日頃からたくさんお酒を飲む方、頻繁に腹痛が起こる方は、慢性膵炎の可能性があります。
「慢性膵炎の症状やなりやすい人」について、お医者さんに聞きました。心配な方は、チェック項目に当てはまるかを確認してみましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
慢性膵炎ってどんな病気?
慢性膵炎とは、食べ物を消化するための膵液が、長期間に渡って膵臓自身を溶かしてしまう病気です。
慢性膵炎になると、膵臓の中に石が発生するなど様々な障害を引き起こします。
放置すると、膵臓ガンや糖尿病に移行することもあります。
合わせて読みたい
2020-05-18
「お酒を飲みすぎている自覚がある…」
「膵臓が悪いと治療が大変だって聞いて心配…」
膵臓が悪いと出る症状をお医者さんに聞きました。
慢性膵炎の初期症状を確認できるチェックシートも掲載しています。
放置するとどうなるのか、病院を受診すべきなのかも解説します。
「膵臓が悪いと出る症状」チェックシート
「膵臓が悪いのかも」と思っている方は、膵炎の初期症状リストをチェックしましょう。
下記のチェック項目のうち、4つ以上当てはまる場合は早急に医療機関を受診してください。
◎みぞおち周辺の痛み(激痛)
◎背中にまで拡がる持続な痛み
◎黄疸がある
◎へそ周辺の皮膚が暗赤色
●吐き気(吐いても吐き気が止まらない)
●嘔吐
●発熱
●腹部膨満感
●食欲不振
特に、◎の項目が当てはまる場合は要注意です。
膵炎の初期症状には個人差があります。
気になる症状がある場合は早めに病院を受診することをすすめます。
内科を探す
「膵臓が悪いのかも…」と思ったら
膵臓が悪い症状に当てはまったら、早急に病院を受診してください。
早期発見、早期治療開始により、症状進行の抑制や合併症予防が期待できます。
その上で、次の3点を守りましょう。
アルコールの摂取はNG!
膵炎が悪化する原因になります。
膵炎を起こすメカニズムは明確にはわかっていませんが、アルコールによって膵管が狭窄しやすくなったり、膵液の分泌が過剰になったりする等が原因ではないかと考えられています。
暴飲暴食はNG!脂肪分の多い食品をとりすぎない
脂肪分が多い食品は消化が良くないため控えましょう。また、慢性化を予防するためにも脂肪分が多い食品の摂取は控えましょう。
食物繊維を多くとる
コレステロール等の体外への排泄がスムーズになります。
放置するリスク
治療をせずに放置すると、回復が遅れ社会復帰が困難になることもあります。
さらに、免疫機能の低下や、さまざまな深刻な病気のリスクが高まります。
深刻な病気の例
糖尿病
膵臓がん
膵のう胞
膵石
多臓器不全 等
短命になるってホント?
膵炎は、がん等の重篤な疾患を併発するケースが多いと考えられており、慢性膵炎を患った場合の平均寿命は、日本人の平均寿命よりも10年以上短いとされています。
長期にわたる生活習慣の乱れや、過度の飲酒が大きな原因と考えられています。
こんなときは検査に行こう!
膵炎には、早期受診が肝心です。
次のような症状がある場合はできるだけ早めに受診しましょう。
上腹部に激しい痛みが生じている
吐き気と嘔吐を繰り返す
尿が出なくなった
黄疸がみられる
日頃からアルコールを多量に摂取しているという自覚がある
重症の急性膵炎の場合は、48時間以内に特定診断される必要があります。
早期検査のメリット
早期発見により、痛む部分の拡大を抑えることが期待できます。
日常生活が困難になる前に発見できれば、社会復帰が早くなる可能性があります。
治療したらよくなるの?
治療を継続し、生活習慣を改善できれば、症状の悪化や進行を抑えることができると考えられています。
慢性膵炎の完治は非常に困難と考えられています。
膵臓が広い範囲で壊死してしまった場合は、後遺症(糖尿病、消化吸収障害等)が発生する恐れもあります。
検査費用はどれくらい?
医療機関により異なるため断言はできませんが目安としてご紹介します。
内視鏡検査:およそ4000円~
超音波検査:およそ3000円~
CT検査:およそ4500円~
何科に行けばいいの?
膵臓疾患が疑われる場合には、内科、消化器内科の受診をおすすめします。
内科を探す
知っておこう!慢性膵炎の治療例
慢性膵炎になっている場合、次のような治療を行います。
生活習慣の改善
禁酒、禁煙、食生活、ストレスを避ける
食事のコントロール
1回の食事量を少なくし、1日4~5回食にする
投薬治療
腹痛がある場合は、鎮痛剤、蛋白分解酵素阻害薬等を用いた治療が行われる。膵臓機能が低下している場合は、インスリン注射、消化酵素薬等を用いた治療が行われる
手術
痛みが改善されない場合は、膵管ドレナージ手術、膵切除術が行われる場合もあります。
「膵管ドレナージ手術」拡張した膵管を切り開いて腸管と接合し、膵液を腸管に送り膵管内圧を低下させる際に行われる術式。
「膵切除術」膵管の拡張がない場合に行われる術式で、膵管狭窄が特に強い部分の膵切除術。
その他
膵管が細い場合は、内視鏡を使用して膵管を拡張する。
膵臓に結石が生じている場合は、内視鏡を使用して除去する等の治療が行われる。
▼参考
福岡市民病院 膵臓
中外製薬 からだとくすりのはなし すい臓
一般社団法人 日本肝胆膵外科学会 急性膵炎と慢性膵炎
福山市医師会 アルコールと膵臓―膵炎について
日本医師会 医療と健康 すい炎
同友会グループ 慢性膵炎についてご存知ですか?
一般社団法人徳洲会 肝臓・膵臓内科の病気:慢性膵炎
国立がん研究センターがん情報サービス 膵臓がんの検査
合わせて読みたい
2023-01-30
膵炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
膵炎の主な症状も紹介するので、「膵炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしてみてください。
膵炎とは
膵炎とは、膵臓の消化液が漏れて、臓器を傷つけてしまう病気です。
この膵炎は「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分かれます。
「急性膵炎」とは、消化酵素によって膵臓自体がダメージを受けて、炎症が起こっている状態です。
「慢性膵炎」とは、食べ物を消化するための膵液が、長期間に渡って膵臓自身を溶かしてしまう病気です。
「急性膵炎」と「慢性膵炎」それぞれの症状
急性膵炎
▼軽度~中等度の症状
みぞおち周辺から左上腹部の痛み
背中の痛み
吐き気、おう吐(吐いても症状が改善しない)
発熱(37度~38度程度が多い)
食欲不振
腹部膨満感
▼重度の症状
血圧低下
皮膚が黄色っぽくなる
呼吸困難
精神が錯乱してしまうほどの激しい痛み
失神
慢性膵炎
腹痛を5〜10年ほど繰り返す
急にお腹や背中が痛くなることがある
下痢や便秘の症状がある
みぞおちを押すと痛い
だるい
食欲不振
吐き気、嘔吐
お腹の張り(膨満感)
体重減少(※)
※人によって異なりますが、6か月で5%以上を病的な体重減少とすることが多いです。
膵炎の原因
膵炎の原因には、「お酒の飲み過ぎ」「胆石が胆管で詰まる」などが挙げられます。
ただし、はっきりと原因が分からないケースもあります。
膵炎になりやすい人
お酒をよく飲む
タバコを吸う
暴飲暴食している
脂肪分を多く含む食品のとり過ぎ
就寝直前に食事をとることが多い
刺激が強い飲食物を好む
急性膵炎を疑う場合はすぐ病院へ
膵炎が疑われる場合は、「内科」で受診することをおすすめします。
急性膵炎を発症すると、命に関わるケースもあります。
特に毎日飲酒している方は、腰・背中あたり痛みを感じたら早めに受診しましょう。
内科を探す
慢性膵炎も放置はNG
慢性膵炎は症状が進行すると、インスリンの分泌量が低下し、糖尿病を発症する恐れがあります。
また、症状が悪化すると、膵臓ガンを発症する恐れもあるため、早めに受診してください。
膵炎の検査・治療法
医療機関では、必要に応じて血液検査、内視鏡、エコーなどを行います。
そこまで痛い検査はありません。
膵炎の治療は、
鎮痛剤の投与
輸血
絶食
などをおこなって症状の改善を図ります。
安定するまで集中治療の管理が行われるため、入院が必要になるケースが多いです。
慢性膵炎は「自覚症状がない」場合もある!
患者さんによっては、「痛みをほとんど感じない人」や、「放っておくと、腹痛が弱まっていく人」もいます。
しかし、痛みを感じなくても膵臓では炎症が起こっています。「大量に飲酒する」習慣がある人は、特に注意すべき病気です。
慢性膵炎の「自覚症状がある」ケースだと…
慢性膵炎には下記の症状があります。
- 腹痛を5〜10年ほど繰り返す
- 急にお腹や背中が痛くなることがある
- 下痢や便秘の症状がある
- みぞおちを押すと痛い
- だるい
- 食欲不振
- 吐き気、嘔吐
- お腹の張り(膨満感)
- 体重減少(※)
※人によって異なりますが、6か月で5%以上を病的な体重減少とすることが多いです。
これらの症状があらわれている場合は、早急へ病院に行きましょう。
慢性膵炎になりやすいのはどんな人?
- 40〜50歳代の男性
- 長期間、大量に飲酒をしている人
- 脂肪分が多い食事をとっている人
- 喫煙者
- 肥満の人
- ストレスが溜まりやすい人
- 家族に慢性膵炎の人がいる(遺伝)
「膵炎かも」と思ったら、放置はNG!
慢性膵炎は、完治が困難といわれています。
「放っておいて自然に治るものではない」と考えてください。
慢性膵炎を放置すると…
- 膵臓周辺の臓器に悪影響を及ぼす
- 悪性腫瘍(がん)の原因になる
- 糖尿病を引き起こす
など重篤な病気を合併することがあります。
症状が悪化すると、後遺症が残る・命を落とすこともあります。
また、慢性膵炎を患った場合、日本人の平均寿命よりも10年以上短命になるとされています。
早期にしっかりとした治療を受けましょう。
病院に行く目安
- お腹や背中が激しく痛む(特に飲酒後や脂肪が多いものを食べ過ぎた後)
- 吐き気や嘔吐を繰り返す
- 体重が減少する
- 黄疸がある
- 尿が出にくい
これらの症状がある場合は、速やかに内科や消化器内科を受診しましょう。病院では、問診や血液検査、CT検査などを行ったうえで、症状にあわせた治療を行います。
内科を探す
合わせて読みたい
2020-05-19
「お腹の調子が悪い…」
「これってもしかして胃腸炎…?」
心配な方は、ストレス性胃腸炎のセルフチェックリストで、ご自身の症状と照らし合わせてみましょう。
自分でできる対処法から、病院を受診する目安、放置のリスクまでお医者さんが解説します。
「ストレス性胃腸炎」とは
ストレス性胃腸炎とは、不安・緊張・イライラしたときに、お腹に痛みが現れる病気です。
腹痛をはじめ、便秘・下痢・吐き気・めまい・疲労感・不安感・肩こり・頭痛などの症状が現れることがあります。
心因性のストレスが原因の疲労や睡眠不足がきっかけで発症することもあります。
誰でも発症する可能性があるものですが、ストレスを感じやすい人に起こりやすい傾向があります。
ストレス性胃腸炎の症状セルフチェック
胸やけ
下痢
便秘
腹部膨満感
食欲不振
肩こり
頭痛
疲労感
めまい
不眠
上記のチェックリストに当てはまる数が多ければ多いほど、ストレス性胃腸炎の可能性が高いといえます。
治すために「自分でできる」対処法
胃腸に優しい食事をとる
適度な運動をする
生活のリズムを整える
上記3つの対処法をおこなってみましょう。
①胃腸に優しい食事をとろう
やわらかく調理して、よく噛んでゆっくりと食べることも、胃腸への負担を減らします。
胃腸に負担をかけない食事を意識し、暴飲暴食は避けるようにしましょう。
食べ過ぎも胃腸に負担をかけるので腹八分目(もう少し食べられそうと感じるくらい)で食事をやめておきましょう。
やわらかく調理して、よく噛んでゆっくりと食べることも、胃腸への負担を減らします。
<OK>おすすめの食べ物
おかゆや雑炊など、よく煮込まれて消化しやすくなった食べ物がおすすめです。
鍋・煮物など、油を使わずよく加熱されたものよいでしょう。
<NG>避ける食べ物
刺激物(辛いものや酸味の強いもの)や脂っこいものは避けるようにしましょう。
ごぼうやさつまいもなどの食物繊維が豊富なものも、負担になる場合があります。
②適度な運動をしよう
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動でいいので、気分転換にもなるように取り組んでみましょう。
運動も取り入れるとストレスの発散につながります。
③生活のリズムを整えよう
しっかり睡眠をとることで、自律神経のバランスを整えることができます。
生活のリズムが崩れると、ストレスを感じて自律神経のバランスが乱れるため、胃腸炎の悪化に繋がります。
昼間のうちに外出して太陽の光を浴び、夜は同じ時間には寝るようにするなど、できるだけ同じリズムで寝る習慣にするだけでも、睡眠不足が改善されることがあります。
市販薬は何を選べばいいの?
ストレス性胃腸炎を緩和させる市販薬を教えてください。
胃酸分泌を抑制させる薬や、抗うつ薬や抗不安薬、漢方薬など、市販薬でも購入可能なものもあります。
薬剤師に相談して購入するとよいでしょう。
また、市販薬を飲んで2週間以上経過しても効果が見られない場合は病院で治療しましょう。
ストレス性胃腸炎を放置すると…?
ストレス性胃炎を放置していると、症状が悪化して潰瘍ができたり、食欲不振や消化機能の低下により栄養失調につながるがることもあります。
痛みが続く、痛みが激しい、という場合は放置せずに治療を行いましょう。
病院を受診する目安
痛みが1ヶ月以上続く
市販薬を飲んでも効果がない
吐き気(嘔吐)がある
耐えられない激しい痛みがある
血便が出た
という場合は、病院に行きましょう。
病院は何科?
ストレス性胃腸炎の疑いがある場合、内科、消化器内科、心療内科を受診しましょう。
体の症状が強い→内科、消化器内科
心の症状が強い→心療内科
内科を探す
心療内科を探す
▼参考
日本赤十字社姫路赤十字病院
大阪みなと中央病院