子どもが尿路感染症に!
熱が上がったり下がったりしてなかなか治らない…。
お医者さんに「熱を下げて早く治してあげるために、ママ・パパはどうしたらいいのか」聞きました。
監修者
経歴
公益社団法人 日本小児科学会 小児科専門医
2002年 慶應義塾大学医学部を卒業
2002年 慶應義塾大学病院 にて小児科研修
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室勤務
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務
2017年 「なごみクリニック」の院長として勤務
2020年 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任
尿路感染症の熱の出方の特徴
尿路感染症の熱の出方の特徴を教えてください。
寒気を伴い、38度を超える熱が出ることも多くあります。
尿路感染症には主に膀胱炎と腎盂肝炎の2タイプがありますが、腎盂腎炎の場合での発熱は、高くなったり、下がったりを繰り返す特徴があります。
また、治療が進み、菌が減ってくると体調も徐々に良くなりますが、そこで無理して通常生活に戻すとまた、疲れなどから、熱がぶり返すことがあります。
なぜ?熱が上がったり下がったりする原因
発熱を起こしている原因菌をやっつけないと何度も発熱を繰り返す場合があります。
まず、治療薬は、最後まで飲み切りましょう。
また、少し体調が良くなったからといってすぐ遊んで体を動かすのは控えましょう。疲れて発熱を繰り返すのは子どもによくある症状です。
熱を下げるにはどうすれば?
尿路感染症は、適切な治療(薬)をとっていれば、徐々に快方に向かいます。医師が「治った」と判断するまでは、ゆっくりと体を休ませてください。
1.水分をしっかりとろう
尿路感染症は、菌を排出する必要があるので、水分はたっぷりと取らせてください。トイレは我慢しないで、小まめに尿を出すように指導しましょう。経口補水液がおすすめですが、飲んでくれるなら他のジュースやゼリーなどでも構いません。
2.横になって休もう
体が楽になってくると、子どもは活動してしまいがちですが、しっかり熱が出なくなるまでは、日中も横になって休息を取らせるようにしましょう。
子どもは、落ち着いた環境でないとゆっくり眠れません。室温を心地よいくらいに設定して、寝具は清潔なものを使用しましょう。また、子どもをゆっくり寝かせたいのであれば、保護者の方も家で動き回らずに、できるだけ子そものそばにいてあげましょう。
3.食事は、“食べられるもの”でOK
食事は、栄養のあるものをたっぷりとらせたいところですが、痛みや不快感で、食欲がない子どももいます。この場合は、子供が欲しがるものがあれば、与えてください。
市販薬は飲んでもいいの?
市販薬は飲んでもいいでしょうか?
基本的には、担当医師にご相談したうえで内服を行ってください。
やってはいけないNG対処
「治ってきたっぽい」と自己判断して、薬を飲むのをやめないでください。
薬は、決められた期間飲んでください。途中でやめてしまうと、菌がまた増えて発熱することもあります。
また、熱があって暑がっているのに厚着をさせる・寒がっているのに薄着をさせるなどでも、発熱症状が悪化するので注意してください。基本的には、暑がっていたら薄着、寒がったら厚着をさせます。
尿路感染症はうつる?
子どもから、尿路感染症はうつることはありますか?
うつることもあります。
尿路感染症にかかっている子どもの排便を手伝い、そのまま手洗い不十分で、保護者の人が自分の外尿道口近くを触ることで感染する場合もあります。
子どもの排便を手伝った後は、必ず石鹸で手洗いを行いましょう。
こんなときは病院へ!
排尿痛があるときは、尿に関わる部分に異常が見られる場合が多いです。
「トイレの回数が多い」「腹痛がある」といった症状に伴い、発熱があるといった場合は、病院を受診しましょう。
小さな子どもが、尿路感染症を発症すると、まだ症状を正確に訴えられないため、親が注意して見るようにしましょう。38℃以上の発熱に加えてぐずる・食欲低下・不機嫌が続く・嘔吐などの症状サインが出ます。
病院は何科?
小児科を受診しましょう。
病院では、尿検査・血液検査・超音波検査などで検査が行われます。高熱が続くような症状は、入院によって治療が必要になります。
小児科を探す
放置するリスク
放置して、重症化をすれば、敗血症や腎臓に障害が残ってしまうこともあります。
※敗血症…細菌が血液に入り全身をめぐり、状態が急激に悪化します。死亡することもあります。
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2022-04-01
子どもの熱が39度に!
病院に行くべき?まだ様子をみても大丈夫…?
お医者さんに、その対処法を聞きました。
病院を受診する目安や、食事や水分のとりかた、看病の仕方を解説します。
まずは「慌てない」こと
39度の発熱には驚くかもしれませんが、発熱そのものが脳に影響を与えたり、後遺症を残すことはないとされています。
発熱は、体がウイルスや細菌をやっつけるための免疫反応です。
無理に冷やしたり、市販薬を使ったりしない方がよいケースもあります。まずは慌てず行動しましょう。
生後3ヶ月未満の赤ちゃんは、すぐに病院へ!
生後3ヶ月未満の赤ちゃんの場合は、38度以上になったら医療機関を受診してください。
赤ちゃんの体は未熟です。高熱に負けてしまったり、体調が急変することもあります。後遺症が残ったり、敗血症・肺炎・髄膜炎のリスクもあるため、迷わず小児科を受診しましょう。
「病院に行くべきか」体調チェックをしよう
発熱以外にどんな症状がでているか確認しましょう。
「呼吸が苦しい」「顔色が悪い」などの症状がなければ、基本は安静にして寝かせます。
数時間おきに熱を測り、体調に変化がないか観察しましょう。
発疹がでている
嘔吐・下痢がある
飲食がままならない
→子どもの様子を見ながら、症状がつらいときは早めに医療機関を受診しましょう。
ぐったりしている
脱水症状のサインがある
会話ができない
呼吸が苦しい
→すぐに医療機関に行きましょう。
夜の場合は、急患診療を受診してください。
全く動けない
意識レベル低下
→救急車の手配をしましょう。
「熱が上がりきったサインがでているか」を確認しよう
「熱が上がりきる前」と「熱が上がりきった後」で、対処法が変わります。
熱が上がりきる前に、いくら熱を冷まそうとしても、熱は下がりません。
熱が上がる途中のサイン
手足が冷たい
「寒い」と言う
ガタガタ震える
この状態のときは、体を温めてあげましょう。
体を冷やしたり、解熱剤を使っても、熱が下がりにくい状態です。
熱が上がりきったサイン
手足が温かい
汗をかいてきた
顔に赤みがさした
この状態になったら、体をすずしく楽にしてあげましょう。
汗をかきはじめるので、水分補給することが大事です。
39度の対処法(熱が上がりきる前)
子どもの体を温めて、お部屋を加湿してあげましょう。
熱が上がっている途中は、むやみに体を冷やさないようにしましょう。
子どもが寒がっている場合は、重ね着をしたり、お部屋の温度を高めに調整して、子どもの体を温めてあげましょう。
また、お部屋の湿度を上げてあげると、喉や鼻の中にいるウイルスが繁殖しづらくなります。
加湿器がないときは…
塗れタオルを干す
カーテンに霧吹きをかける
お湯を沸かす
39度の対処法(熱が上がりきった後)
熱が上がりきると、汗をかき始めます。こまめに汗を拭き取ってあげましょう。
水分補給だけはしっかり行ってください。
このときに厚着をさせすぎると、汗をかきすぎて脱水症状になるリスクもあります。子どもが暑がる場合は、Tシャツ1枚でもかまいません。
また、発熱後は食欲がないことも多いです。
無理して食べなくても大丈夫ですが、水分だけはしっかり補給してくださいね。
冷やす場所はどこがいい?
効率よく熱を冷ましてあげるためには、首回り・脇の下・股の付け根を冷やすと良いでしょう。
「高熱で眠れない」ときの対処法
子どもが寝ている部屋の温度・湿度を適切に整えてあげましょう。
寒がっている→布団や衣類で保温しましょう。
暑がっている→薄着にさせて大丈夫です。無理に布団をかける必要はありません。
厚着させすぎたり布団をかけすぎたりすると、熱がこもり、余計に具合が悪くなることもあります。
また、エアコンや扇風機の風は、直接体に当たらないようにしてください。
<お部屋の温度・湿度の目安>
温度:(夏場)25~28度/(冬場)18~22度
湿度:40~60%ほど
おすすめの飲み物
飲み物は、子どもが飲みやすいいものであれば、水やジュースなどでもかまいません。
もしあれば、経口補水液がおすすめです。
子どもの口に合わない水分(経口補水液や水など)を無理やり飲ませる必要はありません。
※吐き気・下痢がある場合は、柑橘系の飲み物は避けましょう。
水分がとれない場合
スプーン1杯程度でもいいので、少しずつ飲ませてください。
一気にゴクゴク飲ませようとすると、吐いてしまうこともあります。
子どもが欲しがるジュースやスポーツドリンクでもよいので飲ませましょう。
経口補水液は、果汁で少し味をつけてあげると子どもでも飲みやすくなります。
脱水症状のサイン
汗をかいていない
おしっこが少ない
泣いても涙が出ていない
唇がカサカサ
汗をかいていない
顔色が悪い
吐き気がある
小さな子どもは、あっという間に脱水症状が進むことがあるので、小まめに体調をチェックしましょう。脱水症状がでているのに水分摂取ができないときは、医療機関を受診してください。
おすすめの食べ物
子どもが「食べたい」というものがあれば、食べさせてあげてください。
プリンやゼリーなど、食べやすいものでもよいでしょう。
食欲がありそうなら、消化によいうどんやおかゆ、みそ汁、スープなどがよいでしょう。
※嘔吐や下痢がある場合は、脂肪分の多い揚げ物や、食物繊維の多い海藻・根菜・キノコは避けましょう。
よくある質問①「お風呂」に入ってもいい?
ふらついて転倒の可能性がないようであれば、入浴してもよいでしょう。
ただし、無理して入浴させる必要はありません。
入浴は体力を使います。
無理をさせてまで、入れなくても大丈夫です。
赤ちゃんの場合は、38度の以上の発熱がある場合は、入浴を控えた方がよいでしょう。
熱が下がった後も、シャワーでさっと汗を流す程度から始めてください。
よくある質問②「解熱剤が効かない」なぜ?
熱が上がっている途中で解熱剤を飲んでも、あまり効きません。
また、病気の勢いが強いと、薬を飲んでも熱が下がらないことがあります。
もう一度解熱剤を使うときは、薬の使用方法通りに時間をあけましょう。
また、熱の原因がわからない場合は、自己判断で解熱剤を使うのは避けましょう。
「苦しそうで眠れない・水分をとれない」といった場合で、どうしても市販の解熱剤を使いたい場合は、アセトアミノフェン系統の解熱剤を使って体を一度、楽にしてあげてもよいでしょう。
▼アセトアミノフェン系統の市販薬の例
小児用バファリンCII(3歳以上)
ムヒのこども解熱鎮痛顆粒(1歳~11歳)
など
よくある質問③「痙攣」と「震え」の見分け方は?
ガクガクしていても、声をかけて意識があれば、痙攣ではないでしょう。
意識がなく、視線が一点を見つめて反応がない時は「痙攣」が疑われます。
よくある質問④高熱で「よく寝る」大丈夫?
子どもの呼吸や脈を確認しましょう。
呼吸も安定しており、寝顔も苦しそうではなくいつも通りであれば、様子を見ましょう。
子どもが息苦しそうにしていたら、早めに受診しましょう。
こんなサインがでたら病院へ
病院に行くべき症状
発疹がでている
嘔吐・下痢がある
飲食がままならない
→子どもの様子を見ながら、症状がつらいときは早めに医療機関を受診しましょう。
早急に病院に行くべき症状
ぐったりしている
脱水症状のサインがある
会話ができない
呼吸が苦しい
→すぐに医療機関に行きましょう。
夜の場合は、急患診療を受診してください。
救急車を呼ぶ症状
全く動けない
意識レベル低下
→救急車の手配をしましょう。
お医者さんに伝える3ポイント
いつから発熱しているか
発熱の経過
発熱以外の症状(嘔吐、下痢など)
小児科を探す
▼参考
子育てハッピーアドバイス小児科編の巻
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子どもが高熱を出した…。
熱せん妄になっているみたいだけど、病院に行くべき?
熱せん妄の疑いがある場合に病院を受診する目安について、お医者さんに聞いてみました。
異常行動などの危険な症状も見られるので、看病の際の注意点も知っておきましょう。
熱せん妄かも…病院の受診目安は?
熱せん妄と思われる症状がある場合は、念のため病院で診てもらいましょう。
特に、
発熱に伴う異常行動が1時間以上持続する
けいれん・しびれ・まひが起きている
という場合は、速やかに病院で受診しましょう。
※異常行動の例…寝ていたのに急に起き上がり、大声で叫ぶ・走り回る・支離滅裂なことを話し始める 等
熱せん妄は10~15分、遅くても数時間で症状が改善するケースが多く、後遺症が出ることは少ないと考えられています。
ただし、「いつまで経っても症状が続く」「けいれん等の症状がみられる」という場合には、脳炎や脳症など、脳に障害が起きていることが疑われます。
熱せん妄は「脳炎」や「脳症」との判別が難しいため、こうした病気を見逃さないためにも受診が必要です。
病院は何科?
小児科の受診をおすすめします。
初診の際には、下記の内容を伝えると診察がスムーズです。
発熱が出現したのはいつか
言動の内容や神経症状の有無
既往歴
治療中の疾患の有無
服用中に薬剤の有無 など
小児科を探す
熱せん妄ってどんな状態?
発熱に伴う異常な行動を総じて「熱せん妄」といいます。
「幻覚」「錯視」「錯乱」「異常行動」といった症状が見られる場合は、熱せん妄の疑いがあります。
幻覚
実際にはないものが見えたり聞こえたりする
錯視
ものを見間違える(例:壁にできたシミを人影と勘違いして怖がる)
錯乱
支離滅裂な言動がみられる
異常行動
急に家から飛び出す、窓を開けて飛ぼうとする など
熱せん妄の原因は?
発熱によって脳の温度が上がり、“ノルアドレナリン”や“ドーパミン”などが産生され、脳に影響を及ぼすことが原因とされています。
ただし、詳細なメカニズムはまだ判明していません。
熱せん妄になりやすい人は?
「学童期から思春期の子ども」や「インフルエンザに感染している方」に発症しやすいです。
また、発熱した日とその次の日に起こるケースが多いです。
熱せん妄になったときの対処法
発熱後2~3日は子どもから目を離さない
身体を冷やす(熱が上がりきって暑がっている場合)
処方された薬をきちんと飲ませる
解熱剤を使用する
① 発熱後2~3日は子どもから目を離さない
発熱してから2~3日は子どもから目を離さず、大人が付き添い見守りましょう。
また、異常行動に備えて、玄関の窓やカギはしっかり閉じてください。
熱せん妄を起こすと、夢と現実の区別がつかなくなり、パニック状態になる場合があります。
家から急に飛び出す
窓から出ようとする
といったケースもあるため、子どもを一人にしないようにしてください。
子どもが不安にならないように、「身体をさすってあげる」などして、安心できる環境を作りましょう。
② 身体を冷やす
「保冷剤」や「氷枕」等を使って、
首筋
脇の下
太もも
などの部分を冷やしましょう。
汗をかいている場合には、こまめに着替えをさせてください。
熱が上がっていて震えているようなときには、身体を冷やさずに、毛布等で包んで温めてあげましょう。
③ 処方された薬をきちんと飲ませる
病院を受診して薬の処方をしてもらっている場合は、医師の指示に従い、決められた量と回数を守って服用しましょう。
なお、薬を飲み忘れた場合に、次の服用時に多く飲んではいけません。
自己判断で薬を服用しないように気をつけましょう。
④ 解熱剤を使用する
38.5℃以上の高熱があり、
頭痛がひどい
苦しそうにしている
食欲がない
耳の痛み
体の痛み(筋肉痛)
等の症状がみられる場合は、解熱剤を使用してください。
解熱剤は、アセトアミノフェン系の薬剤で、「坐薬」もしくは「飲み薬」を使用します。
1日3回を目安に薬を服用し、6時間以上の間隔をあけるようにしましょう。
ただし解熱剤は治療薬ではないため、きちんと水分補給ができて、元気な様子であれば、無理に使用する必要はありません。また、熱の出始めではなく、熱が上がりきってから使用するとよいでしょう。
なお、生後6ヶ月未満の場合は解熱剤を使用できないので、注意してください。
小児科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
徳島共済 ファミリー健康相談ではこんな相談が・・・
読売新聞 ヨミドクター うわ言や異常行動…熱せん妄とは