風邪のときに抗生物質を処方される理由や、抗生物質の副作用について、医師に詳しく伺いました。
「風邪に抗生物質は効く?効かない?」
「抗生物質の点滴と飲み薬、どう違うの?」
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
風邪に抗生物質は効く?効かない?
一般的な風邪の発症原因は、ウイルスによるもののため、細菌を撃退するために開発された抗生物質は風邪には効きません。
ウイルスと細菌には構造上に大きな違いがあり、増殖していくシステムも異なります。
例外として、ウイルスが原因で起きた細菌による二次感染の場合には抗生物質が使用されるケースがありますが、原則として風邪では抗生剤は不要です。
風邪なのに抗生物質を処方される理由
風邪による扁桃腺炎や肺炎など、細菌性の疾患を発症している場合のみ処方されます。
しかし、細菌性はごく稀です。
抗生物質の種類
フロモックス(セフェム系)
のどの痛みを起こしている細菌を殺菌することで症状の緩和が期待できます。
(腹痛、下痢)が生じる場合があるため、医師の指示に従って使用してください。
クラビット(ニューキノロン系・合成抗菌薬)
細菌増殖に必要な遺伝情報をもつDNAの生成を害して殺菌する薬です。
組織への移行性が高く、殺菌力もあるため、対象になる菌の種類が多いという特徴があります。
気管支炎、肺炎、副鼻腔炎、膀胱炎等の治療に用いられる場合があります。
細菌感染が原因で発症する病原性大腸菌O-157、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター菌等では、抗生物質の投与が行われるケースがあります。
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2023-01-30
副鼻腔炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
副鼻腔炎の主な症状も紹介するので、「副鼻腔炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしましょう。
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎とは、副鼻腔(鼻の奥にある空洞)や鼻の粘膜に、細菌やウイルスが侵入し、炎症が起こる病気です。
副鼻腔に膿が溜まったり、腫瘍が発生したりすることで、目の下の骨に痛みが生じることがあります。
副鼻腔炎の症状
鼻がつまる
黄色や緑色の鼻水(膿性鼻水)が出る
発熱する
痰がからむ咳が出る
ほほ、おでこに痛みが出る
頭が痛い
目が痛い
歯が痛い
副鼻腔炎の原因
副鼻腔炎にかかる原因としては、下記が挙げられます。
風邪
ハウスダスト
花粉
カビ
風邪以外の原因に関しては、それらが鼻から入って副鼻腔にまで侵入し、炎症を起こして鼻水が臭うこともあります。
副鼻腔炎になりやすい人
副鼻腔炎は、誰にでも発症する可能性のある病気ですが、次のような人は特に注意が必要です。
75歳以上の高齢者
糖尿病、慢性肺疾患、慢性腎疾患などにかかっている方
ウイルスや細菌感染による鼻症状を繰り返している方
過去一ヵ月に抗菌薬を使用した方
肥満傾向の方
喫煙習慣のある方
ぜんそくや気管支炎のある方
副鼻腔炎に使える市販薬は?
市販の鼻炎薬を使用することで、回復することもあります。
市販薬の例
アレルギー性副鼻炎の場合…
ナシビンメディ:佐藤製薬
アルガード鼻炎クールスプレーa:ロート製薬
風邪による副鼻炎の場合…
パブロン鼻炎アタックJL:大正製薬
アレルギーによる場合には、副鼻腔炎だけでなく鼻閉(鼻づまり)も併発している可能性があるため、点鼻薬がおすすめです。
また、最近では漢方薬による副鼻腔炎の治療薬も出始めています。
蓄膿症の漢方薬としても用いられている辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)がおすすめです。
こんな症状は早く病院へ
副鼻腔炎が悪化している場合、自然に治りにくいです。症状が2週間以上続いているときは、早めに受診しましょう。
副鼻腔炎が悪化すると、症状の慢性化や中耳炎を発症するリスクがあります。
中耳炎は聴力に悪影響を及ぼす恐れがあるため、注意したいものです。
さらに、重症化して髄膜炎(※)を引き起こすケースも稀にあります。放置しないようにしましょう。
※「髄膜炎」…頭蓋骨と脳の間にある「髄膜」という膜に、細菌・ウイルスなどが感染し、炎症を起こす病気。頭痛や嘔吐、錯乱などの症状が現われ、最悪の場合命に関わることもある。
病院は何科?
副鼻腔炎の症状は、耳鼻いんこう科で相談しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
副鼻腔炎の治療法
薬の処方、点鼻噴霧ステロイド、鼻洗浄を行います。
処方するお薬には、鼻の中の環境を整える「抗菌薬」、痰を出しやすくする「去痰薬」などがあります。
症状によっても異なりますが、2〜3ヶ月程度で治るケースが多いです。
なお、薬物療法で改善が見られない場合には、内視鏡での手術も検討されます。
飲み薬と点滴の違いは?
飲み薬
飲み薬は胃を通り、腸に送られながら徐々に溶けていき、小腸壁から血液中に吸収されて肝臓に送られ全身に運ばれます。
血液中に吸収されるまでに20分程度かかるため、薬の効き目が出るまでに多少時間を要します。
飲み薬の場合、多くの成分が小腸で吸収されるので、成分吸収率は点滴より少ないです。
患者自身が自分で薬を飲むことで治療ができるため、自宅治療の場合に行われるケースが多いです。
点滴
風邪の場合、抗生剤は使いません。
点滴(注射)をする場合は、水分、栄養が不足していてすぐに補充が必要な場合や重症の場合、緊急対応が必要な場合等に点滴治療が行われるケースが多いようです。
血管に直に薬を入れるため、そのまま吸収されるので、すぐに全身に薬が送られて、その効能を発揮することができます。
抗生剤を使う場合は、細菌感染の場合で、医師の判断で行います。
子どもや赤ちゃんも大人と同じ抗生物質が使える?
子どもや赤ちゃんも大人と同じ種類の抗生物質を使用する場合がありますが、使用量は大人とは異なります。(使用量は子どもの体重から換算する)
使用できない種類の抗生物質もあるので、医師の指示に従いましょう。
着色歯・アレルギー疾患を引き起こす可能性も
テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン)は、8歳未満の子どもが使用した場合、着色歯になる可能性があるので要注意です。
また、2歳未満の子どもの場合、将来的なアレルギー疾患を予防するために、抗生物質の使用は控える、または慎重に検討する必要があります。
溶連菌感染症、中耳炎、細菌性肺炎等は抗生物質が効きやすいと考えられています。
抗生物質の副作用
生理が遅れる?
何らかの薬の服用によって生理が遅れる場合もあるようですが、抗生物質の副作用が原因で起こるとは断言できません。
どちらかというと、薬を服用しなければいけない健康状態に問題がある場合が多いようです。
太る?
抗生物質の使用で太るとは断言できません。
服用したことで、体内(腸内)の常在菌の中で健康維持や体重維持に必要不可欠な有益な菌にまで影響を与えてしまった場合にあるかもしれませんが、医学的根拠は薄いと考えられます。
よく生じる副作用は下痢
抗生物質の副作用として出現しやすい症状が下痢です。
腸内細菌のバランスが壊れるために起こると考えられています。
(腸内で消化吸収を補助している細菌まで抗生物質が撃退してしまうため)
皮膚疾患
皮膚が赤く腫れる、湿疹が生じる等の症状が起こる場合があります。
ひどい湿疹、水膨れ、発熱等がみられる場合は服用を中止して医療機関を受診してください。
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胃腸障害
抗生物質の副作用として、吐き気、胃もたれ、むかつき等の症状が現れるケースは多いです。
胃酸の影響を強める、胃粘膜に害を与える等が起こるためと考えられています。
薬剤耐性菌を増加させる
風邪の原因はウイルスである場合が多いため、抗生物質は治療に役立つことはありません。
むしろ、不要に使用してしまうと、薬剤耐性菌(※)の増加を促す恐れがあります。
そのため各医療機関に向けて、風邪には抗生物質を使用しない方針にすることが厚生労働省からも推奨されています。
※薬剤耐性菌 …薬を投与しても、薬に対する抵抗力を持ってしまった菌のことで、薬の効果があらわれなくなります。
抗生物質は市販で手に入る?
抗生物質は、医師から処方箋を出してもらわなければ購入することはできません。医療機関を受診しましょう。
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2020-09-08
悪寒がするけど熱はない…これは大丈夫?
お医者さんに、熱がない場合の悪寒の原因を詳しく聞きました。
「これから熱が上がってくるの?」
「病院に行くべき?」
特に注意すべき症状を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
なぜ?熱はないのに悪寒がする原因
熱のない悪寒は、感染症の初期症状としてあらわれることが多いです。
感染症にかかると、ウイルスや細菌とたたかうために、体が免疫機能を高めようと体温を上昇させます。このとき、体温を上昇するために筋肉を震わせることで、悪寒が生じます。
悪寒の症状は、ウイルスや細菌による感染症のサインである可能性が高いのです。
様子を見ても大丈夫?病院に行くべき?
悪寒がある場合は、体を温めて安静にして様子をみましょう。
感染症が原因で悪寒が生じている場合、熱が上がりきったら、悪寒の症状はなくなります。
それまでは体を温めるようにしましょう。太い血管が集中している、首・手首・足首をカバーできる服装をしてください。体を温める飲み物を飲むのもよいでしょう。
ただし、吐き気・腹痛など他症状が現れた場合は、病院に行ってください。
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こんな症状がでてくるかも!
感染症によっては、悪寒以外に次のような症状があらわれます。
呼吸器感染症のケース
発熱、のどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、たん、せき、倦怠感、頭痛など
消化管感染症のケース
発熱、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、倦怠感など
尿路感染症のケース
発熱、腰痛、吐き気、嘔吐など
考えられる病気
ウイルスや細菌感染により、風邪、インフルエンザ、カンピロバクター感染症、腎盂腎炎などを発症している可能性があります。
病院は何科?
内科を受診しましょう。
特に高熱が出てきた場合は、早めに病院を受診してください。
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参考
MSDマニュアル家庭版 ウイルス感染症の概要
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/16-感染症/ウイルス感染症の概要/ウイルス感染症の概要
一般社団法人 日本女性心身医学会 女性の病気について
http://www.jspog.com/general/details_31.html
公益社団法人 日本産婦人科学会 更年期障害
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14
一般社団法人 日本臨床内科医会 わかりやすい病気のはなしシリーズ19 自律神経失調症
https://www.japha.jp/doc/byoki/019.pdf
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2020-12-02
体の節々が痛いし、微熱もある…。
風邪?もしかして他の病気?
お医者さんに、痛みと微熱の原因を聞きました。
病院に行くべきかどうかも解説します。
節々の痛みと微熱は風邪の前兆?
風邪をひくと、熱が上がる際に関節痛があらわれることがあります。
「風邪かな?」と思ったら、まずは安静にして様子を見ましょう。
ただし、慢性的な微熱と関節痛がある場合は、別の病気が隠れている可能性があります。
“風邪”以外で考えられる3つの病気
節々の痛みと微熱の症状がある場合、
慢性疲労症候群
関節リウマチ
全身性エリテマトーデス
などの可能性があります。
病気① 慢性疲労症候群
慢性疲労症候群とは、重度の疲労感が長期的に続く状態を指します。
身体診察や詳しい検査を行なっても、異常が認められないのが特徴です。
原因が精神的なものなのか、身体的なものなのか、未だ解明されていません。
発症しやすい人
慢性疲労症候群になりやすいのは、受け身な人だと言われています。
たとえば…
あらゆる物事や考えに従順
協調性が高い
周りをよく気にする
といった性格の方は発症しやすいと言えます。
主な症状
だるさ、倦怠感
微熱
関節痛
頭痛 など
自分でできる対処法は?
慢性疲労症候群かもしれないです。どうすれば…?
まずは一度病院を受診し、詳しい検査を受けましょう。
ほかの病気の可能性も考えられるため、ご自身で慢性疲労症候群と判断するのは危険です。
もし慢性疲労症候群と診断された場合には、ストレスを避けた生活が大切です。
バランス良い食事と適度な運動を意識し、生活にリズムをつけましょう。
受診するのは何科?
内科を受診しましょう。
内科を探す
病気② 関節リウマチ
関節リウマチは、全身の関節に複数の炎症が見られる病気です。
免疫機能の異常が原因と考えられています。
発症しやすい人
30歳〜50歳の女性に発症しやすいと言われています。
主な症状
だるさ、倦怠感
微熱
頭痛
関節の腫れ
関節痛
起床時に関節がこわばる
息切れや咳 など
自分でできる対処法は?
関節リウマチかも…まずは何をしたら良いでしょうか?
症状に心当たりのある場合は、病院に相談しましょう。
関節リウマチは薬物治療や手術、リハビリテーションが必要な病気です。
受診するのは何科?
整形外科、リウマチ科を受診しましょう。
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病気③ 全身性エリテマトーデス
免疫機能の異常により、全身(関節や皮膚、内臓など)に炎症が起こる病気です。
一人ひとりの症状に差があり、軽症だと病気の診断に結びつきづらい場合もあります。
発症しやすい人
20〜40代の女性が比較的発症しやすいと言われています。
発症の男女比は1:9となっており、女性に多い病気です。
主な症状
だるさ、倦怠感
頭痛
微熱
食欲不振
関節の腫れ
皮膚の発疹
口内炎
脱毛など
自分でできる対処法は?
この病気の場合、まずは何をしたら良いでしょうか?
他の病気も考えられるため、一度病院で検査を受けましょう。
なお、全身性エリテマトーデスの場合、症状を和らげるには病院での治療が必要になります。
受診するのは何科?
内科を受診しましょう。
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病院に行く目安
節々の痛みや微熱が7日以上続いている
倦怠感やむくみが引く気配がない
上記の場合は、慢性疲労症候群や免疫疾患が関係している可能性もあります。病院で一度検査をしましょう。
早期受診のメリット
重い病気が原因であった場合、早期受診すると悪化防ぎやすくなります。
初期段階であれば、入院や手術をせずに治療できる可能性が高まります。
症状にお困りの方は、放置せずに病院を受診しましょう。
▼参考
難病情報センター 全身性エリテマトーデス
(参考URL)
https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2018/09_01.html
抗生物質・抗菌薬の正しい使い方 厚生労働省
https://www.furukawa-med.or.jp/siminigaku/index23.html
大崎市医師会 『小児の感染症』
http://www.iwase-hp.jp/health/pneumonia.html
厚生労働省臨床研修指定病院 公立岩瀬病院 肺炎について
https://www.min-iren.gr.jp/?p=31895
全日本民医連 くすりの話 飲み薬と点滴
https://www.kantoh.johas.go.jp/hanasi/tabid/487/Default.aspx
関東労災病院 感染症の治療:抗菌薬について
https://www.tokuyaku.or.jp/jimu/32-medicine/okusuri-lesson.html
一般社団法人 徳島県薬剤師会 子供の薬
https://www.apha.jp/medicine_info/entry-23.html
子どもと薬 愛知県薬剤師会
https://www.machida.tokyo.med.or.jp/?page_id=16780
町田市医師会 感染症のお話~薬剤耐性という恐怖
https://rad-ar.or.jp/blog/2019/04/2788/
一般社団法人 くすりの適正使用協議会 抗生物質が効かなくなる?薬剤耐性(AMR)