最近、体が熱くて夜中に目が覚める…。
もしかして、更年期のせい?
夜中に体が熱くなって目が覚めてしまう理由を、お医者さんに聞きました。
更年期によくある症状や、体のほてりを緩和するセルフケアについても解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
体が熱くて夜中に目が覚める…原因は更年期?
「体が熱くて夜中に目が覚める」という症状は、40代半ば~50代くらいの女性であれば、更年期症状として「睡眠時の体のほてり」が起きていると考えられます。
更年期には、女性ホルモンの「エストロゲン」が急激に減少することで、血管の収縮・拡張を調節する「自律神経」が乱れてしまい、体温の調節がうまくできなくなります。
その結果、異常な発汗・ほてり・のぼせなどが引き起こされます。
これらは、「ホットフラッシュ」と呼ばれる、更年期の代表的な症状です。
夜中にも体がほてって汗をかくため、更年期には「眠りが浅い」「眠れない」といった悩みを持つ方が少なくありません。
更年期症状が生じるしくみ
女性ホルモンのエストロゲンは、「循環器・脳・中枢神経系の働き」を調節する機能を担っています。
加齢によって卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌量が低下すると、これらの機能がうまく働かなくなり、全身に不調をきたします。体だけでなく、精神的な不調が現れるケースもあります。
“更年期の症状が出やすい人”の特徴は?
- 不規則な生活を送っている(就寝時間が遅い 等)
- 家庭・仕事・介護等でストレスを抱えている
- 人間関係にトラブルを抱えている
- 仕事の責任が重い
- 真面目・几帳面・完璧主義な性格
不規則な生活を送っている人や、家庭や仕事などでストレスが多い生活をしている人は、更年期症状が出やすいと考えられています。
※あくまでも全体の傾向です。更年期症状のあらわれ方は個人差が大きく、生活習慣や環境、性格以外の要素も影響します。
更年期症状チェック
- 胸がどきどきする
- 息切れする
- めまい・頭痛がある
- 頭や顔がカーっと熱くなる
- 上半身だけが熱く、下半身は熱くない
- 汗がとまらない
- イライラする
- 不安感がある
個人差はありますが、更年期には上記のような身体的・精神的な症状が出ることがあります。
寝苦しい…ホットフラッシュにきく飲み物ってある?
ほてり・のぼせ・発汗といった「ホットフラッシュ」に悩んでいる場合は、
を継続して飲んでみることをおすすめします。
牛乳には、緊張やイライラ感を抑える「カルシウム」が豊富に含まれています。
バナナジュースには、不眠解消の働きをサポートする「トリプトファン」が多く含まれています。
トリプトファンからは「セロトニン」という神経伝達物質が作られます。
このセロトニンには、興奮を抑えて精神を落ち着かせたり、睡眠の質を良くしたりする働きがあります。
これらは、飲んですぐに効果を実感できるものではありませんので、長期的に摂取するとよいでしょう。
セルフケアでできる!体の熱をとる方法
- 深呼吸して心と体をリラックスさせる
- アロマを取り入れる
- 首筋・手首・足首などを冷やす
体のほてり・のぼせなどの症状があるときは、上記の方法を試してみましょう。
それぞれのやり方を解説していきます。
方法① 深呼吸して心と体をリラックスさせる
体のほてりや発汗を感じたら、まずは深呼吸をしてください。
ほてりや汗などの症状は、自律神経が乱れ、「交感神経」が強く働くことで生じやすくなります。
深呼吸すると「副交感神経」が優位になり、リラックスできるため、症状を和らげることが期待できます。
症状が出ていないときでも、仕事や家事の合間などに深呼吸することを習慣にするとよいでしょう。
深呼吸の方法
- お腹を凹ますイメージで、ゆっくりと口から息を吐く
- すべて息を吐ききったら、次は肺を満たすイメージで鼻からゆっくりと息を吸う
- 1と2を5~10回ほど繰り返す
対策② アロマを取り入れる
就寝前や症状が強い時に、アロマの香りを嗅ぎましょう。
などの心を落ち着かせる働きのある香りがおすすめです。
アロマは、嗅覚から自律神経に作用して、心を落ち着かせてくれます。
そのため、急な発汗やほてりなどの症状を和らげることが期待できます。
対策③ 体を冷やす
症状が強い時に、ほてりがある部分や首筋・後頭部などを、保冷剤や濡れたハンカチなどで冷やしましょう。
肘や膝の内側・手首・足首を冷やすのもおすすめです。
皮膚反射(皮膚に与えられた刺激に対する反応)によって、のぼせ・ほてりなどの症状を抑えることができます。
肘や膝の内側・手首・足首は、皮膚が薄く、血管を冷やせるため、体の熱をとりやすいと言われています。
「どうしても眠れない」ときはどうしたらいい?
どうしても眠れない場合は、一度ベッドから出て、
などを行い、穏やかな状態で過ごしましょう。
「早く眠らなきゃ」と焦ってしまうと、かえって眠れなくなることもあります。
できるだけリラックスして過ごし、眠気を感じたら再びベッドに戻るとよいでしょう。
「百会」のツボを押すのもおすすめ
頭頂部にある百会(ひゃくえ)というツボを押してみましょう。
百会のツボを押すと、心を落ち着きやすいと言われています。
「百会」の押し方
- 両手の「4本の指」や「手の平」を使い、息をゆっくり吐きながら、5秒間程度ツボを押す
- ツボを押した後、軽く息を吸う
- ①~②を数回繰り返す
※気持ちがよいと感じる程度の強さで、優しく押しましょう。
こんな症状があったら「婦人科」で相談を!
- 眠れないことで憂うつな気分が続く
- 強い不安感がある
- 食欲がなく、体重が減った
- 息切れ・動悸がする
- めまい・吐き気がする
- 激しい頭痛がある
上記のような症状が出ている方は、一度「婦人科」に相談してみましょう。
放置していると、症状が悪化して仕事に行けなくなるなど、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
また、更年期症状の影響により不眠が続くと、睡眠に対するこだわりが強くなり、眠れないことへの恐怖心から症状が慢性化する恐れもあります。
病院ではどんな治療をするの?
病院では一般的に、
- 女性ホルモンを補う「ホルモン療法」
- 「漢方」による治療
- 「抗不安薬・抗うつ薬」を使った治療
などが行われます。
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2022-08-26
最近、なんだか体調が悪い…。
もしかして、女性ホルモンが減っているせい?
「女性ホルモンが減ると出る症状」をお医者さんに聞きました。
女性ホルモンの減少により“太る”ことはあるかどうかや、症状を改善するための生活習慣についても解説します。
女性ホルモンが減ると出る症状って?
女性ホルモンが減ると、下記のような症状が現れることがあります。
ただし、症状の出方はさまざまで、個人差が大きいです。
ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)
暑くないのに大量の汗をかく
冷え症
倦怠感(疲れやすい)
頭痛
めまい
動悸・息切れ
月経周期の乱れ(月経周期が短くなる/月に2回月経が来る等)
月経日数が減る
経血量の変化(経血量が減る/月経量が急激に増加して貧血を起こす等)
少量の出血がだらだらと続く
女性ホルモンの分泌量が減っても、「全く症状がない」「軽度の症状のみ」「日常生活が困難になるほど症状が重い」というように、現れる症状は一人一人異なります。
女性ホルモンの減少で太ることもある?
女性ホルモンが減ることで、太る可能性もあります。
加齢に伴って「エストロゲン」という女性ホルモンが減少することで、脂肪を代謝する機能が衰えるためです。
エストロゲンには、食欲を抑制するホルモンである「レプチン」の分泌を促進する働きもあります。
そのため、エストロゲンが減少すると、レプチンの働きも低下し、食欲が増えて食べ過ぎてしまうこともあります。
女性ホルモンって増やせるの?
女性ホルモン自体を増やす方法はありません。
ホルモンの分泌量は年齢によって決まっており、加齢とともに減少するからです。
女性ホルモンを“増やす”のではなく、ホルモン分泌のバランスを整えることが大切になります。
特に、女性の体調に大きく作用する「エストロゲン」「プロゲステロン」という2種類のホルモンのバランスが重要です。
エストロゲンとプロゲステロンは、月経周期に合わせて分泌量が変化します。
このバランスが崩れてしまうと、さまざまな体調不良が起こります。
ホルモンバランスを整える「4つのポイント」
ホルモンバランスを整えるには、食事からしっかりと栄養を摂取し、規則正しい生活をすることが大切です。
普段から、以下の4点を意識して生活してみてください。
6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
15~30分程度の軽い運動を定期的に行う
ストレスをこまめに発散する
ポイント① 6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
ホルモンバランスを整えるには、十分な睡眠時間を確保することが重要です。
6~8時間程度の質のよい睡眠をとることを心がけましょう。
ただし、理想の睡眠時間には個人差があります。
朝目覚めたときに疲れがとれていて、日中に眠気を感じない状態であれば、「睡眠が足りている」と判断できます。
“深い眠り”を得るためのポイント
朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる
昼寝は15時までに30分以内にする
夜は23時(遅くとも24時)には寝る
夕方以降は「カフェインを含む食品」を控える
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませる
飲酒は、就寝の3~4時間前までにする
就寝の2~3時間前に入浴する
就寝前はできるだけパソコン・スマホを触らない
ポイント➁ 1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
食生活を改善して腸内環境を整えると、ホルモンバランスが整うことにつながります。
主食・主菜・副菜の揃った食事をとり、バランスよく栄養を摂取しましょう。
ホルモン自体の原料になる「良質なタンパク質」、体内でホルモンがスムーズに機能できるように補助する「ビタミン」「ミネラル」を豊富に含む食品を毎日の食事に取り入れましょう。
また、ミネラルの中でも骨の形成に必須の「カルシウム」、腸内環境を整える作用をもつ「食物繊維」、エストロゲンに似た作用をもつと考えられている「イソフラボン」を含む大豆製品も積極的に摂るようにしてください。
※過度のダイエット(食事制限)や暴飲暴食はホルモンバランスの乱れにつながるので、控えましょう。
栄養素・成分
おすすめの食品
タンパク質
肉類/魚類/卵/大豆製品/乳製品
ビタミン
卵/肉類(レバー)/魚介類/バナナ/ブロッコリー
ミネラル
ブロッコリー/海藻/乳製品/きのこ/小魚
イソフラボン
納豆/豆腐/味噌/油揚げ
食物繊維
玄米/麦めし/とうもろこし/豆類/芋類/キャベツ/白菜/キノコ類
ポイント③ 15~30分程度の軽い運動を定期的に行う
週3~5日(毎日でもOK)、1回15~30分程度を目安に、
ウォーキング
ヨガ
ストレッチ
スクワット
等の軽い運動を行いましょう。
血行が改善されるため、脳や生殖器等の活性化につながり、ホルモン分泌が促進されると考えられています。
なかなか運動の時間が取れない場合は、通勤中にいつもより多く歩くようにしたり、テレビを見ながらストレッチやスクワットしたりするなど、スキマ時間を活用することもおすすめです。
ポイント④ こまめにストレスを発散する
過剰な精神的・身体的ストレスは、ホルモン分泌に悪影響を与えると考えられています。
できるだけストレスを溜め込まないよう、上手に発散する方法を身に付けましょう。
「ストレス発散方法」の例
熱中できる趣味を持つ(ガーデニング・映画鑑賞など)
生活の中に、好きな香りを取り入れる
湯船に浸かってリラックスする
外で日光浴をする
好きな物を食べる(過食はしない)
旅行に行って、気持ちをリフレッシュさせる
ウォーキング・ストレッチなどの軽い運動を習慣にする
気になる症状があるときは、医師に相談を
気になる症状がある
セルフケアを行っても症状の改善が見られない
という場合には、我慢せずに病院で受診してで、医師に相談することをおすすめします。
まずは「婦人科」を受診して、悩んでいる症状について相談してください。
婦人科では、「漢方薬」や「ピル」の処方等、症状改善に有効と考えられる治療を受けられます。
医師に症状を伝えるポイント
今、出ている症状
最も困っている症状
症状が始まった時期
症状が出るタイミング
月経周期・月経期間
直近の最終月経日
既往歴
服用中の薬の有無
生活習慣
受診の際は上記の点を医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
アリナミン製薬株式会社 プレ更年期はどういう時期?
大正製薬 「ホルモンバランスを整えるには?日常に取入れやすい方法を伝授」
久光製薬 Q&A:更年期障害についてのQ&A
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2022-07-28
なぜ?更年期に下腹部痛と腰痛が…
女性ホルモンは関係ある?
更年期に下腹部痛と腰痛が生じる理由を、お医者さんに聞きました。
不正出血がある方は、子宮ガンの疑いもあるため要注意です。
「痛みを和らげる方法」や「普段の生活でのポイント」も併せてチェックしましょう。
なぜ?更年期に下腹部痛&腰痛が起きる原因
更年期の下腹部痛・腰痛の原因としては、まず、女性ホルモンの急激な減少による「体の冷え」が考えられます。
更年期は女性ホルモンが少なくなるため、自律神経のバランスが崩れやすい時期です。
これにより血行が悪くなると、体・内臓が冷えて腹痛や腰痛を生じやすくなります。
こんな「原因」も考えられます
睡眠不足
食事が偏っていて、栄養が足りていない
運動不足
普段の姿勢が悪い
ストレス・疲労が溜まっている
下腹部痛・腰痛がある場合、女性ホルモンの減少だけでなく、上記のような原因も考えられます。
特に腰痛に関しては、加齢による「腰周りの筋力低下」や「普段の姿勢の悪さ」などが影響しているケースもあります。
痛みを和らげる方法は?
冷えによって痛みが出ているときは、まずは体を温めることをおすすめします。
体を温める「4つの方法」
厚手の衣類で、足首・手首・首周りを温める
寒いときは、エアコンで室温を上げる
ゆっくり入浴して湯船に浸かる
起床時にストレッチする
足首・手首・首回りを衣類で温めると、体全体が温まりやすくなります。
「冷えてから温める」よりも「冷える前に予防する」ことが大切なので、普段から体が冷えない程度に室温を上げておきましょう。
また、寝るときは「暖かいパジャマ」を着て、起床時から体を冷やさないようにしてください。
朝にストレッチするなど、軽く体を動かすのも、血流が良くなり冷え防止になります。
「規則正しい生活」で快方に向かうケースも!
起床時間・就寝時間を毎日同じにする
毎日同じ時間に食事をする
1日3食、欠食せずに食べる
などを意識して、規則正しい生活を送ってみましょう。
自律神経が整い、血行が良くなることで、体の冷えによる下腹部痛・腰痛の改善につながります。
毎日の起床時間・就寝時間を同じにすると、体のリズムが改善され、自律神経も正常になってくることが多いです。
食事では、特に朝食をしっかりとりましょう。
1日の始まりには、エネルギーをチャージして体温を上げることが大切です。
「疲労・ストレス」を溜めないようにしよう
過度の疲労・ストレスも、自律神経が乱れる原因となります。
普段から、
十分な睡眠時間を確保する
疲れたら、無理せず休む
好きなことしかしない日を作る
といった方法で、体と心をリフレッシュさせましょう。
ストレスの原因がわかっている場合は、そこから離れて逃げることも必要です。
また、普段から無理のないスケジュールを組むようにして、疲れを溜めないようにしましょう。
要注意!「病気」が隠れているケースも…
下腹部痛と腰痛の症状がなかなか治らない場合、
腎盂腎炎
子宮頸ガン・子宮体ガン
といった病気が隠れているケースもあります。
腎盂腎炎や子宮頸ガン・子宮体ガンってどんな病気?
▼腎盂腎炎
腎臓の尿を溜めておくところや、その周辺で最近が繁殖し、炎症を起こしてしまう病気。
―主な症状
腹痛
背中・腰の痛み
頻尿・残尿感・血尿
▼子宮頚ガン・子宮体ガン
「子宮の入り口」や「子宮体部」にガンができてしまう病気。
―主な症状
腹痛
腰痛
下腹部からの出血(不正出血)
これらの病気を放置していると、悪化によって入院・手術が必要になるケースもあります。
また、「子宮頸ガン」「子宮体ガン」は、命に関わる恐れもある病気です。
セルフケアでなかなか改善しないときは、医師の診察を受けるようにしましょう。
婦人科を探す
痛みが続く・強くなるときは、「婦人科」で相談しよう
体を温めても痛みが続く
下腹部・腰の痛みが強くなっている
痛みで仕事・家事に支障をきたしている
頻尿・血尿を伴う
不正出血がある
上記の症状があるときは、早めに「婦人科」で受診しましょう。
病院で「薬の処方」などの治療を受けると、症状が快方に向かいやすくなります。
また、病気が隠れている場合、放置するとさらに痛みがひどくなるケースもあります。
悪化によるリスクを防ぐためにも、一度病院で診てもらいましょう。
医師に伝えるポイント
下腹部痛・腰痛を感じ始めた時期
1日の中で、いつ痛みを感じやすいか
痛みの持続時間(痛みがおさまるまでにかかる時間)
腹痛・腰痛以外の症状(頻尿・出血など)
受診の際は、上記の点を医師に伝えると、診察がスムーズに進みやすいです。
うまく話せるか心配な場合は、事前にメモしておくのもおすすめです。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
日本産科婦人科学会 更年期障害
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。