もしかして病気?メモをとっても覚えられない…忘れてしまう原因と対処法

更新日:2024-05-27 | 公開日:2024-04-23
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もしかして病気?メモをとっても覚えられない…忘れてしまう原因と対処法

「メモをとっても全然覚えられない…」
「これって病気?どうしたら覚えられるようになるの?」

仕事などでやる気はあるのに覚えられない、メモの内容が全く頭に入らない原因について、お医者さんにお聞きしました。

病気のセルフチェックや、今すぐできる対処法、病院での治療方法など解説しています。

監修者
経歴

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。金沢医科大学研修医、2001年、国立小児病院小児神経科、2004年6月、獨協医科大学越谷病院小児科、2016年、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職。専門は小児神経学、児童精神科学。

なぜ?メモをとっても覚えられない…

医師男性
メモをとっても覚えられないのは、いくつかの脳疾患がある場合や、若年性アルツハイマー病、もしくはADHDやASDの発達障害の可能性も考えられます。

若年性アルツハイマー病とは、記憶障害などがおこる病気です。メモ自体の内容は理解できてもそれを覚えておくことができず、「何回も聞き返してしまう」という状況になってしまうことが多いです。

最初からメモがまとめられない・メモが上手にとれないという方は、脳梗塞・脳卒中などの脳疾患に繋がっている恐れもあります。
あまり気になる症状がある場合は、早めに病院で診察してもらうとよいでしょう。

発達障害の可能性はある?

医師男性
注意力や集中力があまりに欠如していたり、興味のないことに関しては何も覚えられないという場合は、「ADHD」「ASD」という発達障害の場合も考えられます。

ADHDとは、注意欠陥・多動性障害といい、注意が散漫で衝動制御が難しく、時に過活動を伴う障害です。ADHDがメモをとっても覚えられないのは、注意の散漫や全体的な集中力の低下によるもの。
そのため、注意力をコントロールして集中力を高めないと、そもそもメモをきちんと理解しながらとるのも難しい場合があります。

ASDとは、自閉症スペクトラム障害のことで、アスペルガー症候群を含みます。この障害は「特定の興味のある領域」では優れた記憶力がありますが、日常生活など他のことに関してはきちんと覚えられないということがあります。
メモの内容に興味がないと、メモをとっても覚えられない原因となります。

考えられる病気8つ

医師男性

メモをとっても覚えられない場合、考えられる代表的な病気は8つです。

  • 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • うつ病
  • 不安障害
  • 睡眠障害
  • 甲状腺機能障害
  • 早期認知症
  • 脳の器質的疾患

考えられる病気① 注意欠陥・多動性障害(ADHD)

ADHDの主な特徴は、注意力の欠如、衝動性、そして場合によっては過活動です。

メモを取って覚えるためには、情報を効率的に処理し、長期記憶に移すといった高度な脳活動が必要。

医師男性
注意力が散漫だと、情報をそもそも効率的に処理することができずに、メモ自体も取りにくく、覚えられないことにもつながります。

考えられる病気② 自閉症スペクトラム障害(ASD)

ASDの人は特定の「興味をもった事柄」に対して強い記憶力を示しますが、日常生活で必要とされる一般的な情報や文脈に基づく記憶については非常に苦手という特徴があります。

医師男性
内容を理解しながらメモをとること自体が苦手なため、「メモをとっても覚えられない」ということに繋がります。

考えられる病気③ うつ病

うつ病は気分障害であり、悲しみ、無力感、無価値感が特徴です。

医師男性
うつ病の人は心(脳)に余裕がありません。特に、脳の神経化学的なバランスが変化し、特に前頭葉の活動が低下することで、新しい情報の取り込みにくくなり記憶も定着しにくくなると言われています。

そのため、メモをとってもそれを覚えることができないことがあるのです。

考えられる病気④ 不安障害

不安障害は、過剰な心配や不安が特徴で、つねに心が「緊張」している状態です。

不安は脳のリソースを消耗します。不安感が脳を圧迫し、新しいことをフレッシュな気持ちで覚えることができません。

医師男性
そのため、メモの内容も十分覚えられる脳の容量を確保することができず「メモを覚えられない」ことにつながります。

考えられる病気⑤ 睡眠障害

睡眠は記憶の整理と固定化に不可欠な大切な時間。特に深い睡眠は、日中の出来事を長期記憶に移す過程に関与していると言われています。

医師男性
睡眠障害がある場合、レム睡眠や深い睡眠の段階が不足すると、十分に記憶を定着させることができません。そのため、メモを何回も見返してしまうことにつながります。

しっかりメモをとっているし、理解しようとしているのに覚えられない場合は、睡眠に問題がないか見直してみるといいでしょう。

考えられる病気⑥ 甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症とは、全身の代謝や活動レベルをつかさどる「甲状腺ホルモン」が低下してします疾患。代表的な疾患で女性を中心とする「橋本病」があげられますね。

甲状腺ホルモンは脳活動レベルにも左右します。そのため、甲状腺ホルモンが適切なレベルでないと、集中力や記憶力の低下を引き起こすことがあり、「メモをとっても覚えられない」ことにつながります。

考えられる病気⑦ 早期認知症

早期認知症、特に若年性アルツハイマー病は、通常のアルツハイマー病と同様の症状を示しますが、発症年齢が早い(通常65歳未満)ことが特徴です。

早期認知症では海馬を始めとする脳の記憶に関連する部分がダメージを受け、情報の記憶や回収に問題を生じさせます。
特に、短期記憶が障害を受けるのは、早期認知症の典型的な初期症状の1つであり「メモをとっても覚えられない」ことから発見されることもあるでしょう。

考えられる病気⑧ 脳の器質的疾患

脳腫瘍、脳出血、脳卒中。脳にもさまざまな病気があり、突然脳にダメージが加わることもあります。そして、脳の部位によっては、認知機能に障害を及ぼす可能性があります。

特に記憶を司る海馬に近い部位や高次の脳機能を司る前頭葉や頭頂葉がダメージを受けた場合、情報の処理や記憶の形成に障害が加わり「メモをとっても覚えられない」ことにつながります。

セルフチェックしてみよう

「メモをとっても覚えられない」のが発達障害の症状なのか、セルフチェックしてみましょう。

  1. 興味があることは覚えられるが、日常のことは覚えられない。
  2. 先輩や上司の話を聞いても、いまいち話の内容がわからない。
  3. いつも何かに対して漠然とした「不安」を感じている。
  4. 昔のことは覚えているのに、最近のことになると忘れがちになる。
  5. 普段と違う「新しい情報」を聞いてもいまいちピンとこない。
  6. 会話中に何を言おうとしていたか忘れることがある。
  7. 急に怒りっぽくなったり、感情の起伏が激しい。
  8. ストレスが多い時期など、時期によってパフォーマンスが大きく変わる
  9. 何をしていても楽しくないし食欲もわかない。
  10. 睡眠時間が6時間以下である。また睡眠も細切れになりやすい。
  11. 夜間に十分な睡眠を取っても、日中に強い疲労感を感じることがある。
  12. いろんなことに興味がわきやすく、注意が散漫になりやすい。

★4個以上当てはまる場合

医師男性
ADHDや自閉症スペクトラム障害など、潜在的な発達障害や他の医学的問題が原因の可能性があります。専門医の診断を受けることを考えてみてください。

★が1~3個だった方は、日常のストレスや生活習慣が影響している可能性があります。ちょっとした睡眠習慣の改善やストレス解消法で改善されるかもしれませんので、生活習慣を見直してみましょう。

今すぐやってみよう。対処法5つ

医師男性

メモをとっても覚えられないと悩んでいる方におすすめの、今すぐ使える対処法はこちら。

  • 目を見て話を聞く
  • キーワードのみをメモする
  • こまめにリラックスするようにする
  • タスク管理アプリなどを使う
  • 食事のバランスを整える
  • 睡眠をしっかりとる

対処法① 目を見て話を聞く

医師男性
集中力が持たずにメモをとるのが難しい、内容に興味を持てずにメモの内容が覚えられないという時には、目を見て話を聞いてみましょう。そうすることで意識的に話を聞くことがしやすくなるので、メモの内容に興味を持ちやすくなります。

その他、不明点があれば積極的に質問したり、話がひと段落するごとに話の要点を簡単にまとめてみるのもいいでしょう。
メモをとることだけに集中するのではなくて、「話を聞く」ことにまず集中してアクティブな聴き方をしてみると、メモの内容が頭に入ってきやすくなりますよ。

対処法② キーワードのみをメモする

医師男性
メモが分かりにくくなってしまう、メモをとるのが苦手という方は、キーワードのみをメモするようにしてみましょう。

長文のメモは時間がかかり、大事な情報を見逃す原因になることがあります。話されている内容から重要なキーワードやフレーズだけを抜き出してメモすることで、効率的に情報を記録できるようになります。

その他、図など視覚的に分かるような要素を入れてみたり、色分けをしてみたりするのもいいですよ。

対処法③ こまめにリラックスするようにする

聴き方もメモの取り方もしっかり行っているのに、それでも覚えられないという場合は、メモを理解して記憶するプロセスに問題があることが多いです。

医師男性
ずっと気を張った状態(「オン」の状態)だと、パフォーマンスが十分に発揮できません。しっかり休息をとり、「オフ」の状態を作ることで自律神経のバランスが整い、しっかりと記憶できるようになることもありますよ。

仕事中であれば、机を離れて軽いストレッチや深呼吸、コンビニまで少し散歩などがおすすめです。
場所を変えられるのであれば、別の会議室やカフェなどに移動してみることで、視覚的・精神的に刺激になり、脳のリセットを助けてくれます。

対処法④ タスク管理アプリなどを使う

予定を忘れてしまう場合は、スマホやPCの機能やアプリを使って、物理的にリマインドやアラートを出すようにしましょう。
忘れてしまう特性というのは、なかなかすぐには改善しにくいものです。「こんなに頑張っているのにどうして覚えられないの…」と自分を責めると、さらにストレスがかかって逆効果になってしまいます。

なので、「覚えていられない」ことを受け止めて、便利なデジタルツールを使ってみましょう。
デジタルに頼ることは悪いことではありません。心強い助けとなってくれて、結果的に緊張感が和らぐことにも繋がりますよ。

対処法⑤ 食事のバランスを整える

脳機能は普段の日常生活に大きく影響します。そのため、メモを覚えられないほど記憶力が低下しているなら、まずは健康的なライフスタイルを以下のことから心がけてみましょう。

医師男性

特に、食事は脳の健康と機能に直接的な影響を与えます。

  • オメガ3脂肪酸(魚やナッツ類)
  • ビタミンB群(全粒穀物、葉物野菜など)
  • 抗酸化物質(ベリー類、野菜)
  • 複合炭水化物(全粒粉製品)

を含む食品を意識的に摂取することが重要です。

水分補給も忘れずに!

脱水症状は集中力と認知機能を低下させます。1日に推奨される水の摂取量を守り、定期的に水分を補給することが大切です。

対処法⑥ 睡眠をしっかりとる

良質な睡眠は記憶の整理と固定に不可欠です。

大人に推奨される睡眠時間は一晩に7〜9時間。もちろん睡眠不足は記憶力低下の一因となります。しっかり睡眠時間をとることで、日中起こったことを記憶しやすくなりますよ。

ADHDは治るの?治療の方法

医師男性

メモをとっても覚えられない症状がADHDが原因だった場合でも、治療をすることで改善させることができます。

ADHDでは主に投薬治療を行います。注意力を上げたり、多動性を抑える薬を使うことで、かなり日常生活を正常にコントロールすることができます。
行動療法を組み合わせることで、普通の人とあまり変わらない生活を送ることもできるでしょう。

そのほか、うつ病が原因で記憶力が低下している場合でも、抗うつ薬を使ったり、光療法を行うことで改善します。
睡眠障害や不安症、適応障害などの他の精神疾患に関しても、職場環境を整えたり、抗不安薬や睡眠薬、睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP療法など、さまざまな治療法が考えられるでしょう。

病院に行くなら精神科・心療内科を受診しよう

医師男性
ADHDなど発達障害の疑いがある場合は、精神科や心療内科を受診しましょう。
発達障害以外でも、不安症、睡眠障害、うつ病などの精神疾患も精神科や心療内科で診てもらえます。

精神科は心の健康と行動の問題を扱うスペシャリストです。安心して一度診てもらってください。

脳疾患が気になる場合は神経科を受診しよう

医師男性
脳梗塞、脳卒中など脳に関する病気によって記憶障害や認知機能に問題がある場合は、神経科を受診しましょう。

思わぬ病気に繋がっていることも考えられます。
ちょっとした違和感も見て見ぬふりをせず、病院へ行くことが大切です。

病院での治療方法

医師男性
病院では、主に身体検査、認知機能テストを中心に、MRIやCTスキャン、脳波測定など脳の構造の検査を行います。
その結果を元に、カウンセリングや薬物療法など、その人それぞれにあった治療計画をたててくれます。

1人で抱え込まないで病院やクリニックに行くことで、医療の専門家が「どのような原因でメモが覚えられないのか」を親身に、そして客観的に考えてくれます。そのため「自分で何とかしよう」と考えている人も、気軽にクリニックに相談するとよいですね。

診察の時に何を話せばいいの?

医師男性

基本的には、医師が丁寧に問診してくれるので、医師に聞かれたことに関して素直に答えてくれれば大丈夫。

ですが、特に言葉に詰まってしまう、聞かれると何をしゃべっていいか分からなくなるという方は、

  • どのような症状があるのか
  • 症状はいつからはじまったか
  • 症状はどのような頻度で起こるのか(時々なのか、いつもなのか)
  • 症状は悪化しているか、一定なのか
  • ・んなときに症状が現れるか(ストレスが多い時・休んでいる時 など)

が分かると、スムーズに医師とやりとりできるでしょう。

病院で診断してもらうことのメリット

医師男性
病院で診断を受けることで、「自分のせいではない」「仕方のないことなのだ」と客観的に知ることができ、心が軽くなります。
障害・病気を認めるのは怖いことではありません。
原因が分かることで適切に治療ができ、今よりも過ごしやすくなります。症状との上手な付き合い方を、医師と一緒に見つけていきましょう。

病院で診断してもうことで、思わぬ病気が見つかることもあります。放っておかずにきちんと検査してもうことで、病気の進行を止められるかもしれません。

また、もし障害だと認められればカウンセリングや国からの補助、さまざまなサポートを受けることもできます。
原因がわかることで自分自身と改めて向き合い、改善への大きな一歩を踏み出すことになるでしょう。


※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。

▼参考
Understanding Memory Dysfunction. Neurologist. 2009 Mar; 15(2): 71–79.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8170590/
Memory loss. Neurol Clin Pract. 2016 Dec; 6(6): 523–529.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5200851/
7 common causes of forgetfulness.
https://www.health.harvard.edu/blog/7-common-causes-of-forgetfulness-201302225923

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