やけどのヒリヒリが収まらない…。
冷やさないと痛い…。
やけどの痛みが収まらないときの対処法について、お医者さんに聞いてみました。
やけどの重症度別に対処法を紹介するので、なるべく早く痛みを落ち着かせたい人は必読です。
監修者
経歴
2010年 東京医科歯科大学卒業
その後、皮膚科医として大学病院、一般病院、クリニックで勤務。2022年7月よりCROの安全性情報センターのMDとして勤務。
やけどをした!冷やさないと痛い…どうすればいい?
やけどをしてしまいました…。冷やさないと痛みます。他に痛みを抑える方法はありますか?
ごく軽度のやけど(※)であれば、流水で冷やした後に、
- ワセリンを塗る
- 清潔なガーゼで患部をゆるく覆う
- 鎮痛剤を使う
などの方法が有効です。
(※)皮膚の表面が赤く、やけどの範囲が狭いものを指します。
注意!強い痛みがある場合は病院へ
強い痛みがある場合は、中度~重度のやけどを起している可能性があります。
その他、「やけどの範囲が手のひらよりも広い」「水ぶくれができている」「患部が黒い」などに当てはまる場合は、やけどの症状が重いので、早急に医療機関を受診しましょう。
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ここからは、やけどの痛みを早く抑えるための基本的な対処について、詳しく解説していきます。
対処法① 流水で冷やす
水道水やシャワーで15分~30分程度冷やしましょう。
保冷材や氷で冷やすと凍傷のおそれがあるため流水がおすすめです。
指先や脚の小範囲であれば、1時間程度冷やすと痛みが落ち着きやすいです。
すぐに冷やすことで、「やけどの炎症を抑える」「痛みを緩和する」「やけどが皮膚の深部に拡大するのを防ぐ」効果があります。
痛いときは、冷やし続けてもいいの?
指先や脚の小範囲のやけどであれば、15~20℃の水道水で1時間程度冷やしても問題ないでしょう。
ただし広範囲のやけどの場合には、低体温の原因となるので30分以上冷やすときには注意しましょう。
患部以外を毛布などで保温しながら冷やすとよいです。
対処法② ワセリンなどの軟膏を塗る(ごく軽度のやけどの場合)
軽度のやけどであれば、ワセリンなどの軟膏をやさしく塗るとよいでしょう。
塗り薬をつけると、外部の刺激から表面を保護できるため、痛みを和らげることができます。
ただし、水ぶくれができている場合や、皮膚の色が黒や白に変色している場合は、ワセリンを塗らないでください。
自己判断でワセリン等を塗ると、治療に支障をきたすおそれがあります。早めに医療機関で治療を受けましょう。
対処法③ 清潔なガーゼで患部をゆるく覆う
上記の2点の対処法を実施後に痛みが落ち着いたら、患部を清潔なガーゼで保護しましょう。
きつく保護すると、ガーゼを取るときに皮膚まで剥がれるおそれがあるので、ゆるく覆うようにしてください。
外部刺激から患部を保護することで、痛みの悪化を防ぐ効果があります。
1日1回を目安にガーゼを交換してください。
対処法④ 市販の鎮痛剤を使用する
ロキソニン・バファリン等、市販の鎮痛剤を服用することで、やけどの痛みを抑えられます。
ただし、テープタイプは患部を傷つけるおそれがあるため、内服薬を使用しましょう。
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やけどが痛い。眠れないときは、どうすれば良い?
やけどの痛みへの対処法について、お医者さんに聞きました。
間違った方法でケアすると、逆に治りが遅くなってしまうこともあります。
正しい対処法を確認し、症状を緩和させましょう。
やけどが痛くて寝られない…!どう対処する?
15分から20分を目安に、流水で冷やしてください。
痛みが戻ってきたら、最大20分を目安に再度冷やしましょう。
強い痛みが続くときは、早めに皮膚科を受診しましょう。
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ロキソニンで痛みは抑えられる?
やけどが痛いとき、ロキソニンで痛みを抑えられますか?
ロキソニン、バファリンなどの市販の鎮痛剤でも、火傷の痛みを抑えられます。
テープタイプは患部を傷つけてしまうので、内服薬を使用しましょう。
塗り薬のメモAは、やけどの痛みを抑える局所麻酔の働きがあります。
これはNG!間違った4つの対処法
① 長時間、氷や凍ったアイスノン等で直接冷やす
凍傷を引き起こす恐れがあります。
② 自己判断での湿潤(ラップ)療法
細菌が増殖する恐れがあります。
細菌感染によって、発熱・腫れ・炎症・ただれを引き起こし、傷跡が残りやすくなります。
③ 消毒液を使う
傷を快方に向かわせる自己細胞にまでダメージを与え、治りが遅くなり、傷跡が残りやすくなります。
④ 水ぶくれをつぶす
水ふくれが破けてしまうと、皮膚内部が出てしまい細菌感染を起こしやすくなります。
やけどは皮膚科・形成外科での治療がオススメ!
冷やしても赤みが引かない・水ぶくれができたときは、皮膚科・形成外科を受診しましょう。正しい処置を受けることで、早く治り、傷跡も残りにくくなります。
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▼参考
公益社団法人日本皮膚科学会 やけど
やけどのヒリヒリはいつまで続く?
やけどの深さによって異なりますが、「ヒリヒリとした痛み」は、1~4週間続くと考えられます。
水ぶくれがない軽度の場合は、1週間程度で痛みが収まるでしょう。
水ぶくれができている場合、水ぶくれの下の皮膚(水疱底)の色で重症度が見分けられます。
水ぶくれの下の皮膚が赤い場合は1~2週間、下の皮膚が白っぽく変色している場合は3~4週間程度で痛みが引くと考えられます。
やけどが治るまでの経過
1. 患部が赤くなる
2. 水ぶくれができる(やけどが深い場合)
3. 水ぶくれがやぶれる(水ぶくれが大きい場合)
4. 水ぶくれの下の皮膚が乾いて上皮化する
5. 通常の皮膚に戻る(やけどの跡が残る場合もある)
どの程度のやけどだと、跡が残る?
跡が残らないことが多いやけど
- 水ぶくれができず、皮膚が赤くなっている
- 水ぶくれができていても、その下の皮膚が赤くなっている
跡が残りやすいやけど
皮膚は浅い部分から、角層→表皮→真皮→皮下組織の層で構成されています。
水ぶくれの下の皮膚が赤いやけどは、皮膚の浅い部分のやけどなので、跡が残らないことが多いです。
しかし、水ぶくれの下の皮膚が白いやけどの場合には、「真皮」の深い層、もしくは「皮下組織」に至るやけどなので、跡が残る場合があります。
水ぶくれが剥がれると、傷口が化膿して傷跡が残りやすくなります。
やけどをして水ぶくれができている場合は、できるだけ早く医療機関を受診して治療を受けましょう。
病院ではどんな治療が受けられる?
やけどの重症度に応じて、下記のような治療を受けられます。
やけどの重症度
|
治療内容
|
Ⅰ度熱傷
(表皮までのやけど)
|
炎症を抑える作用のある軟膏による治療
|
浅達性Ⅱ度熱傷
(真皮の浅い層までのやけど)
|
水ぶくれの処置・洗浄・軟膏治療
|
深達性Ⅱ度熱傷
(真皮の深い層までのやけど)
|
水ぶくれの処置・洗浄・軟膏治療・必要時は植皮術などの外科的治療
|
Ⅲ度熱傷
(皮下組織に至るやけど)
|
水ぶくれの処置・洗浄・軟膏処置・必要時は植皮術などの外科的治療・入院治療
|
その他
(二次的な感染が疑われる)
|
抗生剤の飲み薬・点滴による治療
|
病院で治療を受けることで、「傷の悪化を防ぐ」「二次的な感染を予防する」「傷跡が残りにくくなる」といった効果が期待できます。
やけどをしてなかなか痛みが引かない場合や、水ぶくれができている場合は、早めに病院で相談することをおすすめします。
病院は何科?
やけどは皮膚科で受診しましょう。
受診する際は、
- いつ、何によって、どこをやけどしたか
- やけどした後、何か応急処置をしたか
- 痛みはあるか
といった点を医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
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2020-03-26
「やけどして水ぶくれができた…」
「ひどい日焼けをしてしまった…」
やけどにおすすめの市販薬を薬剤師が解説します。
跡に残らないようにするには?
正しい処置ってどうやるの?
市販薬と処方薬の違いもご紹介しますので、参考にしてみてください。
やけどの薬は何がいい?
やけどには、塗り薬が適していると考えられます。
お薬の種類としては皮膚を保護するもの、炎症を抑えるもの、殺菌作用があるものなどで対応することが多いです。
オロナイン(※ただれ、かぶれのある部分への使用は避けましょう。)
ドルマイシン(※ひどいやけどへの使用は避けましょう。)
など
オロナインにはクロルヘキシジングルコン酸が配合されているため、やけど部位に対する消毒作用が期待されます。赤くなって、多少痛みがあるくらいの(水ぶくれにならない程度のやけど)軽度の症状には、皮膚の保護のためにも使用して良いでしょう。
処方薬に近い成分の市販薬
ベトネベートN軟膏AS(リンデロンVG軟膏)
クロマイP軟膏/テラマイシン軟膏a/など(ゲンタシン軟膏)
各社HPクリーム/アットノンシリーズなど(ヒルドイドソフト軟膏)
近いものではないですが、紫雲膏やキップパイロールHiなども、抗菌作用・抗炎症作用でやけどの改善につながるため、おすすめです。
類似品は製薬会社各社より販売されています。
医薬品の分類になるため、ドラッグストアでも登録販売者がいれば購入可能ですので、相談してみてください。
跡を残さないようにするには
やけどの跡にはアットノンなどのヘパリン類似物質含有の塗り薬を利用することで、皮膚の修復を早めて、跡が残りにくくなることが期待されます。
また、ハイドロコロイド絆創膏などを使用するのもおすすめです。
※これらを併用することで跡が残りにくくなるということはありません。どちらかの使用にしましょう。
「お薬を使わなくてもよい」2つのケース
口の中のやけど
水ぶくれがある
という場合は、基本的に治療薬を使いません。
口の中をやけどした場合
口の中のやけどは比較的修復が早く、治療薬は必要ないと考えられます。
やけどした際にはうがいをして様子を見ましょう
感染予防のためにうがい薬を使用しても大丈夫です。
痛みがある場合は、口内炎の薬も利用しても良いでしょう。
ケナログA口腔用軟膏
大正口内軟膏 等
水ぶくれができている場合
水疱がある場合は、薬は塗らずそのままにしておくことが推奨されます。
水ぶくれがやぶけないよう、ガーゼで覆うくらいの処置でもよいですが、むやみに触ると破けるので注意が必要です。
破いてしまうと創傷部より感染の危険性があると言われています。
水ぶくれになるくらいのやけどの場合は病院で診てもらうのが安心です。
やけどの処置方法
すぐに患部を流水で冷やし、その後氷水を入れたビニール袋や、冷たい濡れタオル、タオルを巻いたアイスノンなどで30分ほど冷やします。
炎症が強ければ、先の章でご紹介した抗炎症薬、感染の可能性があれば抗菌剤などを塗布して、皮膚を保護することが大事です。
やけどの処置方法は、最優先として患部の冷却が必要となります。
また、やけどの範囲もセルフケアで十分なのか、病院の受診が必要なのか判断しなければならないため、わからない場合は医師・薬剤師に相談してみると良いでしょう。
こんなやけどは病院の受診を!
水ぶくれができるくらいのやけどの場合は、皮膚科を受診しましょう。
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よくある質問「飲み薬やサプリは効果がある?」
ビタミンは皮膚の修復に利用されるため、服用しても問題ないのですが、費用に対して効果が十分に得られるとは考えにくいです。
皮膚の一部分に軽いやけどが生じている場合、飲み薬は必要ないと思われます。
よくある質問「市販薬と処方薬のはどう違うの?」
市販薬は、成分量が異なったりはしていますが、処方薬と同じような成分が見られます。
そのため、病院の開業時間外でドラッグストアなどしか開いていない場合は、薬剤師・登録販売者に相談することも可能だと考えます。
病院で処方してもらえる薬について
軽度の症状であれば、抗炎症目的とした「ベタメタゾン配合軟膏(リンデロンVG軟膏など)」を、感染のリスクがあれば抗菌剤の「ゲンタマイシン(ゲンタシン軟膏)」といったものが処方される場合が多いです。
前述したヘパリン類似物質で、組織の修復を目的として処方されることも考えられます。
上記薬剤は医師の判断により、成分が異なることもありますが、主作用としては同じようなものが処方されると考えられます。
▼参考
くすりと健康の情報局(第一三共)
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。