「胸の付け根が痛むのはなぜ?」
「押すと痛い!」
医師に胸の付け根の痛みの原因や病院の受診目安について聞きました。
乳がんの可能性もあるので、早めの受診が大切です。
監修者
経歴
日本外科学会 専門医
いとう新検見川クリニック
胸の付け根が痛い…これはなぜ?
胸の付け根の痛みは
- ホルモンバランスの乱れ
- 肋骨付近の神経や関節の炎症
- 筋肉痛
のいずれかが考えられます。
一時的な痛みや生理周期に伴う痛みは、過剰に心配しなくてもいいケースが多いです。
こんなときは病院へ!
ただし…
- 痛みが強い
- 痛みが2週間以上続いている
- 一旦痛みが消えても、何度も繰り返す
というときは、医療機関で相談しましょう。
病気が隠れている場合、悪化すると治療期間が長くなり、必要な治療や薬が増えます。
また、手術が必要になる“重い病気”も考えられるため、早めの受診をおすすめします。
病院は何科?
胸の付け根に痛みが生じたときは、乳腺外科を受診してください。
ただし、肋骨やその周辺が痛む場合は、内科・整形外科を受診しましょう。
乳腺外科を探す
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「胸の付け根が痛くなる」2つの病気
胸の付け根が痛む場合、
- 乳腺症
- 乳がん
等の病気の可能性があります。
病気① 乳腺症
乳腺症は、胸の張りを症状とする良性の病気です。
張り感が強まると、胸の付け根の痛みとして感じることがあります。
痛みの特徴
胸が張るような、引っ張られるような痛みが出ます。
うつ伏せで寝たり、胸に物が当たったり、胸が圧迫されると痛みが強くなります。
こんな症状に心当たりはありませんか?
- 胸に熱感や張り感が出る
- 生理前に張り感が強くなる
- 胸にしこりができる
- 乳房の表面に凹凸ができる
乳腺症の原因
ホルモンバランスの乱れが原因で発症します。
生理周期の変動や更年期障害などをきっかけに発症する人もいます。
どんな人に多い?
- 30歳~50歳代の女性
- 生理周期が乱れている人
- 更年期障害を発症した人
自分でできる対処法は?
生活習慣を改善し、ホルモンバランスを整えましょう。
また、なるべくストレスを溜めないようにしてください。
\生活習慣の改善ポイント/
- 決まった時間に起床し、眠る
- 7時間以上、睡眠時間を確保する
- 3食をバランスよく食べる
- 30分程度のウォーキングなどで適度に体を動かす
病院は何科?
乳腺症が疑われるときは、乳腺外科を受診してください。
まずは乳がんではないか、検査します。
乳腺症と診断した場合、まずは経過観察を行います。
痛みがひどい人には、痛み止めの薬や漢方を処方することもあります。
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病気② 乳がん
乳房に発症するがんです。
脇の下にあるリンパが腫れたり、乳癌のできる場所によっては、胸の付け根に違和感や痛みが生じます。
痛みの特徴
脇の横あたりや脇の奥に、ズキズキ・じんじんとした痛みを感じることがあります。
特に、無理に動かしたり、押したりすると痛みます。
こんな症状に心当たりはありませんか?
- 乳房の皮膚がブツブツ果物の皮のようになる
- 乳房の中にしこりがある
- 乳房の形が左右で変わる
- 乳首の左右で位置がずれる
- 乳首がただれる
- 乳首からの血液がまざった分泌物が出る
- 乳首がへこむ
乳がんの原因
女性ホルモンの分泌期間が長いと発症しやすくなります。
遺伝も影響していると考えられています。
どんな人に多い?
- 初潮が早かった人
- 出産・授乳経験が無い人
- 閉経が遅い人
- 乳がんを発症した親、兄弟がいる人
- 煙草を吸う人運動不足の人
- 太っている人
自分でできる対処法は?
残念ながら自分でできる対処法はありません。
医療機関での治療が必要です。
病院は何科?
乳がんが疑われるときは、乳腺外科を受診しましょう。
乳がんの場合、「手術」「放射線治療」「薬物治療」などを行います。
発見された際のステージや病状の進行に応じて治療方針を考えるので、医師に要望を伝えて治療を受けましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2021-08-06
「生理前じゃないのに胸が張る…これは何?」
この症状の原因を医師にうかがいました。
対処法や病院に行く目安も解説します。
胸の張りには“乳がん”も考えられるため、症状が続く場合は要注意です。
生理前じゃないのに胸が張る原因
生理前じゃないのに胸が張る場合、
ホルモンバランスの乱れ
妊娠
乳腺の病気、ホルモンの病気
が原因として挙げられます。
胸の張りは、「プロゲステロン」という女性ホルモンの分泌量の増加によってあらわれる症状です。
「プロゲステロン」は排卵期から生理期にかけて多く分泌されます。
そのため、生理に関係なく胸が張る場合は、何らかの原因でホルモン分泌が正常に行われていないと考えられます。
原因① ホルモンバランスが乱れている
ホルモンバランスの乱れによって、女性ホルモンが過剰に分泌されていると、胸が張る場合があります。
また、胸の張り感だけでなく、
頭痛
ほてり、異常発汗
イライラ、集中力低下
微熱
しびれ
といった症状を伴う場合も多いです。
自分でできる対処法
決まった時間に眠る
十分な睡眠時間をとる(1日7時間以上)
バランスのよい食生活を心掛ける
適度な運動を行う
といった対処をおすすめします。
不規則な生活や長引く睡眠不足は、ホルモンバランスに悪影響を与えます。
生活習慣を見直し、体の調子を整えましょう。
原因② 妊娠している
妊娠によって女性ホルモンの分泌量が増えると、胸の張りが出てきます。
自分でできる対処法
妊娠の可能性があるときは、生理予定日から1週間以上経過した頃に市販の妊娠検査薬で検査をしましょう。
陽性の反応が出た方は、正常に妊娠しているか確認する必要があるので、婦人科・産婦人科を受診してください。
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原因③ 胸が張る病気を発症している
乳腺症
乳腺炎
乳汁漏出症候群
といった病気が原因で、胸の張りや痛みを感じることもあります。
病気① 乳腺症
女性ホルモンの変動によって生じる、乳腺の不調を指します。
生理前でないのに胸が張るのも、乳腺症の症状の一つです。
しこりや乳房の凹凸など、乳がんと似た症状が出るため、念のため検査を受けるようにしましょう。
症状の特徴
乳房にしこりができる
乳房をさわるとゴツゴツした感じがする
乳房が張る
乳房を触ったり、押したりすると痛みを感じる(感じない人もいる)
どんな人に多い?
30歳代~50歳代の女性に多く発症します。
特に生理周期が乱れている人、更年期障害の人に発症しやすいです。
病気② 乳腺炎
乳腺に炎症が起こっている状態です。
発症すると、胸の張り・痛みを感じます。
原因には、母乳による乳腺の詰まり、乳頭からの細菌の侵入などが挙げられます。
授乳中の場合は、赤ちゃんによく飲ませ、こまめに乳房マッサージと搾乳を行いましょう。
母乳による詰まりを取り除くと痛みが改善します。
症状の特徴
乳房が痛む
乳房が腫れる
乳房にしこりができる
乳房の皮膚に赤みが出る
熱が出る
どんな人に多い?
授乳中の女性や陥没乳頭の女性に多く発症します。
乳汁分泌が多くなる薬を飲んでいる人も発症しやすいです。
病気③ 乳汁漏出症候群
妊娠中や授乳中でもないのに、乳頭から乳汁が出る病気です。
溜まった乳汁によって、胸の張りが出ることもあります。
この病気の場合、乳汁分泌の指令を出す脳の器官に、腫瘍が発生している可能性も考えられます。
症状の特徴
妊娠や授乳期でもないのに乳房から乳汁が出る
どんな人に多い?
原因はわかっておらず、どの世代の方でも起こる可能性があります。
男性でも発症します。
病院に行く目安
原因不明の胸の張りが2週間以上続いている
張り感や痛みが強く、日常生活に支障が出ている
という場合は、医療機関を受診してください。
原因に合わせた治療を受けることで、不快な症状の早期改善が期待できます。
乳がんが隠れているケースも…
原因不明の胸の張りには、乳がんも疑われます。
乳がんは命に関わる病気であるため、放置せず早めに治療を受けましょう。
乳がんの症状
乳房が変形している
しこりがある
乳房にえくぼのようなへこみがある
皮膚がただれている
乳頭から血や分泌物が出る
何科で受診すればいい?
生理前ではないのに胸が張るときは、まず乳腺外科を受診しましょう。
ただし、妊娠の可能性がある場合は、婦人科・産婦人科を受診してください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
国立がん研究センターがん情報サービス 乳がん
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2020-10-06
片方の乳頭から分泌液が出た!
これって大丈夫?もしかして…病気?
乳首から液体が出る理由を、お医者さんに聞きました。
考えられる病気の可能性も解説します。
なぜ?片方の乳頭から分泌液が出る原因
通常は、出産により分泌物が出るようになります。母乳が分泌され始めるのは、妊娠後期の出産間近の数週間〜出産後です。この時期に乳頭から分泌物のは生理的なことです。
出産以外でも分泌物が出ることも場合によってはあるのですが、
・片側の乳頭のみから分泌物がでる
・分泌物に赤や茶色など血液が混じる
という場合には、そちら側の乳房に腫瘍ができている、異常があるなどの原因があると考えられます。
これ、大丈夫なの?
片方だけの場合は「要注意」です。
他に判断するポイントとして、分泌液の色に注目してください。
あまり心配のいらないケース
透明または白っぽいサラっとした液体が両方の乳頭から少量出ている場合は、あまり心配の要らないケースが多いです。
白いカスのようなものが下着についたり、うっすら湿っていたりする場合です。
この場合は、乳頭への刺激や、ホルモンバランスの変動によって分泌液が出たと考えられます。
病院に行くべきケース
赤、茶色いなど血が混ざっているような色であったり、明らかに血の混ざったものが出ている場合は、注意が必要です。
また、色や質感だけでなく、片方だけにその分泌物が出ている、乳房にしこりが確認できる、刺激を与えていないのに分泌物が出てくるといった場合も注意が必要となります。
このような症状がある場合、
乳がん
乳管内乳頭腫
乳腺症
といった病気が原因の可能性があります。
次から、それぞれの症状について解説します。
病気①乳がん
乳腺組織にがんが発生した状態です。
乳管からの発症が多いとされています。転移しやすい場所は、乳房に近いリンパ節・骨・肺などです。
<分泌液の特徴>
赤色〜茶色っぽい(血が混じっているような色)
片方の乳頭から出てくる
<その他の症状>
しこり(痛みを感じないことが多い)
乳房の皮膚が一部引きつっている
乳首の形や向きが左右で変わってくる
陥没乳頭でなかったのに、陥没してくる
乳がんの発症リスクが高い人
女性ホルモンである、エストロゲンが関わっていると考えられています。体にエストロゲンがある状態が長くあることが、乳がん発症の引き金の一因となります。そのため、若年層よりも40〜50代で発症率は上がります。
「エストロゲンを含む避妊薬を使用している」「閉経後にホルモン補充療法を受けている」などが発生のリスクをあげます。
また、「初潮が早かった、閉経まで長い人、出産経験がない、授乳していない」などのエストロゲンを長期間、体内に発生させている状態も発症リスクが上がるとされています。
遺伝的要因の場合もあります。親族のなかに癌の人がいないか、いる場合には何の癌であったかは確認しておきましょう。
他にも、飲酒、運動不足、閉経後の肥満といった生活習慣も発症率を上げます。
※乳がんは女性特有のものではなく、男性にも発生します。
病気②乳管内乳頭腫
母乳を乳頭まで運ぶ乳管という組織の中に腫瘍ができている状態です。
腫瘍は通常良性です。乳頭に近い、太めの乳管に発生することが多い腫瘍です。
<分泌液の特徴>
透明
黄色
赤や茶色など(血が混じっている)
<その他の症状>
乳頭周辺の乳管に腫瘍、しこり
乳管内乳頭腫の発症リスクが高い人
はっきりした原因は、未だ不明です。
女性ホルモンが一因となっていると考えられています。
病気③乳腺症
女性ホルモンのバランスの乱れが影響し、乳腺に様々な症状が現れます。
女性は、生理や妊娠などに伴い、女性ホルモンが大量に分泌されますが、その分泌に伴い乳腺が反応する状態が乳腺症です。
しこりができることもあります。しこりは通常良性です。
<分泌液の特徴>
透明
乳白色
両側性のことが多い
<その他の症状>
乳房の表面に触れると分かる状態の凸凹を感じる
乳房の痛み
乳房の腫れ
乳房のしこり
しこりが痛む
乳腺症の発症リスクが高い人
30〜50代の女性に多いとされています。
生活習慣や年齢に関係なく多くの女性に現れる乳腺の症状です。
不安な症状は早く病院へ
乳がんなど重い病気が原因であった場合、早期に発見することで完治の可能性が高くなります。
受診するのは何科?
乳腺外科を受診しましょう。
※病院によっては外科での診療となります。
乳腺外科を探す
参考
国立がんセンターがん情報サービス 乳がん