咳のしすぎであばらが痛い…。
その症状は肋骨骨折かもしれません。
「これは放っておけば治るの?」「病院へ行った方がいい?」
あばらの痛みから考えられる原因と対処法を、お医者さんに聞きました。
監修者
経歴
福岡大学病院
西田厚徳病院
平成10年 埼玉医科大学 卒業
平成10年 福岡大学病院 臨床研修
平成12年 福岡大学病院 呼吸器科入局
平成24年 荒牧内科開業
咳であばらが痛い…それはもしかして…
咳のしすぎであばらが痛い原因には、①肋骨骨折、②肋間神経痛、③胸膜炎などが考えられます。
痛みが軽度の場合、咳が止まってきて症状が改善傾向にある、呼吸に異常が起こっていない場合は、少し様子を見てもいいでしょう。
病院に行くべき?
次のような症状が出ているときは、我慢せずに病院へ行きましょう。
- 痛みが強い
- 痛みがどんどんひどくなっている
- 息苦しく感じる
- 痛みで動きに支障がある
- 高熱(38度以上)が出ている
- 咳が止まらない
- 意識が朦朧としている
- 冷や汗が出ている
- 痛みが何日も続く
病院は何科?
内科、整形外科、呼吸器内科、呼吸器外科の受診をおすすめします。
内科を探す
※病気の状態によって、違う診療科目を紹介される場合があります。心配な場合は、電話等で事前に確認してみましょう。
1.「肋骨骨折」のケース
激しい咳が続くことで、肋軟骨接合部分や呼吸・咳で繰り返し動いている部分がダメージを受けて、折れてしまうことがあります(疲労骨折)。
肋骨骨折は、ひどい咳が長引いているとき(喘息・肺炎・風邪が悪化しているときなど)になりやすいです。
痛みの特徴
- 肋骨周辺に強い痛みがある(圧痛)
- 骨折した部分を押したり叩いたりすると痛む
- 骨折から少し時間が経過した後に痛むことがある
対処法
- 鎮痛剤、咳止め、湿布を使用する
- 胸帯(バストバンド)を使用して固定する
骨折が小さい、痛みが軽度という場合は、自然治癒することがあります。ただし、肋骨の骨折によって、気胸や血胸などが起こったり、肺や心臓等の臓器や血管が損傷したりする可能性があります。
早めに病院を受診して原因を調べてください。
2.「肋間神経痛」のケース
咳をしすぎた衝撃により、肋骨骨膜や肋間の筋肉や神経を傷めてしまい、肋間神経痛を起こすことがあります。
肋間神経痛は、原因特定が困難なケースが多いですが、ストレス過多、睡眠不足、疲労過多等との関係が指摘されています。
痛みの特徴
アバラのあたりに
- 刺すような鋭い痛み
- ピリピリするような痛み
- チクチクするような痛み
- ズキズキするような痛み
対処法
肋間神経痛が疑われる痛みがあるときは、次の対処法を試してください。
- 消炎鎮痛剤、咳止め、湿布を使用する
- 神経の炎症を抑えるビタミンB12を使用する
消炎鎮痛剤や咳止め、湿布、ビタミンB12は、自己判断でなく、医師や薬剤師に相談のうえ、処方してもらい、服用しましょう。
合わせて読みたい
2023-02-28
胸や背中に激痛が走ることがある…。
肋間神経痛と言われたけど、どんな症状なのかよくわからない…。
そんな方のために、肋間神経痛について分かりやすくまとめました。
「治療法」や「予防につながる生活習慣」も紹介するので、肋間神経痛を改善したい人は必読です。
肋間神経痛とは
肋間神経痛とは、肋骨の間を走る「肋間神経」が、打撲などの外傷や帯状疱疹によって損傷したり、何らかの要因で圧迫されたりすることで、痛みが起こる状態です。
どんな症状?肋間神経痛セルフチェック
押すと痛みが悪化する
強い痛み(激痛)
せき、くしゃみ、深呼吸、少しの体勢変化などで痛みが悪化する
片側のみに痛むことが多い
肋骨に沿うように痛む
肋間神経痛の「原因」
骨折
腫瘍
椎間板ヘルニア
変形性脊椎症
帯状疱疹
などによって神経が傷ついたり、圧迫されたりすると発症します。
肋骨を骨折した人の場合、神経損傷によって発症するケースもあります。
肋間神経痛に「なりやすい人」
激しいせきが長期間続いた
脊髄神経が圧迫された(骨折・打撲・腫瘍・椎間板ヘルニア等)
肋骨神経が圧迫された(背骨が曲がる等)
帯状疱疹ウイルスに感染している(後遺症)
内臓の病気を患っている
上記がきっかけで、肋間神経痛を発症することがあります。
肋間神経痛になったら「してはいけないこと」
体を冷やす
重いものを持つ
「猫背」や「背中をそらす姿勢」
などは避けてください。
肋間神経痛は、体を冷やしたり、重いものを持って脊椎に負担をかけたりすると、痛みが強くなることが多いです。
また、体の歪みがあると痛みを発症しやすいので、正しい姿勢での生活を送りましょう。
肋間神経痛の「治し方」
「消炎鎮痛剤」や「湿布」の処方が、一般的な治療法です。
これらの治療と並行して、運動療法やリハビリが行われることもあります。
続発性の場合には、服薬治療、患部固定、手術等、それぞれの症状に適した治療が行われます。
予防方法は?
15分に一回程度体を動かす
ウォーキングなどの適度な運動を継続する
日頃からストレスを抱え込み過ぎない
肋骨神痛を予防するには、上記のような対策を日頃から意識してみましょう。
病院に行く目安
痛みが2~3日続いている
痛みが強い
といった場合には、隠れた病気の可能性があります。
腫瘍や帯状疱疹が原因の場合、治療しなければ痛みは治りません。
また、膵炎や心筋梗塞など、命に関わる病気も疑われるため、放置は危険です。
痛みが続くときは医療機関を受診し、原因を調べてもらいましょう。
病院は何科に行けばいい?
肋間神経痛がずっと痛いときは、まず整形外科で相談してみましょう。
ただし、帯状疱疹が疑われるときは、皮膚科を受診してください。
また、膵炎など内臓の病気が疑われるときは、内科を受診しましょう。
肋間神経痛を放っておくとどうなるの?
痛みをそのままにしていると、脳にその記憶が刻まれてしまい、痛みに過敏になってしまうことがあります。
これにより、余計に強く痛みを感じてしまう人もいます。
長引く痛みは放置せず、早めに受診して治療を受けましょう。
整形外科を探す
皮膚科を探す
内科を探す
3.「胸膜炎」のケース
胸膜炎は、肺の表面を覆う薄い膜が炎症を起こしている状態です。呼吸困難や胸痛が特徴的な症状です。
細菌性胸膜炎、肺炎随伴性胸水、結核などの感染症や、肺がん、悪性リンパ腫、乳がんなどによる転移性腫瘍などの悪性腫瘍、その他、膠原病、血管炎、肺塞栓症、薬剤などによって、胸膜炎になることがあります。
糖尿病に罹患している、お酒をたくさん飲む、タバコを吸うことも危険因子となります。
痛みの特徴
症状によって痛み方は異なります。
- 少し違和感がある
- ピリピリする
- 針が突き刺さるような痛み
対処法
原因に対する治療を行います。
- 感染症の場合は、抗菌薬、抗ウイルス薬を投与
- 悪性腫瘍の場合は抗がん剤を投与
- 胸水が溜まっている場合は、胸腔ドレナージで胸水を抜く
そのほかに
が挙げられます。
放置することで生じるリスク
そのうち改善するだろうと自己判断で放置してしまうと、気胸、血胸、胸腔内損傷、臓器損傷、血管損傷等の、思わぬ状態に陥ってしまう可能性があります。
また、がんや結核、喘息、肺炎、胸膜炎などの咳の出るほかの病気を見逃す恐れがあります。できるだけ早めに病院を受診することをおすすめします。
▼参考
東京都済生会向島病院 看護日誌 咳からの肋骨骨折を経験して感じたこと
https://www.saiseikai-mkj.jp/news/2018/07/26/2150
一般社団法人 日本骨折治療学会 肋骨骨折
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip09.html
日本医師会 胸のあたりを痛がっている場合
https://www.med.or.jp/clinic/sick_itami_mune.html
東京内科医会 急に胸が痛くなったら
http://www.topa.jp/tokyo/2007-4.html