インフルエンザを発症したとき、風邪薬を服用しても良いのでしょうか。
「風邪だと思って市販の風邪薬を飲んだけど、実はインフルエンザだった!」「インフルエンザに風邪薬は効くの?効かないの?」
こういった疑問に薬剤師がお答えします。
インフルエンザ発症時に風邪薬を飲んでしまった場合のリスクや対処法もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
監修者
経歴
静岡薬科大学出身、現在、管理薬剤師として関東の薬局で活躍中。
インフルエンザのとき、風邪薬を飲んでも良い?
そもそもインフルエンザに風邪薬は効くの?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染すると発症します。比較的ゆっくりと進行する風邪とは異なり、急激に症状が進行します。発熱も40度を超える高熱となる場合が多く、全身痛、筋肉痛、関節痛、強い咳が現れます。風邪のような鼻水やくしゃみと言った症状は、初期ではなく後期に発症する場合が多くなります。
風邪薬は、総合感冒薬といい、風邪の時の対症療法に使用されるもので、風邪のウイルスそのものを殺すような作用はありませんが、インフルエンザの時に使用すると咳の緩和や解熱の働きを果たす場合もあります。しかし、インフルエンザの時に風邪薬や市販の薬の使用は避けていただくようにしています。理由は、次の項目で詳しく説明します。
風邪薬を飲まない方が良い理由
市販の風邪薬や解熱剤含まれているアセチルサリチル酸は、インフルエンザ脳症を引き起こす危険があるとわかっています。
加えて、特に鎮痛剤の中でも働きの強いジクロフェナクやメフェナム酸は、インフルエンザ発症者への使用は禁止とされています。こちらの成分もまた、インフルエンザ脳症を引き起こす場合があるからです。
インフルエンザ脳症は、異常行動や、痙攣、意識障害が起こり最悪の場合、死亡します。安易に市販薬を飲むとこれらの成分が含まれており、取り返しのつかない症状を発症してしまう恐れがあるのです。
解熱鎮痛剤を使う場合は必ず薬剤師に相談を!
家にある解熱鎮痛剤を使うときでも、自己判断せずに、医師や薬剤師にまずは、相談しましょう。
インフルエンザ脳症は大人も罹患しますが、子どもの方が罹患リスクが高いので、特に注意が必要です。
風邪薬を飲んでしまったときの対処法
インフルエンザなのに、市販のお薬を自己判断で飲んでしまった場合は、まず、早急に病院を受診しましょう。体調に異変はないか、おかしな症状がないかを確認し、インフルエンザ脳症の可能性がある症状が現れた場合にすぐに対応できるようにします。
自己判断はNG!必ず病院へ
インフルエンザは、通常の風邪よりも重度の症状が現れやすく、小さなお子さんや高齢者、妊婦などの免疫が低い人が感染すると重症化しやすいので、インフルエンザが疑われる症状が現れた場合は、すぐに病院を受診してください。自己判断で、家にある風邪薬を服用するのは避けましょう。
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ワクチンで予防&重症化を避けよう
インフルエンザは、予防することも大事です。インフルエンザワクチンを接種して、重症化を避けましょう。特に小さなお子さんは、インフルエンザで脳症を発症する可能性が高いので、予防接種は是非受けるようにしてください。
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2020-12-15
この症状は風邪?それともインフルエンザ?
そんなときは、インフルエンザの初期症状をチェックしてみましょう。
対処法や病院に行くタイミングも、お医者さんが詳しく解説します。
インフルエンザの初期症状チェック
「なんだか風邪っぽい」という方は、次のチェックシートで確認してみましょう。
急に体の節々に痛みが出てきた
急激な発熱、高熱(38度以上)がある
激しい頭痛がある
体が震える
寒くて仕方がない
体の症状が強く動くことができない
上記に当てはまる数が多いほど、インフルエンザの可能性が高いといえます。
「インフルエンザかも…」と思ったら
体が動くうちに、経口補水液を調達しましょう。
ドラッグストアに行くときは、マスクを着用してください。
ご家族や同居人がいるのであれば、買い物をお願いしましょう。
早く治すための対処法
温かく消化の良いものを食べ、睡眠をたっぷりとってください。
食事は、野菜やタンパク質を多めにするのがおすすめです。
また、ウイルスへの抵抗力が高まるよう、身の回りを温かくしましょう。
病院に行くタイミングは?
症状が出てから12時間以降48時間以内に、病院で検査と治療を受けましょう。
インフルエンザは、発症から12時間以内に検査をしてもウイルスが検出されません。
また、抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内の使用が必要です。
インフルエンザを疑う場合、これに注意!
自己判断での風邪薬・鎮痛剤の使用は控えてください。
誤った服用により、重い合併症を引き起こす恐れがあります。
インフルエンザの疑いがあるのに、市販薬やその他の薬を使用してしまった場合は、すぐに医療機関で相談してください。
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▼参考
厚生労働相 令和元年度今冬のインフルエンザ 総合対策について
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2019-11-26
インフルエンザの高熱がつらい…。
市販薬で対処したいところですが、基本的に、インフルエンザには自己判断で市販薬を使用しないほうがよいです。
お医者さんに、「インフルエンザのときに、使ってはいけない市販薬」について聞きました。
【注意】インフルエンザに市販の解熱剤を使用するリスク
風邪薬や今まで使用していた市販薬を気軽に使用するのはやめてください。
インフルエンザの感染により高熱が出ると、その苦しみや痛みを和らげるために解熱剤を使用することは病院の治療でもありますが、成分によってリスクがあり、インフルエンザ脳症やライ症候群を引き起こす可能性があります。
インフルエンザ脳症
痙攣・意識障害・異常行動を起こす場合があり、後遺症や死亡する場合もある。
ライ症候群
急性脳症や、肝臓への脂肪浸潤を起こし、死亡する場合もある。
インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群の罹患や死亡との関連については、結論的なことは言えない状況です。
しかし、インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した事例の内、ジクロフェナクナトリウムまたはメフェナム酸が使用された症例では、使用していない症例に比較して、死亡率が高かったという研究があります。
カロナールは?
日本小児科学会でも推奨されているアセトアミノフェンが主成分となるので使用可能。
インフルエンザと思われる症状での高熱には、こちらを使用する。
※市販薬ではタイレノールAが同成分
ロキソニンは?
大人は使用可、子どもは使用不可です。
大人の場合は子供に比べて、ロキソニンによる副作用のリスクが低いですがが、安心なのはやはり現在よいとされているアセトアミノフェン製剤であるカロナール(タイレノールA)です。
イブプロフェン主剤は?
大人は使用可、子どもは使用不可です。
大人の場合は子供に比べて、イブプロフェン主剤による副作用のリスクが低いですが、安心なのはやはり現在よいとされているアセトアミノフェン製剤であるカロナール(タイレノールA)です。
子どもは使用不可の解熱剤
ロキソニンとイブプロフェンはインフルエンザ脳症の発症が高まるリスクがあるとされているので使用不可。
大人も子どもの使用不可の解熱剤
インフルエンザ脳症や合併症のライ症候群の引き金になる危険があるので、
アスピリン製剤
ジクロフェナクナトリウム製剤
メフェナム酸製剤
上記の薬は使用を控えましょう。
飲んではいけない解熱剤を「飲んでしまったら?」
飲んでしまった場合は、すぐに医療機関を受診してください。
検査を含め、体調管理を行います。
基本的に「自己判断で市販薬は使用しない」
以上の例をあげましたが、基本的にインフルエンザが疑われるような高熱には自己判断で市販薬を使用しない方がいいでしょう。
急を要する場合は、 薬剤師や病院に問い合わせるか、または救急で受診をしてください。
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