大人のADHDは見た目で分かるの?
「大人のADHDの特徴」についてお医者さんに聞いてみました。
特性ごとで異なる特徴も解説するので、自分や周囲の人が「ADHDかもしれない」と感じている場合は参考にしてみましょう。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
大人のADHDは見た目でわかる?
ADHDは見た目(外見)では分かりにくいです。
これは大人に限った話ではなく、子どもの場合も同様です。
ADHDの人は、見た目ではなく行動に特徴があらわれます。
そもそもADHDとは?
ADHD(注意欠如・多動性障害)とは、「集中力がない」「落ち着きがない」「突発的に行動する」などの特徴が見られる生まれつきの障害です。
これらの特性により、学校や家庭、職場などで困る場面が多くなります。
大人になってからADHDであることが分かるケースも多いです。
大人のADHD「行動の特徴」をチェック
▼不注意
- ミスが多い、同じミスを繰り返す
- 自分の考えを整理できない
- スケジュール管理が苦手
- タスクを順序だてて行えない
- 締め切りをなかなか守ることができない
- 忘れ物や失くし物が多い
- 仕事や作業に集中できない
▼多動性・衝動性
- 失言をしてしまうことが多い
- 衝動買いが多い
- 独断で重要事項を決めてしまう
- 常にそわそわしている・体を小刻みに揺らす(貧乏ゆすりなど)
上記の特徴に当てはまる場合、ADHDの可能性があります。
ADHDの3つの特性
ADHDは症状のあらわれ方によって、
の3つの特性に分類されます。
分類
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特徴
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不注意優勢型
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ミスすることが多い
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多動性・衝動性優勢型
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落ち着きがない/思いついたらすぐ行動する
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混合型
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「不注意優勢型」「多動性・衝動性優勢型」の両方の特徴が見られる
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① 不注意優勢型
不注意優勢型は、大人になってからADHDに気づく場合に多いタイプです。
年齢不相応のミスを何度も起こし、日常生活・仕事に支障をきたします。
不注意優勢のADHDには、
- 約束を忘れてしまう
- 物をよく失くす
- ケアレスミスが多い
などの特徴が見られます。
このような症状は、本人のやる気がない・怠けている、というわけではなく、脳の機能発達の偏りから起こっています。
② 多動性・衝動性優勢型
多動性・衝動性優勢型は、「落ち着きがない」「突発的に行動する」といった特徴が見られる一方で、「不注意」の特徴はあまり見られないタイプです。
多動性・衝動性優勢型のADHDの人は、
- じっとすることができない
- 失言してしまう
- なんとなくそわそわしている
- 身体を小刻みに動かす
といった行動が見られます。
③ 混合型
混合型は、「不注意優勢型」と「多動性・衝動性優勢型」の特徴が同じレベルで目立つタイプです。
ADHDの原因は?
ADHDは、脳の神経伝達が正常に行われておらず、特定の脳領域の活動が低下することが原因の一つだと考えられています。
ただし、現時点でADHDの発症原因ははっきりと判明していません。
ADHDかも…どうすればいい?
ADHDが疑われるときは、医療機関で検査を受けてみましょう。
早期にADHDかどうかを知ることができれば、適切な治療を受けることで、二次障害(※)の予防につながります。
(※)あがり症・パニック障害・強迫性障害・うつ病・適応障害・社交不安障害など
ADHDの適切な対処法を知っておくと、不注意によるミスを減らしたり、日常の不安な気持ちを解消したりできる可能性があります。
自分のADHDの特性を深く理解するためにも、医師の診察を受けましょう。
周囲の人はADHDの人とどう接するべき?
ADHDの人は疎外感や自己嫌悪感を抱いていることが多いです。
本人の悩みについて理解し、ミスを減らす工夫や対策を一緒に考えてあげましょう。
病院は何科?
ADHDが疑われるときは、「精神科」で相談しましょう。
診察時に伝えるとよいこと
- 今困っていること
- いつから症状があるのか
- 治療中の病気や服用中の薬など
精神科を探す
ADHDを治す方法はあるの?
ADHDを完治させる方法はありません。しかし、
- 薬物療法
- 心理・行動療法(カウンセリング)
を受けることで、職場や社会に適応しやすくなると考えられます。
① 薬物療法
抗ADHD薬を使用して治療する方法です。
ADHDは脳内の神経伝達の乱れによって、神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン)の機能が低下した状態となっています。
この状態を、薬の使用により改善することを目指します。
② 心理・行動療法(カウンセリング)
心理・行動療法は、普段の行動パターン・考え方の癖を見直す治療方法です。
「感情のコントロール」や「スケジュール管理」などを上達させ、日常生活でのトラブル回避につなげます。
心理・行動療法は、薬物療法と並行して行われます。
大人のADHDを改善するための生活習慣
睡眠の質を向上させたり、運動を習慣化したりすることで、ADHDの症状が緩和されたという研究結果があります。
大人のADHDと診断された場合は、下記のような睡眠・運動習慣を意識してみましょう。
▼睡眠
- 7〜8時間の睡眠時間を確保する
- 就寝1時間半前までに入浴する
- 就寝2時間前はPC・スマホ・テレビを見ない
- お酒を控える、もしくはやめる
▼運動
- ウォーキング・ジョギング・サイクリングなどの運動を1日30分程度行う
- 週に2回以上筋力トレーニングを行う
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2023-01-27
ADHDの人は話し方に特徴があるってホント?
ADHDの人の「話し方の特徴」を、お医者さんに聞いてみました。
セルフチェックリストも紹介するので、心当たりがないか確認しましょう。
ADHDの話し方に特徴はある?
ADHDの人は、話し方に特徴があるケースが多いと考えられています。
ADHAは3タイプに分けられますが、特に「多動・衝動性型のタイプ」の人は、特徴的な話し方であることが多いです。
ADHDのタイプ
特徴
多動・衝動性優勢型
動きが活発
落ち着きがない
感情を調節することが苦手
不注意優勢型
注意力の欠如により、ケアレスミスが多くなる
集中力が続かない
混合型
「不注意型」「多動・衝動性型」のどちらの特徴も持つ
タイプ別|ADHDの話し方の特徴
タイプ① 「多動・衝動性優勢型」の話し方の特徴
おしゃべり
話し出すと止まらない
会話の内容がコロコロ変わる
会話中の声が大きい
相手の話に割り込んで話し始める
ついカッとなって言い過ぎることが多い
「多動・衝動性優勢型」のADHDの人は、上記のような話し方をすることが多いです。
多動・衝動性のタイプは、「動きが活発で落ち着きがない」「相手の気持ちを考えることが難しい」といった特徴があり、これらが話し方に影響していると考えられています。
「多動・衝動性優勢型」の話し方以外の特徴
そわそわと手足を動かす
じっと座っていられない
静かに過ごすことが苦手
落ち着きがない
活発に活動し続ける
他者の活動を遮ったり邪魔したりする
衝動買いをしやすい
タイプ➁ 「不注意優勢型」の話し方の特徴
不注意優勢型の場合、話し方に際立った特徴はないことが多いです。
ただし、長い時間会話に集中できないことが多いため、下記のような特徴が見られます。
話を聞いていないように見える
きちんと理解しているか相手に確認される
不注意優勢型は、注意力・集中力の欠如によって、「ケアレスミスが多くなる」タイプのADHDです。
「不注意優勢型」の話し方以外の特徴
気が散りやすい
物忘れが多い
整理整頓できない
順序立てて物事を実行できない
指示されたことを遂行できない
継続して物事に取り組めない
タイプ③ 「混合型」の話し方の特徴
混合型とは、不注意型と多動・衝動性型のどちらの特徴も持つタイプのADHDです。
どちらの症状が強く出るかによって、話し方の特徴も異なるため、個人差が大きいでしょう。
「混合型」の話し方以外の特徴
忘れっぽい
落ち着きがない
順番を守れない
衝動的な行動をとる
ADHDは「会話が嚙み合わない」ってホント?
ADHDの場合、他者との会話が噛み合わなくなるケースがある※と考えられています。
特に、
長時間続く会話
興味がない内容の会話
自分の出番がくるまで話せない
など、ADHDの人が苦手な状況だと、会話が噛み合わなくなることが多いでしょう。
※個人差があるため、ADHDの人全てに当てはまるわけではありません。
ADHDは「おしゃべりが止まらない」ってホント?
個人差はありますが、ADHDの場合、おしゃべりが止まらなくなるケースもあると考えられます。
ADHDの人は、「他者の気持ちを考えて行動することが苦手」「自分の気持ちを上手にコントロールできない」等の特性により、ついついしゃべり過ぎてしまうケースが多いと考えられています。
特に、
他者の意見を聞く状況
自分が発言できる順番ではない状況
他者の発した一言が気になってしまう状況
等の場合、「しゃべりすぎ」という印象を持たれることが多いです。
何個当てはまる?ADHD診断テスト
▼「日常生活」で見られる特徴
必要以上にしゃべり続ける
じっとしていられない
他者の話を聞けない
ケアレスミスが多い
忘れ物が多い
計画的に物事に取り組めない
気が散りやすく集中力がない
▼「仕事」で見られる特徴
ケアレスミスが多過ぎる
注意力の欠如
身の周りを整理整頓できない
忘れっぽい
フットワークが軽い(活動的なタイプの場合)
アイデアが豊富に出てくる
上記に当てはまる特徴が多い人は、ADHDの疑いがあると考えられます。
※あくまでも目安です。正しい診断を受けるためには、医療機関を受診する必要があります。
診断を受けるべきか迷っている方へ
ADHDが疑われる症状が6か月以上続いている
日常生活に支障が出て、生きづらさを感じる
自尊心がひどく低下している
強い劣等感を抱いている
上記に該当する人は、病院で検査や治療を受けてみることをおすすめします。
ADHDを放置していると、日常生活に支障が出たり、うつ病などの精神疾患を患ったりする恐れがあるので、できるだけ早く診断を受けましょう。
ADHDの検査は、「精神科」や「心療内科」で受けられます。
ただし、医療機関により専門が異なる場合があるため、事前にウェブサイトや電話・メールで確認してから受診することをおすすめします。
受診時に医師に伝えるポイント
ADHDが疑われる症状が出現した時期
出現している症状について
うつ等の精神的症状が出現しているかどうか
現状最も困っていることについて
受診の際に上記の点を医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
精神科を探す
心療内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
特定非営利活動法人ADDS ADHDの会話の特徴は?子ども・大人別の会話例と解説
公益社団法人 日本精神神経学会