「お酒を飲みすぎて翌日下痢…なぜ?」
お酒が原因で下痢になる理由から、止まらない場合の対処法や予防法、市販薬のおすすめまで医師がお答えします。
気をつけるべき黒い便や、病院に行く目安も解説しています。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
なぜ?「お酒を飲むと下痢になる」理由
まず、アルコールそのものが下痢を引き起こしやすいものです。
その他
「短時間に大量の水分を摂取した」
「高脂質なものをたくさん食べた」
ということも、下痢を引き起こす原因になります。
アルコールそのものが下痢を引き起こしやすい
アルコールを過剰摂取すると、酵素の働き阻害したり、肝臓をアルコール分解で手一杯にさせたりしてしまいます。
<過剰なアルコールが「腸」に与える影響>
アルコールは小腸で約80%吸収されます。
そのため、アルコールを過剰摂取すると小腸粘膜にある酵素の機能が低下して、脂肪・糖分・水分・ナトリウム等の吸収が阻害され、浸透圧性の下痢(※)が起こる場合があります。
さらに、アルコールは大腸の働きを活性化するため、通常は大腸で吸収される水分が、吸収されないまま肛門まで進んでしまうことになり、水分の多い便である下痢が出やすくなります。
※浸透圧性の下痢とは、腸からの水分吸収が阻害され、便が水分を必要以上に含んだまま排便されるため起こる下痢です。
<過剰なアルコールが「肝臓」に与える影響>
脂質の消化や吸収を補助する働きをもつ胆汁は肝臓で生成されますが、アルコールを分解する働きも担っています。
しかし、お酒を過剰摂取すると、肝臓がアルコール分解で手一杯になり、胆汁を生成する働きが低下してしまう場合があります。
その結果、摂取した脂肪分の消化が滞り、翌朝下痢を起こすと考えられています。
短時間に大量の水分を摂取した
短時間に2~3リットル以上の水分(お酒を含む)を摂取した場合、胃腸が拒絶反応を示して下痢が起こる場合があります。
高脂質なものをたくさん食べた
お酒のおつまみとして好まれる揚げ物など、高脂質なものを多く摂ると、消化しきれず下痢を起こしてしまう場合があります。
体内において、アルコール分解と脂質の消化を補助する働きは肝臓が大きく関与しています。
そのため、おつまみとして何を食べるかの選択がとても重要です。おつまみは、卵、豆腐、枝豆、野菜、海藻などがおすすめです。
なぜ?黒い便がでた…
胆のうから分泌される胆汁の量や摂取した食べ物の種類によって、一見黒っぽい色に見える場合があります。
特にお肉を食べたあとは黒っぽい色(黒褐色)になりやすいようです。
また、大腸内で悪玉菌が増加している場合、腸内がアルカリ性に傾くことで、黒っぽい便が出る場合もあります。
黒い便は、食道や胃の「出血」の可能性も
黒い便が出る場合、強いお酒を飲んだり多量に飲むことで、食道や胃から出血している可能性もあります。
病気が潜んでいる可能性があるので、病院を受診して検査を受けることをおすすめします。
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お酒で下痢をしたときの「対処法」
次の6つの対処法を試してみましょう。
- 安静にする
- 水分補給をこまめに行う(水・白湯・スポーツドリンク等がおすすめ)
- 消化のいいものを食べる(うどん・おかゆ・野菜スープ等がおすすめ)
- ハーブティーを飲む(ジンジャーやミントがおすすめ)
- 体を温める
- 乳酸菌を摂る
牛乳は避けよう!
牛乳のように、乳糖が分解されていない乳製品は、お腹を下しやすいので、避けましょう。
市販薬で対処できる?
整腸作用を持つ市販薬で症状が改善されるケースもあります。
- 正露丸
腸の働きを正常な状態に戻す効能があるため、いろいろな原因で生じる下痢症状の緩和に有効と考えられています。
- ビオフェルミン
飲み過ぎ、食べ過ぎ等で起こる下痢に有効とされています。
これらの薬は、念のため他の薬との併用は控えてください。
「もう下痢は嫌だ…」これからの予防対策
お酒を飲んだあと下痢にならないために、飲んでいる最中は次のことに気を付けましょう。
- お酒とお酒の間に水を飲む
- おつまみも一緒に食べる(卵・豆腐・枝豆・野菜・海藻など)
- お肉等の「脂肪分が多い食べ物」や「糖分を多く含む食べ物」は控える
- 飲酒量を抑える
- お酒はゆっくり飲む
短時間に多量のお酒を飲まないようにしましょう。
飲酒量の目安としては、日本酒であれば1合、ビール(大瓶)であれば1本/1日程度に抑えるようにしましょう。
下痢が止まらない場合は?
次の症状があらわれた場合は、早急に病院を受診しましょう。
- 下痢に加えて、発熱・嘔吐等の症状がみられる
- 水分摂取ができず、脱水症状がみられる
- 下痢症状が悪化し、激痛を伴う
- 食中毒が疑われる
感染性胃腸炎や大腸疾患などを発症している可能性もあります。
病院は、内科・消化器内科・胃腸内科を受診するケースが多いです。
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2020-02-05
「お酒飲み過ぎて頭痛がする…」
「アルコール頭痛の治し方が知りたい…」
お酒を飲みすぎたとき、二日酔いの症状として多く出る「頭痛」。
中には、飲酒している最中から頭が痛むという方もいるでしょう。
この記事では、アルコール頭痛の原因と治し方、さらに頭痛が起きたときのNG行動まで、医師が詳しく解説します。
二日酔いの頭痛の対処法
経口補水液や水を飲む
頭や目の周りを冷やす
市販の痛み止めを飲む
ウコンを飲む
ツボを押す
といった対処法があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
①おすすめの飲み物・食べ物
経口補水液や水、アロエ入りヨーグルト・梅干しおにぎりなどがおすすめです。
経口補水液や水を摂取し、体の水分量を増やすことで、利尿作用も高まりますので、なるべく水分補給をしましょう。
また、食事ができるようであれば、アミノ酸やビタミンB1といったものを含む、アロエ入りヨーグルト、梅干し入りのおにぎりなどがおすすめです。
②頭・目の周りを冷やす
お酒の飲み過ぎによって頭痛がする場合や目の奥が痛む場合は、痛む部分や目の周りを冷やすのがおすすめです。
頭痛を抑える働きが期待できます。
③市販の痛み止めを飲む
頭痛がつらく、生活に支障がある場合は頭痛薬や鎮痛剤を使用してください。
市販薬では、「ロキソニン」「イブ」「バファリン」 など、多くのものが使用可能です。
使用量、用法を必ず守って使用してください。
また、空腹時に薬を飲むことはなるべく避けましょう。
二日酔いによって食べることができない場合は、ヨーグルトや果物など、さっぱり食べやすいものを口に入れてからの服用をおすすめします。
頭痛がおさまったら、消化にいいものを食べると早めに二日酔いの症状もおさまります。
胃薬と頭痛薬の併用してもいい?
吐き気も伴っている場合は、併用して大丈夫です。
この場合も、それ以上飲酒を続けないでください。
「漢方薬」もおすすめ
五苓散(ごれいさん)という漢方薬が、飲み過ぎによる二日酔いや頭痛などにおすすめです。
お酒の飲み過ぎによって体に溜まっている無駄な水分を早く排出して 、二日酔いの諸症状を緩和してくれます。
お酒をたくさん飲むと血中のアルコール濃度が高くなり血管が拡張して、血管から水分が漏れ出します。
細胞内外の水分バランスが崩れ、むくみが起こっていることがほとんどなので、むくみも軽減されるでしょう。
④ウコンを飲む
ウコンは、胃腸の働きを整え、肝機能を助ける作用が期待できます。
飲み過ぎによる肝機能の低下を助けてくれているので、直接的ではないですが、二日酔いで現れている頭痛緩和にも働いていると言えます。
しかし、頭痛への早期の作用を求めるならば、鎮痛剤を使用しましょう。
⑤ツボを押す
手の親指と人差し指の間のくぼみにある合谷(ごうこく)というツボは頭痛緩和におすすめです。
これはNG!「二日酔いのときにやってはいけないこと」
薬を飲んでからの飲酒
脂っこいものやチョコレート・チーズなどの食事
入浴
上記3つの行動に気を付けましょう。
NG行動①薬を飲んでからの飲酒
薬を飲んでから、そのまま飲酒を続けると薬の作用が増強されて、血圧低下や意識障害を招く場合もあります。
また、薬を服用してから30分以内に吐いてしまった場合は、再度服用した方がよいでしょう。
NG行動②脂っこいものやチョコレート・チーズなどの食事
脂っこいものや消化に負担を与える食事は、余計な体力を使うので避けたほうがいいです。
また、チョコレートやチーズは頭痛を促すので、こちらも避けましょう。
迎え酒のようにお酒を飲むのはもってのほかです。
NG行動③入浴
入浴で体の血流が更によくなると、頭痛がひどくなる場合があります。
また、飲酒後すぐの入浴は、血圧低下や気を失ってしまうこともあるのでやめましょう。
もう二度と二日酔いにならないために…
お酒を飲むときは、良質なタンパク質(枝豆、豆腐 等)を摂りながら、飲んだお酒の量と同じくらい水分も補給してください。
また、週に2日は、休肝日を設けてゆっくり過ごしましょう。
アルコールだけを摂取すれば、血中のアルコール濃度がぐんぐん上がって、アルコールが原因の頭痛が起きやすくなります。
アルコールが原因の頭痛は、体からの飲み過ぎのサインです。
年末年始や歓迎会などが続くと、アルコールが原因で肝機能も停滞します。
頭痛以外にも、胃腸に影響が出て、食事がとりにくくなる場合もあります。
栄養が摂れなくなると、更に二日酔いになりやすくなります。
知っておこう「お酒を飲むと頭痛がおきる理由」
お酒を飲むとアルコールを分解しようとして肝臓が働きますが、その副産物として「アセトアルデヒド」という物質が生まれます。
このアセトアルデヒドは二日酔いの原因で、お酒を飲んだ後の頭痛もこの物質によって現れます。
頭痛の他にも、動機、吐き気、胃もたれ、胸焼けなどの症状を誘発します。
「頭が痛くなるとき」、「痛くならないとき」の違い
体調により、頭痛が出るときと出ないときがあります。
また、アセトアルデヒトによって 症状として現れるのが頭痛であったり胃痛であったりとブレはあります。
また、疲れ・老化によって肝機能が落ち込んでいくと二日酔いしやすくなることも多くあり、頭痛が出やすくなってしまう人もいます。
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2020-01-24
お酒を飲むと、すぐに酔ってしまって楽しめなかったり、具合が悪くなってしまったり…。
「もっとお酒が強かったら…」と思うことはありませんか?
この記事では、お酒に強くなるにはどうしたら良いのか、また、強くなると言われている方法の真偽について解説します。
おすすめの薬やサプリメントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
お酒に弱い人が強くなれる可能性は?
アルコール代謝能力は、性別、年齢、体質、体調などにより個人差がありますが、基本的に強くなるとは考えにくいです。
長い期間飲み続けると強くなったと感じる場合も
体に吸収されたアルコールは、通常肝臓でアルコール脱水素酵素とアセトアルデヒド脱水素酵素により、代謝されます。
しかし、長期間連続でアルコールを摂取した場合、他の酵素による代謝が促進されるため、強くなったと感じることがあります。
お酒に強くなる方法のウソ・ホント
吐くと強くなる!?
ウソです。
繰り返し吐いていると、食道と胃の境目部分が出血することもあります。
お酒に強くなることを目的に、吐く行為はやめてください。
また、吐いてスッキリしたからといって、その後も飲酒を続けるという行為は危険です。
吐くことで胃や食道が強酸にさらされ、荒れる原因となります。
毎日お酒を飲むと強くなるって本当?
アルコール代謝能力があがることは基本的にはありません。
先述したように、毎日お酒を飲んだからといって強くなるということは考えにくいでしょう。
しかし、長い期間お酒を飲み続けた場合、別の酵素による代謝が促されるために、強くなったと感じる可能性があります。
筋トレをするとお酒に強くなる?
筋トレをしてもアルコール代謝能力が上がるわけではありません。
しかし、体の大きい人は体内の水分量も多く、アルコール濃度が上がりにくいため、お酒に強い傾向はあります。
体脂肪が多いとアルコール濃度が高くなりやすい
ただし、体が大きくても脂肪の多い人は、アルコール濃度が高くなりやすいと考えられます。
というのも、アルコールは脂肪に溶けにくい性質を持ち、体脂肪の多い人は少ない人に比べて相対的に水分量が少なくなるからです。
出産後はお酒が強くなるって本当?
ウソです。
出産することでアルコール代謝能力があがることはありません。
お酒に強くなる手術や注射ってあるの?
残念ながら、現在そのような手術や注射はありません。
肝機能改善注射やニンニク・ビタミン注射などは、肝臓の働きをサポートしたり、二日酔いの予防・改善には作用します。
しかし、決してお酒に強くなるためのものではありません。
お酒に強くなる・酔いにくくする方法
これまでお伝えしたように、根本的にアルコール代謝能力を上げ、お酒に強くなることは難しいです。
ただ、飲み方や食事により酔いにくくするなどの対策はできます。
薬やサプリメント
根本的にお酒に強くなるわけではないという前提ですが、ヘパリーゼはアミノ酸を多く含むため、アルコールの代謝を助ける可能性はあります。
肝臓エキスやオルニチンを含有するサプリメントも、アルコール代謝を助けて酔いにくくするので、健常者の服用はおすすめです。
ウコンなどの栄養ドリンクは?
ウコンは肝臓保護作用があると言われていますが、今のところヒトでの研究結果がありません。
前述したように、肝臓エキスやオルニチンを含む栄養ドリンクは、アルコール代謝を助けて酔いにくくしてくれるでしょう。
お酒に酔いにくくなる飲み方
お酒に強くなることはできなくても、酔いにくくすることは可能です。
次のようなことに気を付けましょう。
大量に飲まない
たくさん飲めば、当然ですが酔います。また、飲みすぎは二日酔いを招きます。
厚生労働省が示している「節度ある適度な飲酒」とは、一日当たり平均して純アルコール20g程の飲酒です。
では、純アルコール20g程とはどのくらいの量なのでしょうか?
お酒の種類ごとにご紹介しますので、一日当たりに飲む量の目安として参考にしてみてください。
<一日当たりの目安量>
ビール中瓶
1本(500ml)純アルコール20g
清酒
1合(180ml) 22g
ウィスキー、ブランデー
ダブル(60ml)純アルコール 20g
焼酎
1/2合(35度90ml)純アルコール25g
ワイン
2杯 純アルコール24g
あくまでも目安なので、個人差があります。
普段お酒をあまり飲まない人、アルコールの代謝能力が低い体質、女性、高齢者はより少ない量が良いでしょう。
ゆっくり飲む
時間をかけて飲むことで、お酒を大量に飲むことを防ぐことができます。
水やお茶を飲む
血中のアルコール濃度を下げるためにも、お酒ばかり飲まずに、水やお茶も飲みましょう。
脱水症状の予防にもなります。
アルコール度数を下げられるのでおすすめです。
飲酒の前に食べる
空腹でお酒を飲むと、アルコールの吸収が速く、酔いやすくなります。
胃の粘膜も傷つけることになるので、何かお腹に入れてから飲むようにしましょう。
お酒に酔いにくくなる食べ物
お酒を飲む時は、一緒におつまみを食べる事で、アルコールの吸収を抑えたり、肝臓の機能を助けたりできます。
刺身、カルパッチョ、から揚げ、焼き鳥、卵焼き、チーズ、枝豆、冷ややっこなど
アミノ酸を含むたんぱく質が多く、アルコール代謝を助けます。
チーズ、ナッツ、レバーパテ、揚げ物、アヒージョなど
脂質を多く含み、胃の粘膜保護、アルコール吸収抑制に繋がります。
豚の角煮、鰻の蒲焼、焼きたらこなど
アルコール代謝に必要なビタミンB1を含みます。
貝の酒蒸し、いくら、レバー焼きなど
肝機能を助けるビタミンB12を含みます。
《参考文献》
アルコール代謝
慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/about_medicine/care/alcohol.html
医歯薬出版株式会社 NEW エッセンシャル 法医学
https://www.ishiyaku.co.jp/corrigenda/731890/731890_01.pdf
サッポロホールディングス株式会社 上手な飲み方、付き合い方 酔いの仕組みとアルコール代謝
https://www.sapporoholdings.jp/csr/alcohol/drunkenness.html
アルコール 食道
厚生労働省 e-ヘルスネット[情報提供] アルコールの消化管への影響
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-010.html
飲酒量の目安
厚生労働省 e-ヘルスネット[情報提供] 飲酒量の単位
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html