「吐いたら血が混じっていた…これは大丈夫?」
ストレスで「胃・十二指腸潰瘍」を起こしているかもしれません。
胃・十二指腸潰瘍の症状や治療法を、お医者さんが解説します。
重症化すると手術が必要になるケースもあるため、放置は禁物です。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
吐いたら血が混じった…!ストレスのせい?
ストレスで胃や腸が弱っていると、嘔吐したときに血が混じることがあります。
ストレスを強く感じると迷走神経が刺激され、胃酸の分泌が増え、胃壁を守るための粘膜の分泌は減ります。
そのため、胃酸によるダメージによって胃や腸に深い傷ができやすくなります。
この場合、嘔吐に血が混じる症状は、胃や腸の血管が破れたときの出血によるもの考えられます。
「マロリーワイス症候群」の可能性も
激しい嘔吐の腹圧によって起こる出血を、「マロリーワイス症候群」と言います。
この症状は、“食道と胃をつなぐ部分の粘膜”が破れることで起こります。
マロリーワイス症候群とストレスに直接的関係はありませんが、ストレスによって過食嘔吐を繰り返す方は発症リスクが高いと言えます。
これって大丈夫…?病院行くべき?
嘔吐物に少量の血が混ざっている程度で、嘔吐の回数も少ないのであれば、心配いらないことも多いです。
この場合は、体をゆっくりと休めて、一旦様子を見てみましょう。
ただし、
- 嘔吐の回数が多い
- 嘔吐するたびに血が混じる
- 血の量が多い
といった症状に当てはまる場合は、病気が疑われます。
重症化した胃潰瘍など、命に関わる病気も考えられますので、早めに医療機関を受診しましょう。
こんなときは救急車を呼びましょう
- 大量に嘔吐している
- めまいや冷や汗がある
- 脈拍が早い
- 血圧が低下している
上記の症状がある場合は、自分で動くのは危険です。
すみやかに救急車を呼びましょう。
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吐いたら血がでた…。これって大丈夫なの?
吐しゃ物に血が混じる症状について、お医者さんに聞きました。
消化器の病気が隠れている可能性があるので、心当たりのある方は要注意です。
吐いたら血が出た!これ大丈夫…?
鼻血が出た際に血が喉にまわった
歯茎や口の中に傷が生じ、その血が混ざっている
など原因が分かっている場合は、一旦様子を見てもよいでしょう。
こんな症状は要注意!
ただし、出血の原因がわからず
二日酔いで吐いたら血が出た
喉やお腹に痛みがある
みぞおちに痛みがある
大量に吐血した
黒またはこげ茶色の血液が出た
真っ赤(鮮血)な血液が出た
脈拍が早く弱くなる
顔が青ざめていて、全身から冷や汗が出ている
血便を伴う
めまいがする
意識障害が起こる
呼吸不全が起こる
という場合は、早急に内科、消化器内科に行ってください。
胃粘膜などに傷や病変ができている可能性が高いです。
吐血があるのに放置すると、症状が悪化して合併症を併発したり、重症化して命を落とす危険があるので速やかに病院を受診しましょう。
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吐血を伴う4つの病気
吐瀉物と一緒に血が出るのは
マロリー・ワイス症候群
急性胃粘膜病変(胃炎・胃潰瘍)
胃潰瘍
逆流性食道炎
など病気が原因となっているケースが多いです。
原因① マロリー・ワイス症候群
激しい嘔吐を繰り返すことで、食道に強い圧がかかり、食道と胃の境目の粘膜に亀裂が起こって裂けるため、出血が生じます。
マロリー・ワイス症候群の原因
暴飲暴食
アルコールの過剰摂取
胃腸炎
妊娠中のつわりによる嘔吐
マロリー・ワイス症候群を発症しやすい人
アルコールを過剰に飲む人(若い世代)
妊婦
胃腸炎を起こした人
マロリー・ワイス症候群の主な症状
主な症状は吐血です。
鮮血が大量に出るケースもあります。
吐血以外には、血便(黒っぽい色)・みぞおち周辺の痛み・貧血・立ちくらみ等の症状が出現する場合があります。
どう対処すべき?
吐血が続く場合は早急に病院を受診してください。
吐血が一度だけの場合はさほど心配する必要はないですが、まれに何らかの病気が隠れていることもあるので、念のため病院を受診することをおすすめします。
原因② 急性胃粘膜病変(胃炎・胃潰瘍)
何らかの原因によって、胃液による自己消化を予防するための「胃粘膜防御機構」が破壊され、胃粘膜に出血を伴うただれ(びらん)や潰瘍が数多く発生する病気です。
「胃炎」と「胃潰瘍」を一括して急性胃粘膜病変と呼んでいます。
急性胃粘膜病変の原因
刺激が強い飲食物の過剰摂取(アルコール、コーヒー、香辛料等)
精神的・身体的ストレス
薬剤等の化学物質(抗生物質、解熱鎮痛剤、洗剤、農薬、副腎皮質ホルモン剤等)
食中毒
食物アレルギー
内臓疾患など
急性胃粘膜病変を発症しやすい人
アルコールやコーヒーを過剰摂取する人
ストレスが溜まっている人
内臓疾患を患っている人
急性胃粘膜病変の主な症状
吐き気・嘔吐・吐血・下血・胃周辺の強い痛みや不快感等の症状が出現するケースが多いです。
どう対処すべき?
「急性胃粘膜病変」は自分で治すことが難しい病気です。まずは病院を受診しましょう。
軽症の場合は、原因物質を除去とお薬を飲み、経過観察するケースが多いです。
重症の場合は、入院し「食事制限」「点滴治療」「薬物治療」が行われます。
原因③ 胃潰瘍
何らかの原因で胃粘膜のバリア機能が低下し、胃液や胃酸にさらされて、胃粘膜組織が深く傷つけられる病気です。その傷から出血し、吐血につながります。
胃潰瘍の原因
ピロリ菌感染
薬剤の常用(鎮痛剤、ステロイド等)
アルコールやコーヒーの過剰摂取
ストレス過多
暴飲暴食
喫煙
食生活の乱れ
胃潰瘍を発症しやすい人
男性に多くみられます。また更年期世代の女性も多いです。
アルコールの過剰摂取・ストレス過多・薬剤の常用・喫煙者・刺激が強い飲食物(コーヒー、香辛料等)の過剰摂取・脂肪分や糖分を過剰摂取している人は、発症リスクが高まると考えられています。
胃潰瘍の主な症状
吐血・食後に胃の周辺に痛みが生じる・胸やけ・胃もたれ・背中の痛み・お腹の張り感・食欲低下・血便(黒っぽい色)等の症状が出現します。
どう対処すべき?
「胃潰瘍」は、病院での治療が必要な病気です。
内視鏡検査やピロリ菌感染の有無を調べる検査等を行い、症状に合った治療や薬の処方をしてもらうことで早期改善が期待できます。
病院の受診後、生活習慣の改善を心がけましょう。
生活習慣の改善方法
改善するまでは禁酒にする。
*改善されたら、アルコールは1日20g(女性は10g)まで(ビール500ml)
コーヒーは1日2杯(約300ml)まで(ブラックは避ける)
玉露や紅茶などカフェインの多いものは避ける
禁煙をする
胃に負担になる脂っこいものは避ける
7時間ほどの睡眠を確保する
胃を刺激する香辛料は避ける
塩っ辛いものは避ける
原因④ 逆流性食道炎
「逆流性食道炎」は、胃から食道へ、胃酸(酸性の胃液)が逆流することが原因であると考えられています。繰り返すと、食道潰瘍になり食道から出血が起こります。
逆流性食道炎の原因
主な原因として
ストレス
肥満
更年期
などがあげられます。
逆流性食道炎を発症しやすい人
アルコールや炭酸飲料の過剰摂取する人
脂肪分を多く含む食品の過剰摂取する人
喫煙者
太っている人
日常的に腹部を圧迫する下着や洋服を着用している人
逆流性食道炎の主な症状
胸やけ・胸の痛み・みぞおち周辺の痛み・満腹感・胃もたれ・ゲップ・咳・苦みや酸っぱみを感じる・のどに物が詰まる感じがするといった症状が出現します。
どう対処すべき?
逆流性食道炎は不快な症状を伴うケースが多く、合併症を引き起こすこともあるので、病院での治療をおすすめします。
血が出たら…病院は何科?
吐瀉物と一緒に血が出たときは、内科・消化器内科を受診してください。
「少量の吐血だから大丈夫だろう」と軽視してしまうと、がん等の重篤な病気を目逃してしまう恐れがあります。必ず病院に行くようにしましょう。
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▼参考
日本臨床外科学会 ②吐血・下血が見られたら
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット|アルコールの消化管への影響
何科を受診すればいい?
嘔吐に血が混じる場合は、内科・消化器内科を受診しましょう。
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「胃・十二指腸潰瘍」が原因かも…
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃酸によって胃や腸の粘膜が深く傷つくことで発症します。
こんな症状に心当たりはありませんか?
- 胸やけ
- 食欲不振
- 腹痛(みぞおち、右上腹部)
- 吐血
- 胃のむかつき
- 嘔吐、吐き気
胃・十二指腸潰瘍の原因
- ストレス
- 刺激物の摂取
- 喫煙
- 生活習慣の乱れ
- ピロリ菌などの細菌感染
- 薬剤の副作用
などが原因として考えられています。
過度のストレスは胃酸の分泌を促し、逆に胃を守る粘液の分泌を減らしてしまうため、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発症リスクを高めます。
また、刺激物(辛いもの、アルコール、カフェインなど)の過剰摂取にも気をつけましょう。
こんな人に発症しやすい
胃・十二指腸潰瘍は、几帳面で神経質な人、悩みを一人で抱え込んでしまう人に発症しやすい傾向があります。
以前は50代以降の男性や更年期の女性に多くみられる病気でしたが、最近では、若い年代の患者さんも増えてきました。
どうやって治すの?
症状が重い場合は手術することもありますが、薬で治療できるケースが多いです。
処方する薬には、胃液の分泌を抑える薬、胃の粘膜を増加する薬などがあり、服用を続けることで症状が改善されます。
自分の判断で薬を辞めてしまうと再発する恐れがあるため、医師の指示にきちんと従うことが重要です。
改善するために心がけること
生活習慣や食生活を見直し、胃にやさしい生活を心がけましょう。
ストレスを溜め込まない工夫が大切です。
適度な運動を行ったり、十分な睡眠時間を確保したりするなど、ストレス対策を行いましょう。
食生活は、胃に負担をかけない食事を意識してください。
脂肪分の多い食事や香辛料の多い食べ物、コーヒーや紅茶などカフェインを多く含んでいるものは避けましょう。
また、お酒とたばこも改善を遅らせるため、治療期間中は控えましょう。
嘔吐に血が混じるときは、早めに受診しよう
早めに医療機関を受診することで、症状の悪化を防ぎやすくなります。
胃潰瘍が重症化すると、胃に穴が空いたり、大量に出血したりして手術が必要になるケースもあります。
嘔吐に血が混じる場合は、一度医療機関で検査を受けましょう。
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2020-05-19
「お腹の調子が悪い…」
「これってもしかして胃腸炎…?」
心配な方は、ストレス性胃腸炎のセルフチェックリストで、ご自身の症状と照らし合わせてみましょう。
自分でできる対処法から、病院を受診する目安、放置のリスクまでお医者さんが解説します。
「ストレス性胃腸炎」とは
ストレス性胃腸炎とは、不安・緊張・イライラしたときに、お腹に痛みが現れる病気です。
腹痛をはじめ、便秘・下痢・吐き気・めまい・疲労感・不安感・肩こり・頭痛などの症状が現れることがあります。
心因性のストレスが原因の疲労や睡眠不足がきっかけで発症することもあります。
誰でも発症する可能性があるものですが、ストレスを感じやすい人に起こりやすい傾向があります。
ストレス性胃腸炎の症状セルフチェック
胸やけ
下痢
便秘
腹部膨満感
食欲不振
肩こり
頭痛
疲労感
めまい
不眠
上記のチェックリストに当てはまる数が多ければ多いほど、ストレス性胃腸炎の可能性が高いといえます。
治すために「自分でできる」対処法
胃腸に優しい食事をとる
適度な運動をする
生活のリズムを整える
上記3つの対処法をおこなってみましょう。
①胃腸に優しい食事をとろう
やわらかく調理して、よく噛んでゆっくりと食べることも、胃腸への負担を減らします。
胃腸に負担をかけない食事を意識し、暴飲暴食は避けるようにしましょう。
食べ過ぎも胃腸に負担をかけるので腹八分目(もう少し食べられそうと感じるくらい)で食事をやめておきましょう。
やわらかく調理して、よく噛んでゆっくりと食べることも、胃腸への負担を減らします。
<OK>おすすめの食べ物
おかゆや雑炊など、よく煮込まれて消化しやすくなった食べ物がおすすめです。
鍋・煮物など、油を使わずよく加熱されたものよいでしょう。
<NG>避ける食べ物
刺激物(辛いものや酸味の強いもの)や脂っこいものは避けるようにしましょう。
ごぼうやさつまいもなどの食物繊維が豊富なものも、負担になる場合があります。
②適度な運動をしよう
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動でいいので、気分転換にもなるように取り組んでみましょう。
運動も取り入れるとストレスの発散につながります。
③生活のリズムを整えよう
しっかり睡眠をとることで、自律神経のバランスを整えることができます。
生活のリズムが崩れると、ストレスを感じて自律神経のバランスが乱れるため、胃腸炎の悪化に繋がります。
昼間のうちに外出して太陽の光を浴び、夜は同じ時間には寝るようにするなど、できるだけ同じリズムで寝る習慣にするだけでも、睡眠不足が改善されることがあります。
市販薬は何を選べばいいの?
ストレス性胃腸炎を緩和させる市販薬を教えてください。
胃酸分泌を抑制させる薬や、抗うつ薬や抗不安薬、漢方薬など、市販薬でも購入可能なものもあります。
薬剤師に相談して購入するとよいでしょう。
また、市販薬を飲んで2週間以上経過しても効果が見られない場合は病院で治療しましょう。
ストレス性胃腸炎を放置すると…?
ストレス性胃炎を放置していると、症状が悪化して潰瘍ができたり、食欲不振や消化機能の低下により栄養失調につながるがることもあります。
痛みが続く、痛みが激しい、という場合は放置せずに治療を行いましょう。
病院を受診する目安
痛みが1ヶ月以上続く
市販薬を飲んでも効果がない
吐き気(嘔吐)がある
耐えられない激しい痛みがある
血便が出た
という場合は、病院に行きましょう。
病院は何科?
ストレス性胃腸炎の疑いがある場合、内科、消化器内科、心療内科を受診しましょう。
体の症状が強い→内科、消化器内科
心の症状が強い→心療内科
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▼参考
日本赤十字社姫路赤十字病院
大阪みなと中央病院
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。