膀胱に違和感があるけど、これって更年期の影響?
「更年期に多い膀胱の違和感」の正体について、お医者さんに聞いてみました。
考えられる病気としては、膀胱炎・過活動膀胱などが挙げられます。
それぞれの改善方法も紹介するので、頻尿・残尿感を改善させたい方は必読です。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
更年期に多い「膀胱の違和感の原因」
更年期に起こる膀胱の違和感は、
といった原因が考えられます。
病名
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症状の特徴
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膀胱炎
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過活動膀胱
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- 我慢できないほどの尿意
- 何度もトイレに行きたくなる
- 尿意で夜に目が覚める
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骨盤臓器脱
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- 何かが下がっているような違和感
- 頻尿
- 残尿感
- 尿もれ
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上記の病気には、病院での治療が必要なケースもあります。
それぞれ詳しく解説していきますので、心当たりのあるものがないかチェックしてみましょう。
原因① 膀胱炎(排尿痛・残尿感など)
膀胱炎とは、尿道に細菌感染が起こっている状態です。
膀胱の粘膜の炎症によって、膀胱に違和感が出ることがあります。
更年期の方は「おりもの」が減少したり、「尿道の萎縮」によって尿が停滞したりするため、膣・尿道から細菌が侵入しやすくなります。
特に、ストレス・疲れが溜まっていると、免疫低下によって膀胱炎を発症しやすいです。
「膀胱炎かも」と思ったら
まずはしっかりと水分補給をして、尿をたくさん排出するようにしましょう。
軽度の膀胱炎であれば、細菌を外に出すことで楽になります。
また、
- 体を温める
- 栄養のある食事をとる
- 睡眠をたっぷりととる
といった方法で、免疫力を高めましょう。
免疫力を高めることで、症状の改善や予防効果が期待できます。
使える「市販薬」はある?
一時的な痛みの緩和として「鎮痛剤」を使用してもよいです。
改善が見られないときは、病院で相談を
- 2~3日経ってもよくならない
- 痛みが強くなっている
- 血尿が濃くなっている
といった場合は、すぐに医療機関で診てもらいましょう。
特に“激しい痛み”や“血尿”などが出ている場合は、「腎臓まで感染が広がっている」恐れがあります。
悪化すると入院が必要になるケースもあるため、早めの受診を心がけてください。
原因② 過活動膀胱(我慢できない尿意)
過活動膀胱とは、膀胱が過敏状態になってしまう病気です。
膀胱の収縮によって、膀胱に違和感が出ることもあります。
原因は「脳神経や脊髄の病気」や「加齢による膀胱機能の変化」など、様々な要因が挙げられます。
特に更年期以降の女性は、「筋力(骨盤底筋群)の低下」や「膀胱・外陰部が過敏になる」なども過活動膀胱の原因として考えられます。
過活動膀胱の症状チェック
- 急に我慢できない尿意が起こる
- 1日8回以上はトイレに行く
- 夜間に尿意で目が覚める
- 尿意を我慢できずに漏れてしまう など
「過活動膀胱かも」と思ったら
過活動膀胱の場合、
- 太っている方は減量する
- アルコール・カフェインを控える
- 「骨盤底筋体操」をする
といったセルフケアで、快方に向かうケースもあります。
自宅で簡単にできる!骨盤底筋体操
「骨盤底筋体操」のやり方
- 仰向けで横になる
- 膝を立て、足を肩幅に開く
- 体の力を抜いて、膣と肛門をお腹の方に引き上げるように締める(※)
- 3の状態で10秒間キープしたら、10秒間リラックスする
- 1~4を10回繰り返す
- 素早く「締める・緩める」を10回繰り返す
(※)おしっこを我慢するイメージ
上記を1セットとし、1日5セット行いましょう。
「立ったまま・椅子に座った状態」で行っても構いません。
骨盤底筋を鍛えることで、尿漏れを防ぐことができます。
簡単な体操で鍛えられるので、空き時間にトレーニングを行いましょう。
改善がみられないときは、病院で相談を
過活動膀胱には、糖尿病・パーキンソン病・脊髄の病気などが隠れているケースもあります。
なかなか改善しないときは、一度病院で相談することをおすすめします。
病気が隠れていた場合、放置すると健康を大きく損なったり、運動機能に支障をきたしたりするケースもあります。
まずは「泌尿器科」で受診し、症状の原因を調べてもらいましょう。
原因③ 骨盤臓器脱(何かが下がっている感覚)
「骨盤底筋」が緩くなり、骨盤内の臓器が下がって、腟口から飛び出てしまう状態です。
膀胱が下がってくることで、膀胱の違和感を生じる場合があります。
※膀胱以外にも、子宮や腸が下がることもあります。
更年期は、女性ホルモン減少・加齢による筋力低下が原因で、骨盤臓器脱を発症しやすくなります。
特に肥満・運動不足の方は、発症リスクがさらに上昇します。
骨盤臓器脱の症状チェック
- 膀胱の違和感
- 何かが下がっている違和感
- 触ると出っ張りの確認ができる
- 頻尿
- 残尿感
- 尿が出しにくい
「骨盤臓器脱かも」と思ったら
症状の悪化を予防するためにも、骨盤底筋を鍛えましょう。
先ほど紹介した「骨盤底筋体操」が効果的です。
ただし、
- 膣から何か出ている感じがする
- 触ると出ているものを確かめられる
などの場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
検査を行い、体がどのような状態かを見極める必要があります。
病院は「婦人科?泌尿器科?」
膀胱の違和感は、「泌尿器科」で相談しましょう。
泌尿器科は、膀胱に関する診療を専門分野としています。
診察を受けると、膀胱に異常が隠れていないか調べてもらえます。
医師に伝えるポイント
- 出ている症状
- いつから違和感があるか
- 痛みの有無
- 血尿の回数・血の量(尿の色)
などを診察時に伝えるとよいでしょう。
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2022-12-23
更年期障害ってどんな症状が出るの?
なりやすい人の特徴は?
更年期障害について、分かりやすくまとめました。
普段の生活で心がけたいポイントや、病院に行く目安も紹介します。
更年期障害とは
女性は40代頃から、卵巣から分泌される「女性ホルモン」が急激に減少します。
これに伴ってあらわれる、さまざまな心身の不調を総称して、更年期障害と呼びます。
更年期障害は何歳から始まる?
更年期とは、閉経前後の5年ずつを指します。
50歳前後での閉経が平均なので、ほとんどの女性が45~55歳で更年期を迎えます。
更年期障害はいつ終わる?
更年期障害が、いつ終わるかは断言できませんが、長くても10年ほどです。
更年期障害の症状をチェック
のぼせ・顔のほてり(ホットフラッシュ)
息切れ・動悸
頭痛
めまい
不安を感じやすい、イライラしやすい
など
上記の症状は、更年期障害の主な症状の一例です。
更年期の症状は多岐にわたるため、上記以外の症状があらわれる人もいます。
「更年期の症状が出やすい人」の特徴は?
以下、それぞれの項目ごとに2~3個ずつ当てはまる場合、更年期障害を発症しやすいと考えられています。
▼睡眠
24時以降に眠り、10時以降に起床する日が週に3日以上ある
低血圧で、朝起きるのがつらい
夜中に目が覚めやすい
寝る前にスマートフォンやパソコンを使っている
浅い眠りしかとれず、熟睡感がない
▼食事
1日3食はとらない(よく欠食する)
食事の時間がバラバラ
食事量を過度に制限するなど「極端なダイエット」をしている
暴飲暴食している
好き嫌いがあり「偏った食生活」になっている
▼性格
人に比べて神経質
何事にも真面目
完璧主義
仕事などを頑張りすぎてしまう
怒りっぽく、些細なことでもイライラしやすい
▼その他
疲れやストレスが多い生活を送っている
休みが少なく、心身ともにリラックスできる時間がない
体が冷えやすい
運動する習慣がない
産後うつ・月経前症候群が重かった
※これらの症状に当てはまらない場合でも、更年期障害を発症する可能性はあります。
今からできる!更年期の症状を和らげる「5つの対策」
1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
1日7〜8時間程度の質のよい睡眠をとる
週3~4日、有酸素運動を行う
入浴のときは「湯船に浸かる」
こまめにストレスを発散させる
更年期の症状を和らげるには、自律神経を整えておくことが大切です。
上記の点を意識して、生活習慣を見直していきましょう。
こんな症状があったら「婦人科」で相談を!
眠れないことで憂うつな気分が続く
強い不安感がある
食欲がなく、体重が減った
息切れ・動悸がする
めまい・吐き気がする
激しい頭痛がある
上記のような症状が出ている方は、一度「婦人科」に相談してみましょう。
放置していると、症状が悪化して仕事に行けなくなるなど、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
また、更年期症状の影響により不眠が続くと、睡眠に対するこだわりが強くなり、眠れないことへの恐怖心から症状が慢性化する恐れもあります。
どんな検査を受けるの?
更年期症状で病院を受診した場合は、一般的に、
問診
身長・体重・血圧の測定
検査(血液・子宮・卵巣・甲状腺・心臓等の検査)
を行い、患者さんの症状に合わせて治療が選択されます。
※検査内容等は、受診する医療機関によって異なることがあります。
どんな治療法があるの?
治療法としては、エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンを飲み薬・塗り薬・貼り薬で補う「ホルモン補充療法(HRT)」や、「漢方薬」を使った治療法があります。
うつ症状が強く表れているときは、抗うつ薬や抗不安剤などの「向精神薬」が処方されます。
※飲み合わせの関係でホルモン補充療法や他の薬が使いにくい場合もあります。治療中の病気や飲んでいる薬は医師に伝えたうえで、薬を処方してもらいましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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