赤い発疹が出てかゆい…。
これってしいたけ皮膚炎?それとも違う病気?
「しいたけ皮膚炎と似た症状が出る病気」について、お医者さんに聞いてみました。
アレルギー症状の場合、放置すると再発して呼吸困難を招くリスクがあります。
心当たりのある症状がないか、チェックしてみましょう。
監修者
経歴
札幌医科大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
関東労災病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜市立大学附属病院 形成外科
を経て
平成30年10月より小田原銀座クリニックに勤務
令和2年6月よりよこはま港南台形成クリニックに勤務
しいたけ皮膚炎ってどんな病気?
しいたけ皮膚炎とは、しいたけを食べた後に発症する皮膚の発疹です。
蕁麻疹に似ていますが、違う種類の発疹です。
しいたけ皮膚炎の「症状の特徴」
- 強いかゆみを感じる
- かいたところに一致した「線状の赤み」が出現する(※)
(※)かいた部分にのみ赤くなるため、発疹は手の届く範囲の上半身を中心に現れます。
発症の「キッカケ」
- 生のしいたけを食べた
- 火が通りきっていない、しいたけを食べた
- 干ししいたけの「戻し汁」を飲んだ
- しいたけの加工品を食べた
しいたけ皮膚炎は、上記のキッカケで発症することが多いです。
しいたけ皮膚炎は、しいたけに含まれる物質に反応して発症しているとされています。
基本的に、しいたけを生で食べると発症しやすい病気ですが、加工品で出る人もいます。
なお、「しいたけアレルギー」との関係性については、詳しくわかっていません。
通常のアレルギーの場合、原因物質を摂取する度に発症を繰り返すことが多いですが、しいたけ皮膚炎は再発しないことが多いです。
しいたけ皮膚炎は「自然治癒」する?
しいたけ皮膚炎は、自然治癒する症状です。
ただし、改善には数週間程度かかるため、しばらくはかゆみや赤みが続きます。
セルフケアで様子を見る場合には、できるだけ体を温めないようにしましょう。
温めるとかゆみが増しやすくなります。
かゆみが強いときは「皮膚科」へ
皮膚科で相談すると、かゆみを防ぐ薬を処方してもらえます。
かき壊しを防ぐためにも、強いかゆみを感じるときは受診するとよいでしょう。
皮膚科を探す
しいたけ皮膚炎と「似た症状が出る病気」はある?
- 蕁麻疹
- Still病(難病)
- 皮膚筋炎(難病)
などは、「しいたけ皮膚炎」と似た症状が出ます。
それぞれの病気について、下記で詳しく解説していきます。
しいたけ皮膚炎との見分け方も併せて、チェックしてみてください。
似た症状の病気① 蕁麻疹
蕁麻疹は、皮膚の一部に突然赤い発疹ができる病気です。
「皮膚をかいた部分が線状に赤くなる」という点が、しいたけ皮膚炎と似ています。
蕁麻疹には、「アレルギー性」と「非アレルギー性」のものがあります。
発症のキッカケとしては、食べ物の摂取をはじめ、寒暖差・ストレス・睡眠不足・疲労・汗・日光など様々なものが挙げられます。
特に疲れている人・ストレスが溜まっている人は、免疫機能の低下によって症状が出やすくなると言われています。
「蕁麻疹」の症状
- 皮膚に腫れ・赤みが出る
- かゆみを感じる
- 発疹はしばらくすると消える
- 発疹の「出ている部分」と「出ていない部分」がはっきりわかる
※皮膚の柔らかい部分に出やすいです
※アレルギー性の場合、発疹に腹痛・嘔吐・息苦しさなどを伴うことがあります
しいたけ皮膚炎との「見分け方」
「蕁麻疹」は、原因物質が体内に入ったり皮膚に触れたりすると、すぐに発症します。
そして、かゆみと発疹は数時間以内になくなっていきます。
一方「しいたけ皮膚炎」は、発症までに数日かかることが多く、かゆみが出ると症状がしばらく続きます。
蕁麻疹を繰り返すときは、病院で相談を
蕁麻疹はアレルギーによって発症することも多いです。
繰り返す人は一度病院で相談してみましょう。
アレルギーが原因の場合、特定の物質によって症状が出ます。
病院で受診すると、原因物質を特定する検査などを通して、再発防止を図ってもらえます。
なお、
といった症状を伴うときは、救急車を呼びましょう。
この状態は、血圧の低下や意識障害(アナフィラキシーショック)が起きている可能性があるため、命に関わる危険性があります。
蕁麻疹は「冷やす」が基本
蕁麻疹は、冷やすとかゆみを軽減しやすくなります。
血流がよくなるとかゆみが悪化するので、体を温めるのは止めましょう。
また、かくと傷や赤み、内出血が残りやすいので気をつけてください。
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似た症状の病気② Still病(難病)
Still病とは、全身に炎症が起こり、発熱・関節痛・発疹の3大症状が出る病気です。
「赤い発疹が線状に出る」という症状が、しいたけ皮膚炎と似ています。
Still病は難病に指定されている病気で、発症の原因ははっきりとわかっていません。
現段階では、遺伝的要因や、ウイルス・細菌感染などが関係しているのではないかと考えられています。
「Still病」の症状
▼発疹の特徴
- ・発熱とともに、淡いピンク色の発疹が出る(かゆみを感じない)
- ・発疹は数mm〜2cm程度の大きさ
- ・発疹は「体幹部」や「手足」
- ・熱が下がると、発疹が消えることが多い
▼伴う症状
- 39度以上の発熱が1週間以上続く
- 関節痛が2週間以上続く
- 喉の痛み
- リンパ節の腫れ
- 体がだるくなる・疲れやすくなる
しいたけ皮膚炎との「見分け方」
「Still病」は、発熱や関節痛など全身症状が出現します。
「しいたけ皮膚炎」の場合、これらの全身症状が現れません。
Still病が疑われるときは、「内科」で相談してみよう
Still病が疑われるときは、内科で相談してみましょう。
早期発見が難しい病気ですが、早めに受診することで、症状の悪化を防ぎやすくなります。
Still病の人は「うがい・手洗い」が大切
Still病は、細菌・ウイルス感染で症状が悪化しやすくなると言われています。
そのため、こまめにうがい・手洗いをして、普段から感染症にかからないようにすることも大切です。
内科を探す
似た症状の病気③ 皮膚筋炎(難病)
皮膚筋炎とは、外敵から身を守るための「抗体」が、自分自身を攻撃してしまう病気の一つです。
「赤い線状の発疹」が見られることがあり、それがしいたけ皮膚炎と似ています。
皮膚筋炎は発症の原因がわかっておらず、難病の一つとして指定されています。
「皮膚筋炎」の症状
▼発疹の特徴
- まぶたに、むくみを伴う赤い発疹ができる
- 手関節に赤い発疹ができる
- 首〜胸、肩〜背中にかけて赤い発疹ができる
※発疹は顔・指に見られることが多いです。
▼伴う症状
- 全身のだるさ・疲れ
- 筋肉に力が入りにくくなる
- 筋肉に痛みを感じる
- 肺炎を起こすこともある
しいたけ皮膚炎との「見分け方」
「皮膚筋炎」の場合、筋肉や関節などに関わる全身の症状が出ます。
「しいたけ皮膚炎」の場合、これらの症状が出ることはありません。
皮膚筋炎が疑われるときは、「内科」で相談してみよう
皮膚筋炎が疑われるときは、早めに内科で受診しましょう。
喉の筋力の低下によって食べ物が気管に入りやすくなるため、放置していると肺炎を起こすリスクが上昇します。
皮膚筋炎の人は「筋トレ」がNG
筋力が落ちているからといって、筋肉トレーニングは行わないでください。
病気が改善するまでは、なるべく安静にして筋肉に負担をかけないことが重要です。
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自己判断はNG!皮膚トラブルは皮膚科で受診しよう
発疹・かゆみなどの症状がある場合、皮膚だけの問題でなく体の内部に異常が起こっているケースもあります。
重症化を避けるためにも、皮膚トラブルがよくならないときは、一度皮膚科で相談してみましょう。
特に発疹に腹痛・嘔吐・息苦しさを伴うときは、アレルギーが疑われるため、早めの受診をおすすめします。
医師に伝えるポイント
- いつ頃から皮膚症状があるか
- 現れている症状(かゆみ・痛みなど)
- 思い当たる「発症のキッカケ」
診察の際には、上記の点を医師に伝えましょう。
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2020-11-18
ひっかいた部分が赤く腫れる!
人工蕁麻疹の治療方法は?
腫れを早く治すにはどうする?
などの疑問をお医者さんがわかりやすく解説します。
ひっかくと赤くなる!人工蕁麻疹とは
患部を引っかくことで、かゆみを伴う赤いミミズ腫れが生じる蕁麻疹です。
かゆみが悪化していくケースもあります。
「人工蕁麻疹」の原因は?
アレルギー
ストレス
物理的刺激
が原因で人工蕁麻疹を発症している可能性があります。
それぞれの原因について、詳しく解説していきましょう。
原因① アレルギー
アレルゲン(特定物質)に反応することで蕁麻疹が発生します。
通常症状は、30分程度で消失し、アレルゲンとの接触で再度出現します。また、症状が2~3日持続することもあります。
アレルゲン(アレルギーの原因)は多岐にわたります。
食品(乳製品、小麦、卵、魚介類、肉類、果物、食品添加物等)
カビ
ほこり
ダニ
薬剤
花粉
虫(蜂等)
虫歯等の病巣感染
風邪等の一過性の感染症
腫瘍等
が原因で症状が出現する場合があると考えられています。
原因②:ストレス
過度のストレスにより自律神経のバランスが乱れることで、人工蕁麻疹の症状が出現する場合があります。
原因③:物理的刺激
・体温の上昇
・気温の変化
・湿度の低下
・日光
・摩擦
・圧迫
・引っかき
等が原因で、症状が出現する場合があります。
細かい膨疹や患部がピリピリと痛むこともあります。
体温上昇・気温上昇・入浴・飲酒等により末梢循環が活性化し過ぎたり、気温低下・湿度低下により発汗量や皮脂分泌量が減少して皮膚が乾燥状態になったりすると、かゆみを感じやすくなると考えられています。
日常生活でできる対処
食生活の改善など、日常生活でできる対処法を紹介します。
服装で気をつけること
綿素材等、肌に優しい素材の衣類を着用する
体を締め付けるような下着や洋服は着用しない
生活で気をつけること
ストレスをためない
十分な睡眠時間を確保する。
日焼け止めを塗るなど、日焼け対策をする
食事で気をつけること
肉類・魚介類は、新鮮なものを選ぶ
脂肪分や糖分を多く含む食品・アルコール・刺激物を摂り過ぎない
色素・防腐剤等を使用している食品は控える
食後に運動する際は、最低でも3時間以上空ける
お風呂で気をつけること
熱い湯船には浸からない
体をゴシゴシ洗わない
入浴後、オイルやクリームで保湿する
また、根本的な原因因子が判明している場合は、まずその物質を除去しましょう。
病院に行った方がいい?
皮膚科を受診し、症状や原因に合った薬を処方してもらうことで、症状の緩和が期待できます。
人工蕁麻疹は慢性化しやすく、数か月から数年も症状が続くケースが多いので、できるだけ悪化する前に病院に行きましょう。
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病院での治療方法は?
一般的に、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・漢方を使用する治療が行われます。
ただし、症状改善がみられない場合は副腎皮質ホルモン薬(内服薬、注射)を使用するケースもあります。
放置してしまうと…
人工蕁麻疹を治療せずに放置すると、慢性化して症状の改善が困難になる場合があります。
症状が悪化すると、かゆみが強くなり、引っかき過ぎてびらん※が生じたり、滲出液が付いたりする他の皮膚症状へと進行する恐れがあります。
※びらん:皮膚などの表面がただれて欠損すること
▼参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 蕁麻疹
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 出血 ~湿疹・じんましん~
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト 蕁麻疹
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。