「右下の背中が痛い…」
「この痛みの原因はなに?」
右下の背中が痛む症状について、お医者さんに聞きました。
考えられる病気やその原因、症状、何科に行くべきなのかなども解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
なぜ?背中の右下が痛い…
背中の右下が痛む場合、
のいずれかが考えられます。
この痛みは大丈夫?病院行くべき?
重いものを持つ動作や、激しい運動など、“心当たり”がある場合は、安静にして一旦様子を見てみましょう。
次第に症状が和らいでくるようであれば、筋肉痛が考えられるため、過剰に心配しなくて大丈夫です。
こんなときは病院へ
ただし、
- 背中の痛みが2~3日以上続く
- 痛みがひどく、仕事や家事ができない
場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
内臓の病気(詳しくは後述)を発症している可能性があります。
病院は何科?
筋肉痛に身に覚えがなく、内臓の病気を疑う場合は、内科を受診してください。※筋肉痛がなかなか治らないときは、整形外科を受診しましょう。
悪化のリスクを抑えるには、痛みの原因をきちんと特定することが大切です。
治療が必要なケースもあるため、放置しないようにしましょう。
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考えられる5つの原因
背中の右下が痛いのは、
- 逆流性食道炎
- 胃潰瘍
- 膵炎
- 腎盂腎炎(女性に多い)
- 尿路結石(男性に多い)
といった原因が考えられます。
それぞれ詳しく解説します。
その① 逆流性食道炎
逆流する胃酸によって食道に炎症が起こる病気です。
背中の右下が痛くなるケースもあります。
激しい痛みではなく、「なんとなく痛い・重い」と感じる場合が多いです。
原因
食道炎は
などが原因となることが多いです。
食道炎は、全年齢層でみられ、男女の差もあまりありません。
などの人に多くみられます。痩せ型の人でも症状がでることもあります
病院は何科?
逆流性食道炎は、内科・消化器内科で治療を受けられます。
治療では、生活指導に加え、飲み薬を使って改善を図るケースが多いです。
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2023-01-30
逆流性食道炎とはどのような病気なのか、分かりやすくまとめました。
逆流性食道炎の主な症状や原因、なりやすい人の特徴も紹介するので、心当たりがないかチェックしましょう。
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは、胃酸や胃の中の食べ物が食道に逆流することで食道で炎症が起こり、胸やけなどの症状があらわれる病気です。
逆流性食道炎の症状チェック
胸焼け(空腹時や夜間に多い)
胃もたれ
げっぷ
呑酸(※1)
喉の違和感
咳
声のかすれ
睡眠障害
(※1)胃酸により、口の中や喉が酸っぱく感じること
症状が長く続いている場合、睡眠障害を起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。
症状が一つでもある場合は、早めに受診して、検査をおこなうことが大切です。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎はストレスや肥満、更年期が原因となっているケースが多いです。
原因① ストレス
胃と自律神経系は深い関わりがあり、ストレスを受けるとその刺激が自律神経系に伝わります。自律神経系の働きによって胃酸の分泌が過剰になり、食道に逆流しやすくなります。
胃の粘膜には胃酸から粘膜を守る仕組みがありますが、食道にはその仕組みがありません。
さらに、ストレスによって胃や食道の運動機能が落ちているため、胃酸にさらされる時間が長くなり、炎症が起こりやすいと考えられています。
原因② 肥満
お腹が圧迫されると、胃の中の圧も高くなるため、胃酸が食道に逆流しやすくなります。
肥満の人は、脂肪でお腹が圧迫されやすいため、逆流性食道炎の原因となる可能性があります。
また、肥満の人は食道裂孔ヘルニアになりやすく、食道裂孔ヘルニアになると胃に圧がかかりやすい状態であるため、逆流性食道炎を発症しやすいといわれています。
原因③ 更年期
更年期になると胃酸や胃の内容物の逆流を防ぐ下部食道括約筋が衰え、逆流性食道炎を発症しやすくなります。
さらに、食道の働きの衰え・唾液の量の減少も加わり、逆流した胃酸を胃へ戻しにくくなるため、逆流性食道炎を起こしやすくなっています。
逆流性食道炎になりやすい人は?
過食
早食い
肥満
脂肪を多く含む食品をとり過ぎている
お酒をよく飲む
炭酸飲料をよく飲む
タバコを吸う
逆流性食道炎は自力で治せる?
脂肪分を控える
酸味の強いものも控える
満腹まで食べない
重いものを持たない(腹圧が強くかかるため)
ベルトを締めすぎない
といったセルフケアで、改善が期待できます。
ただし、上記のケアで改善が見られない、不調が悪化している、といった人は医療機関で相談してください。
逆流性食道炎の治し方|食事・市販薬など
しばらくの間は、油っこくない、さっぱりとした食事を心がけましょう。
また、早食いや食べ過ぎ、食後すぐに横になる行為は控えてください。
調理方法は「蒸す」「茹でる」を中心にすると、油の摂取量を減らすことができます。
食事の際は、一口ずつよく噛んで、ゆっくりと時間をかけて食べてください。
また、就寝の3時間前に食事を済ませるようにしましょう。
食後2~3時間は体を起こしておくと、発症予防になります。
市販薬で治るの?
逆流性食道炎(胸やけ)に向けた市販薬は、医療薬から転用されたスイッチOTC薬※「H2ブロッカー」です。
ただし、H2ブロッカーは完全に胃酸の分泌を抑える処方薬ではないので、あくまで症状を徐々に和らげるものと考えてください。
※処方薬だった成分が、処方箋がなくても一般薬として薬局・薬店で購入できるようになった薬
商品名は各メーカーにより異なりますが、パッケージや添付文書に「H2ブロッカー胃腸薬」「H2受容体拮抗剤」と表記されています。
こんな症状は早く病院へ
胸焼け
酸っぱい液体が上がってくる、ゲップが出る
せき
のどの不快感
上記のような症状が見られる場合は、病院を受診しましょう。
病院は何科?
胃腸内科や消化器内科を受診しましょう。
症状に関しての相談は内科でも行う場合がありますが、検査は胃腸専門の病院が良いでしょう。
消化器内科を探す
病院での治療法は?
病院では、薬物療法や外科的治療を行います。
薬物療法では、胃酸の分泌を抑制する薬、胃や食道の運動を高める薬、粘膜を保護する薬を使用する場合が多いです。
薬物療法で改善が見られない場合、手術により逆流を防止する治療を行うケースもあります。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
その② 胃潰瘍
胃酸によって粘膜が傷つけられ、胃の中がただれてしまっている状態です。
胃潰瘍を発症すると、激しい痛みに襲われるケースが多いです。
胃潰瘍の原因
などが原因となることが多いです。
ピロリ菌の感染率が高い中高年の人は、胃潰瘍を発症しやすい傾向があります。
病院は何科?
胃潰瘍を疑うときは、内科・消化器内科を受診しましょう。
胃潰瘍の診断は、胃カメラ検査で行われます。
治療では、胃酸を抑える薬や粘膜の分泌を促す薬などが処方されます。
なお、胃潰瘍が重症化している場合、入院と手術が必要になることもあります。
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その③ 膵炎
滞留した消化酵素によって、膵臓が溶かされてダメージを受ける病気です。
背中・みぞおちに激しい痛みを感じる人が多いです。
膵炎の原因
- 過剰なアルコール摂取
- 中性脂肪が高い食生活
- 膵石
- 膵臓がん
などが原因として挙げられます。
お酒や脂っこい食事が好きな人は、膵炎に注意しましょう。
病院は何科?
膵炎の疑いがあるときは、内科・消化器内科を受診しましょう。
膵炎と診断された場合、入院による治療が必要になります。
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2023-01-30
膵炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
膵炎の主な症状も紹介するので、「膵炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしてみてください。
膵炎とは
膵炎とは、膵臓の消化液が漏れて、臓器を傷つけてしまう病気です。
この膵炎は「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分かれます。
「急性膵炎」とは、消化酵素によって膵臓自体がダメージを受けて、炎症が起こっている状態です。
「慢性膵炎」とは、食べ物を消化するための膵液が、長期間に渡って膵臓自身を溶かしてしまう病気です。
「急性膵炎」と「慢性膵炎」それぞれの症状
急性膵炎
▼軽度~中等度の症状
みぞおち周辺から左上腹部の痛み
背中の痛み
吐き気、おう吐(吐いても症状が改善しない)
発熱(37度~38度程度が多い)
食欲不振
腹部膨満感
▼重度の症状
血圧低下
皮膚が黄色っぽくなる
呼吸困難
精神が錯乱してしまうほどの激しい痛み
失神
慢性膵炎
腹痛を5〜10年ほど繰り返す
急にお腹や背中が痛くなることがある
下痢や便秘の症状がある
みぞおちを押すと痛い
だるい
食欲不振
吐き気、嘔吐
お腹の張り(膨満感)
体重減少(※)
※人によって異なりますが、6か月で5%以上を病的な体重減少とすることが多いです。
膵炎の原因
膵炎の原因には、「お酒の飲み過ぎ」「胆石が胆管で詰まる」などが挙げられます。
ただし、はっきりと原因が分からないケースもあります。
膵炎になりやすい人
お酒をよく飲む
タバコを吸う
暴飲暴食している
脂肪分を多く含む食品のとり過ぎ
就寝直前に食事をとることが多い
刺激が強い飲食物を好む
急性膵炎を疑う場合はすぐ病院へ
膵炎が疑われる場合は、「内科」で受診することをおすすめします。
急性膵炎を発症すると、命に関わるケースもあります。
特に毎日飲酒している方は、腰・背中あたり痛みを感じたら早めに受診しましょう。
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慢性膵炎も放置はNG
慢性膵炎は症状が進行すると、インスリンの分泌量が低下し、糖尿病を発症する恐れがあります。
また、症状が悪化すると、膵臓ガンを発症する恐れもあるため、早めに受診してください。
膵炎の検査・治療法
医療機関では、必要に応じて血液検査、内視鏡、エコーなどを行います。
そこまで痛い検査はありません。
膵炎の治療は、
鎮痛剤の投与
輸血
絶食
などをおこなって症状の改善を図ります。
安定するまで集中治療の管理が行われるため、入院が必要になるケースが多いです。
その④ 腎盂腎炎(女性に多い)
尿道口から侵入した細菌によって、腎盂に炎症が広がっている状態です。
腎臓のあるあたり(わき腹と背骨の中間あたり)を叩くと、振動によって痛みが強くなります。
腎盂腎炎の原因
基本的には膀胱炎(ぼうこうえん)の悪化が原因になることが多いです。
女性は尿道が短く、肛門と尿道との距離が近いため、腎盂腎炎を発症しやすい傾向があります。
病院は何科?
腎盂腎炎が疑われるときは、泌尿器科を受診しましょう。
腎盂腎炎と診断された場合、抗菌薬による治療を受けることが多いです。
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その⑤ 尿路結石(男性に多い)
腎臓に発生した石(結石)が、尿管に詰まる病気です。
「突然の激痛を感じる」という特徴があります。
主な症状
- 背中の痛み
- 肋骨(胸のあたり)から腰にかけて痛い
- 腹痛
- 発汗、悪寒
尿路結石の原因
- 動物性たんぱく質の取り過ぎ
- ビタミンCの取り過ぎ
- カルシウム不足
- 水分不足
- 遺伝的要因
などが挙げられます。
尿路結石は、中年以上の男性に発症しやすい傾向があります。
病院は何科?
尿路結石が疑われるときは、泌尿器科を受診しましょう。
尿路結石と診断した場合、薬物療法や砕石治療を行います。
「右下の背中が痛い」場合、筋肉痛などの様子をみても大丈夫な場合もありますが、適切な治療が必要な病気の可能性もあります。
少しでも心配な場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。