「神経を抜いた歯を押すと痛い…」
神経がないはずなのになぜ痛むのか、歯医者さんにお聞きしました。
再度治療を受けた方がいいケースもあるので、要注意です。
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歯は健康に欠かせません。美味しいものを食べる・会話をする・美しい表情を保つ…、健康な歯は人生の質を高めます。歯の正しい知識を知って、より健康な日々を手に入れましょう。
神経を抜いた歯を押すと痛い…これって大丈夫?
神経を抜いたのに、押すと歯が痛みます。大丈夫でしょうか?
神経を取った後の数日間生じる違和感や痛みは、あまり心配いらないケースが多いです。
神経を抜いた歯から痛みを感じているのではなく、その周辺の神経が過敏になって、痛みを感じているのでしょう。
歯の中にある神経(歯髄)を取り除いても、歯の根の周囲にはたくさんの神経が張り巡らされています。そのため、神経を抜いた後も痛みが生じることがあります。
いつまで痛みは続く?
過敏になっている歯は治療の刺激により2~3日痛みが生じることがあります。
治療後から数ヵ月間、違和感が続くこともありますが、徐々に気にならなくなるでしょう。
「歯根膜炎(※1)」や「根尖性歯周炎(※2)」など、根の周囲にまで炎症が及んでいた場合、完全に根の周囲の組織が回復するのは数ヵ月以上かかることもあります。
※1歯根膜炎
歯を支える骨と歯との間にある歯根膜に細菌が感染し、炎症が起こっている状態を歯根膜炎と言います。
歯の割れや隙間から細菌が入り込むことで発症します。また、歯軋りや外傷刺激によっても炎症が起こることがあります。
歯が浮いた感じや歯肉の腫れ・発熱、噛むと痛みを感じることが多いです。
※2根尖性歯周炎
根尖性歯周炎は歯の根の中が腐敗し、細菌が増殖することで歯の根の先に膿の袋ができる病気です。
歯の根の先や、根の周囲の組織に炎症が起こっている状態なので、歯を叩いたり、噛んだりすると痛みが生じます。
“腫れ”や“熱”を持っている場合は歯科へ!
神経を取った後、
- 痛みがどんどん強くなる
- 歯茎が腫れてくる
- 1週間以上経っても押すと痛い
- 熱を持っている
といった場合は、早めに歯科で治療を受けてください。
「根尖性歯周炎」になっているかも!
神経を抜く治療をした直後は何も問題がなかったのに、数か月~数年後に痛みが生じ、歯茎が腫れたり、膿が出ていたりする場合は歯の中に細菌が侵入し、「根尖性歯周炎」になっている可能性が高いです。
治療後のわずかな隙間・歯の割れ・虫歯の再発などが原因となり、歯の根の中に細菌が侵入すると、「根尖性歯周炎」を発症することがあります。細菌は歯の根の中で増殖し、根の先端から体内に侵入しようとします。それを防ぐために体は防御反応として炎症を起こし、歯の根の先に膿の袋を作ります。
炎症により痛みが生じ、歯の根の先の歯茎は口内炎のように腫れたり、押すと膿が出てきたりします。この場合も、速やかに歯科へ行ってください。
放置はNG!悪化すると手術が必要になるケースも…
神経を抜いた歯の痛みを治療せずに放置すると、痛みや腫れが増すだけではなく、細菌が顎の骨や全身にまで侵入してしまうこともあります。
悪化するほど、治療の通院回数や費用も多くかかりますし、根管治療だけでは治せず外科的な治療が必要になることもあります。
神経を抜いた歯に変化が生じた場合には速やかに歯科へ行きましょう。
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どうやって治すの?
神経を抜いた後に痛みが強くなる場合、「根管治療」のやり直しと「歯根膜炎」の治療を行うことが多いです。
「根管治療」ってどんな治療?
根管治療は歯の根の中に繁殖した細菌を除去し、防腐剤を詰める治療方法です。
被せものと根の中に詰めた防腐剤を除去し、根の中の洗浄、消毒を再び行います。
根の中の細菌を取り除いた後、再び防腐剤を詰めます。
歯の割れが原因で細菌が侵入してしまった場合、その部分を補うことができないようであれば、根管治療をしてもまた細菌感染を起こしてしまうので、抜歯することがあります。
「歯根膜炎の治療」ってどんなことをするの?
歯の根の先から歯根膜へ炎症が波及したのが痛みの原因なので、根管治療を行います。
歯の根の中を洗浄・消毒すれば、歯根膜炎も治まっていきます。
歯根膜炎の原因は歯ぎしりなどの外からの刺激や虫歯など細菌によるものがあります。
神経をとった歯が押すと痛む場合、歯根膜炎を起こしていることが多く、根の中に問題があると考えられます。
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2020-04-30
「歯が痛いのに虫歯じゃないと言われた」
「夜になると歯が痛い…もしかしてストレス?」
歯以外の原因によって歯が痛むケースもあります。
心当たりのある症状がないか、確認してみましょう。
虫歯じゃないのに歯が痛いのはなぜ?
虫歯ではなくても、「歯周病」「噛み合わせ」などが原因で歯が痛くなることがあります。
「ストレス」が原因のケースもある!
ストレスが原因で、脳に痛みを伝達する神経のシステムに異変が生じると、歯が痛いと感じる場合があります。
また、ストレスによる免疫力の低下、歯ぎしり、食いしばりも歯の痛みを誘発する可能性があります。
虫歯以外で歯が痛む「3つの原因」
歯痛の原因が虫歯でない場合、
歯周病
歯根膜炎
智歯周囲炎(親知らず)
といった病気が考えられます。
原因① 歯周病
細菌によって歯茎に炎症が起こり、次第に歯の骨を溶かしていく病気です。
歯周病の痛みの特徴
歯周病自体に痛みはありません。
歯周病菌が増殖すると歯茎に炎症が起こって腫れ、歯磨きで歯ブラシが当たったり、熱いものや冷たいものを飲食したりしたときに、痛みを感じることがあります。
対処法
治療するには歯石を取り除く必要があります。
ご自身で全ての歯石を取り除くのは難しいので、歯科で治療を受けましょう。
歯周病は、放置すると歯が抜けてなくなるため、注意が必要な病気です。
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原因② 歯根膜炎
歯の根っこ周辺に入り込んだ細菌によって、歯根膜周辺が炎症を起こしている状態です。
歯根膜炎の痛みの特徴
腫れや熱感を感じます。噛んだ時に痛みを感じます。
対処法
歯根の治療が必要です。
歯科で治療を受けましょう。
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原因③ 智歯周囲炎(親知らず)
親知らずの周囲の歯肉に、炎症が起こっている状態です。
智歯周囲炎(親知らず)の痛みの特徴
ズキズキと痛みます。
痛みには個人差がありますが、強い痛みが出ていると何も手につきません。
対処法
安静にしていると痛みがなくなる場合もあります。
しかし、何日かかるかわからないので痛みが強い場合は、早めに歯科を受診してください。
歯科では、炎症を抑える薬、痛み止め、レーザー治療などで対応します。
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原因が「別の病気」にあることも…
歯以外の原因で歯が痛むことを「非歯原性歯痛」といいます。
この場合、歯や口腔環境に異常が見られないことも多いので、歯科での治療が難しいケースがあります。
非歯原性歯痛を引き起こす原因にはいくつか種類があり、
アゴを動かす筋肉の痛み
神経痛
頭痛による痛み
副鼻腔炎による痛み
心臓病による痛み
心の病気による痛み
などが挙げられます。
それぞれの症状の特徴と共に解説します。
原因① アゴを動かす筋肉の痛み
歯ぎしりや食いしばりなどで慢性的に筋肉に負担が掛かり、筋肉が疲労した結果生じる痛みです。
この痛みを、歯の痛みと勘違いしてしまうケースがあります。
痛みの特徴
力の負担がかかりやすい上と下の奥歯に鈍い痛みが起きやすく、痛みが24時間続く場合もあります。
対処法
口のストレッチや筋肉のストレッチ、マッサージを行い、血流を改善しましょう。
◆口のストレッチ方法
口を開け、舌を左右や上下に動かします。
また、「あ・い・う・え・お」と口を動かしてみましょう。
朝起きた時や、休憩時間などに行うと、口周りが柔軟になりやすいです。
原因② 神経痛
「帯状疱疹」や「三又神経・舌咽神経の異常」が原因となって、歯に神経痛が起こる場合があります。
<帯状疱疹(たいじょうほうしん)>
帯状疱疹ウイルスによる感染症。
皮膚の発疹、水ぶくれなどの症状が特徴。
<三又神経(さんさしんけい)>
頭部の感覚を脳に伝える神経。
この神経が血管に圧迫されると、痛みが起こる。
<舌咽神経(ぜついんしんけい)>
知覚や味覚を司る神経。
三叉神経と同じく、血管による圧迫が痛みを引き起こすことが多い。
痛みの特徴
ジリジリするような痛み、ツーンとするような激しい痛みなどが起こります。
洗顔や歯磨きするときに、痛みを誘発することがあります。
三又神経・舌咽神経の異常の場合、上の前歯の二つ隣に位置する歯や、下顎奥歯の周辺に痛みが出やすいです。
対処法
痛む箇所を冷やしてみると痛みが和らぐこともあります。
何度も痛みを繰り返す場合は、専門医の治療が必要です。まずは歯科を受診して相談しましょう。
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原因③ 頭痛による痛み
片頭痛や群発性頭痛によって、歯に痛みが生じることがあります。神経血管性歯痛といいます。
痛みの特徴
何時間か痛みが続いた後、消失するケースが多いです。
対処法
市販の痛み止めで対応ができます。
ただし、何度も繰り返す場合は、脳神経外科、脳神経内科で相談してみましょう。
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原因④ 副鼻腔炎による痛み
副鼻腔炎によって上顎の奥部分に炎症が起こると、鼻の左右にある空洞(上顎洞)の周りに圧迫感が出ます。
この圧迫感を、歯の痛みと勘違いしてしまうことがあります。
痛みの特徴
上の歯に痛みを感じます。
体を動かすと歯に響くような感覚が生じたり、痛みが数日続くケースが多いです。
対処法
鼻水はすすらないで、出すようにしましょう。
また、ご自身だけでの対処は難しいため、耳鼻いんこう科で治療を受けましょう。
副鼻腔の炎症を抑えるには、溜まっている鼻水を取る必要があります。
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原因⑤ 心臓病による痛み
心筋梗塞等の心臓病が原因で歯に痛みが生じる場合があります。
これは、「心臓性歯痛」と呼ばれています。
痛みの特徴
歩くなど、体を動かすことで痛みが現れるケースが多いです。
運動後や興奮した際に、毎回下顎中心に歯痛がある場合は、心臓病が疑われます。
対処法
心臓病を疑うときは、早急に循環器内科を受診しましょう。
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原因⑥ 心の病気による痛み
うつ病、統合失調症などが原因で歯に痛みを感じる場合があります。
抑うつ、イライラ感、不安感などの精神的不調を伴うことが多いです。
痛みの特徴
痛みが出たり治まったりと、1日の中で変動があるのが特徴です。
イライラした時、疲れた時に頻繁に歯痛が起きる場合は、ストレスや精神的な病気の影響が疑われます。
対処法
心の病気を疑うときは、心療内科・精神科で治療を受けましょう。
原因不明のケースも…
特発性歯痛といい、異常が見つからない原因不明の歯の痛みが生じる状態です。
慢性的なジンジンする痛みが、起きている間続くケースが多いです。
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この痛み、自然に治る?
発症原因にもよりますが、自然に改善するケースは少ないと考えられています。
ただし、副鼻腔炎やストレス、神経痛などの場合は、痛みの原因が解消すれば自然に治ることがあります。
この痛み、どう対処すればいい?
対処1. 市販薬の鎮痛剤を使う
「歯が痛いけれど、すぐに病院を受診できない」という場合には、
バファリン
ロキソニン
アセトアミノフェン配合薬
などの市販の痛み止めを使用してもかまいません。
しかし、痛みが長引くときは、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
対処2. 冷やす
炎症が起きている場合は、冷やすことで痛みの緩和が期待できます。
口の中から氷等で冷やす方法や、外側からアイスノン等を用いて冷やす方法があります。
歯に負担をかけないようにしましょう
繊維質の食品や硬い食品の摂取を控えてください。
また無意識に行っている悪い習慣(歯を食いしばる、歯ぎしり等)を見直し改善することも大切です。
病院へ行くべき目安
歯の痛みが10日間以上続いている
歯の痛みが強くなっている
鈍い痛みが長期間続いている
歯の痛みとともに胸も痛くなる
発熱、倦怠感、頭痛等の全身症状がみられる
頬の感覚が鈍くなっている
上記の場合、なんらかの病気が疑われます。
病気を悪化させないよう、早めに受診して治療を受けましょう。
何科を受診すればいい?
歯の痛みは、まず歯科で相談しましょう。
痛みの原因を特定するには、医師の診察を受けることが大切です。
原因が歯にない場合は、適した診療科を案内してもらえます。
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▼参考
一般社団法人 日本口腔顔面痛学会 非歯原性歯痛とは?
全国健康保険協会 東京支部 歯が痛いのに歯が原因ではない? 非歯原性歯痛
非歯原性歯痛 - 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020