「痰が喉に張り付く…」
「いつまで痰の症状は続くの?」
「風邪は治ったのに咳と痰が出続ける…なぜ?」
風邪による痰が出る仕組みから、喉に痰が絡む対処法まで、医師に詳しく解説してもらいました。
風邪による痰の症状にお悩みの方は必見です。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
なぜ?風邪で「痰が出る原因」
「痰」は、ウイルスや細菌による喉の炎症が考えられます。
「咳」は、呼吸器を守ろうとする防御反応や、痰を排出しようする働きで起こります。
痰や咳が出るときの過ごし方
痰や咳が出るときは
- 部屋を加湿する
- 水で濡らしたマスク(濡れマスク)をつける
- 横向きに寝て、気道を確保する
- 温かい飲みものを飲む
といったことを実践してみましょう。
痰が絡む咳は「治りかけの合図?」
痰が絡む咳は、風邪が治りかけている合図です。
乾いた咳の後、2~3日でさらさらとした白っぽい痰に変化します。
その後、黄色や緑色の痰となり、再び白い痰に変化したら治ってきている証拠です。
風邪の咳や痰、「いつまで続く?」
風邪の後の咳や痰は、通常であれば風邪の症状が落ち着いた後、1週間くらいで快方に向かいます。
風邪の症状はおさまったのに、咳と痰だけがよくならない場合は、喉の粘膜に病原菌がいて炎症が続いている可能性があります。
痰の上手な出し方
水分を摂ると痰が水分を含んで柔らかくなり、出しやすくなります。
あまり無理をすると咳で疲れるので、少しずつ出しましょう。
痰を出した後は、手を洗いましょう
痰をティッシュにくるんだ後は、石鹸できれいに手を洗いましょう。
痰にはウイルスや細菌が含まれており、他人に風邪をうつしてしまうことがあります。
痰は出した方がいい?
飲み込んでも問題ありませんが、痰が多いと具合が悪くなる人もいるので、出せる場合は出しましょう。
痰には風邪のウイルスや細菌が混じっていますが、飲み込んでも胃液で通常死滅します。
市販薬は「去痰薬」を選んで
市販薬を使用する際は、「去痰薬」という痰を出しやすくしてくれる成分が入っている薬を選びましょう。
「去痰薬」には、咳を緩和する成分が同時に配合されているものが多いです。
◆痰を出しやすくする成分
- ブロムヘキシン塩酸塩
- L-カルボシステイン
- グアヤコールスルホン酸カリウム
- 桜皮抽出物(オウヒ)
- キキョウ
- マオウ
◆咳を緩和する成分
- アミノフィリン
- テオフィリン
- dl-メチルエフェドリン塩酸塩
- メトキシフェナミン塩酸塩
- ジヒドロコデインリン酸塩
- コデインリン酸水和物
去痰薬と風邪薬は併用しない
市販の風邪薬は去痰成分が入っているものが多いため、去痰薬と併用すると同じ成分を過剰摂取してしまう場合があります。
風邪薬によっては併用可能なものもあるため、服用の際には薬剤師に相談しましょう。
緑・黄色の痰は「体が戦っている証拠」
緑や黄色の痰は、粘液に細菌やウイルスと白血球が混ざったものです。
この痰が出たからといって、風邪が快方に向かっているとは言えませんが、白血球とウイルスや細菌が戦っている証拠です。
熱はないけど緑色の痰が出るのはなぜ?
喉にウイルスや細菌の感染を起こすと、発熱していないのに緑色の痰が出ることがあります。
これは、ウイルスや細菌が入り込んできているところで、白血球が戦っている状態です。
風邪には特効薬がありません。
白血球に頑張ってもらうためにも、バランスが偏らないようしっかりと栄養を摂り、 体を無理に動かさないようにして休めましょう。
「血が混じっている」痰は“喉の粘膜が切れている”
咳で喉の粘膜が切れて血が混ざる場合があります。
自然に治ることも多いので、まずは水分補給を行い、無理に喉を使わないようにして加湿した部屋で安静にしてください。
血痰は「風邪以外の病気」かも
何度も血が混ざる・血の量が増えているといった場合は
- 上気道炎
- 気管支拡張症
- 肺がん
- 肺結核
- 肺炎
- 肺アスペルギルス症
- 肺梗塞
- 心不全
などの可能性があります。医療機関を受診しましょう。
こんな症状を伴うときは要注意!
血痰だけでなく、
- 胸痛
- 呼吸が苦しい
- 喉が腫れている
- 喉の異物感
- 咳が出る
- 胃痛
- 声のかすれ
などの症状を伴うときは、風邪以外の病気も考えられます。
重い病気が原因となっているケースもあるため、注意が必要です。
1週間以上も、咳・痰が続く場合は病院へ
- 1週間以上、咳・痰の症状が続く
- 咳が悪化している
- 息をするのがつらい
- 食欲がなくなってきた
といった場合は、一度医療機関を受診してください。
原因は風邪じゃないかも
咳・痰が長引く場合、肺炎・結核・肺がんなどの可能性があります。
検査を受けましょう。
病気① 肺炎
肺胞という肺の末端にウイルスや細菌が感染する病気です。
症状
- 黄色や緑色の痰が出る
- 38度以上の熱が数日間続く
- 寒気がする
- 倦怠感が生じる
- 呼吸困難になる
病気② 結核
結核菌という細菌が肺で増殖する病気です。
症状
- 咳と痰が出る
- 微熱が数日間続く
- 息苦しさを感じる
- 胸が痛む
- 食欲がなくなる
- 体重が減る
病気③ 肺がん
肺の細胞ががん化していく病気です。
症状
- 痰に血が混じる
- 熱が数日間続く
- 息苦しさを感じる
- 胸が痛む
- 動悸がする
病院は何科?
医療機関は内科や呼吸器内科を受診してください。
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2020-02-13
「風邪が治りかけているときに運動してもいい?」
「おすすめの食事は?」
咳、鼻水や痰の状態に、風邪が治りかけていることを示す特徴はあるのでしょうか。
風邪を完治させるための過ごし方から、NG行動、病院へ行くべき症状まで、医師が詳しく解説します。
”治りかけの風邪”の症状の例
ドロドロの緑・黄色の鼻水が出る(鼻水が鼻に溜まりやすい)
喉の炎症・鼻水で痰が増える
疲れを感じやすい(だるさ・眠気など)
鼻づまりや息苦しさがあるときは頭痛がでることも
他の風邪症状に比べ、喉の炎症が長期化しやすい(咳だけが約1週間程度続く場合もある)
なぜ、黄色いドロドロの鼻水がでてくるの?
鼻水の変化は、白血球や免疫細胞がウイルスや細菌と戦った後で、死滅した白血球や免疫細胞が鼻水に含まれることで、黄色っぽい粘性のある鼻水になるために起こります。
なぜ、だるくて疲れやすいの?
風邪の治りかけあたりには、体力が消耗していること多く、だるさ、疲れが起こりやすいのです。
風邪の最中は、ウイルスと闘うため、体の中では様々な免疫が働き、熱を出したり、汗をかいたりと、日常よりもエネルギーを使います。
しかし、食欲があるわけでもなく、外からのエネルギー補給(食事)も困難な状態でもあります。
風邪が治りかけているときの「過ごし方」
風邪から早く回復したいです!
安静にする
消化にいいものを食べる
体を温める
を意識するようにしましょう。
①安静にする
熱がなくても、日中はゆっくりと過ごすのが早い回復につながります。
風邪が治りかけのときは、会社や学校に行っても、無理をせずに早めに帰宅するようにしましょう。
反対に、この時期に運動をすると、夜に熱がぶり返してしまう場合もあります。
②消化にいいものを食べる
消化にいい温かいものを食べ、栄養補給をしましょう。
例えば、野菜や卵入りのうどん・お粥・鍋物などがおすすめです。
治りかけのときは栄養補給が大切です。
体力をつけるための食事と水分をしっかり摂りましょう。
飲み物は、ノンカフェインの飲み物を選ぶとよいでしょう。
カフェインには興奮作用があり、交感神経を刺激するため、体を休めたくても神経が高ぶって寝付きが悪くなることもあります。
③体を温める
無理をせずに、体を温めてゆっくり休みましょう。
例えば、
入浴・サウナ・岩盤浴で、体を温める。
温かい食べ物・飲み物を摂取する
部分的にカイロを使用する。
といった行動を心がけましょう。
カイロであたためるときは、主に三首(首・手首・足首)を温めると体全体が温まりやすくります。
お風呂にはいるのは、適度な時間にしましょう。
個人差や症状にもよりますが、5~10分ほどが体に負担ない時間かと思われます。
入浴やサウナは鼻づまりの緩和にもおすすめですが、これらの長時間すぎると、体力・水分を奪います。
汗をかくと風邪がよくなる…ではない!
汗をかくと風邪がよくなるという話はよく聞きますよね。
しかし、汗をかくから風邪がよくなるわけではありません。
これは、風邪のウイルスをやっつけるために発熱して汗をかき、熱が下がる頃には体内のウイルスが減少して体が楽になるということから、言われているのだと思われます。
汗をかいたまま放置すると、体が冷えてしまい、風邪の悪化やぶり返しにつながります。
汗が出てきたら、こまめに着替え、体を冷やさないようにして水分補給をしてください。
風邪の治りかけに「NGな行動」
刺激物(香辛料・辛いもの)の大量摂取
無理な運動
は避けましょう。
風邪の後は、胃腸が弱っているので、刺激物は下痢や体調不良を引き起こすきっかけになります。
また、体のマッサージ、筋トレ、ジム通いなどで無理に運動すれば、体調の悪化につながります。
インフルエンザの予防接種は?
風邪がほぼ治りかけで熱もなく、体調も戻ってきているのであれば、診察の上、予防接種可能な場合もあります。
予約を入れているときは、問い合わせてみましょう。
風邪が治りかけのときの「お薬」について
風邪が治りかけている頃には、総合感冒薬ではなく、残っている症状(鼻水・咳など)に合わせた薬を使いましょう。
そうすれば、余分な成分を体に取り込まないで済みます。
漢方薬もおすすめ
漢方薬を服用するのもよいでしょう。残っている症状に対して効果を発揮する漢方薬を選びましょう。
治りかけでも…「人にうつる」場合も
一般的な風邪は熱が上がるまでが感染力が高いので、諸症状がほぼおさまっていれば感染力は低いです。
しかし、免疫が低下しているような人(妊婦、高齢者、幼児など)にはうつしてしまう可能性もあります。
学校や会社に行く場合は、マスクを着用しましょう。
また、風邪が完全によくなるまでは食器やタオルの共有は避けましょう。
こんな症状が続くときは病院へ!
治りかけでも、ひどくなる症状には注意が必要です。
ひどい鼻づまり(頭痛)
2週間以上咳が続く
下痢や吐き気が続く
ときは、病院にいきましょう。
ひどい鼻づまり(頭痛)の場合は…
鼻水が溜まっていると「急性副鼻腔炎」を発症し、鼻づまりや頭痛などが現れます。
そのような場合は、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
2週間以上咳が続く場合は…
また、咳が続いている・夜だけ出るという症状が2週間以上ある場合は、呼吸器内科を受診しましょう。
肺炎や他の呼吸器系の病気の可能性があります。
呼吸器内科を探す
下痢や吐き気が続く場合は…
風邪症状が落ち着いてからの、下痢・吐き気・胸焼けなども、食中毒や逆流性食道炎の可能性がありますので、内科や消化器内科を受診してください。
治りかけでも、ひどくなる症状には注意が必要です。
内科を探す
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2020-09-24
痰がしつこく絡んで、のどがすっきりしない。
何度も吐き出したのに、また痰が絡んで困る。
そんなお悩みの対処法を紹介しています。
どうして痰がしつこく絡んでいるのか、病院を受診した方がいいのかなどをお医者さんにお聞きしました。
しつこい痰に困っていたら、ぜひ参考にしてください。
痰絡みの「基本の対処法」
痰が絡みやすいときは、水分を多く摂取しましょう。水分を多くとると、痰が出やすくなります。
痰を排出しやすくする去痰薬も市販されています。
薬剤師に相談し、使用上の注意を確認してから使ってください。
痰が長引く原因かも「NG行為」
たばこやアルコールは、気道の線毛細胞を破壊する働きがあります。
痰症状が出ているとき、出やすい人は、禁煙・節酒をしてください。
気道の粘膜上にある線毛細胞は、痰の排出を促す働きがあります。たばこやアルコールの影響で、線毛細胞が破壊されるので注意してください。
痰が治らない原因は?
痰が長引く場合は、次の病気になっている可能性があります。
原因①気管支炎
「急性気管支炎」の多くは、細菌やウイルスが感染することで、痰が絡んだ咳が頻繁に出る病気です。
「慢性気管支炎」の場合は、喫煙や排気ガスなどの大気汚染によって起こります。
生活な不規則で免疫力が落ちている人、幼児、高齢者などが発症しやすい病気です。
自分でできる対処法
出てくる痰は吐き出します。しっかりと休暇を取り、栄養のある食事をとりましょう。
また、痰や咳が出ている間は、嗜好品(たばこ、アルコールなど)は控えてください。
原因②肺炎
細菌やウイルスの感染によって、咳や痰、発熱などの症状が出ます。
生活が不規則で免疫力が落ちている人、高齢者、幼児などが発症しやすい病気です。
黄色い痰や茶褐色の痰など色のついた痰などが出るときもあります。
肺炎では、咳や痰だけでなく、咳をすると胸が痛む、呼吸が浅くなるといった症状が出ることがあります。
自分でできる対処法
3、4日激しい咳が続くなど、症状が快方に向かわないときは、自己判断せず、早めに病院で診察を受けましょう。
原因③慢性閉塞性肺疾患(COPD)
主に長年の喫煙習慣が原因で、慢性的な痰や咳の症状や、歩いたり、階段を登ったりした際に息切れが出ます(労作時呼吸困難)。
喫煙者の15~20パーセントの人が、慢性閉塞性肺疾患を発症するとされています。
長期間の喫煙によって、慢性的に咳や痰が出ます。
また、気管支が炎症を起こし、肺が壊れ、気管支が狭くなるため、酸素を取り入れる働きが弱くなります。場合によっては、二酸化炭素を排出する機能も低下します。
自分でできる対処法
禁煙が必須です。
禁煙だけでは、一度失った肺機能を元に戻すのは難しく、同時に病院で治療を行い、症状を軽くしていきます。
原因④肺がん
喫煙者に多い病気です。
喫煙、受動喫煙、衣食住での環境、薬品などが原因になります。
咳、痰、倦怠感、胸痛、体重減少、血痰などの症状があらわれます。ただし、変化がないことも多いです。
自分でできる対処法
禁煙が必要です。家族に喫煙者がいる場合も、禁煙をします。
同時に必要ながん治療を受けます。肺がんは、見つかった時点で他の臓器に転移していることが多く、転移がある場合は、抗がん剤やその他のがんに対する薬物治療や放射線治療などを組み合わせて治療が行われます。
病院へ行くタイミング
痰以外に、咳・発熱を含む症状が4~5日続き、よくなる傾向がない場合は、病院で診察を受けましょう。
また、熱がなくても2週間以上も痰や咳で呼吸が苦しい状態が続くときは、病院を受診してください。慢性閉塞性肺疾患や肺がんなどの可能性があります。
病院は呼吸器内科・内科を受診しましょう。
内科を探す
▼参考
般社団法人日本呼吸器学会 呼吸器の病気 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=12
一般社団法人日本呼吸器学会 呼吸器の病気 肺がん
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=25
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。