「ビタミンCが風邪に効くって本当?」
「ビタミンCを大量に摂ったら早く治る?」
風邪にビタミンCがよいと言われる理由、効かないと言われる理由を、それぞれ医師が解説します。
ビタミンCの含有量が多い食べ物・飲み物、より効果的な摂り方もご紹介しています。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
風邪にはビタミンCがいいって本当?
現在、ビタミンCの効能は重要視されていますが、ビタミンCが風邪の治療に有効であるかどうかは賛否両論あるようです。
風邪に「ビタミンCがよい」といわれている理由
ビタミンCには、免疫力や抵抗力を向上させる働きがあります。
そのため、毎日こまめに摂取することで、日々の風邪予防につながると考えられています。
コラーゲンは、体を形成する全タンパク質のおよそ3割を占めており、細胞同士を繋ぐ結合組織・骨・血管・筋肉・各器官等を強化する働きを持っています。
ビタミンCがコラーゲンを合成することによって、毛細血管が強化され、血液の流れをスムーズにして十分な栄養を各器官に送り、正常な機能をサポートします。
また、ビタミンCは免疫細胞を活性化して白血球の機能を補助する働きがあります。
血中の白血球、リンパ球はビタミンCを豊富に含んでいます。
そして、体内に細菌等の異物が侵入した際に攻撃してくれます。
風邪に「ビタミンCが効かない」といわれている理由
- 即効性のあるものではない
- 風邪をひく確率自体は下がらない
などが理由といわれています。
風邪の症状が出現した後に、急にビタミンCを摂取しても、あまり有効とは言えないとされています。
ビタミンCは薬ではないので、即効性が期待できるものではありません。
そのため、日頃からビタミンCを含む食品等を意識して摂取することが大切と考えられています。
また、臨床試験の結果から、一般集団において、ビタミンCを1日0.2g摂取しても、風邪をひく確率は下がらなかったと確認されています。
現在、ビタミンCの効能は重要視されていますが、ビタミンCが風邪の治療に有効であるかどうかは賛否両論あるようです。
ビタミンCは大量に摂取したほうがいいの?
ビタミンCは水溶性のため、多めに摂取しても尿から体外へと排泄されます。
そのため、摂り過ぎを心配する必要はほぼないと考えられています。
しかし稀に、ビタミンCの大量摂取により、吐き気・下痢・胃痙攣等が起こる場合がありますので、気を付けましょう。
1日の摂取目安は?
15歳以上のビタミンC摂取推奨量は、100mg/日とされています。
栄養ドリンクやサプリメントは風邪にいいの?
日常的にビタミンCの栄養ドリンクやサプリメントを摂取している場合、風邪症状が出る期間が短縮されたり、症状が軽く済んだりするケースもあるようです。
しかし、風邪をひいた後にサプリメントを摂取しても効能はあまりないと考えられています。
液剤でも錠剤でも、同じ成分で同量含有されていれば効能は同じと考えられています。
ビタミンCは排泄されやすいため、1度に摂るのではなく、朝、昼、晩というように分けて摂るようにしましょう。
他の薬を服用している場合は注意!
ビタミンCサプリメントは、他に服用している薬がある場合には注意が必要です。
サプリメントは食品と違い、栄養素が凝縮して入っているので、相互作用を起こす恐れがあります。
例えば、腎臓疾患がある場合や、利尿剤を飲んでいる方がビタミンCサプリをとると、尿中のシュウ酸がカルシウムと結束し、尿路結石や腎臓結石を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
ビタミンCが豊富な食べ物・飲み物
- アセロラ 1700mg
- ブロッコリー 120mg
- いちご 62mg
- キウイフルーツ 69mg
- 緑黄色野菜(小松菜39mg、キャベツ41mg)
- トマト 15mg
- じゃがいも 35 mg
- グレープフルーツ 36mg
- 緑茶(玉露 抽出液 19 mg)
- 赤ピーマン 170 mg、緑ピーマン 76 mg
- ゆず 160 mg
- レモン 100 mg
(数値は100gあたりのビタミンC含有量)
などの食品にビタミンCが豊富に含まれています。
その他、みかん・オレンジジュースもおすすめです。
トマトジュースにレモン(レモン汁)を加えると、ビタミンCの相乗作用が期待できます。
緑黄色野菜もおすすめ
特に、緑黄色野菜は比較的ビタミンCも多く、その他の栄養素もバランスよく含まれているので、風邪のときには効率的に栄養素を摂取できます。
おすすめ常備レシピ「ゆずジャム」
<材料>
ゆず:1個(約50g)
砂糖:25g(ゆずの重量に対して50%分の砂糖を使用する。きび砂糖等でも可)
(作り方)
- ゆずを半分に切って種を除去する
- ゆずを薄切りにしてから細かく刻む
- 砂糖を投入し混ぜる
- 砂糖が溶けてとろっとした状態になったら完成
「ビタミン注射」って何?
ビタミン注射とは、注射や点滴によって、体内にダイレクトにビタミンCを注入する方法です。
通常の食品やサプリメントからの摂取に比べて、有効な成分を高濃度で体内に取り入れることが可能になり、全身細胞にビタミンCを高濃度で届けられます。
そのため、風邪等の疾病予防にも有効と考えられています。
また、高濃度ビタミンC点滴やビタミン注射は基本的に保険適用外です。
費用は各医療機関により異なりますが、10000円~15000円/1回、25gが目安と考えられます。
風邪をひいた後に注射すると早く治る?
ビタミン注射によって風邪が早く治るということは考えにくいです。
しかし、風邪をひくと体内のビタミンCが消耗するので、その補充としては役立ちます。
副作用はある?
ほぼ副作用なく受けられる療法とされていますが、稀に以下のようなケースがあります。
- 腎不全・心不全・透析治療中・胸水・腹水・不整脈等の持病がある場合、点滴を用いて血管内に水分を注入することで症状の悪化を招く恐れがあるため要相談です。
- 点滴をはじめる際、刺入部に痛みが生じる場合があります。
- 稀に低血糖になり、めまい、冷や汗等の症状が出る場合があります。
- 高濃度ビタミンC点滴は利尿作用があるので口渇になる場合があります。
- ビタミンCはカルシウムを尿として排泄する働きがあるため、稀に低カルシウム血症を起こす場合があります。
- ごく稀に結石が発生する場合があるようです。
- ごく稀に薬剤に対するアレルギーによって、かゆみ、蕁麻疹、息苦しい等の症状が出る場合があるようです。
また、高濃度ビタミンC点滴療法を受けるには、はじめにG6PD採血※を行い、赤血球膜の遺伝子酵素異常※の有無を確認する必要があります。
※G6PD採血
赤血球機能を維持するうえで重要なグルコース-6-リン酸脱水素酵素があるかを確認する採血です。欠損していると、ビタミンC点滴によって、貧血などを起こす恐れがあります。
※赤血球膜の遺伝子酵素異常
グルコース-6-リン酸脱水素酵素が少ない、または欠損している状態を指します。
何科で受けられる?
美容皮膚科、内科、整形外科等、幅広い分野で取り扱いがあります。
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2020-01-08
「風邪ひいたかも…」
「ひきはじめで風邪を治してしまいたい!」
風邪の初期症状から、ひきはじめにおすすめの対処法や食事、病院の受診目安まで、医師が解説します。
風邪のひきはじめかも!「風邪の初期症状」
悪寒
肩こり
冷え
頭痛
喉に違和感がある
透明の鼻水が出る
といった症状が、風邪の初期症状といえます。
このような状態に気がついたら、すぐに対策を行えば、風邪は軽く済ませることが可能な場合もあります。
ひきはじめの風邪を「治す方法」は?
風邪をひいたときは、
体を温める
しっかりと栄養を補給する
睡眠時間を長めにとる
出歩くのを控える
といった対処を行ってください。
体を温める方法
首筋・手首・足首の「首」の付く3部分を温めましょう。
この部分が出ているとあっという間に体温が奪われ、冷えを招きます。
足首、手首、首回りが広く開いている服は避けてください。
長袖の服を着て、ネックカバーや靴下などを活用しましょう。
風邪のひきはじめの「過ごし方」
風邪のひきはじめは、睡眠をしっかりととり、体の免疫力を高めることが大切です。
このときに無理をしてしまうと、風邪が悪化しやすくなります。
体が弱っているため、出歩くのも避けましょう。
特に人込みは、細菌・ウイルスに感染しやすいので要注意です。
風邪のひきはじめの「食事」
風邪のひきはじめは、食事でしっかりと栄養を補給しましょう。
ただし、胃腸が弱っているときは無理せず、消化の良いものを食べてください。
栄養ドリンクを飲む
風邪のときは疲れもたまりやすいので、疲れをとる成分「アミノ酸」や「ビタミンC」が多いものを選ぶのがおすすめです。
風邪の初期症状に、手軽に栄養補給できる栄養ドリンクもよいでしょう。
寝る前に飲むのは避けて
栄養ドリンクの中には、カフェインが入っているものがあります。
カフェインは興奮作用があり、眠りにくくなる場合があるので、寝る前に飲むのは避けましょう。
カフェインの感受性は個人差がありますが、一般的には2時間前ほど、感受性の高い方は6時間以上あけるとよいでしょう。
また、栄養ドリンクからだけでは、体への栄養補給は不十分です。
食事をしっかり摂り、あくまでその補助という役目で取り入れましょう。
おすすめの食事
お鍋やスープ、グレープフルーツやみかん、緑黄色野菜などがおすすめです。
たんぱく質・鉄分・亜鉛・ビタミンC・ビタミンEを摂りましょう。
一つだけに偏るのではなく、満遍なく補給することが大切です。
これらの食事は免疫を高め、風邪を悪化させないよう体の働きを サポートしてくれます。
温かい鍋やスープは体を温め、一度に栄養のある食材を摂れます 。
エネルギー源になるじゃがいもや免疫力を高める緑黄色野菜のかぼちゃ・ブロッコリー・トマトなどを具材として入れるのがオススメです。
また、果物や生野菜からもビタミンを摂取しましょう。
グレープフルーツやみかんなどさっぱりしてビタミンCも多いのでおすすめです。
緑黄色野菜全般はビタミンCやβカロテンが多く、免疫力を高めます。
飲み物に関しては、水分摂取自体も大切ですが、ビタミンCが多い野菜や果物のジュースもオススメです。
ひきはじめの風邪に効く「市販薬」
ひきはじめの風邪は、市販薬を使うと悪化を防げることがあります。
出ている症状に合わせて、薬を選びましょう。
市販薬を飲む
風邪薬には様々な市販薬が販売されており、鼻水、喉の痛みなど、それぞれの症状に適した薬を選ぶとよいでしょう。
わからないときはドラッグストアなどにいる薬剤師に相談しましょう。
なお、風邪のウイルスに直接効くという風邪薬はないため、どの薬でも対症療法となります。
ご自身の症状に合わせた市販薬を早めにとると、辛い症状が楽になりよく眠れるようになり、風邪の悪化予防につながることがあります。
漢方薬を飲む
風邪対策の初期におすすめの漢方薬は「葛根湯」です。
葛根湯には発汗を促して体を温める作用があるため、服用すると抵抗力が高まります
風邪の初期で「寒気」があるときに服用すると良いでしょう。
さらに「ひどい寒気、発熱、体の節が痛む」などの症状があるときは麻黄湯がおすすめです。
漢方薬も「使用できないケース」「年齢制限」に注意
漢方薬であれば体に優しいと思われている方もいますが、使用できない方や年齢制限もありますので、使用前に説明や容量を確認してください。
風邪のひきはじめにNGな行動
40度以上の高熱がある
鼻水が出て止まらない
喉の痛みが強いが鼻水は出ていない
微熱が1週間以上続いている
といった症状には、風邪以外の病気が疑われます。
鼻水ばかり出て、喉の痛みや発熱がない場合は「アレルギー性鼻炎」、高熱が急に出た場合は「インフルエンザ」、鼻水がないのに喉が痛む場合は「扁桃周囲膿瘍」といった病気が疑われます。
いずれも重症化するリスクがあるため、放置しないようにしましょう。
また、微熱が何日も続く場合は、「A型肝炎」、「白血病」、「HIV」などの重い病気も考えられます。
症状に心当たりがあるときは、一度医療機関で相談してください。
<扁桃周囲膿瘍>
口の奥の方にある口蓋扁桃に細菌感染を起こして、炎症、膿などを持ってしまう病気です。
発熱する場合もあり、風邪と間違えやすいですが、鼻水は出ません。
口が開きにくい、物が食べられないなども症状も出ます。
こんなときは早めに受診を
症状が重い場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
風邪は特効薬がないので対症療法(※)がメインですが、なかなか治らないときは、医師の指示に従うことでより早い改善が期待できます。
※対症療法…起こっている症状に対して対処していく方法。熱がでていれば解熱剤、炎症が起きていれば炎症止めを使用する。
赤ちゃんや高齢者は要注意
小さな赤ちゃんや高齢者は、風邪が一気に症状が悪化しやすいので要注意です。
様子がいつもと違う場合は、早めに医療機関へ連れて行きましょう。
内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2019-05-27
平日は特に問題がなかったのに、休日になったとたん体調を崩してしまった経験がある人も、多いのではないでしょうか。
平日は仕事や学校を休めないため気が張っていて、休日になりリラックスしたとたん、風邪をひくケースはよくあることです。
休日になると体調を悪くする理由
平日は何ともなかったのに、休日になると急に風邪をひいたり体調が悪くなったりするのは、自律神経に問題がある可能性が考えられます。
自律神経は心臓を動かしたり、胃腸を動かして食べたものを消化したり排せつしたり、私たちの意識とは関係のないところで内臓などを動かしてくれています。
原因には、自律神経バランスの乱れも
自律神経には「交感神経と、副交感神経」の2種類があります。
交感神経は、活発に活動しているときやストレス状態の時に優位に働き、
副交感神経はリラックスしたりしたときに優位になるのが正常のバランスです。
しかし、緊張しているときなどは副交感神経よりも交感神経が優位になる時間が長くなったりし、バランスが崩れてきてしまうことがあります。
平日は元気なのにも関わらず、休日になると体調を崩してしまうのは、こうした原因が考えられます。
休日に風邪になるのを防ぐ方法はありますか?
休日になると風邪をひくのは自律神経のバランスが乱れていることも原因の一つの可能性があります。
緊張感が高まっているときは交感神経が優位になりやすい状態であり、本来ならば副交感神経が優位となりリラックスする時間である夜でも、興奮状態が続いてしまいなかなか眠れないという人もいます。
これを防ぐためには、少しの運動を取り入れるなど、生活習慣の改善が必要です。
運動は、ちょっとの工夫で大丈夫!
運動は激しいものをわざわざ行うのではなく、いつもエレベーターを使うところを階段にするなど、ちょっとした工夫でOKです。
少しずつ活動量が増える動きにかえるだけでも、昼に自律神経は刺激され、体の疲労感も増え、夜に自然と睡眠がとれるようになります。
寝る前のスマホには、やはり注意を
また夜遅くまでパソコンやスマホを見ていると、大脳へ刺激をあたえてしまうため、交感神経優位になってしまいます。
そうなれば、脳が休まらず、寝たけれど不眠と同じような状態になり、疲れがたまって風邪をひきやすくなるのです。
また、平日と休日の生活リズムはなるべく変えないようにすることも大切です。少しゆっくり寝たい休日でも平日との差はおおよそ2時間くらいまでのズレにしておくと、生活リズムが崩れにくくなります。
風邪の予防には免疫力を高めることは欠かせません。
しかし、忙しいからこそ、色々と行うのも大変ですよね。
ですから、無理せずに今の生活の中で、少し工夫すればできることから、あなたもはじめてみてはいかがでしょう。