「急に不安感に襲われる…」
「自分で対処できる?」
その症状はパニック障害や更年期障害かもしれません。
原因や対処法を医師が解説します。
監修者
経歴
福島県立医科大学卒業
「働く人を支える」薬に依存しない医療を展開する「BESLI CLINIC」を2014年に協同創設、2030年を基準に医療現場から社会を支える医療経営を実践しています。
産業医視点からビジネスマン・ビジネスウーマンを支えております。生薬ベースの漢方内科での経験を活かし、腹診を含めた四診から和漢・井穴刺絡などの東洋医学を扱い、ホルモン、生活習慣をベースに身体から心にアプローチする診療を担当。米国マウントサイナイ大学病院へ留学、ハーバード大学TMSコースを修了。TMSをクリニックへ導入、日本人に合わせたTMSの技術指導、統括を行っています。
急に不安感に襲われたら、どう対処する?
急に不安感に襲われたときは、まずは深呼吸しましょう。
音楽を聴いたり、温かい飲み物を飲んだりするのもおすすめです。
安心できる環境を作り、気持ちを落ち着かせましょう。
深呼吸がうまくできない…
うまく深呼吸できない場合、まずは息を止めましょう。
息を止めて、苦しくなったら自然に深呼吸ができるようになります。
不安を感じると呼吸が速く浅くなり、うまく呼吸ができなくなってしまいます。
うまく呼吸ができないと、手足がしびれたり、めまいを起こしたりします。
私、大丈夫?もしかして病気?
ストレスのかかる出来事によって不安を感じるケースは、よくあります。
一時的な不安感であれば、一旦様子を見ても大丈夫です。
ただし、原因不明の不安や緊張が1週間以上続く場合は、心の病気が疑われます。
病気かも…と思ったら
「急な不安感は病気のせいかもしれない…」と心配になったら、医療機関で診察を受けてください。
症状が悪化すると、強い不安感によって吐き気・息苦しさを伴うこともあります。
生活に支障をきたす前に受診し、治療を受けることをおすすめします。
病院は何科?
急に不安感に襲われる症状は、心療内科・精神科で相談できます。
お医者さんには、なんて言えばいい?
- 症状が始まった時期
- 不安感に襲われる頻度
- 不安感以外の症状
- その他の病気の有無
- 服薬している薬
などを医師にお伝えいただくと、スムーズに診察を行うことができます。
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どんな病気の可能性があるの?
急に不安感に襲われるのは、
- パニック障害
- 更年期障害
といった病気が考えられます。
病気① パニック障害
突然、汗をかいたり、吐き気を感じたり、息が詰まる感じがしたりするなどの症状が現れ、それによって日常生活に支障をきたす病気です。
発作が出ると自分で自分の身体をコントロールできなくなってしまい、強い不安感を感じやすくなります。
他にも、こんな症状はないですか?
- 動悸、息苦しさ
- 胸やお腹の違和感、不快感
- 吐き気
- 体が痺れる
- 汗をかく
- 体のふらつき、めまい
- 頭痛
パニック障害の原因
発症原因ははっきりとわかっていません。
しかし、疲れ・睡眠不足・ストレス・風邪などが関係していると考えられています。
どんな人に多い?
10代~20代前半に多く、女性の方が発症しやすいと言われています。
また、心配性・真面目・几帳面といった性格の人も発症しやすいです。
病院は何科?
パニック障害が疑われるときは、心療内科・精神科を受診してください。
どんな治療を受けるの?
などを行います。
薬物治療
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬や、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使って治療します。
精神療法
お薬での治療にあわせて、「認知行動療法」という精神療法を行うことが多いです。
効果が出ない場合は「ソマティックアプローチ」という身体から心をコントロールする精神療法が効果的な可能性もあります。
※1認知行動療法…
不安感や恐怖心に対する自分の考え方・とらえ方の偏りを認識して、修正していく方法。
※2ソマティックアプローチ…
ヨガや呼吸瞑想法、禅、太極拳など、体や心を動かす心理療法。
TMS治療
脳に磁気を当て、脳の特定部位を活性化させる治療方法です。
話すカウンセリングが苦手という方におすすめの治療です。
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2020-06-11
この症状は、心療内科に行くべき…?
お医者さんに心療内科に行ったほうがいい目安を聞きました。
初診で話す内容や、料金についても解説しますので、ぜひ最後まで読んでください。
心療内科を受診すべき症状目安
「これくらいで受診してもいいの?」と思ったら、その時点で受診をすることをおすすめします。
受診すべきかどうかは、「日常生活に支障をきたしている可能性があるか」を判断のポイントにしましょう。
例えば、「憂鬱で誰にも会いたくない気分で、学校や仕事に行けなくなった…」という場合は受診をしたほうがよいでしょう。
そのまま病院に行かずに病状が進むと、身体も心も動けなくなる状態になることもあり、病院への受診も考えられなくなることもあります。
受診すべき症状例
眠れない日が続いている
寝ても疲れがとれず、倦怠感がある
悩み事のせいで食欲がない、食べても美味しいと感じない
ストレスがきっかけで、2週間以上落ち込んでいる
頭にモヤがかかったように集中力が低下している
心療内科は、ストレスが原因で身体にも症状が出ている状態を治療するところです。
内科を受診しても原因が分からず症状が続いているという場合も、一度心療内科を受診してみるとよいでしょう。
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「私は行ったほうがいい?」症状チェック
最近2週間で、以下の症状があるかどうかをチェックしてみましょう。
1日中、憂鬱な気分が続いている
何をしても楽しく感じない
疲れやすい、やる気が出ない
集中力や注意力が低下している
自分の価値が分からない
周りに迷惑をかけている、と感じる
将来に希望が持てない
自分の体を傷つけたり、自殺を考えたことがある
夜寝付けない、寝ても途中で起きる、寝すぎてしまう
食欲がない、または過食状態である
これらの症状が1~2個以上当てはまる場合、受診をおすすめします。
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心療内科を受診するメリット
心療内科を受診すると、体や心の不調を早く楽にすることが期待できます。
早期受診することで、学校や会社を休まず、生活をしながら治療ができます。
ネットの「心療内科に行ってはいけない」という声
ネット上で、「心療内科に行ってはダメ!行ったら最後だ!」という言葉を見つけて心配です…。
ネットでは、心療内科や精神科を受診することへのネガティブなイメージも多く見受けられるため、心配になる方も多いでしょう。
しかし、症状を放置すると、さらに悪化して、日常生活も送れなくなる可能性があります。
また、薬を服用すると自己判断で薬をやめることができないため、そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。(薬の服用を治療途中でやめてはいけないのは、他の病気でも同じです。)
心療内科の医師は、心と体の専門家です。
病院で話したことが、あなたの許可なく外に漏れることもありません。
まずは、自分がどのような状態であるのかを理解するために、受診してみましょう。
知っておきたい!初診の流れ
初めての心療内科で緊張します…。
心療内科も内科も、受診までの流れは同じです。まずは、電話やネットで初診の予約をしましょう。
予約の時点で、大まかな症状を聞かることもあります。いつ頃から、どのような症状があるのかを伝えましょう。
初診時は、以下のようなことを問診票に記入します。
いつ頃から、どんな時に症状が起こるか
今までにその症状に対して、治療を受けたことがあるか
現在、飲んでいる薬があるか
今まで大きな病気にかかったことがあるか
問診票の問いに対して、書きたくないことは無理に書く必要はありません。
医師とのコミュニケーションを通して、伝えたいことがあれば伝えるのが良いでしょう。
初診ではどんなことを話す?
一般的に、医師からは次のような質問を受けることが多いでしょう。
どんな症状が、いつから出ているのか
家族のこと
仕事のこと
生活のこと
食事をとれているか
睡眠をとれているか
希望する治療法
希望しない治療法
こちらも問診票と同様、答えたくないことは無理に答えなくても大丈夫です。
初診料はどれくらい?
保険診療の初診料は3割負担の患者の場合は約2000~4000円です。
検査の内容などで、費用は変わる場合があります。
時間はどのくらいかかるの?
初診にかかる時間は、30分から1時間程度です。
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治療方法は?
心療内科での治療は、薬物療法や、精神療法を行うことが多いです。
<薬物療法>
抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などの心のお薬と、お通じや腹痛などの症状に対する身体のお薬や身体全体を調整してくれる漢方薬などを使用します。
<精神療法>
精神療法では、認知行動療法を行います。認知療法とは、患者さんの物事の考え方や受け取り方に働きかけて行動をコントロールすることで、気持ちを楽にする治療方法です。
また最近では、上記の治療法以外にも、脳に対するTMS治療(経頭蓋磁気刺激法)※も、薬で効果がない人や薬の副作用が強い人に注目されています。
※外部からの磁気刺激で脳を局所的に活性化させることで、脳の血流を増加させ、低下した機能を改善する治療法
「薬がやめられなくなったら…」と不安な方に
「薬漬けになりたくない」という思いから、心療内科での治療を不安に思う人もいると思います。
薬を使って治療したとしても、症状が良くなれば、徐々に薬の量を減らすこともできます。医師の指導に従って薬の量を減らしていけば、副作用も大きくありません。
また、先述したように、治療法は薬物療法だけではありません。精神療法やTMS治療など様々な治療法がありますので、医師とよく相談して、不安のない治療法を選択するようにしましょう。
参考
厚生労働省 こころの耳:1 うつ病とは
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad001/
MSDマニュアル家庭版:精神障害の治療
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/10-心の健康問題/米国における精神医療の概要/精神障害の治療
沖縄県医師会:心療内科精神科の薬(2012年12月24日掲載)
http://www.okinawa.med.or.jp/old201402/healthtalk/gusui/2012/data/20121224n.html
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター:認知行動療法とは
https://www.ncnp.go.jp/cbt/guidance/about
BESLI CLINIC:問題解決療法・認知行動療法
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2020-05-21
初めて心療内科に行くけど…実際には何を話すの?
心療内科で初診を受ける際の流れについて、お医者さんに聞きました。
当日準備していくことをはじめ、初診でかかる料金、診断書はもらえるのかどうかも解説します。
心療内科の初診の流れ
初めてで緊張する方もいらっしゃるかと思いますが、基本は一般の内科などと変わりません。
問診→診察という通常の病院受診と同じ流れで行われます。
<治療開始までの流れ(一例)>
電話やウェブで予約
来院、問診表を書く
診察を受ける
必要であれば検査
治療の開始
心療内科の予約のしかた
電話予約が一般的かと思われますが、最近ではウェブ予約ができるところも増えてきています。
時間がなくて電話ができない、電話が苦手という方でも予約することができます。初診は日時が決まっているところが多いため、調べてから行くのがよいでしょう。
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受診前に準備しておいたほうがいいことはある?
次のことが伝えられるように準備しておくと良いでしょう。
今、何に困っているのか
受診に至った経緯
いつから困っているのか
どのようなときに、どのような症状がでるか
思い当たるストレス要因 等
初診で聞かれること
(症状や状態にもよりますが)ストレス要因に関連するような質問をされる可能性があります。
例えば、家族との関係や本人の職業・仕事内容、交友関係や休日の過ごし方、趣味などの話です。あくまで関連のある事柄に対してなので、あまり言いたくないことは言わなくても大丈夫です。
いずれにしても専門家がお話を聞くので、安心して相談してみてください。秘密は守られます。
初診で持っていくもの
心療内科の初診には、次のものを持参すると良いでしょう。
保険証
お薬手帳(あれば)
現状「困っていること」や「医師に相談したいこと」を受診の経緯をスムーズに話せるようにメモを持っていくのもよいでしょう。
初診の費用目安
自己負担3割の方で、初診時は約2,500円~3,000円、2回目以降は1,500円程度です。
薬を処方された場合、診察とは別に薬代が5000円前後かかります。
検査を行った場合には別途1,000~3,000円かかりますが、検査の種類にもよります。
こんなときは、悩まず心療内科に相談してください
「ストレスで胃が痛い」「悩み事があり夜眠れず、不眠気味だ」「ストレスが多く髪が抜ける」「イライラが収まらない」などの症状がある場合は、早めに専門医に相談してみましょう。
心配事や悩み事、ストレスがあり、気持ちや情緒が不安定で「いつもと違う」と感じられているのであれば、受診することをお勧めします。
辛い、苦しい、不安な状態を長く我慢してしまうと、症状がより重いものになる可能性もあります。
早期受診のメリット
早期に治療を始めることで、治療期間が短く済む、正常な状態に戻るのも早くなる、通院の回数や医療費も安く済むというメリットがあります。
ストレスが要因の病気は特に、放置し続けることで症状が悪化してしまうケースが多く、うつ病もそのうちの一つです。
何よりも、軽い症状のうちに治療を受けた方が心身の負担もあまりかからずに済みます。
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はじめての心療内科「よくある質問」
「診断書はもらえるの?」「心療内科に行ってはいけないと言われるのはなぜ?」
心療内科に関するよくある質問にお答えします。
質問1.診断書が欲しいのですが…
休職等の申請に診断書が必要な場合、すぐにもらえるものなのでしょうか?
診断書は本来診断がついて初めて発行されるものです。しかし診断書は医師に申し出れば、比較的速やかに発行されるところも多いです。
休職や職場に提出が必要な書類として、すぐに必要な場面が多いためです。病院によっては別に窓口が設けられている場合もあるため、受診の際に確認すると良いでしょう。
質問2.よく「心療内科に行ってはいけない」と言われるけど…
「行ってはいけない」「行ったら最後」と言われているのは、なぜなのでしょうか?
「行ったら最後」ということはありません。
そう言われるのは、精神科や心療内科のお薬を服用すると、患者さん自身の判断で勝手にやめることができず、飲み続けなければならないことが要因となっている可能性があります。
もしくは、薬の副作用が強くて日常生活により支障が出るなどという想像での発言かもしれません。
また、精神科・心療内科に行って診断を受けた時に、自分が精神病患者なのだと認めてしまうのが怖いと思ったり、周りの目を不安に感じる方もいらっしゃいます。
精神科や心療内科は、重い精神疾患を持つ人が行く場所というネガティブなイメージが少なからずあるというのが背景にあるようです。
つらい時は我慢せずに病院に行った方が良いのでしょうか?
ネット上でも多くの情報が錯綜していますが、自分の体の声を聞き、本当に辛い、苦しいと感じていて、日常生活に支障が出ているのであれば、相談だけでもいいので受診してみてください。
実際に、精神的な症状や心身症が現れているにも関わらず、受診を躊躇している方が多くいらっしゃいます。
しかし、自己判断で市販の漢方薬などの薬を飲み続けていたとしても、根本的な治療にはなりません。その点、専門の医師に相談することで、症状の要因をふまえた治療を受けることができます。
一人で抱え込まずにまずは相談してみましょう。
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参考URL
・心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやすく解説!/ひだまりこころクリニック栄院
https://hidamarikokoro.jp/sakae/blog/心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやす/
・精神科・心療内科の診察料金 | こころみ医学
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/other/psychiatry/cost/
・診察にはどれくらいの費用がかかりますか? | 心療内科・精神科
https://namba-minato.com/faq/faq09/
・心療内科に行くべきかどうか迷う。受診すべき兆候とは?/神楽坂こころのクリニック
https://www.kagurazaka-mc.com/colum/psychosomatic-medicine/
病気② 更年期障害
卵巣の機能が低下し、月経が止まるのが閉経です。
その閉経に伴って、体と心に不調が起きることを更年期障害と言います。
他にも、こんな症状はないですか?
- ほてる、のぼせる
- 過剰に汗をかく
- めまい
- 頭痛
- 動悸
- 眠れなくなる
更年期障害の原因
急激な女性ホルモンの減少に加え、ストレスや疲労がたまることで発症します。
更年期と呼ばれる45歳~55歳の女性は、子供の巣立ち・介護・昇進などのライフイベントが重なるため、ストレスがたまりやすく、自律神経が乱れることも多いです。
どんな人に多い?
45歳~55歳の女性で、ストレスを溜めやすい人に多いです。
病院は何科?
婦人科を受診してください。
ただし、強い不安感、不眠にお困りの場合は、心療内科・精神科を受診してもかまいません。
どんな治療を受けるの?
女性ホルモンのエストロゲンを補う、「ホルモン補充療法」が一般的です。
また、漢方薬(当帰芍薬散・加味逍遥散など)が処方されることもあります。
不安感・不眠・イライラ感などの精神的な症状がある場合は、抗うつ薬(SSRI)・抗不安薬・睡眠薬を使うことがあります。
すでに薬を飲んでおり、さらに薬を使用するのが怖いという方は、お薬よりも効果が高く、副作用が少ないTMS治療もおすすめです。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2021-05-28
「胸がつかえる感じがする…これは更年期のせい?」
更年期による“胸の圧迫感”を、お医者さんが解説します。
改善のための対処法や、「何科で相談すべきか」も併せてチェックしましょう。
胸のつかえ・圧迫感が気になる…これって更年期のせい?
胸のつかえ・圧迫感は、更年期の女性によくある症状です。
これは、更年期によるホルモンバランスの乱れが、自律神経に影響を与えているためです。
「更年期障害」はこんな病気です
閉経に伴って起こる“体と心の不調”を、更年期障害と言います。
閉経前後の5年間(併せて10年間)は「更年期」と呼ばれ、女性ホルモンの分泌が大きく乱れる時期です。
この影響によって、発汗やほてり、胸のつかえ、情緒不安定などの症状が起こります。
発症しやすい年齢
発症しやすい年齢は45~55歳です。
ただし、閉経を迎える時期には個人差があるため、する場合もあります。
また、発症には性格やストレスも関係していると考えられています。
更年期障害の「主な症状」
<体の症状>
胸のつかえ、圧迫感
めまい、頭痛
肩こり
腰、背中の痛み
関節痛
ほてり、発汗
<心の症状>
情緒不安定
イライラする
やる気がなくなる
気分が落ち込む
眠れない
更年期の胸のつかえには、漢方薬がいいって本当?
更年期の胸のつかえは、漢方薬で改善することもあります。
漢方薬を服用する場合は、五積散(ゴシャクサン)や、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)をおすすめします。
これらの漢方薬には、血行促進や自律神経を調整する作用があり、更年期の冷え、貧血、むくみがある場合にも使用できます。
更年期の症状を改善させる、2つの「対処法」
更年期の症状を改善させるには
適度な運動
栄養バランスの良い食事
を心がけることが大切です。
その① 適度な運動
体を適度に動かすと、血流が良くなって自律神経も整うため、更年期の症状が和らぎやすいです。
運動には、1日20〜30分程度のウォーキングをおすすめします。
歩いて買い物に行くなど、無理のない運動を生活に取り入れてみましょう。
特に家にこもりがちな方は、毎日少しでも外出することが大切です。
外の空気を吸うことで、更年期によるイライラ、気分の落ち込みなどの症状が落ち着くこともあります。
その② 栄養バランスの良い食事
更年期症状の改善には、食事による体づくりも欠かせません。
ホルモンバランスの影響で食欲が低下する場合もありますが、できるだけ食事から栄養分を摂るようにしてください。
ただ、食べなければと無理して食べるとストレスになることもあるので、食べたいときに食べるようにしましょう。
食事は和食を中心とした、油分が控えめなメニューが良いでしょう。
タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランス良く摂取してください。
更年期症状には「大豆イソフラボン」がおすすめ
大豆に含まれる“大豆イソフラボン”には、女性ホルモンに似た働きがあり、ホルモンバランスの調整に役立ちます。
更年期症状でお困りの場合は、大豆製品、豆乳を積極的に摂りましょう。
こんなときは、早めに病院で相談を
胸のつかえに加え、
倦怠感
動悸
息切れ
などの症状が強く出ている場合は、早めの受診をおすすめします。
更年期によって自律神経が乱れた状態が続くと、体と精神のバランスが崩れ、うつ症状を発症するケースもあります。
また、胸のつかえや動悸、息切れの症状には、心臓の病気も考えられます。
心臓の病気は悪化すると命に関わるため、放置せずに検査を受けるようにしましょう。
何科で受診すればいい?
更年期の“胸のつかえ”が気になる場合は、まず婦人科を受診しましょう。
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どんな治療を受けるの?
「更年期障害」と診断された場合、
漢方薬の処方
ホルモン補充療法
などによる治療が検討されます。
治療法① 漢方薬の処方
医師の診察のもと、体と症状に合った漢方薬を処方してもらえます。
漢方薬で血流や自律神経の調整などを促すことで、更年期の症状が和らぎやすくなります。
自己判断での使用と異なり、リスクの少ない、適切な服用を行える点がメリットです。
治療法② ホルモン補充療法
更年期の症状には、女性ホルモンの減少が関係しています。
この治療では、女性ホルモンを薬で補うことによって症状の改善を図ります。
ホルモン薬には、飲み薬や貼り薬などのタイプがあり、患者さんに合わせたものを使用します。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
漢方のツムラ 更年期障害
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2020-06-12
「生理が止まらないのは更年期のせい?」
「大量に出血していて心配…」
お医者さんに、更年期(閉経前後の5年)に生理が止まらなくなる原因を聞きました。
病院へ行った方がいい症状や受診のタイミングも解説します。
もしかして病気?どんな治療をするの?
止まらない出血にお困りの方は、参考にしてください。
なぜ?更年期に生理が止まらない原因
更年期になるとホルモンバランスが乱れ、月経不順がおこり、生理が止まりにくいことがあります。
子宮内膜がはがれにくくなることから、少量の出血が長く続いたり、一度に大量に出血したりする場合もあります。
この対処はNG!
ホルモンバランスの乱れによって生理が止まらないと思われる場合も、市販薬やサプリを使用して対処することは避けましょう。
病気により出血している可能性もあるので、8日以上生理が続くようであれば、一度医師に相談することをおすすめします。
病院を受診する目安
特に下記の状態のときには、早めに病院へ行きましょう。
大量の出血がある
レバーのような血液の塊がたくさん排泄される
耐え難い月経痛
8日間以上月経が続く
月経時以外にも出血がみられる
排尿障害がでた
腹部にしこりのようなものがある
この他にも、気になる症状がある場合には、婦人科の受診をおすすめします。
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受診のタイミング
できれば、出血している時に受診しましょう。
(生理の出血が止まったあとに受診しても構いません。)
基礎体温を記録している場合は、ぜひ持参してください。
また、受診する際には、以下の5ポイントを医師に伝えると良いでしょう。
出血の増加が始まった時期
出血量
月経の周期(月経期間)
出血の状態(例:レバーのような塊が出る等)
他の症状の有無
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生理が止まらないのを放置すると…
「これくらいなら大丈夫」と自己判断して、病院に行かずそのままにしておくことは、避けましょう。
子宮や卵巣の疾患を見逃してしまい、症状が悪化したり、妊娠が困難になったりする可能性があります。ガン化する恐れもあります。
過多月経や過長月経の場合は、貧血を併発しやすく、日常生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
注意!こんな病気の可能性も
大量出血や激痛がある場合は病気の可能性もあります。
月経期間が8日以上続く状態を「過長月経」、出血量が増えたり、月経痛が酷いなどの症状が見られる状態を「過多月経」といいます。
更年期の過長月経や過多月経の症状は、
機能性子宮出血
子宮筋腫
子宮腺筋症
子宮内膜ポリープ
子宮内膜増殖症
子宮頸がん
といった病気の可能性があります。
それぞれの症状を詳しく解説します。
原因1. 機能性子宮出血
出血の要因(妊娠・腫瘍・外傷・炎症など)が見当たらない場合、機能性子宮出血と診断します。不正出血の約30%を占めるため、頻度の高い症状と言えます。
※様々な原因によって起こる子宮内膜からの不正出血の総称です。厳密には病気の名前ではありません。
<主な症状>
不規則に、頻繁に出血がみられます。
原因2. 子宮筋腫
子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。
子宮筋腫ができると、経血を排出する際の子宮の収縮機能に異常が出たり、子宮内膜が厚く形成されて、月経時に剥がれ落ちる量が増えることが影響して、生理が止まらなくなると考えられます。
<主な症状>
経血量の増加が起こり、レバーのような血液の塊が出てきます。月経が7日以上ダラダラと出血が続きます。
また、月経痛、腰痛、貧血、排尿異常などが起こります。
原因3. 子宮腺筋症
女性ホルモンの影響を受け、子宮の筋肉の層に子宮内膜と似た組織が増殖し、正常な子宮内膜と同様に出血をするため、生理が止まらなくなると考えられます。
また、子宮腺筋症により子宮内膜が変形したり、拡張したりすることで、経血を排出する際の子宮の収縮のバランスが崩れるため、出血しやすくなります。
症状が重い場合は、子宮全摘手術などを考慮することも必要な病気です。
<主な症状>
月経痛、過多月経や過多月経による貧血、骨盤痛などがみられます。痛みはかなり強く、月経が終了しても数日続く場合もあります。女性ホルモンの分泌が減少して閉経するころを境に、症状は治まります。
原因4. 子宮内膜ポリープ
子宮内膜の細胞が何らかの原因で異常増殖し、ポリープができる病気です。突出したポリープで子宮内の表面積が大きくなるため、経血の量が増えて、生理が止まらなくなると考えられます。
子宮内膜ポリープができるのは、女性ホルモンであるエストロゲンも原因の一つとされていますが、明らかになっていません。
<主な症状>
経血量が多く、月経期間が長くなります。また、月経時以外の出血(閉経後にも性器出血)や貧血になることもあります。
原因5. 子宮内膜増殖症
子宮内膜が異常に分厚く増殖し、月経時に剥離される子宮内膜の量が多いため、生理が止まらない症状が現れます。
<主な症状>
経血量が多い、月経期間が長い、月経時以外の出血がある、貧血などの症状が現れます。
原因6. 子宮頸がん
性交渉などでヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸部に感染することで起こる病気です。物理的刺激により、出血を起こすことがあります。
<主な症状>
子宮頸がんは、まだ細胞ががん化していない初期段階では、症状がありません。進行すると、生理以外での出血、特に性交時の出血がみられます。出血量は多く、繰り返すのが特徴です。おりものの色や状態に変化があらわれたりします。さらに悪化すると、下腹部や腰が痛くなることもあります。
初診ではどんな検査をするの?
一般的に、初診は次のような流れで行われます。
問診
月経周期、月経の日数、最終月経日、初潮の年齢、妊娠・出産歴、既往歴、アレルギーの有無等の確認が行われます。
内診
子宮、卵巣の状態、圧迫による痛みの有無等を確認します。
超音波検査(必要な場合)
経腟プローブ(棒状の器具)を膣内に挿入して、子宮や卵巣の状態を確認する検査を行います。
細胞診(必要な場合)
子宮頸部細胞をヘラ、ブラシ、綿棒等で採取して、異常細胞の有無を確認する検査を行います。