「なぜ風邪をひくと下痢になるの?」
「胃腸風邪と普通の風邪の違いは?」
下痢を伴う風邪の原因から対処法まで、医師が詳しく解説します。
赤ちゃんや子どもは胃腸風邪にかかる可能性が高いので、注意して症状を見てあげましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
下痢が起こる「胃腸風邪」の正体
ウイルスが胃腸に入り込み、胃腸の働きに影響を与えるのが、胃腸風邪と呼ばれている風邪の正体です。
ウイルス性胃腸炎、感染性胃腸炎とも呼ばれます。
ウイルス性胃腸炎や感染性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどの原因菌によって引き起こされます。
一般的な風邪で通常見られる上気道の症状(咳・くしゃみ・喉の痛み・鼻水・鼻づまり・発熱など)はあまりなく、胃腸症状(下痢・腹痛など)が重く出ます。発熱する場合もあります。
子どもの間では流行しやすい
子どもは、嘔吐や下痢をトイレまで我慢できないことも多く、それ故に集団で行動する場所(保育園や幼稚園、児童館)などでウイルスをもらってきてしまうことが多くあります。
冬:ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルスなど
夏:エンテロウイルス、アデノウイルスなど
咳・喉の痛みもあるのに下痢を伴う場合は?
咳などの一般的な風邪症状にプラスして下痢症状が出る場合は、胃腸が弱っている・体が冷えているために下痢が生じることも考えられます。
また、風邪薬の副作用として下痢・便秘になることもあります。
下痢症状のの対処法
下痢症状がある場合は、いつもよりも水分補給に気を配ってください。
下痢は不要なものを排出していると考えられますが、水分も同時に失われています。
食欲がなくて食べられなくても、下痢の症状があり発熱している場合は、経口補水液やスポーツドリンクで水分補給をしっかりしましょう。
子どもの場合、リンゴ・オレンジなどのジュース類も飲ませてもいいですが、飲みすぎは糖質の摂りすぎになる可能性があるので注意が必要です。
食事は「胃腸に優しいもの」を選ぶ
消化にいいものや胃腸に負担のかからないものがよいでしょう。
柔らかいうどんやおかゆから始めてください。
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鼻水、咳や喉の痛みなど、つらい風邪の症状をできるだけ早く治すためには、どうすればいいのでしょう。
この記事では、風邪に効く食べ物・飲み物や、市販薬の選び方、控えるべきNG行動まで医師が解説します。
日頃から免疫力をアップさせて風邪を引かないようにするため、ぜひ参考にしてみてくださいね。
風邪を早く治すための「食べ物」
風邪を早く治すには
ネバネバ系の食べ物(水溶性食物繊維・糖たんぱくが豊富)
フルーツ(ビタミン・ミネラルが豊富)
卵・緑黄色野菜(ビタミンAが豊富)
などの食べ物を摂取しましょう。
ネバネバ系の食べ物(水溶性食物繊維と糖たんぱくが豊富)
里芋・なめこ・オクラ・納豆などに含まれています。
おかゆなどに細かく刻んで、入れたり、スープに入れたりして摂りましょう。
風邪といえば、鼻水の症状が出ますが、鼻水は病原体を洗い流し、奥に入れないように働いてくれています。
風邪になってしまってからも鼻粘膜にいい食事を摂ることで、鼻の粘膜の機能が正常に働き、強化することができます。
フルーツ(ビタミン・ミネラルが豊富)
フルーツには、ビタミンやミネラルなど風邪で消耗しやすい栄養素が多く含まれています。風邪のときに食べるといいでしょう。
体を冷やすイメージがあるフルーツですが、かき氷や氷水のようなものでなければ、食べ物で急に体が冷えるということはないので、風邪のときに食べても大丈夫です。
卵・緑黄色野菜(ビタミンAが豊富)
皮膚粘膜を強化、免疫力をアップさせてくれるビタミンAは、卵や緑黄色野菜に豊富です。人参・ほうれん草・かぼちゃなども食べてください。
風邪を早く治すための「飲み物」
ビタミンCの摂取ができる、レモネードが風邪の時にはおすすめです。
ホットで飲めば体も温まります。
ビタミンCは、体の免疫力である白血球の働きを高めてくれます。また、抗酸化の働きがあり、風邪予防にもぴったりです。
市販薬の選び方
辛い症状があると食事が取れない場合もあり、そのような時には、咳や鼻水などの症状を個別で緩和してくれるものを選ぶといいでしょう。
風邪は、多くの症状が現れます。
しかし、結局は、風邪自体を治療することはできません。自分の免疫力でウイルスを撃退する必要があるのです。
また、市販薬は、一概に価格が高い方がいいとは言い切れません。後発品であったり、容量の違いであったり、様々な要因で価格が決められています。
どの市販薬にすればいいのかと悩む場合は、薬剤師に相談しましょう。
漢方薬の選び方
漢方薬も様々あり、風邪のひき始めにいいもの(葛根湯)や長引く風邪のときに飲むといいタイプ(竹茹温胆湯、柴胡桂枝湯など)などがあります。
普通の薬と漢方薬、併用してもいい?→NGです!
漢方薬は、薬です。他の薬と同様に併用しての使用はおすすめできません。
併用の場合は、事前に薬剤師、医師に相談して確認してください。
お風呂は入ってもいい?
お風呂に入っていけないことはありませんが、無理をするのはやめましょう。
汗をかくためにと、風邪の時に入浴する人がいますが、熱があるときやふらつく際には、入浴で立ちくらみや貧血を起こす場合も多いです。
普段、貧血症状がない人も、発熱により症状が出る可能性があります。
しかし、身体を清潔に保つためにも、昔言われていたように「風邪だとお風呂に入ってはいけない」という事はありません。
ただし、入浴やシャワーは短めにして、脱水、血圧低下などには注意してください。
これはNG!控えるべき3つの行動
体を冷やす外出
過度の飲酒
喫煙
このような行動はNGです。
風邪を早くよくするには、自己の免疫力が必要です。
体を冷やせば、免疫力が上がらずよくなりません。
また、「冷え」は体を冷やし、風邪にかかりやすくします。肩や首周り、足首などを冷やさないように着るものや服装にも気をつけてください。
過度の飲酒は、眠りを妨げ、体力低下を招きます。
また、風邪で喉に負担がかかっているのに喫煙を行えば、さらに喉への負担がかかります。
お薬は飲んでもいい?
下痢止め薬は飲んでもいいでしょうか?
下痢は現在の体調に不要なものを排出しています。
数回の下痢であれば下痢止め薬は必要ありません。
脱水が激しいときには使用することもありますが、症状が改善されない場合は自己判断で薬を服用するよりも、医療機関を受診しましょう。
正露丸やビオフェルミンはOK?
正露丸やビオフェルミンなどの整腸剤は飲んでも構いません。
この他に整腸剤を使用している場合は、重複して使用しないでください。
漢方薬は?
漢方薬を飲んでも構いませんが、他の風邪薬と併用したい場合は、医師・薬剤師の確認が必要です。
通常の風邪や冷えに伴う下痢であれば、胃苓湯(イレイトウ)という漢方薬があります。
風邪薬と胃腸薬を一緒に飲んでもいい?
重複している作用がなければ、通常は一緒に飲めます。
わからないことがある場合、自己判断は避け、薬剤師や医師に必ず相談してください。
すぐに病院に行くべき症状
次の症状が現れている場合は、救急で病院を受診してください。
- 下痢や嘔吐がおさまらず、脱水症状がみられる
- 嘔吐により水分摂取が困難で、脱水症状がみられる
- 40度以上の高熱(生後3ヶ月以内の乳児は38度)
- 意識障害
- 呼吸困難
何科を受診すればいい?
大人の場合は、内科・胃腸内科を受診してください。
子どもは小児科を受診しましょう。
胃腸内科を探す
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体の節々が痛いし、微熱もある…。
風邪?もしかして他の病気?
お医者さんに、痛みと微熱の原因を聞きました。
病院に行くべきかどうかも解説します。
節々の痛みと微熱は風邪の前兆?
風邪をひくと、熱が上がる際に関節痛があらわれることがあります。
「風邪かな?」と思ったら、まずは安静にして様子を見ましょう。
ただし、慢性的な微熱と関節痛がある場合は、別の病気が隠れている可能性があります。
“風邪”以外で考えられる3つの病気
節々の痛みと微熱の症状がある場合、
慢性疲労症候群
関節リウマチ
全身性エリテマトーデス
などの可能性があります。
病気① 慢性疲労症候群
慢性疲労症候群とは、重度の疲労感が長期的に続く状態を指します。
身体診察や詳しい検査を行なっても、異常が認められないのが特徴です。
原因が精神的なものなのか、身体的なものなのか、未だ解明されていません。
発症しやすい人
慢性疲労症候群になりやすいのは、受け身な人だと言われています。
たとえば…
あらゆる物事や考えに従順
協調性が高い
周りをよく気にする
といった性格の方は発症しやすいと言えます。
主な症状
だるさ、倦怠感
微熱
関節痛
頭痛 など
自分でできる対処法は?
慢性疲労症候群かもしれないです。どうすれば…?
まずは一度病院を受診し、詳しい検査を受けましょう。
ほかの病気の可能性も考えられるため、ご自身で慢性疲労症候群と判断するのは危険です。
もし慢性疲労症候群と診断された場合には、ストレスを避けた生活が大切です。
バランス良い食事と適度な運動を意識し、生活にリズムをつけましょう。
受診するのは何科?
内科を受診しましょう。
内科を探す
病気② 関節リウマチ
関節リウマチは、全身の関節に複数の炎症が見られる病気です。
免疫機能の異常が原因と考えられています。
発症しやすい人
30歳〜50歳の女性に発症しやすいと言われています。
主な症状
だるさ、倦怠感
微熱
頭痛
関節の腫れ
関節痛
起床時に関節がこわばる
息切れや咳 など
自分でできる対処法は?
関節リウマチかも…まずは何をしたら良いでしょうか?
症状に心当たりのある場合は、病院に相談しましょう。
関節リウマチは薬物治療や手術、リハビリテーションが必要な病気です。
受診するのは何科?
整形外科、リウマチ科を受診しましょう。
リウマチ科を探す
病気③ 全身性エリテマトーデス
免疫機能の異常により、全身(関節や皮膚、内臓など)に炎症が起こる病気です。
一人ひとりの症状に差があり、軽症だと病気の診断に結びつきづらい場合もあります。
発症しやすい人
20〜40代の女性が比較的発症しやすいと言われています。
発症の男女比は1:9となっており、女性に多い病気です。
主な症状
だるさ、倦怠感
頭痛
微熱
食欲不振
関節の腫れ
皮膚の発疹
口内炎
脱毛など
自分でできる対処法は?
この病気の場合、まずは何をしたら良いでしょうか?
他の病気も考えられるため、一度病院で検査を受けましょう。
なお、全身性エリテマトーデスの場合、症状を和らげるには病院での治療が必要になります。
受診するのは何科?
内科を受診しましょう。
内科を探す
病院に行く目安
節々の痛みや微熱が7日以上続いている
倦怠感やむくみが引く気配がない
上記の場合は、慢性疲労症候群や免疫疾患が関係している可能性もあります。病院で一度検査をしましょう。
早期受診のメリット
重い病気が原因であった場合、早期受診すると悪化防ぎやすくなります。
初期段階であれば、入院や手術をせずに治療できる可能性が高まります。
症状にお困りの方は、放置せずに病院を受診しましょう。
▼参考
難病情報センター 全身性エリテマトーデス