陰部がツーンと痛い…原因は?
排尿時に痛みがあるけど大丈夫?
生理前と関係ある?
陰部のツーンとした痛みについて医師が詳しく解説します。
監修者
経歴
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、女性ヘルスケア認定医、神戸にある沢岻美奈子女性医療クリニックの院長
子宮がんや乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を行なってい更年期を中心にホルモンや漢方治療だけでなく、カウンセリングや栄養療法もとりいれた診療をしている。
女性のヘルスリテラシー向上のために実際の診察室の中での患者さんとのやりとりなどをインスタグラムで毎週配信中。
陰部のツーンとした痛み。考えられる主な原因
陰部にツーンとした痛みがある場合、4つの可能性が考えられます。
- 尿路感染症(膀胱炎、尿道炎など)
- ホルモンバランスの変化
- 細菌性膣炎
- クラミジア、ヘルペス
原因1. 尿路感染症
尿路感染症とは細菌やウイルスが尿道や膣に侵入し、炎症を引き起こすことで起こる炎症です。
尿道や膀胱が炎症を引き起こしているため、排尿時にツーンとした痛みを感じることがあります。
尿路感染症には膀胱炎、尿道炎なども含まれます。
細菌が尿道の内壁に感染し炎症を引き起こすと、尿道の粘膜が敏感になり、排尿時にツーンとした鋭い痛みを感じたり、焼けるような感覚になることがあります。
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排尿時の痛み/しみるのは大丈夫?
何らかの原因で膀胱や尿道に細菌が入り込み、炎症が起こっている可能性があります。
痛みやしみるといった症状が一時的なもので、あれば一旦様子を見ても大丈夫でしょう。ただし…
痛みを繰り返す
不調を伴う
という場合は、注意が必要です。泌尿器科などのある医療機関を受診しましょう。
泌尿器科を探す
市販薬を使ってもいい?
軽度の膀胱炎であれば、市販薬を使用してもよいでしょう。
過去に膀胱炎を発症したことがあり、その時と同じ症状であれば市販薬を使用してもいいでしょう。
排尿時の痛みに効果のある市販薬
ボーコレン
主成分の五淋散エキスは細菌を体の外に出し、痛みと炎症を抑える効果があります。
腎仙散
主成分である生薬のウワウルシには抗菌作用、タクシャ、ブクリョウ、ジオウなどは利尿作用、インチンコウ、シャクヤクは抗炎症作用、シャクヤク、ボウイなどは鎮痛作用があります。
こんなときは市販薬の使用はNG!
痛みが強い
痛みの原因がわからない
という場合は、使用を控えてください。
症状にあっていない市販薬を使用すると、かえって悪化する恐れがあります。
症状が重い場合、病院で処方される薬でしか治療できないことがあります。
排尿時の痛み/しみる症状でよくある病気
排尿痛の原因として、
膀胱炎
尿道炎
が考えられます。それぞれ詳しく解説していきます。
病気① 膀胱炎
膀胱が細菌に感染し、炎症を起こしている状態です。
炎症を起こした膀胱は、排尿して急激に膀胱が縮むことで刺激を受け、排尿時に痛み等を引き起こします。
膀胱炎になってしまう原因
ストレス、疲労、月経、妊娠、性交渉などが要因となって発症します。
膀胱炎の原因菌は大腸菌であることが多いです。
本来は大腸菌などが尿道に侵入しても、抵抗力によって膀胱炎を発症しません。
しかし、ストレスなどで免疫力が低下すると発症することがあります。
なりやすい人
誰でもなり得る病気です。
尿を我慢する人は排尿回数が少ないため、発症しやすい傾向にあります。
膀胱炎の主な症状
尿の回数が増える
排尿時の痛み
排尿後に尿が残っている感じがする
尿に血がまじる
尿が濁る
自分で治せるの?
免疫力が低下しておらず、軽度の膀胱炎であれば自然治癒も可能です。
日常生活では、以下のことを注意しましょう。
ナプキンをこまめに変える
汚物がついたまま長時間経過すると、菌が侵入しやすくなります。
尿を我慢しない
3~4時間に1度トイレに行きましょう。
尿を我慢すると膀胱の中で菌が増殖する可能性があります。
水分を意識して摂る
尿をたくさん出すことで、菌を流し出すことができます。
病気② 尿道炎
尿道が細菌に感染し、炎症を起こしている状態です。性行為などで感染します。
尿道炎になってしまう原因
性行為の際に菌が尿道に侵入し、感染を起こして発症することが多いです。
性交渉後、不潔な状態が続くと発症しやすいとされています。
その他、免疫力が低下していると、菌が体内に侵入しやすくなります。
なりやすい人
誰でもなり得る病気です。
膀胱炎と併発するのは女性が多いといわれています。
尿道炎の主な症状
排尿時の痛み、かゆみ
発熱
尿道から膿が出る
尿の回数が増える
尿が濁る
自分で治せる?
抗菌薬で治療する必要があるため、自力で改善することはできません。
ただし、免疫力を上げるために
十分な睡眠時間をとる
ストレスを溜めない
という生活を心掛けましょう。
この症状は早く病院へ
市販薬を服用して3~4日以上経っても症状が改善しない場合は、病院を受診しましょう。
発熱、痛みが強い、尿に血が混じるなどの症状がある場合は、早急に病院を受診してください。
受診するのは何科?
泌尿器科を受診してください。
※泌尿器科が近くにない場合や、男性医師に抵抗がある場合は、内科や婦人科を受診しても良いでしょう。
泌尿器科を探す
内科を探す
▼参考
日本泌尿器科学会:排尿痛がある、排尿時に痛い
MSDマニュアル家庭版:膀胱の感染症(膀胱炎)
特定非営利活動法人日本成人病予防協会:排尿時の痛み-気になるからだの危険信号 痛み-
MSDマニュアル家庭版:尿道炎
原因2. ホルモンバランスの変化
生理がくる1~2週間前ぐらいになると「エストロゲン」というホルモンが低下します。これにより膣や外陰部の粘膜が乾燥し、皮膚が薄くなることがあります。
皮膚が薄くなることで、少しの刺激や摩擦でも痛みが生じ、陰部に不快感やツーンとした痛みを感じやすくなることがあります。
さらに生理前は「プロゲステロン」というホルモンも変動します。
プロゲステロンの変動は骨盤内の血流の増加や、組織の腫れ、むくみなどを引き起こすことがあり、それにより骨盤や陰部に圧迫感をおぼえたり、ツーンとした痛みを感じることがあります。
原因3. 細菌性膣炎
細菌性膣炎とは、膣内の細菌バランスが崩れてしまうことで発生する炎症です。
膣内に炎症がおこり神経を刺激するため、陰部の痛みや不快感に繋がります。
細菌性膣炎は性病ではないため、性行為がなくてもおこります。
ツーンとした痛みだけでなく、灼熱感やかゆみ、刺すような痛みなども感じることがあるのも特徴です。
おりものから魚のような強い独特な悪臭がすることが多いので、おりもののニオイがいつもと違うと感じたら注意しましょう。
原因4. クラミジア・ヘルペス
クラミジアは、クラミジア菌という菌が体に侵入しておこる性感染症。ヘルペスはヘルペスウイルスが侵入しておこる感染症です。
感染後は無症状なことが多いですが、症状が出ると排尿時のツーンとした痛み、不快感などが出ることがあります。
クラミジアやヘルペスなどの性感染症は、放置していると思いもよらない健康リスクや合併症が発生する可能性があります。
女性は特に、不妊症や子宮外妊娠などに繋がることもあるので、感染している可能性がある場合はすぐに病院を受診しましょう。
【セルフチェック】原因の見分け方
陰部のツーンとした痛みの原因を見分けるには、4つのポイントに注目してチェックしましょう。
- 痛みを感じるのはいつなのか
- どの部分が痛むのか
- おりものの色やニオイ
- 痛み以外の不快感はあるか
痛みを感じるのはいつなのか
排尿時に痛む
・尿路感染症(膀胱炎、尿道炎など)
・細菌性膣炎
・クラミジア、ヘルペス
生理前などの特定の時期に痛む
・ホルモンバランスの変化
歩行時や座っている時に痛む
・細菌性膣炎
解説
尿路感染症の場合は尿道や膀胱で炎症が起きているため、特に排尿時に痛みが強く感じられます。
細菌性膣炎の場合は排尿時に痛みを感じることもありますが、歩行時や座っている時など、陰部が圧迫された時にも痛みを感じることがあるのが特徴です。
ホルモンバランスの変化が原因の場合は排尿時など関係なく、生理前の期間にいきなり痛みを感じやすくなることがあります。
クラミジアやヘルペスの場合は無症状の場合もありますが、痛むことがあれば排尿時であることが多いです。
どの部分が痛むのか
膀胱や下腹部
・尿路感染症
下腹部や骨盤付近
・ホルモンバランスの変化
膣の内側や外陰部
・細菌性膣炎
・クラミジア、ヘルペス
解説
尿路感染症は膀胱や尿道付近、特に下腹部の恥骨の上あたりに圧迫感や鈍痛を感じます。
ホルモンバランスの変化が原因の場合は、局所的な鋭い痛みではなく、骨盤付近全体に鈍い痛みがあるのが特徴です。
細菌性膣炎やクラミジア、ヘルペスの場合は膣内に炎症が起きているため、外陰部や膣周辺に鋭い痛みを感じることが多いです。
おりものの色やニオイ
おりものに変化はない
・尿路感染症
・ホルモンバランスの変化
・ヘルペス
おりものの色やニオイに異常がある
・細菌性膣炎
おりものの量が増えることがある
・クラミジア
解説
細菌性膣炎は、魚のような独特なニオイのおりものが出るのが特徴です。その他、おりものが灰色っぽくなったり、通常よりも量が増えたりすることがあります。
痛み以外の不快感はあるか
残尿感や頻尿
・尿路感染症
かゆみや灼熱感
・細菌性膣炎
・クラミジア、ヘルペス
特にない
・ホルモンバランスの変化
解説
尿路感染症の場合は、頻繁にトイレに行きたくなったり、トイレに行っても尿が出ない、などの不快感があります。残尿感をおぼえることがあるのも特徴です。
細菌性膣炎やクラミジア、ヘルペスなどは膣内の炎症のため、陰部にかゆみや灼熱感があることがありますが、クラミジアとヘルペスは無症状のことが多いため、必ずしもかゆみなどがないからといって感染していないとは言い切れません。
少しでも陰部に違和感があったり、感染の疑いがある場合はすぐに病院を受診しましょう。
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2022-07-28
「何度も膀胱炎に繰り返す…」
「病院は婦人科に行けばいいの?」
女性が膀胱炎を繰り返す原因について、お医者さんに聞いてみました。
「泌尿器科に行くケース」と「婦人科に行くケース」も紹介しているので、診療科に迷っている人は必読です。
女性に多い「膀胱炎を繰り返す6つの原因」
尿を我慢する習慣
水分の摂取不足
便秘・下痢
「抗菌薬」の効き目が悪い
膣内の免疫機能が低下している
「細菌性膣症」を患っている
膀胱炎は、尿道に細菌が感染することで発症します。
女性が膀胱炎を繰り返す場合、原因として上記の6つが考えられます。
それぞれ解説していきますので、心当たりのあるものがないか確認してみましょう。
原因① 尿を我慢する習慣
膀胱内で尿が溜まる時間が長くなると、膀胱内で細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎の発症リスクが上昇します。
原因② 水分の摂取不足
水分の摂取量が少ないと、尿が排出されにくくなります。
その結果、雑菌が膀胱で繁殖しやすくなり、膀胱炎の発症につながります。
原因③ 便秘・下痢
便秘・下痢が多い人は、便に含まれる細菌が尿道に感染して、膀胱炎を発症しやすくなります。
便秘の場合、肛門付近に便がとどまり続けることで、細菌感染のリスクが上がると考えられています。
また、女性は膣と肛門が近い構造になっています。
尿道も男性より短く、細菌が膀胱内に入りやすいため、便の影響で膀胱炎を発症しやすくなります。
原因④ 「抗菌薬」の効き目が悪い
膀胱炎の「原因菌」と「抗菌薬」の相性が悪い場合、菌を除去しきれないことがあります。
膀胱に除去しきれなかった細菌が残り続けていると、膀胱炎を再発しやすくなります。
また、「完治しないまま抗菌薬の服用を止めた」という場合も、膀胱炎を繰り返す可能性が高くなります。
原因⑤ 膣内の免疫機能が低下している
膣内の免疫機能が低下していると、雑菌が繁殖しやすくなるため、膀胱炎の発症リスクが高くなります。
特に、
生理中
妊娠中
更年期
ストレス・疲労が溜まっている
いずれかに当てはまる人は、免疫力が低下して膀胱炎を発症しやすいです。
「生理中」「妊娠中」「閉経後」の場合、女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌量が低下します。
これにより膣内の善玉菌が減少すると、悪玉菌が増えて膣内環境が悪化しやすくなります。
原因⑥ 「細菌性膣症」を患っている
細菌性膣症とは、膣内で細菌が増えすぎてしまう状態です。
細菌を含んだ「オリモノ」が膣から尿道に侵入してしまうため、膀胱炎が再発してしまいます。
こんな「オリモノ」は、細菌性膣症かも
量が多い
臭いが強い
色が濃い
女性の繰り返す膀胱炎は「泌尿器科」へ!
膀胱炎を繰り返す女性には、泌尿器科の受診をおすすめします。
特に、
排尿痛
頻尿
残尿感
排尿困難
などの症状に心当たりがあるときは、泌尿器科で相談しましょう。
泌尿器科の医師は、「膀胱」や「尿路」が専門分野です。
受診すると、膀胱炎を繰り返してしまう原因を調べてもらえます。
泌尿器科を探す
こんなときは「婦人科」へ!
尿検査を行っても細菌が検出されない
「下腹部」や「膣」の痛み・かゆみ・違和感を伴う
抗生物質(抗菌薬)を服用しても症状が改善しない
上記のような症状がある場合は、婦人科の受診を検討してみましょう。
上記症状には、膀胱炎に似た症状が出る「婦人科の病気」も疑われます。
原因が「子宮」や「膣」の病気だった場合、婦人科で治療を受けると快方に向かいやすくなります。
膀胱炎に似た症状が出る「婦人科の病気」
膀胱炎に似た病気
特徴的な症状例
過活動膀胱
頻尿/尿意切迫/膀胱痛
骨盤臓器脱
頻尿/排尿困難/尿失禁/陰部違和感
子宮筋腫
頻尿/尿意切迫/尿失禁
子宮内膜症
頻尿/排尿痛/下腹部痛
細菌性膣炎
オリモノの増加/オリモノの色が濃くなる/頻尿
間質性膀胱炎
下腹部の痛みや違和感/陰部の違和感
婦人科で受診する際に伝えるとよいこと
膀胱炎を発症した回数
出現している症状
症状が出現した時期
生理不順や生理痛の有無
おりものの異常の有無
出産経験の有無
患ったことのある病気
上記のことを伝えることで、診察がスムーズに進むと考えられます。
婦人科を探す
膀胱炎の診察「陰部を見せなきゃだめ?」
「泌尿器科」 → 初診で陰部を診ることは少ない
「婦人科」 → 初診から陰部を診ることが多い
といった傾向があります。
婦人科で陰部を診ることが多いのは、婦人科系の病気の有無を調べるためです。
ただし、「内診に抵抗がある」といった旨を医師に伝えると、違う検査方法を検討してもらえる場合もあります。
特に「内診が必要」なのは、こんなケースのとき
不自然なオリモノ・不正出血がみられる
下腹部痛を伴う
外陰部のかゆみ・痛みを伴う
性器脱が疑われる
などの婦人科疾患が疑われる場合、内診で陰部を診るケースが多いです。
膀胱炎の診察・検査の方法
一般的には、
問診
腹部や背中の触診
尿検査
が行われるケースが多いです。
また、必要に応じて、「膀胱鏡」「血液検査」「腹部エコー検査」などが行われるケースもあります。
※初診の際に行われる診察・検査は、受診する病院により異なることがあります。
泌尿器科を探す
婦人科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
一般社団法人 奈良県医師会 膀胱炎はなぜ再発するのでしょうか
【対処法】ツーンとした痛みを和らげる方法
温かいお風呂に入る
温かいお風呂に入り、骨盤周辺や腹部の筋肉をリラックスさせるのがいいでしょう。
筋肉の緊張が和らぐと痛みが軽減されることがあります。また、血流がよくなることで痛みや炎症を引き起こす物質が排除され、痛みが軽減されやすくなります。
特にホルモンバランスの変化によるツーンとした痛みの場合は、こわばった筋肉がほぐれるため、痛みが和らぎやすくなります。
また、尿路感染症や細菌性膣炎などの場合でも、根本的な治癒にはなりませんが、温かいお湯が患部に触れることで局所的な痛みの緩和に繋がります。
病院で治療中でも痛みが引かない時などは試してみるといいでしょう。
尿路感染症や細菌性膣炎、性感染症の場合はきちんと病院へ行こう
尿路感染症や細菌性膣炎、性感染症は、適切に治療をしないと感染が広がる可能性があります。
自然治癒はなかなか難しいので、すぐに病院で診てもらいましょう。
ツーンとした痛みがあるということはすでに炎症を起こしてしまっている段階ですので、早めに治療をする必要があります。
放っておくと慢性的になったり、より重大な健康リスクを引き起こします。
早めに検査をして、適切な治療を始めることが大切です。
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2023-02-09
作品紹介
中学生の頃から重い生理痛に悩まされていた主人公の「私」。
気を失いそうなほどの痛みがあっても、鎮痛剤でごまかしながらの生活を続けていた。
そんなある日、会社の健康診断で婦人科検診を受けた私は、「子宮内膜症」と告げられる。
本作品の著者であるキクチさんが、ご自身の実体験をもとに描いたコミックエッセイです。
次の話>
キクチ さん
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