから食べるようにするだけでも、血糖値が上がりにくくなります。
最初に食物繊維が多い副菜を食べ、糖質を多く含むご飯などの主食を最後に食べましょう。
その④ ゆっくり噛んで食べよう
噛みごたえのある食べ物を選び、ゆっくり食べるクセをつけましょう。
丼もの・麺類などの「早く食べやすいもの」は避けるようにしてください。
よく噛んでゆっくり食べないと、消化・吸収が速くなり、血糖値が上がりやすくなります。
特にやわらかい食べ物は早食いになりがちなので、注意しましょう。
▼参考
「食品成分表八訂対応 改訂版栄養学の〇と×」古畑公、木村康一、岡村博貴、望月理恵子 和光堂出版
「たかが頭痛」と放置してはいけない理由
血糖値スパイクが繰り返されると、次第に血管が傷ついていき、動脈硬化を発症しやすくなります。
さらに進行すると、「脳卒中」・「心筋梗塞」などの命に関わる病気を招く恐れがあります。
食後に血糖値が急上昇しても、多くの場合は自覚症状が出現しません。
動脈硬化は、体の異変に気付かないまま進行するケースが多いので注意が必要です。
また、血糖値スパイクは食後から数時間後には正常値に戻るため、通常の健康診断で行われる血液検査では発見が難しいと考えられています。
食後の頭痛があるときは、普段の食生活をきちんと見直すようにしましょう。
食後の頭痛(血糖値スパイク)を予防するには?
食後の頭痛を予防するには、糖質の吸収・消費をコントロールすることが大切です。
普段の生活では、
- 副菜→主菜→主食の順で食べる
- よく噛んでゆっくりと食べる
- 朝・昼・晩の3食食べる(欠食しない)
- 食後30分程度経ったら、体を動かす
といった点を心がけるようにしましょう。
対処法① 副菜→主菜→主食の順で食べよう
①副菜(食物繊維)
|
野菜/きのこ/海藻 など
|
②主菜(タンパク質・脂質)
|
お肉/魚 など
|
③主食(炭水化物)
|
ご飯/麺/パン など
|
食事は、「副菜→主菜→主食」の順で食べましょう。
最初に「食物繊維」を食べることで、食事による血糖値の上昇スピードを遅らせることができます。
また、炭水化物を取る前に「タンパク質」や「脂質」をとることで、グルカゴンというホルモンの分泌を抑制し、胃の動きを緩やかになります。
「炭水化物」の選び方も大切!
主食を選ぶ際には、
にするといった工夫で、血糖コントロールに有効とされる「食物繊維」や「ミネラル」を摂ることができます。
特に「食物繊維」を多く含む食品は、満腹感を得やすいものが多いため、食べ過ぎ予防にもつながるでしょう。
対処法② よく噛んでゆっくりと食べよう
1口食べたら30回以上噛むようにして、ゆっくりと食事をすると、インスリンが少量ずつ分泌されて血糖値の急激な上昇を防げます。
対処法③ 欠食はやめよう
朝・昼・夜で1日3食、栄養バランスのよいものを規則正しく食べましょう。
欠食すると空腹になり、一度にたくさんの量を食べてしまいがちです。
ドカ食いは血糖値が急上昇して、血糖値スパイクを起こしやすくなるため注意しましょう。
対処法④ 食後30分程度経ったら、体を動かそう
おすすめの「有酸素運動」
- ウォーキング
- ヨガ
- ストレッチ
- サイクリング
- 水泳
- ジョギング
食度30分程度経ったら、「有酸素運動」を行うのがおすすめです。
1日20~60分・週150分以上を目安に行いましょう。
運動によりブドウ糖がすみやかに消費され、インスリン分泌に頼らずに血糖値を下げられます。
また、運動習慣がつくと、インスリンの効きがよい体質になり、血糖値が上がりにくくなる場合があると考えられています。
食後の頭痛が続いているときは、医師に相談を!
食後の激しい頭痛・めまいを伴う頭痛が続いている場合は、一度病院で相談しましょう。
血糖値スパイクを放置すると、動脈硬化によって「心筋梗塞」・「脳卒中」などを招く恐れがあります。
こんな症状は「糖尿病」の疑いも!
「糖尿病」が疑われる症状
- 喉が渇きやすい
- 頻尿
- 疲れやすい(倦怠感が強い)
- 手足のしびれや冷え
- 動悸
- 体のこわばり
食後の頭痛に加えて、上記の症状を感じているときは、早急に病院で診てもらうようにしましょう。
食後の頭痛は、糖尿病による「高血糖状態」で起こるケースもあります。
糖尿病が悪化すると、失明・腎不全などの合併症を招く恐れがあるため、放置は禁物です。
病院は何科で受診すべき?
食後の頭痛が続くときは、まず「内科」で相談するとよいでしょう。
受診時に伝えるポイント
- 症状が出始めた時期
- 出現している症状について
- 生活習慣について(食事内容等)
- 思い当たる原因について
- 既往歴について
等を医師に伝えると診察がスムーズに進むと考えられます。
内科を探す
合わせて読みたい
2021-07-12
「食後の眠気がひどい…」
食べ過ぎや早食いに心当たりがある場合は、血糖値スパイクが疑われます。
また、糖尿病が隠れているケースもあるため、要注意です。
病院に行く目安や、受診すべき診療科も解説します。
なぜ?食後の眠気がひどい…
食後のひどい眠気は、血糖値スパイクという現象が起こっている可能性が高いです。
「血糖値スパイク」とは、血糖値の急激な上昇と下降を指します。
人の体は、食事を摂ると血液中のブドウ糖が増えて血糖値が上昇しますが、膵臓から出るホルモンである「インスリン」の働きによって血糖値が下がります。
しかし、なんらかの原因で食後に血糖値が急激に上がると、膵臓から大量のインスリンが分泌され、その反動で血糖値が急激に下がります。
急激に血糖値が下がると低血糖状態になるため、食後の強い眠気が引き起こされます。
また、血糖値の急激な上下による体の疲労も、眠気の原因の一つです。
「インスリン」の働きって?
インスリンには、食事から摂ったブドウ糖を体に取り込み、エネルギーに変える作用があります。
余ったブドウ糖は筋肉や肝臓に取り込まれて、“グリコーゲン”というエネルギー代謝に必要な物質に変化します。
「血糖値スパイク」が起こる2つの原因
原因① 食べ過ぎ・早食い
食べ過ぎや早食いは、血糖値を急激に上げてしまう原因となります。
急激に血糖値を上げてしまうと、血糖値を下げようとインスリンが大量に分泌され、血糖値が急激に下降して血糖値スパイクが起きます。
原因② ストレス・睡眠不足
ストレスや睡眠不足は、“血糖値を上げるホルモン”が分泌される原因となります。
これにより血糖値を急激に上昇しやすくなるため、血糖値スパイクが起こります。
先生教えて!食後の眠気予防「3つの対策」
食後の眠気を抑えるには、
バランス良い食事(糖質の多い食事は避ける)
食べる順番を考える
1日3食を心がける
といった対策をおすすめします。
対策① バランスの良い食事をとる
血糖値の急激な上昇を抑えるために、糖質に偏らないバランス良い食事を心がけましょう。
主食(ごはん、麺、パン類など)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)、副菜(野菜)を組み合わせたメニューをおすすめします。
糖質の多い主食だけに偏らずバランスをよく食べましょう。
対策② 食べる順番を考える
野菜、タンパク質
糖質
の順番で食べ進めてください。
食べる順番を考えて食事することで、血糖値の急激な上昇を防げます。
食べ始めは、血糖値の上昇がゆるやかな野菜・タンパク質を摂るようにします。
特に食物繊維は血糖値の上昇を抑えてくれるため、積極的に食べましょう。
ごはん・麺・パン類は糖質が高いため、一番初めに食べると血糖値が一気に上昇してしまいます。
対策③ 1日3食を心がける
欠食せずに、1日3食食べましょう。
欠食をして次の食事までの時間が空くと、血糖値が急激に上昇しやすくなります。
また、可能な限り毎日同じ時間に食事を摂ってください。
時間がなくて食べられない場合は、バナナや味噌汁だけでも口にするようにしましょう。
注意!その眠気…「糖尿病のサイン」かも
糖尿病を発症すると、血糖値のコントロールが難しくなり、血糖値スパイクのように食後の強い眠気が起こります。
これは、血糖値が慢性的に高くなっていることが原因です。
糖尿病リスクが高いのは「こんな人」
肥満傾向
運動不足
身内に糖尿病の患者がいる
食生活が乱れている
などに当てはまる人は、糖尿病の発症リスクが上昇します。
※なお、上記は2型糖尿病(生活習慣による糖尿病)になりやすい人の傾向です。
1型糖尿病の原因はよくわかっておらず、自己免疫の異常が関わっていると言われています。
こんな症状があるときは、病院で相談を
疲れやすい
喉が渇き、水分をよく飲む
頻尿
食べているのに体重が減る
傷が治りにくい
目がかすむ
男性の場合、性機能の異常(ED)
食後の眠気に加え、上記の症状に当てはまる場合は、糖尿病の疑いが強くなります。
症状を悪化させないよう、すみやかに医療機関で相談しましょう。
糖尿病かも…と思ったら。病院は何科?
糖尿病を疑う場合は、まず内科を受診しましょう。
糖尿病は合併症には、神経障害・網膜症・腎障害などがあり、悪化すると失明や足の切断を招いてしまう恐れもあります。
また、動脈硬化による心臓病、脳卒中のリスクも上昇するため、早めの治療が大切です。
どんな「検査」を受けるの?
採血を行い、血液中のブドウ糖の値やHbA1c(過去の1〜2ヶ月の血糖値の平均)調べます。
また、血液中の糖が出ていないか、尿の検査を行います。
より詳しく調べる場合は、75g経口ブドウ糖負荷試験をします。
空腹の状態で血糖値を測り、その後75gのブドウ糖を摂取して、30分後、1時間後、2時間後の血糖値の変動を確認する検査をします。
どんな「治療」を受けるの?
糖尿病の治療方法には、
食事療法
運動療法
薬の処方
インスリン注射
などがあります。
「食事療法」では、血糖値をコントロールするための食事方法を指導します。
「運動療法」では、毎日の適度な運動によって、血糖値を正常に保つことを図ります。
食事、運動だけで改善できない場合は、薬の処方やインスリンを補う注射で治療していきます。
内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
糖尿病ネットワーク