家族が原因で適応障害を発症することってあるの?
お医者さんに、適応障害になりやすい家庭の特徴を聞いてみました。
実際に適応障害になった方の体験談もご紹介するので、ご自身の状況と共通するところがないか、チェックしてみましょう。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
家族が原因で適応障害になるってホント?
- 親に対する不満が大きい
- 親から抑圧されている
- 自分にかかる家事・育児の負担が大きい
- 金銭的な問題でパートナーへの不満が強い
上記のような、家族との不和や親からの抑圧などの影響により、適応障害になってしまうこともあります。
家族が原因で適応障害を発症すると、家庭という閉鎖的な空間のために、発見が遅れるケースがあります。
また、負担の原因となっている家族自身の考え方や対応が変わらないと、改善しない場合が多いです。
【体験談】家族が原因で適応障害になった…

夫が原因で発症した例
夫から服装や家事に関する愚痴や指摘が多く、「完璧にこなさなければ」という強迫観念から、適応障害を発症してしまいました。(40歳女性)
私の夫は子育ての協力がまるでないにもかかわらず、知人には良い父親面をしていたのでストレスが溜まっていました。
何度育児を頼んでも聞いてくれず、諦めて我慢していたら適応障害を発症しました。(24歳女性)
母親・姉妹が原因で発症した例
母親は私に一流大学へ進学させたがっていたため、成績が下がると罵倒されたり暴力を振るわれたりしていました。
「なんのために進学するのだろう」と考えるうちに、自分はダメな人間だという意識が強くなり、適応障害を発症してしまいました。(45歳男性)
5歳上の姉によくいじめられていました。
母親に「注意してほしい」と頼んでも、うやむやにされてしまい、私が我慢するという日々が続き、発症してしまいました。(40歳女性)
適応障害になりやすい家庭の特徴
- 親の子どもへの支配が強く、規律が厳しい
- 親の許す学校にしか通えない
- 通学以外の外出を強く制限されている
- 兄弟と比べて、親から冷遇されている
- 家事・育児の負担が自分ひとりに偏っている
- 家族の介護が必要で自由な時間がない、体力的につらい
- 家族から暴力や暴言を吐かれる
上記のような「のびのびと過ごせない」「常に緊張している」環境だと、適応障害を発症しやすいと考えられます。
家族に悪気はなくても、本人が馴染めないことで発症する場合もあります。
また、
という性格の人は、適応障害になりやすい傾向があります。
「自分が頑張ればよい」と考えて、何事も一人で背負い込みがちな人は特にリスクが高いです。
家族が原因で適応障害になってしまったら

「家族が原因で適応障害になってしまった」と感じる場合は、できるだけ早く医療機関で相談しましょう。
まずは、適応障害の原因が本当に家族にあるのかどうか、判断してもらうことが重要です。
家族が原因だと判断された場合は、ストレスや負担を軽減するために距離を置いたり、対応を変えてもらったりする必要があります。
適切に対処するためにも、病院で医師や専門家に相談してください。
病院は何科に行けばいい?
- 精神的な症状が強く出ている →「精神科」
- 動悸・吐き気などの体の不調を伴う →「心療内科」
上記のように、出ている症状に合わせて診療科を選ぶとよいでしょう。
※両方の診療を行っている医院・クリニックもあります。
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家庭内のストレスはどう解消する?
- 1日6~8時間程度の睡眠を確保する
- 深呼吸をする
- 自分の居場所を確保する
- 一緒に過ごす時間を短くする
- 外出してリフレッシュする
対処法① 1日6~8時間程度の睡眠を確保する

気力・体力を回復させ、ストレスを軽減するために、6~8時間程度の睡眠時間を確保してください。
適応障害になると不眠になることもあるので、睡眠時間が短くならないように心がけることが大切です。
朝起きることがつらいときは、朝日や照明の光を浴びて、自律神経を整えるとよいでしょう。
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眠れないときには、「漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)」がおすすめです。
意識的に筋肉の緊張と弛緩(緩める)を繰り返すことで、体と心の緊張をほぐしていきます。
体全体がリラックスするので、スムーズな入眠に繋がりますよ。
漸進的筋弛緩法のやり方
まずは楽な姿勢で座ります。
その後、体の各部位の「筋肉を緊張させる⇒脱力する」という行為を2回ずつ繰り返していきます。
手・腕
頭部(額・目・顎)
首肩まわり
上半身(胸・お腹)
足
の順に行いましょう。
大切なのは、緊張した筋肉が緩んでいく感覚を意識することです。
ここからは詳しい手順を解説していきますので、ぜひ実践してみてください。
※漸進的筋弛緩法の注意点※
漸進的筋弛緩法は、著しく体力が低下している方や治療中の疾患・ケガのある方が行うと、不快感が生じたり、症状が強くなったりする可能性があります。特に現在通院中の方は、必ずかかりつけ医に相談してから実践するようにしましょう。
1. 手・腕の筋弛緩
▼手の筋弛緩のやり方
椅子やベッドで楽な姿勢で座り、目を閉じる。
右の拳を、体を痛めない程度に、少し強めに握る。
指と腕の力を抜いていく。
①~③を2回繰り返す。
左手も同様に行う。
▼腕の筋弛緩のやり方
右腕の肘を曲げて力を入れる。
腕をゆっくり伸ばして、緊張を緩める。
緊張のある状態とない状態の違いを感じながら、リラックス感を深める。
①~③を2回繰り返す。
左腕も同様に行う。
目を閉じるのが不安な人は、開いたままでも構いません。
「力を入れたときの緊張」と「脱力するときの弛緩」の違いを味わうようにしましょう。
2. 頭部(額・目・顎)の筋弛緩
▼額の筋弛緩のやり方
額にシワを寄せるようにして力を入れる。さらに力を入れる。
だんだんと額の力を抜く。額全体のシワがなくなっていくことをイメージする。
①~②を2回繰り返す。
▼目の筋弛緩のやり方
目を強く閉じる。目やまぶた以外の部分に力が入らないようにする。
目を閉じたまま、力を抜いていく。
①~②を2回繰り返す。
▼顎の筋弛緩のやり方
歯を食いしばる。
顎を固めて、唇も強く閉じる。
だんだんと力を緩めて顎と口をリラックスさせる。
①~③を2回繰り返す。
額・目・顎の筋弛緩トレーニングを行うことで、顔全体が自然とゆったりして、表情がリセットされます。
顔の筋肉を滑らかにして、穏やかな気持ちを味わいましょう。
3. 首肩まわりの筋弛緩
▼首の筋弛緩のやり方
首をできるだけ後ろに曲げて、首の緊張を感じる。さらに強く緊張させる。
ゆっくりと首を楽な位置に戻す。
①~②を2回繰り返す。
▼肩の筋弛緩のやり方
肩をすくめて上にあげる。
さらに肩を上にあげながら、胸を開くように肩を開く。
ゆっくりと肩の緊張を緩める。
①~③を2回繰り返す。
リラックス感が、顔・腕・肩・背中に染み渡るのを感じましょう。
4. 上半身(胸・お腹)の筋弛緩
▼胸の筋弛緩のやり方
楽に呼吸を続ける。息を吐くとき、体全体が緩んでいくことを感じる。
深く息を吸う。
しばらく息を止めて緊張を感じる。
ゆっくりと胸の緊張を緩めて、息を吐きだす。
自然に呼吸しながら、体全体をゆったりさせる。
①~⑤を2回繰り返す。
▼お腹の筋弛緩のやり方
腹筋に力を入れてお腹を固くする。
力を抜いて腹筋を緩める。
①~②を2回繰り返す。
5. 足の筋弛緩
両足をつま先まで精いっぱい伸ばして、足を突っ張る。
同時に足全体とおしりにも力を入れる。
ゆっくりと自然に足の力を抜く。
①~③を2回繰り返す。
全部終わったら、大きく深呼吸をします。ゆっくりと長い深呼吸をして、リラックス感を味わいましょう。
最後にもう一度深呼吸をして、体全体の筋肉をゆったりさせます。
全身の筋肉が緩んだら、5~1までの数字を心の中で数えてください。1まで数えると、頭がすっきりして気分爽快になります。
眠気が強い方は、そのままお休みください。
毎日の習慣にすると効果的!
漸進的筋弛緩法は、初めてすぐには効果を実感しにくい可能性があります。
まずは1週間続けてみることをおすすめします。
効果を感じた場合もすぐにやめるのではなく、毎日の習慣にして、できるだけ長く続けるといいですよ。
▼動画による解説はこちら
≪チャンネル紹介≫
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対処法② 深呼吸をする

適応障害の人は、緊張で呼吸が浅くなっていることが多いです。
気がついたら深呼吸を取り入れましょう。
深呼吸をすることで、自律神経が整ってリラックスしやすくなります。
対処法③ 自分の居場所を確保する
自分の部屋を用意するなど、家庭内で「居場所」を作りましょう。
一人になれる場所があることで安心でき、ストレスの軽減につながります。
対処法④ 一緒に過ごす時間を短くする
家族と離れて過ごす時間が多くなると、気持ちの整理もつきやすくなります。
対処法⑤ 外出してリフレッシュする
家から離れる時間を作り、リフレッシュしてください。
心が許せる友人と一緒にお出かけするのもよいでしょう。
家族が原因となっている場合、少しの間でも家から離れることで、気持ちが落ち着き、症状が楽になることがあります。
「もう限界かも…」と思ったら

「もう限界かも…」と感じているのであれば、ためらわずに「精神科」または「心療内科」を受診してください。
対応が遅れてしまうと、症状が悪化して、うつ病につながる恐れもあります。
早めに専門家のカウンセリングを受けましょう。
治療を進めていくうえで、入院治療に切り替えるなど、ストレスの原因となる家族と距離を置くように対応してくれる場合があります。
なお、ストレスの原因である家族が「接し方を改善したい」という気持ちがある場合には、医療機関に同伴しても構いません。
ただし、家族に同伴して欲しくない場合は、まずは一人で、もしくは頼れる人と受診しましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2022-12-27
「うつ病がなかなか治らない…」
「このまま一生治らなかったらどうしよう…」
府中こころ診療所の院長であり、YouTubeで動画配信も行っている精神科の医師、春日雄一郎先生が、うつ病や適応障害の症状が長引く理由を解説します。
うつ病や適応障害が治らず焦りを感じている方は必見です。
※動画による解説は記事末尾から
うつ病・適応障害が治りにくい4つの原因
うつ病・適応障害がなかなか治らない場合
生活習慣の乱れ
環境がよくない
考え方のクセ
躁うつ病(双極性障害)を発症している
などの原因が考えられます。
原因① 生活習慣の乱れ
昼夜逆転した生活
過度な飲酒
ほとんど家から出ない
上記に当てはまる場合は、うつ病が治りにくくなる可能性があります。
「不規則な生活リズム」「お酒の飲みすぎ」「外出せずほとんど体を動かさない」などの習慣が続くと、心身の調子が悪くなり、うつ病・適応障害の改善の遅れを招きます。
【対処法】一定の生活リズムを習慣化しよう
うつ病や適応障害を改善するためには、「どういう行動習慣を積み重ねていくか」ということが重要です。
睡眠や食事の時間を一定にする
お酒を控える
日中は外出して体を動かす
上記を習慣化して、治療にとってプラスになる行動を積み重ねていきましょう。
生活習慣を整えることで、心身の調子が整いやすくなります。
また、その行動の積み重ねが脳への刺激になり、うつ病や適応障害の改善につながると考えられます。
原因② 環境がよくない
職場に相性のよくない上司がいる
家に居場所がない
子育て・介護などでストレスを感じている
上記のように、職場や家庭の環境がよくない人は、うつ病や適応障害が治りにくくなることがあります。
うつ病・適応障害の症状は、日々の行動だけでなく、環境からも大きな影響を受けます。ストレスの多い環境で過ごす時間が積み重なると、症状の改善が遅れる原因となります。
【対処法】「転職・異動」「支援サービスの利用」を検討しよう
環境がよくないと感じる場合、
転職・異動の相談をする
家族と話し合いをする
自治体のサポート窓口を利用する
といった方法で、環境を変えることが選択肢の一つとなります。
環境の変化には良い面も悪い面もあるため、一概に「環境を変えるべき」というわけではありません。
ただし、「どうしても今の環境と相性が悪い」と感じる場合は、選択肢の一つとして考えてみるといいでしょう。
職場の環境が合わないと感じる場合は、「転職を検討する」「上司や人事部に異動の相談をする」などの方法もあります。
家庭内でストレスを感じている場合は、まずは家族と話し合うことが必要なケースもあります。
子育てや介護などでお悩みの場合は、自治体のサポート窓口を活用してみるのもいいでしょう。
子育てや介護に関するお悩みは、お住まいの自治体の子育て支援センターや、地域包括支援センター※などの機関で相談可能です。
※地域包括支援センターとは
主に自治体が設置する高齢者の健康や生活をサポートする施設。
▼参考
地域包括ケアシステム(厚生労働省)
原因③ 考え方や性格のクセ(完璧主義・人と比べる)
自分を責めてしまう
完璧主義
他人と自分を比べる
上記のような考え方・性格のクセがある人は、うつ病や適応障害の治療が遅れる可能性があります。
「考える」ということも一種の行動です。自責や他人との比較など、自分にダメージを与える思考を繰り返すことも、病気の改善を妨げる行動を積み重ねる行動になります。
【対処法】「前向きになれる考え方」を練習しよう
自分にダメージを与える考え方のクセがある人は、「自分も他人も責めない」「前向きになれることを考える」といったことを意識するといいでしょう。
ただし、考え方が根強いクセになっている場合、すぐには変えにくいこともありますよね。
その場合は、
出てきた考えを真に受けすぎず、なるべく受け流す
否定のクセを薄めて、成功体験を徐々に積み重ねる
この2つを心がけてみてください。これらの思考を積み重ねていくことが、結果として、否定的な考えが出てくる頻度を減らすことに繋がります。
原因④ 躁うつ病(双極性障害)を発症している
抗うつ薬などによる治療を続けていて、生活習慣・環境・考え方などの見直しを行っているにもかかわらず、症状の改善が見られない場合は、躁うつ病(双極性障害)を発症している可能性があります。
躁うつ病ってどんな状態?
躁うつ病とは、気分が高揚して活動的になる「躁状態」と、気分が沈んで意欲がなくなる「うつ状態」を交互に繰り返す状態です。
人によっては、躁状態の症状が軽くて期間が短く、うつ状態が長く続く「双極性障害Ⅱ型」のケースもあり、この場合は一般的なうつ病との区別がつきにくいです。
うつ病と躁うつ病は使う薬が違うので、この見極めができていないと、病気が長引く恐れがあります。
躁うつ病かを判断する4つのヒント
過去を振り返って、躁気味な時期があった
家族に躁うつ病の人がいる
周期的にうつ病を繰り返している
抗うつ薬を使うと躁状態になる傾向がある
躁うつ病かどうかを判断するヒントとして、上記の4つが挙げられます。
「ある時期だけ妙に活動的だった」「ある時期だけ妙にお金を使っていた」など、過去に躁気味な期間があった場合は、躁うつ病である可能性が出てきます。
自分ではわからなくても、『ちょっといつもと違う』『いつもより妙に元気だね』などと、周りの人から言われる時期があったかどうか、ということも参考になります。
また、家族に躁うつ病の人がいると、発症の可能性が少し高くなると言われています。
その他、周期的にうつ病の症状を繰り返す場合や、抗うつ薬を使ったときに躁状態になる傾向がある場合も、躁うつ病を発症している恐れがあると考えられます。
躁うつ病を疑う場合は主治医に相談を
躁うつ病の発症を疑う場合は、早めに主治医に相談しましょう。
うつ病と躁うつ病では、治療に使う薬が違います。そのため、うつ病か躁うつ病かを的確に判断することは、症状を早く改善するために、非常に重要であると考えられています。
▼動画による解説はこちら
※本記事は、チャンネル運営者の許可を得て作成しています。
≪チャンネル紹介≫
こころ診療所チャンネル【精神科医が心療内科・精神科を解説】
府中こころ診療所の院長であり、YouTubeで動画配信も行っている精神科の医師、春日雄一郎先生が、うつ病・適応障害・パニック障害など、こころの不調やその対策について、わかりやすく解説。
こころの不調を抱える方が、少しでも症状を改善するヒントとなるような情報の提供を目指しています。