湿布、花粉症の薬が保険適用外になる?いつから?健保連の改革案を解説

更新日:2020-05-29 | 公開日:2019-10-31
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湿布、花粉症の薬が保険適用外になる?いつから?健保連の改革案を解説

湿布や花粉症の一部の薬が保険適用外になるというニュースを、テレビや新聞などで見て不安になった方もいるのではないでしょうか?

これは現状、実際に決まったことではなく、全国の健康保険組合の連合組織である健保連(健康保険組合連合会)が令和2年にある診療報酬改定に向けて主張した改革案のひとつになります。

花粉症で悩んでいる方の中には、本当に花粉症の薬が保険適用外になるのか、それはいつからなのか、どんな薬がそうなるのか、気になった方もいるでしょう。

今回は、健保連が2019年8月23日に発表した政策提言についてわかりやすく説明していきます。

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執筆者
竹中 孝行 先生

コトブキ調剤薬局 横須賀店
薬剤師

竹中 孝行先生

経歴

薬剤師。外資系製薬会社に勤務後、保険薬局勤務を経て、2012年株式会社バンブーを設立。薬局、介護、美容事業を運営。 一般の方に薬局・薬剤師のことをより知ってもらうことを目的に、2016年一般社団法人薬局支援協会を設立。

1.湿布、花粉症の薬が保険適用外になる?

1-1. 健保連の改革案について

まずはどのような経緯でこのようなニュースが流れたのかを整理します。

健保連が改革案のひとつとして挙げたのが、「市販薬で代替が可能な花粉症治療薬は保険適用外とするべきだ」というものです。

 

現在、花粉症の一部の治療薬は、市販薬として販売されており、病院の処方せんがなくとも薬局やドラッグストアで購入することができます。「アレジオン」「クラリチン」「アレグラ」「エバステル」「ジルテック」などの成分が該当します。

これらのお薬を病院で処方してもらうと3割ですみますが、市販薬として購入すると全額自己負担となります。

一部の治療薬であり、全ての花粉症の治療薬が対象となるわけではありません。

 

花粉症で生活に支障がでるほど悩まされている方も多く、自己負担が増えると予測されることから、この提案が話題に上がりニュースに大きく流れました。

 

尚、湿布薬については、2015年に健保連が政策として提案をしています。内容としては、外皮の温熱・冷却が主な目的として処方される第一世代湿布薬は保険適用から除外すべきというものでした。

1-2. いつから?実際になるの?

健保連が提案したというだけで、まだ何も決まっていないのが現状です。日本医師会においても賛否が分かれているようです。今後については、日本の健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する中医協(=中央社会保険医療協議会)において話し合われていく予定です。今回のニュースに不安になられた方がいるかと思いますが、どのような議論になっていくのか注目しておくと良いでしょう。

2.健保連がなぜそういった提案をしたのか?その背景について

ご存知のとおり、皆保険制度により、私たちは、一部負担金で医療を受けることができます。2018年度では、その医療費の総額が過去最高の約43兆円、国民一人当たり33万7000円となりました。今後、団塊の世代が後期高齢者になる2022年以降は、益々医療費が上がることが予測されます。

この医療費は、皆さんが支払う保険料で賄われています。高齢化が進む中で保険料を支払う現役世代が減少している時代ですので、現状のままだと徴収する保険料を高くしなければ、この皆保険制度の維持が困難となります。

保険料を国民から徴収し、医療機関に支払いを行う健保連にとっては財政的に危機迫る状況となっていると考えられます。

そういった背景がある中で、健保連が現在の皆保険制度を維持していくために提案したひとつが、花粉症の薬を保険適用外にすることでした。花粉症に処方された治療薬を制限し、市販薬とした場合、全国で年間に約600億円の財政効果があると推計しています。

少子高齢化、人口減少が進んでいる中で、医療費の抑制は日本の大きな課題です。どのような方法をとって今後対応していくべきか、非常に難しい問題であり、取り組まなければいけない重要なことです。一方で、医療費をめぐる議論は、倫理上、医療に不平等性を生んでしまうことはよくないため、慎重になる必要もあります。

今後も、このような医療費の抑制に向けた診療報酬を決める議論はますます本格化していくと考えられます。

3.医療用成分を含む市販で販売されている花粉症の薬

今回の提案の焦点となった、市販薬で代替が可能な花粉症治療薬がどのようなものがあるかご紹介します。これらは、スイッチOTCといって、医師の判断で処方箋がないと服用できなかった医療用医薬品の成分が、市販薬として販売することが許可され、薬局・ドラッグストアなどで購入できるようになった市販薬のことを意味します。

※各ジェネリック医薬品も多数ありますが、先発医薬品名称で記載します。

 

3-1. アレグラ(成分:フェキソフェナジン塩酸塩)

市販薬例:

アレグラFX【第2類医薬品】 / 久光製薬

フェキソフェナジン錠「ST」【第2類医薬品】 / 協和薬品工業

 

3-2. アレジオン(成分:エピナスチン塩酸塩)

市販薬例:

アレジオン20【第2類医薬品】 / エスエス製薬

 

3-3. クラリチン(成分:ロラタジン)

市販薬例:

クラリチンEX【要指導医薬品】 / 大正製薬

 

3-4. エバステル(成分:エバスチン)

市販薬例:

エバステルAL【第2類医薬品】 / 興和新薬

 

3-5. ジルテック(成分:セチリジン塩酸塩)

市販薬例:

コンタック鼻炎Z【第2類医薬品】 / グラクソスミスクライン・CHJ

 

湿布も、同様に医療用成分を含む市販薬が販売されています。

3-6. ロキソニンテープ(成分:ロキソプロフェンナトリウム水和物 )

市販薬例:

ロキソニンSテープ【第1類医薬品】 / 第一三共

3-7. ボルタレンテープ(成分:ジクロフェナクナトリウム )

市販薬例:

ボルタレンEXテープ【第2類医薬品】 / グラクソスミスクライン・CHJ

3-8. セルタッチパップ(成分:フェルビナク)

市販薬例:

フェイタス5.0 / 久光製薬
バンスキットFBテープ5%α【第2類医薬品】 / 三友薬品

4.セルフメディケーションの時代がくる

花粉症治療薬、単剤の場合、医療機関で処方してもらう場合と、市販薬を薬局やドラッグストアで購入した場合では、患者負担にほとんど差がなかったということも健保連が発表しています。

というのも、処方してもらう場合には、医療機関に支払う初診料や薬局に払う調剤料などが薬代に加えてかかってきます。そういった費用を含めると、市販薬は、薬代だけで済むために差がないというカラクリです。

 

冒頭でもお伝えしましたが、医療費の抑制は現代の日本にとって大きな課題となっています。現状の皆保険制度を維持していくためには対策を練っていかねばならず、その傍で、自己負担金が増えることや、保険料の引き上げが起こる可能性も出てきます。

そのような背景が想定される中、国も「セルフメディケーション」を進めています。セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義しています。所得控除が受けられるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)も2017年よりスタートしています。

 

また、お薬のことだけではなく、健康診断を定期的に受けて、病気の早期発見をすることで、慢性的な疾患にならないようにすることもセルフメディケーションのひとつだと考えます。各地域で、特定健診やがん検診などを行なっていますので、ご自身のからだチェックをしていないという方は、ぜひ受診するようにしましょう。

5.おわりに

今回のニュースは、花粉症でひどく悩まされている方にとって不安になられた方も多いでしょう。まだ決定事項でないことや、症状がひどい方は、市販薬では対処できないことも多いため、医療機関を受診されることをお勧めします。

また、病院にいく時間が取れない方や、お急ぎの方は、市販薬で購入できる花粉症治療薬もありますので、薬局やドラッグストを活用されると良いでしょう。

 

一方、現状の皆保険制度を維持していくためには、医療費の抑制は大きな課題となっており、今後どのような対策をとっていくかは重要な鍵となります。今後も、このような医療費の抑制に向けた診療報酬を決める議論はますます本格化していくと考えられるため、ニュースに耳を傾けられることをおすすめします。

 

参考:

健康保険組合連合会けんぽれん

https://www.kenporen.com/

 

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