「顎がだるい…これって病気?」
「どう対処すればいい?」
顎がだるい場合に考えられる原因や対処法について、歯医者さんに聞いてみました。
病院を受診する目安や、病院での治療法もチェックしましょう。
監修者
経歴
歯は健康に欠かせません。美味しいものを食べる・会話をする・美しい表情を保つ…、健康な歯は人生の質を高めます。歯の正しい知識を知って、より健康な日々を手に入れましょう。
顎がだるい…「もしや病気のせい?」
病気ではないことがほとんどです。
“顎がだるくなる”よくある原因として
- 顎関節症
- TCH(上下歯列接触癖)
- 食いしばり
の3つが考えられます。
顎関節症 |
顎に大きな負担が掛かり、顎関節とその周囲に異常が生じている状態 |
TCH(上下歯列接触癖) |
上下の歯が常に接触している状態です。
(上下の歯は、少し離れている状態が正常)
顎や口周りの筋肉が疲労を起こす原因となることがある |
食いしばり |
歯や顎に多大な圧力がかかっている状態。ストレスなどで無意識に行っていることも多い。 |
頭痛・肩こりを併発するケースも!
顎周辺の筋肉がずっと緊張していると、筋肉が過度の疲労状態となり、血流障害が発生し、頭痛や肩こりを引き起こすと考えられています。
原因① 顎関節症
精神的ストレスや歯の噛みしめ等により、顎周りの筋肉が過剰に緊張し、顎関節とその周囲に多大な負担が掛かっている状態です。
顎関節内にある関節円板というクッションのような働きを持つ軟骨が圧迫され続けることによって、関節円板(クッションのような働きを持つ軟骨)が前方にずれたり、磨り減ったりすることで顎関節の痛みが顎にだるさとなって感じていると考えられます。
症状の特徴
- 口を大きく開けられない
- 口を動かすと顎関節が痛い
- 歯を噛み締めると顎関節が痛い
- 顎関節まわりの筋肉を押すと痛む
- 口の開閉時に顎関節から音が出る
- 頭痛
- 首、肩の痛みやコリ
顎関節症になりやすい人
- 20~30歳代の女性
- ストレス過多の方
- 歯ぎしり・食いしばりをする方
- 噛み合わせが悪い方
- 頬杖をつく方
- 姿勢が悪い(猫背)方
- 硬いものを好んで食べる方
- どちらか一方だけで物を噛む癖がある方
- うつ伏せで寝る方
- 睡眠障害の方
自分でできる対処法
- 口を大きく開けない
- 顎を酷使しない(しばらく硬い食べ物の摂取を控える等)
- 温めた蒸しタオルを5分程度患部に当てる(症状が落ち着いてきている状態のとき)
- タオル等で包んだ保冷剤で冷やす(急性期のみ。10分間を限度)
- 顔の筋肉を緩めるマッサージをする
- 低い枕を使い仰向けに寝る
- 同じ姿勢を長時間続けない
- 頬杖をつかない
原因② TCH(歯列接触癖)
TCH(歯列接触癖)とは、仕事や勉強等に集中している際、無意識に上下の歯が触れたままの状態になっていることを言います。
結果として口周りの筋肉が過度の疲労を起こしてしまう原因のひとつとなります。
必要以上に上下の歯が触れたままになると、顎の関節や口周りの筋肉に過度の緊張やこわばりが起こるため、顎にだるさを感じる場合があります。
症状の特徴
- 奥歯で物を噛むと、瞬間的な痛みが生じる(ピリピリするような痛み)
- 歯にしみる
- 歯が痛い
- 歯並びが悪くなる
- 歯が揺れる
- 顎に痛くなり、口を開けにくい
- 歯の横面が削れる
- 歯の詰め物が外れる・壊れる
TCHになりやすい人
- 歯並びが悪い方
- 姿勢が悪い方
- スマホやパソコンを長時間使用している方
- ストレス過多の方
自分でできる対処法
- 家や会社等の目につく場所に目印になるものを貼り、その目印を目にした際は歯を離すという習慣を付ける(上下の歯を接触させないように意識して生活する)
- 意識して唇を閉じ、上下の歯が触れないように離し、頬の筋肉の力を抜くという動作を繰り返す
- 舌を正しい位置に置くようにする(上顎のある2本の前歯の中央部分の上にある歯茎)
原因③ 食いしばり
無意識の食いしばりや、就寝中の食いしばりにより、顎に多大な圧力が掛かっている状態です。
就寝中の食いしばりは、通常の3倍以上の力が歯や顎に掛かっているので、この強い圧力が筋肉を緊張させて、血行不良、免疫力低下、睡眠障害等を起こし、顎にだるさを感じるようになると考えられます。
症状の特徴
顎のだるさ以外には、
- 顎の痛み
- 歯の痛み
- 歯が割れる、欠ける
- 歯の詰め物が外れる、壊れる
- 知覚過敏
- 頭痛
- 首や肩の痛みやコリ
- 慢性疲労
- 睡眠障害
といった症状があらわれることもあります。
食いしばりをしやすい人
- ストレス過多の方
- 疲労過多の方
- 奥歯で物を噛む癖があの方
- 歯並びが悪い方
- 体に合わない歯科金属を使用している方
- スマホやパソコンの長時間使用している方
- 姿勢が悪い方
自分でできる対処法
- 顎周り、頬周りの筋肉をほぐすためのマッサージを行う
- ストレスや疲労を溜め込まない
- 低い枕を使用し仰向けで眠る
- 頬杖をつかない
- 食いしばりをしないように自己暗示をかける
- 筋肉を脱力させる運動を行う(手を上に伸ばして一気に肩の力を脱力させる等)
病院を受診する目安
- 顎のだるさに痛みを伴う
- 口がうまく開けられない
- 口を開け閉めする際の痛みが1週間以上続く
- 歯がしみる
- 歯が揺れる
- 何もしていないのに顎が痛い
等の症状が出現している場合は、病院を受診してください。
これらの症状が出るときは、顎は症状が強く出現する急性期の状態になっていると考えられます。歯科を受診してください。
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病院での治療法
病院では、
- マウスピースの装着(スプリント)
- レーザー治療
- 訓練療法(リハビリトレーニング)
- 薬物療法
といった治療が行われます。
マウスピースの装着(スプリント)
上顎または下顎の歯列にマウスピースを装着する治療法です。主に就寝中に使用します。
夜間就寝中にマウスピースを装着すると、寝ている間の無意識の歯の噛み締めや食いしばりによる顎関節や筋肉への過剰な負荷の軽減が期待でき、症状の改善につながると考えられます。
レーザー治療
患部に赤外線レーザーを照射したり、電気刺激を与えたりする治療法です。
赤外線レーザーの照射や電気刺激により、顎の筋肉を収縮させて、血流を改善することで症状改善にもつながると考えられています。
訓練療法(リハビリトレーニング)
急性期の強い痛みが落ち着いてきたところで、少しだけ痛みを感じるくらいに関節を動かし、筋肉を引き伸ばす治療法です。
筋肉を引き伸ばす訓練療法を行うことで、痛みの改善が期待できます。
薬物療法
痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤を用いる治療が行われる場合があります。
消炎鎮痛剤を決まった時間に決まった期間使用することで痛みの緩和が期待できます。