片方の乳頭から分泌液が出た!
これって大丈夫?もしかして…病気?
乳首から液体が出る理由を、お医者さんに聞きました。
考えられる病気の可能性も解説します。
監修者
経歴
日本外科学会 専門医
いとう新検見川クリニック
なぜ?片方の乳頭から分泌液が出る原因
通常は、出産により分泌物が出るようになります。母乳が分泌され始めるのは、妊娠後期の出産間近の数週間〜出産後です。この時期に乳頭から分泌物のは生理的なことです。
出産以外でも分泌物が出ることも場合によってはあるのですが、
・片側の乳頭のみから分泌物がでる
・分泌物に赤や茶色など血液が混じる
という場合には、そちら側の乳房に腫瘍ができている、異常があるなどの原因があると考えられます。
これ、大丈夫なの?
片方だけの場合は「要注意」です。
他に判断するポイントとして、分泌液の色に注目してください。
あまり心配のいらないケース
透明または白っぽいサラっとした液体が両方の乳頭から少量出ている場合は、あまり心配の要らないケースが多いです。
白いカスのようなものが下着についたり、うっすら湿っていたりする場合です。
この場合は、乳頭への刺激や、ホルモンバランスの変動によって分泌液が出たと考えられます。
病院に行くべきケース
赤、茶色いなど血が混ざっているような色であったり、明らかに血の混ざったものが出ている場合は、注意が必要です。
また、色や質感だけでなく、片方だけにその分泌物が出ている、乳房にしこりが確認できる、刺激を与えていないのに分泌物が出てくるといった場合も注意が必要となります。
このような症状がある場合、
といった病気が原因の可能性があります。
次から、それぞれの症状について解説します。
病気①乳がん
乳腺組織にがんが発生した状態です。
乳管からの発症が多いとされています。転移しやすい場所は、乳房に近いリンパ節・骨・肺などです。
<分泌液の特徴>
- 赤色〜茶色っぽい(血が混じっているような色)
- 片方の乳頭から出てくる
<その他の症状>
- しこり(痛みを感じないことが多い)
- 乳房の皮膚が一部引きつっている
- 乳首の形や向きが左右で変わってくる
- 陥没乳頭でなかったのに、陥没してくる
乳がんの発症リスクが高い人
女性ホルモンである、エストロゲンが関わっていると考えられています。体にエストロゲンがある状態が長くあることが、乳がん発症の引き金の一因となります。そのため、若年層よりも40〜50代で発症率は上がります。
「エストロゲンを含む避妊薬を使用している」「閉経後にホルモン補充療法を受けている」などが発生のリスクをあげます。
また、「初潮が早かった、閉経まで長い人、出産経験がない、授乳していない」などのエストロゲンを長期間、体内に発生させている状態も発症リスクが上がるとされています。
遺伝的要因の場合もあります。親族のなかに癌の人がいないか、いる場合には何の癌であったかは確認しておきましょう。
他にも、飲酒、運動不足、閉経後の肥満といった生活習慣も発症率を上げます。
※乳がんは女性特有のものではなく、男性にも発生します。
病気②乳管内乳頭腫
母乳を乳頭まで運ぶ乳管という組織の中に腫瘍ができている状態です。
腫瘍は通常良性です。乳頭に近い、太めの乳管に発生することが多い腫瘍です。
乳管内乳頭腫の発症リスクが高い人
はっきりした原因は、未だ不明です。
女性ホルモンが一因となっていると考えられています。
病気③乳腺症
女性ホルモンのバランスの乱れが影響し、乳腺に様々な症状が現れます。
女性は、生理や妊娠などに伴い、女性ホルモンが大量に分泌されますが、その分泌に伴い乳腺が反応する状態が乳腺症です。
しこりができることもあります。しこりは通常良性です。
<分泌液の特徴>
<その他の症状>
- 乳房の表面に触れると分かる状態の凸凹を感じる
- 乳房の痛み
- 乳房の腫れ
- 乳房のしこり
- しこりが痛む
乳腺症の発症リスクが高い人
30〜50代の女性に多いとされています。
生活習慣や年齢に関係なく多くの女性に現れる乳腺の症状です。
不安な症状は早く病院へ
乳がんなど重い病気が原因であった場合、早期に発見することで完治の可能性が高くなります。
受診するのは何科?
乳腺外科を受診しましょう。
※病院によっては外科での診療となります。
乳腺外科を探す
合わせて読みたい
2020-06-08
「片方だけ、乳首がかゆい!」
「ずっと治らない…。もしかして病気?」
なかなか相談できない「乳首のかゆみ」の対処法を、お医者さんに聞きました。
放置するリスクや受診した方がいい症状、何科で診てもらえばいいのかもご紹介します。
病気ではないケース
乾燥や蒸れなどによって乳首がかゆくなることがあります。
「乳首のかゆみがなかなか治らない…」というケースでも、病気が原因ではないこともあります。
正しいセルフケア
乾燥している場合:保湿剤やワセリンなどを塗りましょう。
蒸れている場合:通気性のよい生地(綿素材など)を使った下着を選びましょう。
また、サイズの合わない小さな下着も蒸れの原因となることがあります。体にあったサイズの下着をつけることも大切です。
上記のセルフケアを行っても症状が改善されない場合、皮膚炎や病気の可能性が考えられます。一度病院を受診しましょう。
皮膚科を探す
片方の乳首がかゆくなる病気
乳首がかゆくなる代表的な原因として
乳房パジェット病
アトピー性皮膚炎
接触性皮膚炎
真菌感染症
といった病気も考えられます。
片方の乳首がかゆくなる症状がでる、病気について解説します。
乳房パジェット病
乳管に生じたガンが、乳頭まで広がることで起こります。
<症状の特徴>
乳頭が赤くただれる
湿疹が生じる
乳首の痛み
悪化すると、乳頭が変形したり、ジクジクして浸出液が出たりすることもあります。
対処法
腫瘍のある部分を切除します。
放射線治療を行うこともあります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の原因ははっきりとしていませんが、乾燥肌気味で皮膚のバリア機能が弱いなどの体質だとなりやすいと考えられています。
<症状の特徴>
乳首のかゆみや乾燥
浸出液が出る
ジクジクする
対処法
ステロイド軟膏を使用して治療します。
保湿剤やワセリンを塗り、皮膚のバリア機能を維持します。
接触性皮膚炎
化学繊維の下着や、洗剤の成分などの刺激により、皮膚が炎症を起こすことで生じます。
<症状の特徴>
乳首のかゆみ
湿疹が生じる
対処法
ステロイド軟膏を使用して治療します。
保湿剤やワセリンを塗り、皮膚のバリア機能を維持します。絹やコットン素材の下着を選ぶ、洗剤を変えるなども大切です。
界面活性剤は、接触性皮膚炎を誘発しやすいので、合成洗剤ではないものを選ぶのがよいでしょう。製品パッケージに「合成洗剤」と書いていないもの、または成分に「界面活性剤」と書いていないものを選びます。成分に「石ケン」と記載あるものを選ぶとよいでしょう。
真菌感染症
下着の中が蒸れることで真菌(カビ)が繁殖し、乳首が感染することで炎症が起こります。
<症状の特徴>
乳頭部分がただれる
湿疹が生じる
重症化すると、腫れや痛みを生じることもあります。
対処法
抗真菌成分を含む軟膏を使用して治療を行います。
炎症を起こしている部分を清潔に保ちましょう。
また、通気性の良い生地を使った下着や体に合ったサイズの下着をつけることで、蒸れの防止にもなります。
市販薬で治る?
パジェット病
→市販薬での治療は難しいです。
アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎
→抗生物質を含む市販の軟膏により治療が可能です。
真菌感染症
→抗真菌成分を含む市販の軟膏を選ぶと良いでしょう。
ただし、かゆみの原因とは違う薬を塗ってしまうと、改善がみられなかったり、場合によっては症状が悪化することもあります。市販薬を使っても症状がよくならない場合は、病院を受診しましょう。
また、薬に含まれる成分により、アレルギーを起こす可能性のある人は、自己判断で使用せずに医師や薬剤師に相談しましょう。
やってはいけない3つのNG
乳首がかゆい時、
掻きむしる
乾燥させる
入浴の際、洗いすぎる
は避けましょう。悪化してしまう可能性が高いです。
「大したことない」と、かゆみを放置すると…
病院へ行かずに放置すると、乳がんのような深刻な病気を見逃すことがあります。また治りが遅くなり、治療費がかさむこともあるので、早めの受診を心がけましょう。
病院に行くべき!受診目安
痛みがある
浸出液が出ている
湿疹やただれが改善されない
乳首が変形、腫れている
といった場合は病院を受診しましょう。
何科を受診すればいい?
まずは、皮膚科を受診しましょう。
皮膚科を探す
その後、かゆみの原因によっては婦人科、乳腺外科を受診する必要があることもあります。
合わせて読みたい
2019-01-30
「乳房が痛い…」
「乳房にしこりができた…」
更年期の悩みの一つである「乳腺症」について、お医者さんに詳しく聞きました。
乳がんとの見分け方、セルフケア方法なども併せて解説します。
更年期に起こる「乳腺症」って?
乳腺症は、乳腺に起こる生理的な症状を指します。
乳腺に正常とは違った変化が見られるだけで、病気ではありません。
主な原因はホルモンバランスの変化で、生理が関係して発症するケースが多いです。
特に治療を必要とするケースは、ほぼないと考えていいでしょう。
乳腺症の主な症状は「胸の痛み・しこり・分泌物」
乳房の痛み(疼痛)
乳房の硬結(しこり)(※)
乳頭から分泌物が出る
などは乳腺症の主な症状です。
※硬結(こうけつ):柔らかい組織が、炎症・うっ血・充血などで硬くなること
乳腺症は多くの場合、乳がんとは関係がありません。
ここでご説明したような症状は、ほとんどのケースで自然に軽快していくため、過度な心配は必要ないでしょう。
ただし、しこりがある場合は、乳がんが含まれる可能性を考える必要があるため、詳しく検査を行うのが、望ましいです。
チクチクとした痛みを感じる…
乳腺症でチクチクとした痛みを感じることがありますが、これは胸の中に水がたまる「乳腺のう胞」が大きくなると感じます。
母乳みたいなものが出た…
乳腺症になると、乳頭から分泌物(水っぽい、母乳のようなもの)が出ることもあります。
これはホルモンバランスの影響で生じます。
「乳腺症のしこり」と「乳がんのしこり」の見分け方は?
▼乳腺症のしこりの特徴
両方か片方にできる
大きさはバラバラで揃っていない
生理が終わる頃にしこりも小さくなる
しこりが痛む
しこりを押すと痛い
上記に当てはまる場合は、乳腺症の可能性が高いです。
ただし、念のため医療機関で検査を受けたほうが良いでしょう。
要注意!こんな症状は乳がんかも
▼乳がんのしこりの特徴
硬い
境目がわかりにくい、凸凹感じる
しこりが動かない
▼乳がんの症状の特徴
乳房に凹みができる
乳房にただれができる
乳頭からの出血や血の混じった分泌物
わきの下が腫れる
など
乳腺外科を探す
35~50歳の発症が多い
乳腺症は、ホルモン分泌が盛んな35~50歳台の女性に多くみられます。
閉経後に乳腺症が発生するのはまれです。
痛みや硬結などの症状は、月経前に強くなり、月経とともに軽減、終わる頃には緩和されることが多いです。
乳腺症を起こしやすい人
出産後の授乳期に、「乳腺炎」を発症した人
授乳していない人・授乳期間が短かった人
ストレスが多い人
乳腺症のセルフケア
乳房が痛いときのセルフケア
市販の鎮痛剤を使用できます。
生理が終わる頃には、痛みも取れることが多いのでマッサージなどは必要ありません。
長引く場合は、自己判断せずに医療機関で相談してください。
医療機関では痛み止めの処方も可能です。
胸のしこりのセルフケア
乳腺症と診断されている場合は、しこりのケアは必要ありません。
痛みがある時にマッサージを行うと悪化することもあるので、安静にしましょう。
ただし、乳腺症のしこりと似たような症状で乳がんを発症することがあるので、1年に1~2度は検診を受けましょう。
乳頭の分泌物のセルフケア
外に出るときはパッドをつけ対応しましょう。
入浴時には、清潔にしてください。
乳腺外科を探す
病院では、どんな対処をするの?
乳腺症は、基本的には積極的な治療を必要としません。
半年に一度のペースで、経過を観察するケースが多いです。
乳房の痛み・ハリ感が強い場合には、対症療法(でている症状を和らげる治療)が行われます。
▼治療例
漢方薬の処方
ホルモンバランスを調節できる低用量ピルの処方
しこりから水を抜く処置 など
何科に相談に行けばいい?
乳腺外科で受診しましょう。
乳腺外科を探す
乳がんの発症は非常にまれだが…
乳腺症は、
細胞が増殖しない(非増殖性病変)
細胞が増殖する(増殖性病変)
次の2つに区別されます。
乳がんになる可能性があるのは、「増殖性病変」の方ですが、乳腺症のほとんどが「非増殖性病変」であり、多くは乳がんとは関係がない“しこり”です。
しかし、100%心配ないとは言い切れないため、しこりなどの自覚症状がある場合には、念のため医療機関を受診してください。
乳腺外科を探す
参考文献
『疾患・症状別 今日の治療と看護』永井良三著 南江堂
メディカルノート 乳腺症
一般社団法人日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン
キッコーマン総合病院 乳腺症