腎盂腎炎の原因はストレス?前触れは?どれくらいで治る?病院に行く目安も

更新日:2024-12-06 | 公開日:2023-02-28
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腎盂腎炎の原因はストレス?前触れは?どれくらいで治る?病院に行く目安も

腎盂腎炎の原因はストレス?
腎盂腎炎の治療期間はどれくらい?

腎盂腎炎を発症する原因についてお医者さんに聞いてみました。

腎盂腎炎の症状の特徴や治療法も紹介します。

監修者
経歴

2010年、広島大学医学部医学科卒業。成田赤十字病院、千葉県がんセンター、大阪赤十字病院などで研鑽を積み、2024年春から現職。

患者様のニーズに応え、分かりやすい説明により安心して受けられる医療を目指す。

腎盂腎炎はストレスが原因で発症する?

医師男性
腎盂腎炎は腎盂(じんう)が細菌に感染して炎症を起こすことで発症するため、ストレスが直接の原因になることはありません

ですが、ストレスそのものが直接的な原因になるわけではありませんが、ストレスが間接的に腎盂腎炎の発症にかかわる可能性はあります。

腎盂腎炎とは?

腎盂腎炎とは、腎臓の一部である腎盂(じんう)が炎症を起こす病気。細菌が膀胱から尿管を通じて腎臓に到達し、感染を引き起こします。
主に大腸菌が原因になることが多いです。

通常、はじめは尿路感染症がおこり、その後感染が腎臓まで広がった結果として発症します。

腎盂腎炎とストレスの関係

医師男性

腎盂腎炎は細菌の感染によっておこる症状のため、細菌に感染しやすい状態の時に発症しやすくなります。具体的には、

  • 感染症への抵抗力(以下、抵抗力)が低下している時
  • ホルモンバランスの変化

などです。
いずれも「ストレスが多い」時になりやすい状態のため、ストレスがあると腎盂腎炎になりやすいと考えられます。

抵抗力が下がると、腎盂腎炎のきっかけとなる尿路感染症を引き起こす細菌への抵抗力が弱まります。

ストレスがたまるとコルチゾールなどのストレスホルモンが増加し、感染に対する防御機能が弱まることで抵抗力が下がるため、結果として腎盂腎炎になりやすくなると言えます。

睡眠不足や不規則な生活習慣などが続くと腎盂腎炎を発症しやすいのも、生活習慣の悪化でストレスが溜まり、抵抗力が下がることが原因と考えられます。

腎盂腎炎の原因4つ

女性が腎盂腎炎を発症

医師男性

腎盂腎炎の原因となる細菌感染を引き起こす原因としては、主に

  • 抵抗力の低下
  • 尿の流れが妨げられる(尿路の異常)
  • 水分不足
  • トイレの我慢

などです。

ひとつずつ説明します。

原因① 抵抗力の低下

医師男性
通常通りの抵抗力があれば、尿路に侵入した細菌を免疫システムが早い段階で排除してくれますが、抵抗力が低下していると細菌の繁殖を防ぎきれません。
結果として尿路感染症が腎臓まで広がり、腎盂腎炎を引き起こすことにつながります。

抵抗力が低いと、体が細菌と戦うための炎症反応が十分に起こらず、細菌が増殖しやすくなります。
本来なら免疫細胞が細菌を攻撃して感染を抑えますが、抵抗力が弱まるとその働きが鈍くなり、感染が広がりやすくなります。

抵抗力はストレスによって低下するため、十分な睡眠をとること、健康的な食事をとること、リラックスする時間をもつことなどが大切です。

原因② 尿の流れが妨げられる(尿路の異常)

医師男性
尿が正常に流れなくなると長時間尿が膀胱や尿管にたまりやすくなることで、細菌が繁殖しやすくなります。

尿の流れが滞ったり、完全に排泄されず溜まることで尿が細菌の「住処」となり、繁殖しやすくなってしまいます。

尿路結石や膀胱尿管逆流がある場合は尿の流れが妨げられることにつながるため、早めに医師に相談し、解消することが大切です。

原因③ 水分不足

医師男性
水分不足になると尿が少なくなって細菌が体の外に排出されづらくなり、結果として細菌が尿路に残りやすく、増殖につながります。

尿の流れは細菌を体外に押し流す役割がありますが、水分不足で尿が少なくなると、この「流れ」が弱くなり、細菌が尿路内にとどまる時間が長くなります。
特に腎臓から膀胱までの間(尿管や腎盂)で細菌が増えると、腎盂腎炎のリスクにつながります。

さらに、水分不足の状態では尿が濃くなります。
尿が濃くなると膀胱や尿路にたまる尿の量に対して老廃物や細菌の割合が高くなるため、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。

原因④ トイレの我慢

医師男性
トイレ(排尿)を我慢すると、尿が膀胱に長時間溜まったままになります。その溜まった尿の中で細菌が増えやすくなるため、腎臓まで感染が広がりやすくなります。

本来、胱にたまった尿は早めに排出され、細菌も一緒に体外に流れます。
ですがトイレを我慢すると、尿が長時間膀胱にとどまるため、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。

さらに、長時間トイレを我慢すると、膀胱内の圧力が高くなります。
この圧力が強くなると、膀胱にたまった尿が尿管を逆流し、腎臓に届いてしまうことがあります。この状態を「膀胱尿管逆流」と呼び、腎臓が細菌にさらされることで腎盂腎炎になるリスクが高まります。

前触れは?こんな症状が出たら要注意!

医師男性

腎盂腎炎は、前触れとして

  • 頻尿
  • 排尿時の痛みや違和感
  • 尿がにごる、血尿が出る
  • 腰や背中の痛み
  • 全身のだるさや疲労感

があらわれることがあります。

ひとつずつ説明します。

腎盂腎炎の前触れ① 頻尿

医師男性
トイレに行く回数が増えることがあります。特に少ししか尿が出ないのにトイレに行きたくなる場合は、膀胱や尿路の炎症が始まっている可能性があるため注意しましょう。

膀胱や尿路に細菌が侵入して炎症が起こると、膀胱が刺激されやすくなります。この刺激によって、膀胱の容量が少なく感じられたり、少量の尿でも「トイレに行きたい」という感覚が生じます。

頻繁にトイレに行きたくなるけど出ない、という症状が出始めたら注意が必要です。

腎盂腎炎の前触れ② 排尿時の痛みや違和感

医師男性
尿をするときにヒリヒリ感や痛みがある場合は、尿路感染症の初期症状の可能性があります。放っておくと腎盂腎炎まで進行してしまう恐れがあるため、早めに医師に相談しましょう。

尿路(尿道や膀胱)の粘膜が細菌感染によって炎症を起こすと、排尿時に粘膜が刺激されて痛みやヒリヒリ感を感じるようになります。
この症状は通常、尿路感染症(膀胱炎や尿道炎)の段階で現れますが、適切に治療されないと腎盂腎炎に進行することがあります。

腎盂腎炎の前触れ③ 尿がにごる、血尿が出る

医師男性
尿が濁っていたり、血が混じっている(血尿)ように見えたり、強い臭いがする場合は、膀胱の中で細菌が増殖している可能性があります。
早めに医師に相談することが大切です。

細菌が尿路に繁殖すると、細菌や白血球が尿に混ざります。その結果、尿が濁ったり、尿に異臭が出たりします。
また、感染が激しい場合は尿路の粘膜が損傷し、血液が混ざることもあります。

尿に異常があったら細菌が繁殖している可能性が高いため、注意が必要です。

腎盂腎炎の前触れ④ 腰や背中の痛み

医師男性
腎臓が炎症を起こしている場合、腰や背中(特に脇腹あたり)に鈍い痛みや違和感を感じることがあります。
外傷がないのに腰や背中が痛む場合は、腎盂腎炎の前触れの可能性があります。

腎臓は背中側に位置しているため、腎臓で炎症が起こると腰や背中に痛みが生じます。
特に腎臓周辺の神経や筋肉が刺激されることで、腰や脇腹のあたりに鈍い痛みや違和感が現れます。

腎盂腎炎の前触れ⑤ 全身のだるさや疲労感

医師男性
普段よりも体がだるい、疲れが取れないと感じることがあります。これは感染による体の負担が原因です。

腎盂腎炎が進行すると、体全体が感染と戦おうとするためエネルギーを消耗します。
また、炎症が腎臓で起こると、腎臓の働きが一時的に低下し、老廃物が体内に溜まりやすくなります。この老廃物の蓄積も全身の疲労感やだるさを引き起こします。

【対処法】おすすめの市販薬は?

医師男性
腎盂腎炎は細菌感染によって引き起こされるため、市販薬での治療は難しく、病院で処方される抗生物質が必要です。
市販薬では腎盂腎炎の原因となる細菌を完全に排除することができないため、早めに医師の診察を受けて適切な治療を受けるようにしましょう。

根本的な治療薬ではなく、あくまで発熱、痛みを和らげるサポートとしては応急処置として解熱鎮痛薬を使用できます。

  • イブA錠
  • ロキソニンS

などを使用すると、高熱や腰の痛みの一時的な緩和が期待できます。

ですが、あくまでこれはどうしてもつらい時の一時的なものです。
必ず早めに病院を受診しましょう。

腎盂腎炎は自然に治る?

医師男性
腎盂腎炎は自然に治ることはほとんどありません。
腎盂腎炎が疑われるときはなるべく早く、病院を受診するようにしてください。

腎盂腎炎は放置していると敗血症などの病気に発展しやすい感染症のひとつのため、早期に適切な治療を受けることが大切です。
腎臓は血流が豊富な臓器で、感染した細菌が直接血液中に入りやすい特徴があります。細菌が血液中に入ると全身に広がり、敗血症を引き起こす可能性があります。

また腎臓は体の老廃物を排出する重要な臓器のため、感染により機能が低下すると全身状態が急速に悪化する可能性があります。そのため、早期に適切な抗生物質による治療を開始することが重要です。

病院は何科?行く目安は?

医師男性
腎盂腎炎が疑われる時は、泌尿器科内科を受診しましょう。

泌尿器科は尿路や腎臓の病気を専門的に診る科です。腎盂腎炎や膀胱炎など、尿に関するトラブルを扱います。
発熱や全身の症状がある場合、最初に内科を受診して検査を受けることも可能です。必要があれば泌尿器科に紹介されます。

どちらに行っても適切な治療を受けられますので、迷ったときは近くの内科を受診しても大丈夫です。

病院に行く目安

医師男性
  • 腰や脇腹の痛み
  • 排尿時の痛み
  • 38℃以上の発熱
  • 血尿、濁った尿
  • 強いだるさ、食欲不振

などがみられた場合は腎盂腎炎が進行している可能性があります。早めに病院を受診しましょう。

特に、腰の痛み、発熱、尿の異常が重なったら早急に病院へ行くのが大切です。
放置していると、再発を繰り返して腎機能が低下し、慢性腎不全を発症したり、腎移植や透析を受ける必要が出てきます。

膀胱炎や軽い尿路感染症の段階で治療すれば腎盂腎炎への進行を防ぐことができるので、不安なときは自己判断せず、医師に相談することをおすすめします。

腎盂腎炎はどれくらいで治る?何日休めばいい?

医師男性
適切な抗生物質などの薬を使って治療を行えば、一般的には1週間~10日ほどで回復する場合が多いです。
発熱や痛みなどの症状は治療を始めて2~3日以内に軽くなることが多いです。

自宅療養が可能な軽症の場合は、通常3~5日程度休めばいいことが多いです。
仕事や学校へ戻るタイミングは熱が下がり、体のだるさが取れてからにしましょう。

【予防法】腎盂腎炎を発症しないためには?

医師男性

腎盂腎炎にならないためには、日ごろから

  • 水分をしっかり摂る
  • トイレを我慢しない
  • 尿道付近を清潔に保つ
  • 疲れすぎないようにする
  • 体が冷えないようにする

などに気を付けましょう。

予防法① 水分をしっかり摂る

水をたくさん飲むことで、尿の量が増え、尿路にたまった細菌を洗い流すことができます。また、尿が濃くならずに済むため、細菌が繁殖しにくくなります。

1日にコップ6~8杯(約1.5~2リットル)の水を目安に飲みましょう。

予防法②トイレを我慢しない

尿が膀胱に長くたまると、細菌が増殖しやすくなり、腎盂腎炎の原因になります。トイレを我慢せず、尿意を感じたらすぐに排尿しましょう。

予防法③ 尿道付近を清潔に保つ

尿道口やその周辺を清潔に保つことで、細菌が体内に侵入するのを防げます。

排尿後だけでなく、性交後にも細菌が尿道に入りやすくなるため、適切なケアを行うことが大切です。
入浴時にデリケートゾーンを軽く洗い流す習慣をつけましょう。ただし、強い石鹸やゴシゴシ洗うことは避け、肌に優しいケアを心がけてください。

予防法④ 抵抗力を高める

抵抗力が低下すると細菌に感染しやすくなります。

抵抗力を高めるために、バランスの良い食事や十分な睡眠をしっかりとり、ストレスをため込まないような生活習慣が大切です。

予防法⑤ 体が冷えないようにする

体を冷やすと抵抗力が低下し、細菌に感染しやすくなります

特に下半身を冷やさないように、寒い季節には温かい服装を心がけましょう。下着は通気性の良い素材を選び、清潔なものに毎日取り替えることが大切です。

なぜ?女性が腎盂腎炎になりやすい理由

医師男性

腎盂腎炎は女性に多い病気です。これは

  • 肛門(大腸菌などが発生する)と尿道の距離が近い
  • 尿道が短い
  • 妊娠して子宮が大きくなると尿管が圧迫され、尿の流れが悪くなる
  • 生理や性交で陰部が不衛生になることがある

などが理由として考えられます。

腎盂腎炎の重症度はどう判断する?

重症度

症状の特徴

軽症

  • 背中の肋骨と脊椎が三角に交わる「三角部」の痛み
  • 微熱

重症

  • 高熱
  • 悪寒
  • 嘔吐
  • 側腹部痛
  • 腰背部痛
「三角部」
医師男性
軽症の腎盂腎炎の場合、背中の肋骨と脊椎が三角に交わる「三角部」の痛みや、微熱があります。
重症の場合には、高熱、悪寒、嘔吐、側腹部痛、腰背部痛がみられることがあります。

※ただし一般的に、症状のみで重症や軽症を判断するのは難しいとされています。
少しでも異変を感じたら事後判断せず、医師に相談しましょう。

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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。

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