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メトホルミンという薬をご存じですか? 糖尿病の飲み薬の一種です。糖尿病の飲み薬は、大きく次の3つに分けられます。 ① インスリンの抵抗を改善する薬 ② インスリンの分泌を促進させる薬 ③ 糖の吸収・排泄を(はいせつ)調節する薬 メトホルミンは、 ①の「体がインスリンに抵抗するのを改善する」薬です。では、さっそくメトホルミンの特徴をみてみましょう。
糖分が体に入ると、血糖値が上がり、インスリンが分泌されます。 このインスリンの働きで、臓器は糖を取り込み、エネルギーとして使います。 糖が放出されなかったり、ブドウ糖が吸収されなければ、血液中の糖が減り、インスリン分泌も抑えられます。 このように「糖が放出されない、ブドウ糖が吸収されない」ようにするのが、メトホルミンです。 メトホルミンは、主に肝臓で働き、糖を分解して、体内に糖を放出するのを抑制します。 さらに、食後の腸管での、ブドウ糖の吸収を妨げる働きがあります。 インスリン分泌の、増加をともなわないのが、特徴です。 インスリンは、脂肪を合成する働きもあるため、インスリンの増加を抑えることで、脂肪合成を抑え、さらに肥満を軽減させます。 メトホルミンは、特に肥満している場合に、良い適応とされています。
高齢者や肝障害・腎障害がある人がメトホルミンを服用すると、乳酸アシドーシス(※)を起こすことがありました。 そのため、日本では、処方が敬遠されていた時期も、ありました。 ※乳酸アシドーシス:乳酸が血液中に蓄積し、血液が酸性になること。致死率が高い 最近では、糖尿病治療の第一選択として、用いられることも多くなっています。 しかし、脱水や体調不良時には、かかりつけの先生を受診してください。
1番に適応されるのは、「肥満」や「2型糖尿病(※)」です。 ※2型糖尿病:遺伝的な要因に加え、食べ過ぎ・運動不足など生活習慣が原因で発症した糖尿病。患者の95%が2型と言われる 「インスリンの分泌を促進させる薬」を服用しても、治療がうまくいかなかった場合は、原因がインスリン抵抗性の可能性もあるため、作用の違うメトホルミンが処方される場合が多いです。 インスリンの分泌を促進させる薬と組み合わせるのは、インスリンの感受性をよくし、分泌も促すため、相乗作用(※)が期待されているからです。 ※相乗作用:複数のクスリを組み合わせて服用したほうが、より効きめがあること ただし、低血糖のリスクもあるので、用量・用法を厳守しましょう。
「ピオグリタゾン」という薬は、メトホルミンと作用が同じ「インスリンの抵抗を改善する薬」です。 2型糖尿病で、肥満、あるいは血中のインスリンの値が高い場合に、適応されます。 肥大化した脂肪細胞を、減少させる働きがあります。 インスリンの働きに抵抗する物質が分泌されると、血糖を下げることができなくなります。 そうならないように、インスリンが本来の働きを取り戻すようにする薬です。 メトホルミンと同じく、肝臓での糖の放出を抑え、血糖を下げます。
メトホルミンは、基本的には、2型糖尿病に適応しています。 しかし、米国糖尿病学会は、「メトホルミンは、糖尿病になる可能性が高い糖尿病予備軍、1型糖尿病(※)にも有益な効果がある」と発表しました。 ※1型糖尿病:リンパ球がインスリンを出す細胞を誤って壊してしまうなど、主に自己免疫で起こる糖尿病。小児期に多い メトホルミンには、乳酸アシドーシスなどの副作用はありますが、他の糖尿病薬のような、体重増加がないなど、メリットが大きいといえます。 次のような抑制効果も、研究で判明したようです。 ・心臓疾患の発症を抑える ・がん発症を抑える このようなメリットを加味し、1型糖尿病にも処方されると言えます。 糖尿病の薬は、メトホルミン以外にもたくさんあります。 症状・副作用などを見ながら、主治医・薬剤師と相談し、症状に合った薬を服用することが大切です。
【参考文献】 『エッセンシャル臨床栄養学 第5版』佐藤和人 本間健 小松龍史著 医歯薬出版社 『糖尿病療養指導ガイドブック2017』一般社団法人日本糖尿病療養指導士認定機構編 株式会社メディカルレビュー社 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターHP 血糖値を下げる飲み薬 http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/100/020/02.html 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターHP ビグアナイド薬と乳酸アシドーシス http://dmic.ncgm.go.jp/medical/infomation/110/info_11.html 京都大学化学研究所 金久ラボラトリーズHP 医療用医薬品メトホルミン https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062885
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