風邪をひくと、リンパ節が腫れることがあります。
リンパ節が腫れたときの対処法から、おたふく風邪との見分け方まで、お医者さんに聞いてみました。
監修者
経歴
戸田中央総合病院
埼玉医科大学
公立昭和病院
岡村医院
岡村クリニック
リンパの腫れの「対処法」
痛みを緩和するためには、患部を冷やすことが有効と考えられています。冷却シートなどで患部を冷やすのもおすすめです。
冷やすと炎症が生じている部分の腫れを抑えられ、リンパの流れの改善も期待できます。
これ以上腫れないように
今以上に腫れないために、水分摂取をこまめに行いましょう。
リンパの働きには水分が必須なため、食欲がない場合でも水分はしっかり摂るようにしてください。
また、手洗いやうがいなどの基本的な風邪予防を徹底しましょう。
十分な睡眠時間の確保、栄養バランスのよい食事、適度な運動を心掛けて免疫力の維持・向上をはかるのも大事です。
こんな対処はNGです!
リンパ節が腫れる原因は多岐にわたるため、自己判断で市販の風邪薬を服用するのはおすすめできません。
また、腫れているところを無理やり押したり、刺激するのもNGです。
どうしても医療機関を受診できないという場合、市販の風邪薬を服用するケースもあると思いますが、説明書に記載されている服用日数を過ぎても快方に向かわない場合は、放置せず医療機関を受診してください。
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リンパの腫れの「原因」
リンパ節が腫れる主な原因は、風邪やインフルエンザなどの感染症であることが多いです。
ウイルスや細菌が喉や鼻に感染し、その部分から体の中へと侵入します。
その侵入を阻止し、ウイルスや細菌が全身に広がらないようにするためにリンパ節が機能した結果、リンパ節が腫れて痛みを伴うと考えられています。
リンパが腫れやすいのはこんな人
- 子ども(病原体に対する免疫が未熟なため)
- アレルギー疾患がある子ども(気管支喘息・アトピー性皮膚炎など)
- 扁桃腺肥大の子ども
- 免疫力が低下している人
- 常にストレスや疲労を溜めている人
深刻な“病気のサイン”のケースも
ただし、リンパの腫れは必ずしも風邪の予兆とは言えません。
「深刻な病気」が隠れているケースもあります。例えば、
- 免疫異常を起こす疾患(膠原病、関節リウマチ等)
- 悪性疾患(悪性リンパ腫、がんの転移)
- 猫ひっかき病
- 亜急性壊死性リンパ節炎
- 結核性リンパ節炎
- 化膿性リンパ節炎
といった場合もあります。
なかなか治らないときは病院へ
以下のような場合には早急に医療機関を受診してください。
- リンパ節が腫れてから1週間程度経過しても快方に向かわない場合
- リンパ節の腫れや痛みが激しい場合
- 数週間から数か月間で痛みを伴わない腫れが生じてきた場合
- 2か所以上の部分にリンパ節の腫れが生じている場合
- 発熱を伴っている場合
- リンパが硬くなってきた場合
- 腫れが大きくなってきた場合
- リンパ節から膿が出ている場合
病院では、風邪が原因でリンパ節が腫れている場合、抗生物質(抗菌剤)による治療や点滴治療が行われるケースが多いようです。
これらの治療を、数日から14日間ほど継続して行います。
病院は何科?
病院では耳鼻いんこう科を受診しましょう。
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おたふく風邪との見分け方
おたふく風邪 |
リンパ節の腫れ |
- 耳の下が腫れるケースが多い。(耳たぶの下あたりで首まではいかない部分)
- およそ7日~10日間腫れる。
|
- 後頭部の髪の生え際、耳の前後、首、あごのライン、わきの下、足の付け根が腫れやすい。
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|
- 数日で腫れがひくことが多い。
- 腫れが大きくならないと痛みを生じない。
|
上記はあくまでも目安です。
おたふくかぜとリンパ節の腫れの判別は難しいため、自己判断せず、医療機関で正確な診断を受けてください。
合わせて読みたい
2020-03-25
「ふと首のリンパを押してみたら痛い…」
「なんだか腫れている気がする…」
「しこりができているけど、もしかして病気?」
リンパを押すと痛い症状の原因をお医者さんに聞きました。
自分でできる対処法から、考えられる病気の可能性もご紹介します。
病院へ行く際は何科を受診すればいいのかもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
首のリンパが痛い2つの原因
首のリンパ節が痛いのは、
リンパ節炎(風邪・インフルエンザなど)
扁桃炎
の2つの原因があります。
リンパ節炎(風邪・インフルエンザなど)
風邪のウイルスや細菌に感染した場合などに、リンパ節の炎症が起こる状態です。
リンパ節の腫れ(リンパ節周辺も)
リンパ節を押すと痛い
倦怠感
発熱
等の症状が現れます。
扁桃炎
扁桃部に炎症が生じる疾患です。
首のリンパの腫れ
扁桃が腫れる(痛みを伴う)
発熱(38度以上)
倦怠感
頭痛
関節痛
等の症状が現れます。
リンパ腫れと「しこり」ができるケースも
リンパ節において、リンパ球や白血球が外敵と闘った結果、しこりができるケースもあります。
また、リンパ節炎では、リンパ節やその周りが赤く腫脹する(痛みを伴う)等の症状が現れるケースがあります。
自然治癒する?
ウイルス・細菌感染したことが原因の場合は、感染症状が落ち着くと徐々に元通りになるケースが多いようです。
しかし、なかなか改善されない・大きくなる・その他にも症状が出現している場合には、医療機関で早めに検査を受けてください。
内科を探す
自分でできる対処法
自宅でできる対処法としては、
漢方薬を飲む
リンパ節を冷やす
といったものがあります。
【対処①】漢方薬を飲む
風邪症状があれば、漢方薬である葛根湯(カッコントウ)、桔梗湯(キキョウトウ)を使用する場合もあります。
葛根湯は、炎症を鎮めて症状を改善する効能が期待できると考えられています。
しかし、リンパ節の腫れがみられる場合や細菌感染が疑われる場合は、医療機関を受診して、症状に適した薬を処方してもらうことをおすすめします。
【対処②】リンパ節を冷やす
リンパ節が腫れている(炎症が生じている場合)には、冷やすことで症状が緩和される場合があります。
炎症を抑えて発熱を鎮めるためには、まずは冷やすことが有効と考えられています。
冷却シート等を使用して冷やす方法もありますが、肌が弱い場合には注意が必要です。
リンパマッサージはNGです!
リンパ節が腫れている場合は、リンパマッサージは控えてください。
腫れている部分を触ったり、無理に押したり等の刺激を与えると、逆に体調を悪化させる場合があります。
病院へ行くべき症状
次のような症状が現れた場合は、医療機関を受診しましょう。
発熱がみられる(リンパ節炎、細菌感染などの疑い)
リンパ節が激しく痛む(リンパ節炎の、細菌感染などの疑い)
リンパ節から膿が出ている(リンパ節炎、細菌感染などの疑い)
リンパ節が直径2.5㎝以上になっている(悪性腫瘍の疑い)
リンパ節が硬くなっている(悪性腫瘍の疑い)
短期間にどんどん大きくなっているが痛みは伴わない(悪性リンパ腫の疑い)
2~3か月以上リンパ節が腫れている(亜急性壊死性リンパ節炎の疑い)
何科を受診する?
耳鼻咽喉いんこう科、内科を受診するケースが多いです。
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深刻な病気のケースも…
「首のリンパを押すと痛い」場合は、
化膿性リンパ節炎
伝染性単核球症
膠原病
川崎病
慢性疲労症候群
といった、重篤な病気が原因の場合もあります。
① 化膿性リンパ節炎
リンパ節内で、白血球の攻撃を打破した細菌が増殖を始めると、リンパ節の腫れが大きくなり、痛みや発熱を伴います。
怪我や傷口から細菌が侵入することが原因となります。
② 伝染性単核球症
発熱、咽頭痛、首のリンパ節の腫れ、倦怠感、肝障害等の症状が現れる場合があります。
主にEBウイルス※による感染症です。
※EBウイルス
感染すると無症状、または風邪のような症状が起こる、多くの人が成人までに感染するウイルスです。
③ 膠原病
関節痛、リンパ節の腫れ、発熱、咽頭痛等の症状が現れる場合があります。
自己免疫疾患で、体内の血管と結合組織に慢性の炎症が生じる疾患の総称です。
④ 川崎病
首のリンパ節の腫れ、不定形発疹、口唇の発赤、イチゴ舌、両眼結膜の充血、高熱が5日以上続く等の症状が現れる場合があります。
乳幼児(4歳以下)に起こるとされる血管炎の一つです。
⑤ 慢性疲労症候群
首のリンパ節の腫れ、筋肉痛、頭痛等の症状が現れます。
原因不明の疲労が慢性的に続く状態です。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
新潟市医師会 首のしこり
一般社団法人大阪小児科医会 首のぐりぐり
一般社団法人 長野市薬剤師会 Q&A(薬 編)
日本呼吸器学会 呼吸器Q&A
日本医師会 リンパ節の腫れや痛みにご用心
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 頸部の腫れ・腫瘍
厚生労働省(旧厚生省)慢性疲労症候群診断基準
漢方のツムラ 漢方について
公益社団法人日本皮膚科学会 膠原病 病的なリンパ節の腫れ
女性の健康推進室 ヘルスケアラボ 女性に多い疾患の検診
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2021-05-31
「リンパ節炎の原因は、ストレス?」
“リンパ節炎とストレスの関係”を、お医者さんに聞きました
おすすめの市販薬をはじめ、改善のための対処法も併せて解説します。
稀に重症化するケースもあるため、放置はキケンです。
ストレスが原因でリンパ節炎になるの?
過度のストレスで免疫力が低下すると、リンパ節炎を発症しやすくなります。
リンパ節炎は、リンパ節に細菌・ウイルスが侵入して発症します。
免疫力が低下すると細菌・ウイルスが侵入しやすくなるため、過度のストレスはリンパ節炎の発症につながります。
ストレスで免疫力が低下するのはなぜ?
体の免疫は、主に“白血球”という細胞の働きによって機能しています。
しかし、過度のストレスを受けた脳からホルモン・神経伝達物質が分泌されると、この白血球の働きは悪くなります。
そのため、「ストレスは免疫力を低下させる」と考えられています。
リンパ節炎の症状
首や鼠径部などのリンパ節の腫れ
圧痛
頭痛
発熱
食欲不振
他にも、こんな原因が考えられます
その他の原因として、
喫煙
過度の飲酒
疲労の蓄積
睡眠不足
などが挙げられます。
これらはストレスと同じく免疫力を低下させるため、リンパ節炎の発症を招いてしまいます。
リンパ節炎にはどう対処したらいい?
リンパ節が腫れて間もないときは、ゆっくり休んで様子を見てみましょう。
腫れが痛む場合は、患部を保冷剤などで冷やすと楽になります。
ただし、冷やすのは長くても20分以内にとどめ、寒く感じたら冷やすのを止めてください。
体全体を冷やしてしまうと、免疫が下がって症状が悪化する恐れがあります。
また、逆に体を温めすぎると腫れが悪化することもあります。
腫れが強いときは長湯を避け、汚れや汗をシャワーでさっと流す程度にしておきましょう。
軽い症状であれば、十分な休息によって数日で快方に向かいます。
市販薬は使ってもいいの?
痛みがつらい場合は、市販の鎮痛剤を使用しても良いでしょう。
ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどが配合された薬を選びましょう。
特にロキソプロフェン配合の薬は即効性があるため、痛みを早く鎮めたいときにおすすめです。
有効成分
商品例
ロキソプロフェン
ロキソニンS(第一三共ヘルスケア)
イブプロフェン
イブA錠(エスエス製薬)
アセトアミノフェン
タイレノールA(武田CH)
こんなときは放置せずに病院へ
腫れが3日以上続いている
腫れがひどくなっている
触らなくてもジンジンと痛む
発熱している
といった場合は、早めに医療機関を受診してください。
悪化したリンパ節炎を放置すると、腫れた内部に膿が溜まってしまうこともあります。
また、皮膚に炎症が広がる“蜂窩織炎(ほうかしきえん)”を発症し、さらに重症化する恐れもあります。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)
皮膚やその内部に起こる感染症で、「蜂巣炎(ほうそうえん)」と呼ばれることもある。
発症すると、発熱、悪寒、痛み、腫れ、赤みなどが悪化する。
また、稀に命に関わる合併症を引き起こすケースもある。
基本的に自然治癒することはなく、治すには医療機関での治療が必要。
何科で受診すればいい?
リンパ節炎の場合、まず内科を受診しましょう。
症状がなかなか改善しないときは、放置せずに受診しましょう。
早めに受診することで、悪化を防ぎやすくなります。
内科を探す
どんな治療を行うの?
リンパ節炎の原因となっている“感染症”の治療を行います。
細菌による炎症の場合は、抗菌薬を投与するケースもあります。
感染症が改善するに伴って、リンパ節の炎症も治まっていきます。
内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
MSDマニュアル蜂窩織炎
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。