20代で心臓の鼓動を強く感じるのはなぜ?
20代の人が「心臓の鼓動を強く感じる」場合に考えられる原因について、お医者さんに聞いてみました。
よくある原因と対処法も解説するので、動悸を落ち着かせたい人は必読です。
監修者
国家公務員共済組合連合会 大手前病院
救急科 医長
甲斐沼 孟先生
経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業
平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和4年(2022年) 同上(現在に至る)
心臓の鼓動を強く感じる…「20代に多い原因」は?
- カフェインやアルコールのとり過ぎ
- 精神的ストレス
- 貧血
20代の人が「心臓の鼓動を強く感じる」原因として、上記の3つが考えられます。
原因① カフェインやアルコールのとり過ぎ
お茶・コーヒー・エナジードリンクなどのカフェインを含む飲み物や、お酒の飲み過ぎが疑われます。
カフェインやアルコールには、
- 自律神経を刺激して「動悸」を引き起こす
- 利尿効果で脱水を起こし「不整脈」を誘発する
といった作用があります。
個人差がありますが、1日のカフェイン・アルコールの摂取量の目安は下記の通りです。
コーヒー
|
マグカップ3杯まで
|
お酒
|
500mlの缶ビール1本・日本酒1
|
カフェインやアルコールをとりすぎている場合は、控えめにしましょう。
カフェインレスのお茶や紅茶に切り替えるのもいいですね。
原因② 精神的なストレス
精神的なストレスによって自律神経が興奮すると、脈拍数が増加して「動悸」を起こす場合があります。
日々の過労に心理的・精神的なストレスが重なることで、脳の機能に悪影響が生じます。
その結果、心臓に血液を送る「冠動脈」が一時的なけいれんを起こし、息苦しさや動悸といった症状が引き起こされると考えられています。
ストレスが溜まっている人は、一日の中でリラックスできる時間を確保することを意識してください。
十分な睡眠をとり、運動の習慣をつけることも、ストレス解消につながります。
おすすめのストレス発散法
- 6~8時間程度の睡眠時間を確保する
- ウォーキングなどの軽い運動を習慣にする
- 趣味に没頭する時間を設ける
- 湯船に浸かってリラックスする
- 友人や家族とおしゃべりする
原因③ 貧血
貧血によって赤血球に含まれる「ヘモグロビン」が少なくなると、酸素を全身に運ぶために心臓の拍動回数(脈拍数)を上昇させます。
鼓動が速くなるため、動悸・息切れ・全身の倦怠感などの症状が出現します。
また、貧血は動悸以外にも、めまい・肩こり・頭痛などのさまざまな症状を伴うことがあります。
貧血気味な人は、食生活を改善することで動悸を解消できる可能性があります。
特に、鉄分・葉酸・ビタミンB12を多く含む食品を積極的にとりましょう。
貧血の人におすすめの食べ物
▼鉄分を多く含む食品
▼葉酸を多く含む食品
▼ビタミンB12を多く含む食品
鉄分は吸収率が低い成分です。効率よく体に取り込むためには、他の栄養素もバランスよく摂取しなければいけません。
レバーや肉などの鉄分を多く含む食品だけでなく、野菜・卵・果物などを食事に取り入れましょう。
動悸があらわれたときの「応急的な対処法」
動悸がしたときは、楽な姿勢をとり、症状が落ち着くまで安静にしましょう。
その際、深呼吸することも意識してください。副交感神経が優位になり、心身がリラックスするので、動悸を落ち着かせるのに効果的です。
また、「首の太い血管(頸動脈)」や「両眼」を優しく押すことで、動悸の症状が軽快することもあります。
強い鼓動が1時間以上続いたら要注意!
- 強い鼓動が1時間以上続く
- 安静にしていても動悸が頻発する
- 脈拍を計測するといつも100回/分を超えている
- むくみ・胸痛を伴う
といった場合は、医療機関で相談しましょう。
ストレスが原因で、パニック障害などを発症している恐れがあります。
放置していると循環器・心臓の病気に発展する恐れがあり、心筋梗塞のリスクも高まるので、早期の治療が必要です。
なお、しばらく安静にしているのに「呼吸が苦しい」「心臓に痛みを感じる」などと悪化している場合は、躊躇せずに救急車を要請してください。
考えられる「3つの病気」
20代の人が心臓の鼓動を強く感じる場合、上記の3つの病気が疑われます。
病気① パニック障害
パニック障害とは、突然何のキッカケもなく、動悸・発汗・吐き気・めまいなどの「パニック発作」が起きてしまい、日常生活に支障をきたす病気です。
これらの症状は時間の経過とともに軽快し、しばらく時間をあけると発作を繰り返すケースが多いです。
精密な検査を行っても特に異常は認められません。
パニック障害の原因
パニック障害のメカニズムははっきりと明らかになっていませんが、
などにより、発症リスクが高まると考えられています。
また、家族がパニック障害を罹患している場合も、発症リスクが上がるといわれています。
パニック障害は決して珍しい疾患ではありません。
一生の間にパニック障害を罹患する人は100人中に2~3人と報告されており、再発率は50%以上です。
パニック障害の対処法
パニック障害をセルフケアで治すことは難しいので、まずは医療機関で相談することをおすすめします。
医療機関では「認知行動療法」という治療が行われることが多いです。
認知行動療法とは、「恐怖を感じる状況」や「避けてきた環境」に少しずつ身を置くことから始め、日常生活の中で行動できる範囲を徐々に広げていく治療法です。
認知行動療法は、やり方がわかればご自身で実践することも可能ですが、まずは医師の指導のもとで行った方がよいでしょう。
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2021-11-08
パニック障害の治療方法をお医者さんに聞きました。
「完治するまでの期間は?」
「薬なしでも治るの?」
治療に関する疑問をはじめ、日常生活の注意点まで詳しく解説します。
パニック障害の「治療を受けるまでの流れ」
まず、問診を行います。
その後、他の病気が疑われる場合は検査をします。(血圧の測定や血液検査など)
最終的に「パニック障害」と診断された場合、治療の方針について相談します。
病院は何科?
パニック障害が疑われる時は心療内科、精神科を受診してください。
また、かかりつけ医院がある場合は、一度相談してみるのも良いでしょう。
初診ではどんなことを話す?
初診では
今、困っている症状
いつから症状があるのか
どんな時に症状が出るのか
などをお話します。
うまく話せるかご心配な人はメモしていくことをおすすめします。
家族との関係や、生活の状況について聞かれることもあります。
話しにくい時は無理しなくて大丈夫です。「今はお話しできません」と正直にお伝えください。
受診の際の「持ち物」は?
健康保険証
お薬手帳(持っていれば)
現在服用しているお薬(持っていれば)
自立支援医療受給者証など各種医療受給者証(持っていれば)
他の医療機関からの紹介状(持っていれば)
心療内科を探す
パニック障害の「治療方法」
パニック障害は、薬を使う治療と精神療法を併用して行います。
その他、動悸や発汗など身体から始まる不安の場合、「タッピング法・別名EFT(Emotional Freedom Techniques)」を行うこともあります。
「精神療法」とは
精神療法には発作の原因となっているものに敢えて向き合う「暴露療法」や、受け取り方・考え方をコントロールして発作に対応する力をつける「認知行動療法」などがあります。
「薬を使う治療」とは
セロトニンを調整する「抗うつ薬」と、不安な気持ちを緩和させる「抗不安薬(安定剤)」の2種類の薬を使用します。
1ヶ月間などの短期間、薬を服用して症状を軽減し、精神療法とあわせて再発を予防していきます。
徐々に薬の量を減らしていくことを目指します。
「タッピング法(EFT)」とは
タッピング法は、ネガティブな感情に意識を集中させながら、顔・胸周辺・手など14個所のツボを軽く刺激します。
薬なしで治療はできますか?
現在の日本ではお薬での治療がスタンダードになっています。
ですが、「薬を使用したくない」とご自身の希望を医師に伝え、一緒に治療方針を検討するとよいでしょう。
漢方や鍼灸などもありますが、薬の方が効果的なケースもあります。
信頼できる医師のもとで、よく相談することが大切です。
治療にかかる費用は?
一般的に、初診の費用は保険診療で2000円~3000円前後であることが多いです。
その後は治療方針によっても異なりますが、1回につき1000円~2000円程度となります。
治療の内容や、保険の種類によっても費用が異なるので、事前に電話等で問い合わせておくと良いでしょう。
治るまでの期間は?
症状が良くなるまでの期間は、個人差が大きいですが、数ヶ月~2年ほどかかることが多いといわれています。
早くから治療を始めることで慢性化を避けることができます。
パニック障害克服のために心がけること
医療機関での治療のほかに、「食べ物」「禁酒」「生活習慣の見直し」を意識して、パニック障害の克服を目指しましょう。
食べ物はどう選べばいい?
栄養バランスの良い食事を3食摂り、カフェインやアルコールは控えてください。
生活習慣が悪いと自律神経が乱れ、パニック障害の症状を悪化させます。
おすすめの食材
抗酸化作用がある「ビタミンC」、神経の興奮を落ち着かせる「カルシウム」などの栄養素を意識して摂りましょう。
ビタミンC
みかん・キウイ・レモン・グレープフルーツ・パプリカ・ブロッコリーなど
カルシウム
牛乳・チーズ・ヨーグルト・しらす・ひじき・干しえび・豆腐など
治療中だけどお酒が飲みたい…どうする?
お薬を飲んで治療している時は、お酒は控えてください。
「抗うつ薬」や「抗不安薬」などの薬を服用している時にアルコールを摂取すると、意識が朦朧とし、大変危険です。
寝不足はパニック障害につながる?
睡眠不足や過労は発作を起こす要因となるため、最低7時間の睡眠時間を確保し、疲れやストレスを溜めないようにしてください。
規則正しい生活を送り、焦らずに一歩ずつ治療していきましょう。
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▼参考
MSDマニュアル家庭版:パニック発作とパニック症
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター:認知行動療法とは一般社団法人日本うつ病センター:パニック障害Q&A
こんな症状は早く病院へ
- 動悸や息苦しさなどの症状が1時間以上続く
- 強い動悸が数日続く
という場合は、医療機関を受診しましょう。
動悸の原因がパニック障害と考えられる場合には、「精神科」または「心療内科」で相談することをおすすめします。
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病気② 過換気症候群
過換気症候群とは、精神的な不安や緊張などで「過呼吸」を起こし、動悸・手足のしびれ・筋肉のけいれんなどの症状がでてしまう病気です。
呼吸回数が増えることで血液中の二酸化炭素濃度が低下し、「鼓動を強く感じる」などのさまざまな症状が出現します。
過換気症候群だけであれば、症状は数時間でおさまって回復すると考えられています。
過換気症候群の原因
過換気症候群は、不安や緊張がキッカケになって起こる場合が多いです。
特に、神経質・不安を感じやすい・緊張しやすい人は発症しやすいと考えられています。
過換気症候群の対処法
過呼吸に陥ったときは、意識的に呼吸をゆっくりにしたり、断続的に呼吸を止めて、血液中の二酸化炭素濃度を増加させましょう。
深く息を吸って吐く、「腹式呼吸」も効果的です。
また、日ごろから大きな不安や過度な緊張を感じる状況を避けることが大切です。
こんな症状は早く病院へ
- 手足のしびれ・筋肉が硬直する(テタニー)
- 呼吸困難に陥っている
- 動悸症状が数日間続く
といった症状が見られる場合は、早急に医療機関を受診してください。
病院は「精神科」もしくは「心療内科」で相談しましょう。
精神科を探す
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2021-05-13
なんだか呼吸がしづらくて、息苦しい…!
この症状は、過換気症候群?それとも過呼吸?
過換気症候群と過呼吸の違いを、お医者さんが解説します。
発作が起きたときの応急処置方法もチェックしましょう。
「過呼吸」「多呼吸」と「過換気症候群」の違いは?
過呼吸や多呼吸は、“呼吸の状態”のことです。
過換気症候群は、“呼吸によって起こる症状”のことです。
それぞれ次のような違いがあります。
過呼吸:1回あたりの呼吸が深くなること。呼吸の回数はあまり変わらない
多呼吸:深い呼吸の回数が増えること。ふつうの呼吸の回数も多くなることが多い
過換気症候群:ストレスなどが原因で、激しく呼吸をして息苦しくなること
「過呼吸・多呼吸」が起こる原因は?
運動や肉体労働など、通常よりも酸素が多く必要になる場合に起こります。
人は、状況にあわせて、呼吸の回数や深さが変化しています。
そのため、多くの酸素が必要になると、呼吸の回数が増え、呼吸の深さも増えます。
「過換気症候群」が起こる原因は?
過呼吸や多呼吸などが、過換気症候群の状態を引き起こします。
換気(※呼吸で体に酸素を取り込んで、二酸化炭素として吐き出すこと)のし過ぎ(過換気)によって、体内の二酸化炭素が減り、血液中の炭酸ガス濃度が低下します。それにより、血液のPHがアルカリ性に傾いて、電解質バランスが崩れ、意識が遠のいたり、手足がしびれたりといった症状が起こります。この状態を、過換気症候群といいます。
過換気症候群は、神経質、真面目、几帳面といった性格の人が発症しやすいといわれています。また、心の病気が原因で、発作を起こしているケースもあります。
過呼吸・過換気症候群の応急処置
過呼吸や過換気症候群になったときは、応急処置として次の方法をおこなってください。
吸った息を10秒かけて、ゆっくりと吐き出す
数秒ほど、息を止めてみる
息を吸う:吐く=1:2になるように呼吸をする
深呼吸をする必要はありません。
落ち着いて、慌てずに、ゆっくり呼吸をすることが大切です。
過呼吸や過換気症候群になってパニック状態に陥ると、さらに不安が増して呼吸をしすぎるという、悪循環に陥ることがあります。
症状が落ち着くのにかかる時間
過呼吸や過換気症候群の症状は、一般的に30分から1時間程度で自然に落ち着きます。
命にかかわることはなく、その後も良好であることがほとんどです。
救急車を呼んだ方がいいケースは?
全身にけいれんを起こしたり、激しい呼吸困難が起こったり、意識が遠のくなどする場合は、救急車を呼んで医療機関に搬送してもらいましょう。
一般的には自然に症状が落ち着いていくことが多く、入院や投薬も必要ないことが多いといわれています。
稀に、病気が隠れているケースもあるため、経過を見ていても症状が良くならない場合や悪化する場合は、救急車を呼ぶ、あるいは医療機関を受診するようにしましょう。
病院に行くべき?
息苦しさや胸の痛みなどを伴って、過呼吸や過換気症候群と思われる症状が出たら、一度医療機関で検査を受けましょう。
心臓や肺の病気にかかっている可能性もあります。過呼吸・過換気症候群だと自己判断するのは危険です。
また、何度も発作を起こしていると、「また発作が起きるのではないか」と不安になって、外出できないなど、日常生活に支障が出る場合があります。
適した治療で良くなる病気なので、一人で悩まず、医療機関に相談してください。
何科で受診すればいい?
過呼吸・過換気症候群の症状がある場合は、まずは内科・呼吸器内科を受診してください。
かかりつけの医療機関がある場合は、そちらで相談して、適した診療科がある医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。
検査で異常が見つからない場合には、心療内科・精神科の受診をおすすめします。
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どんな治療を受けるの?
過呼吸や過換気症候群は、原因によって治療法が異なります。
“心の病気”が原因の場合
過呼吸や過換気症候群を引き起こす「パニック障害」や「不安障害」などの治療を行います。
心の病気が原因の場合、認知行動療法などの精神療法や、抗うつ薬、抗不安薬などの薬物を用いて改善を目指します。
“心臓や肺の病気”が原因の場合
まずは検査を行い、どの臓器に異常があるのかを調べます。その後、病気に適した、投薬治療や手術などを行います。
呼吸困難をきたす病気には、慢性閉塞性肺疾患や肺気胸、心不全、心筋炎などの病気があります。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
MSDマニュアルプロフェッショナル版:過換気症候群
一般社団法人日本呼吸器学会:呼吸器Q&A Q14 呼吸が速くなります。過換気だと言われました
一般社団法人日本呼吸器学会:呼吸器の病気 過換気症候群
一般社団法人日本小児心身医学会:(4)過換気症候群
病気③ 不安障害
不安障害とは、日常の出来事に対して、漠然とした不安や恐怖心が半年以上続いている状態です。
不安・恐怖心以外にも、記憶力の減退や、怒りっぽい・イライラするなどの精神症状が出現し、動悸などの身体症状も見られるようになります。
不安障害を引き起こす原因
不安障害の原因は明確には判明していませんが、
- 神経質な性格
- 遺伝的な要素
- ストレスに伴う過労・自律神経の乱れ
- 幼少期の家庭環境
- 慢性的な身体疾患
などが影響していると考えられています。
不規則な生活を送っている人や、ネガティブ思考の人は、特に不安障害を発症するリスクが高いと考えられています。
また、不安障害は30歳前後に最も発症しやすいですが、40歳以降の発症例も多いとされています。
不安障害の対処法
不安障害を自力で克服することは難しいので、まずは医療機関で相談することをおすすめします。
その上で、日ごろから規則正しい生活を送るために、
- カフェインやお酒をできるだけ控える
- タバコをやめる
- 運動習慣を身につける
などを心がけて、睡眠の質を高めましょう。
病院では、パニック障害と同様「認知行動療法」が行われるケースが多いです。
不安を抱く出来事や対象を把握して、具体的な対策や考え方を学習していきます。
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2022-02-17
「何もないのに緊張する…」
「これって心の病気?」
不安を感じ続けてしまう病気について、お医者さんに聞いてみました。
症状のチェックリストに加え、改善のための対処法も詳しく解説します。
意味もなく緊張するのは「全般性不安障害」かも
“意味もなく緊張する・不安感が治まらなくなる”代表的な病気として「全般性不安障害」が考えられます。
全般性不安障害とは、理由もないのに強い不安を感じ続けてしまう病気です。
発症した人は、自分の意志で不安を抑えることができません。
常にストレスが加わっている状態なので、自律神経が乱れて体に不調が出る人もいます。
全般性不安障害の「原因」
発症原因ははっきりと分かっていませんが、
ストレス
過去のトラウマ体験(家庭環境・社会環境)
脳機能障害
体の病気
などが複雑に絡みあって発症すると考えられています。
※何の理由もなく症状が出現する場合もあります。
脳機能障害では、神経伝達物質の「セロトニン」の機能低下が発症に関わっているといわれています。
この場合、脳が過活動になることで自律神経が過剰に反応し、強い不安感や動悸、過呼吸等の症状が出現します。
「全般性不安障害」になりやすい人
男性より女性に多くみられます。
若い世代に発症しやすく、10歳代での発症もあります。
ストレスを抱えやすい人
心配性な人
几帳面な人
神経質な人
完璧主義な人
に多いと考えられています。
全般性不安障害の症状チェック
全般性不安障害の「精神的症状」と「身体的症状」をご紹介します。
当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
▼精神的症状
毎日不安になる
常に緊張状態で気持ちが休まらない
小さいことが気になる
イライラ、ソワソワして落ち着きがない
疲れやすい
集中力低下
自分の体が自分の体ではないように感じる(頭にモヤがかかったような感覚)
記憶力低下
悲観的になる
何事も億劫に感じる
▼身体的症状
緊張感
体の震え
体のしびれ
頭痛、頭重感、頭部圧迫感
めまい
頭がぐるぐる揺れるように感じる
鼓動(拍動)を感じる
便秘、下痢
頻尿
全般性不安障害の「不安の感じ方」
気になることがあると、その状況での「最悪な状態」を想像して不安になる
不安でいっぱいになり、落ち着きをなくして集中力が低下してしまう
不安を自身で解消できず、考え込んでさらに不安になる
強い不安に襲われ、何もできない状態になる
継続した不安感に加えて、不安の感じ方が上記の当てはまる場合、全般性不安障害が疑われます。
「緊張感が続く」ときの対処法
毎日決まった時間に寝て起きるようにして、生活のリズムを整えてみましょう。
また、
十分な睡眠時間を確保する
一日三食、栄養バランスのよい食事を摂る
毎日体を動かす(ウォーキング、ストレッチ、筋トレ等)
といった点も意識すると、より効果的です。
自律神経のバランスが正常になると、緊張感が和らぐこともあります。
反対に、自律神経が乱れると悪化しやすいため、昼夜逆転・睡眠不足・食生活の乱れ・運動不足には気をつけましょう。
改善が見られないときは、病院で相談を
全般性不安障害は、カウンセリング、薬の服用、磁気治療などでも改善が期待できます。
セルフケアでなかなか改善しないときには、病院で相談してみましょう。
「全般性不安障害」を放置すると…
全般性不安障害を放置すると、不安や心配が大きくなり、
自律神経の乱れによる体の不調
睡眠障害
などで日常生活に支障をきたす恐れがあります。
精神科で受診した方がよい目安
「意味もなく緊張する」といった全般性不安障害の症状があるときは、精神科の受診をおすすめします。
毎日不安や心配事に苛まれる
強い不安・緊張が6カ月以上続いている
不眠・または過眠の症状がある
症状がつらくて日常生活に支障が出ている
といった場合には、受診をおすすめします。
「不安や心配は誰でも起こることだ」と自分に言い聞かせて、毎日つらい思いをしていませんか?
我慢したまま生活を続けると、つらい気持ちがどんどん大きくなり、日常生活に支障が出る場合があります。
全般性不安障害は、治療で症状の改善が期待できる病気です。
早期治療でより早い改善が期待できるため、一人で抱え込まず一度精神科で相談することをおすすめします。
また、患者さんのご家族や周囲の方は、どう対応すればいいのか悩んでしまう場合もあると思います。
まずはできるだけそばで話しを聞き、否定せず寄り添ってあげてください。心が安定すると、不安な気持ちが和らぎやすいです。
医師に伝えるポイント
症状が出現した時期とタイミング
どのような症状が出現しているか
今までにも同じような経験をしたことがあるか
つらいと感じる症状
既往歴
などを説明できると診察がスムーズに進むと考えられます。
また、ご家族や周囲の人に同伴してもらえるとよりよいです。
周りの人からみた本人の状態を医師が把握できると、多くの情報が医師に伝わります。
精神科を探す
全般性不安障害の治療法
病院で行われている
薬物治療
精神療法
などで、全般性不安障害の症状改善が期待できます。
その① 薬物療法
抗うつ薬(SSRI)
抗不安薬(BZD)
等の薬剤が使用されるケースが多いです。
「抗うつ薬」は、脳内の神経伝達物質の機能を改善して意欲を向上させ、不安を緩和させる作用があります。
「抗不安薬」は、脳の興奮を抑制して、緊張や不安を緩和させる作用があります。
強い不安感や心配は、脳の神経伝達物質(セロトニン)の異常が原因の一つと考えられています。
薬を使ってそのバランスを整えると、徐々に不安が改善されていくことが多いです。
薬の服用は医師の指示通りに!
薬の服用で改善が見られたとしても、自己判断でお薬の量を減らしたり、中止したりするのはNGです。
医師の指示通りに服用しなかった場合、心の病気が再発することもあります。
また、
アルコールやカフェインの過剰摂取
喫煙
といった習慣は、薬の効能が低下させたり増強させたりする場合があるため、控えましょう。
その② 精神療法
カウンセリングを通して、患者さんの考え方や行動を少しずつ変えていく治療法です。
不安を感じやすいのは「思考の癖」も大きく関わっているため、ご自身で気付いて修正していくことが症状改善につながります。
精神科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省 こころもメンテしよう 不安障害
一般社団法人 全国地域生活支援機構 不安障害とは?
日本経済新聞 電子版 筋肉を鍛えれば「心配性」も改善する
こんな症状は早く病院へ
自分ではどうしようもないくらい強い不安感や動悸症状があり、日常生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
不安障害は「精神科」もしくは「心療内科」で相談することをおすすめします。
精神科を探す
心療内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。