子どもに発達障害がある場合、早めにケアしたいですよね。
発達障害のある赤ちゃん(0歳~1歳)の特徴として考えられているものを、お医者さんに聞きました。
「発達障害はいつわかる?」
「検査はいつやるべき?」
といった質問にも答えます。
監修者
経歴
公益社団法人 日本小児科学会 小児科専門医
2002年 慶應義塾大学医学部を卒業
2002年 慶應義塾大学病院 にて小児科研修
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室勤務
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務
2017年 「なごみクリニック」の院長として勤務
2020年 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任
赤ちゃんの時点で、発達障害はわかるの?
赤ちゃんの時点では「発達障害であるか」は判断できません。
早い場合でも、発達障害がわかるのは3歳ごろです。
近年、発達障害という言葉がよく知られるようになってきました。同時に「これってもしかして発達障害のサイン?」と心配になっているママ・パパも増えています。当てはまる特徴をみつけて、「この子の将来はどうなるのか…」とショックを受ける方も多いです。
赤ちゃんの成長は個人差が大きいため、「他の子と違うけど大丈夫?」と心配になる方も多いです。そのような不安は、子どもに愛情を注いでいる証でもあります。
次の段落から“赤ちゃんの発達障害のサイン”をいくつか紹介しますが、当てはまる特徴がある=発達障害であるとは限りません。発達障害にも個人差があり、いろいろなタイプがあります。
発達障害を持つ赤ちゃんの特徴
赤ちゃんの頃にみられる発達障害の特徴としては
- 手がかからない
- 抱っこしてもしがみつかない
- 人見知りしない
- 奇声を発する(※2歳ごろから)
- よく癇癪をおこす(※2歳ごろから)
ということがあげられます。
手がかからない
発達障害の赤ちゃんには、
- 相手(パパやママ、相手をしてくれる大人)を意識していない
- あまり泣かない
などの特徴がみられる場合もあります。
あまり泣かないため、呼吸器も発達せず、いつまでも弱々しい泣き声の赤ちゃんもいます。あやしてもあまり笑わない子もいます。
抱っこしてもしがみつかない
抱っこ・おんぶしようとしても、しがみついてこないという特徴がある場合もあります。
抱っこひもの補助がないと、抱っこするママ・パパ側が不安になることもあります。
これは、抱っこ・おんぶを赤ちゃんが要求していないサインともされています。
人見知りしない
パパやママを含む、どの相手に対しても興味がないようなそぶりの赤ちゃんがいます。
※反対に、パパやママでないと異常に嫌がるケースもあり、この特徴には個人差があります。
音に敏感に反応する
発達障害のお子さんは、音や光に敏感(もしくは鈍感)な場合があります。
爪切りや耳かきを、極端に嫌がる場合もあります。
奇声を発する(※2歳ごろから)
意図してなのか意味はないのか、大きな声を出すことがあります。やめてとお願いしても、注意してもおさまりません。
この場合、基本的には「赤ちゃんが泣いている」状態とは違います。
よく癇癪をおこす(※2歳ごろから)
自分の思うように進まないと、癇癪を起こしたように大泣きして、長時間おさまりません。
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2019-10-07
赤ちゃんが発熱したときの正しい対処方法と、病院受診の判断目安をお医者さんに聞きました。
赤ちゃんの高熱の対処法
38度を超える高熱が出た場合は、病院を受診してください。
38度以下の場合は、呼吸困難や嘔吐などの症状がなく元気であれば自宅で様子を見てもよいです。
ホームケアの方法
熱を無理に下げる必要はありません。
発熱は、体に入ってきたウイルスや細菌と戦っている免疫反応です。
<ホームケアの4ステップ>
タオルに巻いた保冷剤や濡らしたタオルなどで、脇や首筋などを冷やしてください。
手足が冷たく、体をブルブル震わせる場合には温めましょう。
体が温まったら、厚着をしないで通気をよくしてください。
汗をかき始めたら、汗を拭き、こまめに着替え、濡れた衣類や汗で体が冷えるのを避けましょう。
お風呂は入ってもいいの?
熱が38度以上のとき、または嘔吐や咳がひどい場合には、ホットタオルで体を拭くくらいにしてください。
熱が少し下がったからお風呂に入ろうと大人と同じ感覚で入浴させてしまうと、赤ちゃんの体力が奪われ、弱ってしまう場合があります。
熱が下がり元気が戻っても、あまり長風呂はさせずに、さっと入浴するところから始めてください。
【病院の受診目安】何度から病院?
何度から病院?
38度を超えたら、医療機関を受診しましょう。
赤ちゃんは、まだ小さく免疫や体の機能も未発達なので、急激に症状が悪化する場合があります。
体調をよく観察して、38度を超えたら病院を受診すると心に留めて、すぐに出られるよう備えはしておきましょう。
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38度以下でも要注意!体調チェックリスト
このような症状が、発熱と共にあれば危険信号です。病院を受診しましょう。
<病院に行くべき場合>
ずっと泣いている
元気が無く、ぐったりしている
よく嘔吐する
ミルクを飲まない
尿の量が少ない
顔色、唇の色が青紫
呼吸困難がある
ゼイゼイと肩で息をしている
高熱が続けば体力や水分が失われ、危険な状態になる場合があります。あまりに高い熱が出ている場合、解熱剤を使用し、熱を下げるのはその状態を避けるためです。
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「発疹」を伴う原因
赤ちゃんで多いのは、突発性発疹です。
熱が高い割には、元気なのが特徴です。多くは、熱が下がってきたら発疹が出ます。
その他の発熱時の発疹では、溶連菌感染症や川崎病の可能性があります。病院を受診してください。
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「嘔吐」を伴う原因
風邪や、ウイルス性胃腸炎などが考えられます。
嘔吐がなんども続いている、おさまらない場合は、病院を受診しましょう。
嘔吐したものが「緑色」(胆汁性嘔吐)、血が混じっているような「赤・茶色」は、危険です。診療時間外でもすぐに病院を受診してください。
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「下痢」を伴う原因
風邪や、ウイルス性胃腸炎などが考えられます。
下痢がひどく、おさまらない場合は、病院を受診しましょう。
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「痙攣」を伴う原因
高い発熱があり、痙攣が起きれば熱性痙攣が考えられます。
まずは横を向かせ、嘔吐したものが気道につまらないようにします。
数分でおさまるようであれば、おさまってから病院を受診します。
意識が朦朧としている、何度も痙攣する、5分以上の痙攣があれば、すぐに救急車の手配をしてください。
発熱の後遺症について
感染症に伴う熱が原因で、後遺症が出るということは基本的にありません。
脳症や髄膜炎などは、感染していたウイルスや細菌が直接、髄膜に浸潤しています。この場合には発達遅延やけいれんなどの後遺症などが残る可能性はあります。
参照
子育てハッピーアドバイス知ってよかった小児科の巻
http://www.happyadvice.jp/archives/118
「唸る」「よく泣く」これって…発達障害のサイン?
近年、「発達障害」という言葉が浸透し、「うちの子は、大丈夫?」「早いうちに対処してあげたい」と心配するママ・パパも増えています。
実際に、
「赤ちゃん うなる 発達障害」
「赤ちゃん 泣きすぎ 発達障害」
「赤ちゃん 奇声 発達障害」
といった検索がやめられないママ・パパも多くいます。
赤ちゃんは、脳も体もまだまだ発達途中です。理由もなく激しく泣いたり(パープルクライング)、寝ている間にうなったりすることはよくあります。
赤ちゃんにはこんな「個性」があります
0歳の赤ちゃんにも、個人差はあります。
「気質」や「成長の速度」は、ひとりひとり違うのです。
例えば、こんな個性があります。
- 敏感で、小さな音にも反応する
- のんびり屋さんで、まわりがうるさくても寝られる
- 活発で、よく手足をバタバタさせている
- 眠る時間が長い(起こさない限り寝ている)
- 全然寝ない(寝かしつけてもなかなか寝ない)
同じ0歳でも、ひとりひとり全然違います。
2人目の赤ちゃんを育児中のママ・パパの中には「上の子と全然違う!」とびっくりする方もいます。
もし不安なことがある場合は、かかりつけの小児科の医師や、発達障害の専門家に相談にのってもらいましょう。
「この子の将来が心配」というママ・パパへ
今スマホとにらめっこをして、赤ちゃんの行動・言動が「発達障害ではないか」と一喜一憂しているよりも、今しか見れない“赤ちゃんが可愛い時期”を楽しんでください。
「発達障害」は、よく耳にする言葉となってきましたが、大人になってから自分と全く同じ人がいないように、赤ちゃんも同じ人はいません。ましてや、生まれた月齢が数ヶ月違えば、大きな個人差が出やすい時期です。
赤ちゃんの時点では、「発達障害である」と診断することも、発達障害と向き合うための「療育」を始めることもできません。今、ママ・パパができることは、目の前の赤ちゃんにたっぷり愛情を注いであげることです。
0歳では「発達障害の対処ができない」理由
0歳児のときに一時的に発達障害のような兆候がみられても、赤ちゃんが成長するにつれ“発達障害のサイン”と思っていた行動がなくなることがあります。
例えば、早いうちからその兆候があらわれる発達障害の代表例として「自閉症」があります。「表情に乏しい」「ママ・パパをあまりもとめない」「あまり泣かない」などのサインがみられることがあります。
しかし、赤ちゃんの時点では「個性」なのか「自閉症」なのかを判断することはできません。赤ちゃんが大きくなる過程で、まわりに成長が追いつき、“自閉症のサインだと思っていた行動”がみられなくなることもあります。
近年では、発達障害は、成長過程の早い段階でわかるようになってきました。そのため、早期に様々な支援を受け、社会で活躍している人が大勢います。就学の前に療育対応ができ、集団生活に備えることもできます。
発達障害は「いつわかる?」
早い場合には3歳児健診のときにわかります。
定期健診のときには、医師や専門家と子どもの成長について話すことができます。
心配ごとは、どんどん質問しましょう。
※発達障害は、一つではないので早期に発見できないものもあります。小学生や中学生など、勉強をするようになってから、わかるものもあります。
発達障害を「検査するタイミング」
発達障害の可能性がある場合、何歳ごろに検査すればいいでしょうか?
集団生活に入る前にまずは受けてみると良いでしょう。
多くは、小学校入学前となります。
心配な場合は、2歳以降になってからかかりつけの小児科・保健所の窓口・地域の福祉センターに相談してみましょう。早いうちから相談することで、お子さんにあった療育を早期から受けられることもあります。
どこで検査できる?
まずは、小児科を受診して相談しましょう。
その後、地域の療育センターなどに紹介される流れが多いです。
検査を受けるメリット
年齢が早いうちから発達障害がわかると、集団生活に入る前から、療育で個人に合ったプログラムをこなすことができます。
療育では、個人のクセを受け、ある程度の行動パターンを刷り込むことができます。療育に通いながら、幼稚園でお友達を作っている子どももたくさんいます。
近年では、発達障害の子どもをサポートする施設・取り組みも増えています。
周りのサポート受けながら、発達障害と向き合っていくこともできます。発達障害をもちながら、社会で活躍している人も多くいます。
発達障害は「親が原因ではない」
子どもの発達障害は、親の「育て方」や「愛情不足」が要因となることはありません。
何らかの原因により、先天的に脳の機能に一部障害があることが原因とされています。胎児期の影響や原因不明の場合も多くあります。
子どもに発達障害の傾向があると「私のせいなのでは…」と悩んでしまう親もいます。どうか、ご自分を責めないでくださいね。
今は、赤ちゃんと向き合って、今しか見られないかわいい時期を、思いっきり楽しんでくださいね。
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2022-04-01
「うちの子、なんか他の子と違う?」
「もしかして…?」
お医者さんに「赤ちゃんの時点で、どんな知的障害の兆候がでるの?」と聞いてみました。
顔つきや表情でわかるのか、何歳ごろに診断ができるのかについても解説してもらいました。
赤ちゃんの時点で、知的障害かどうかはわかるの?
0歳の赤ちゃんの時点では、基本的にはわかりません。
育っていく過程である程度の発達基準があり、そこに達していないもしくは逸脱しているなどで「知的障害」の判断がされるため、0歳の段階ではわかることはありません。
0歳の時点での「知的障害の兆候」はある?
泣き止まない
泣かない
抱っこで体をそらせて嫌がる
などが「知的障害の兆候」の傾向としてはあります。
しかし、これらがあるからといって0歳児の時点で知的障害とは判断はできません。
知的障害は、体の異常があるというようにすぐに診断がつくものではありません。これから数年育っていく中で、判断されます。
「知的障害かも」と気づくきっかけは?
ママ・パパが“育てにくい”と感じたのが、気づくきっかけとなる人が多いようです。
例えば、
他の赤ちゃんたちとよく喧嘩する
離乳食を嫌がる
偏食が強い
泣きだすと止まらない
癇癪が強い
抱っこを嫌がる
などがあります。
知的障害はいつわかる?
小学校での学習が始まってから判明することが多いです。
ただし場合によっては、就学前の健診や3歳健診で判明する場合もあります。
検診で知的障害と判断される基準は?
それぞれの検診で、“ここまでできる”という判断基準があります。
1歳半検診
名前を呼ぶと反応するか
指示出しに反応するか
両親の顔を見るか
など
3歳検診
年齢は言えるか
名前は言えるか
など
自閉症の場合は、名前に反応しない、人の指示に答えないなどの対人関係のトラブルが早期に発見されるケースもあります。
ただし、ひとつふたつできないからといって判断されるというよりは、ママ・パパが日常見ていておかしいと思う点や医師の確認を総合的に判断します。
知的障害を持つ赤ちゃんの特徴
泣き止まない/もしくは泣かない
眠らない
抱かれるのを嫌がる
の特徴がみられることが多いです。
それぞれ解説していきます。
特徴① 泣き止まない・泣かない
知的障害を持つ赤ちゃんは、数十分などではなく何時間という長時間間隔で、泣くことが多くあります。
反対に、ほとんど泣かない・反応がないという場合も、知的障害を持っていたケースがあります。
赤ちゃんは泣くものなので、何かにつけて泣きます。
しかし、通常は泣き疲れて長くとも1時間程度で泣きやみますが知的障害を持つ赤ちゃんはそれ以上に長いことがあります。
※通常でも体調が悪いなどが悪いと一時的に泣き止まないことがあります。
ただし、これだけで一概に障害があるとは言えません。
赤ちゃんは日々成長していますし、生活の刺激や病気で機嫌が悪いということも多くあります。後から考えると、一時的なものだったということも多いでしょう。
特徴② 眠らない
赤ちゃんたちは睡眠を必要としているため、たくさん眠りますが、知的障害を持っている赤ちゃんの場合、眠りが少ないことがあります。
ただし、これだけで一概に障害があるとは言えません。
赤ちゃんは日々成長して、敏感に外の変化を感じているため眠らない日もあるでしょう。後から考えると、一時的なものだったということも多いでしょう。
特徴③ 抱かれるのを嫌がる
自閉症などの障害がある赤ちゃんは、抱っこをすると常に仰け反って嫌がる傾向があります。
また、成長してきても目を合わせてくれない、対話がないなど、コミュニュケーションが取れない傾向が強くあります。
1歳ごろにみられる兆候
言葉が遅い
お友達とよくぶつかる(おもちゃの取り合いなどで譲れない)
話しかけてもこちらを向かない
抱っこが嫌い
同じおもちゃでしか遊ばない
気に入ったものは離さない
など
2歳ごろに見られる兆候
言葉が遅い
友達と喧嘩が多い(手を出す・噛む・押す など)
コミュニュケーションが取れない
目を合わせない
ローテーションが変わる・気にくわないことがあると癇癪を起こす
何時間も泣き止まない
など
3歳ごろに見られる兆候
言葉が遅い
友達と一緒に遊ばない
人とコミュニュケーションが取れない
ローテンションが変わるとパニックを起こす・癇癪が強い
など
自閉傾向があると、症状はよりはっきりと出るようになります。
“泣き止まない・癇癪が強い”ときは、小児科の医師に相談を
ママ・パパが通常に対応できないほど、泣き止まない・癇癪が強いなどがあれば一度相談してみましょう。
このようなケースは、病気などが原因になっていることもあります。
知的障害の検査方法
知的障害の検査は臨床心理士によって、IQを測定します。(※WISC-III・田中ビネー法など)
検査は基本的には、検診のタイミングで行われることがあります。
3歳児検診、5歳児検診、就学時前検診があり、検査を要すると判断となった場合に上記の検査が実施される場合があります。
(※)WISC-III:6種類の言語性下位検査と7種類の動作性下位検査で構成されている検査でIQの測定を行う。
(※)田中ビネー法:「思考」「言語」「記憶」「数量」「知覚」などの問題で構成されている検査でIQの測定を行う。
「この子の将来が心配…」というママ・パパへ
少しでも心配事があるときは、検診まで待たずに近くの療育機関などへ相談してみましょう。
何らかの兆候がある場合、それだけ早く療育に通わせることも可能です。
早期より療育を受けていると、その後の日常生活や学校生活などにも早く馴染むようになります。
▼参考
厚生労働省平成22年度障害者総合福祉推進事業