もやもや病って何?
「手に力がはいらない」「しびれを感じる」ときは要注意。
お医者さんに、もやもや病の症状を聞きました。
放置すると命の危険があるケースもあるので、しっかりチェックしましょう。
監修者
金町脳神経内科・耳鼻咽喉科
脳神経内科・耳鼻咽喉科
内野 勝行先生
経歴
帝京大学医学部医学科卒業。都内病院の神経内科や千葉県の療養型病院副院長を経て、現在金町脳神経内科・耳鼻咽喉科院長、帝京大学医学部附属病院神経内科非常勤医。認知症サポート医、スポーツドクター。専門は脳神経内科だが、鍼灸や漢方といった東洋医学も取り入れ、体全体の調和がとれるようアドバイスを行っている。
もやもや病とは
もやもや病は脳の血管に生じる病気です。内頚動脈という太い脳血管の終末部が細くなり、脳の血流が悪くなるという疾患です。
もやもや病は、判明しにくく、発症すれば命にもかかわる疾患です。
もやもやは「頭がもやもやする」ではない
「もやもや病」と聞くと「頭がなんだかもやもやした感じがする病気」と思われるかもしれません。 しかし、実際には違います。太い内頚動脈が細くなり、不足した血液を補うように周りの細い血管が発達します。この血流不足を補うために発達した血管が立ちのぼる煙のように「もやもや」した状態に見えるため、「もやもや病」と言われています。
もやもや病になりやすい年代
年齢は
をピークとする2つの年齢層に多いとされています。
また、やや女性に多いです。
子どもの症状の特徴
- 意識が遠くなる
- しゃべりにくくなる
- 手足に力が入らなくなる
などの症状があらわれます。
症状が一時的に起こり、回復するという事が繰り返し起こります。
症状は数分から数十分で元に戻ることが多くあります。 しかし、発作を繰り返すと、成長期の脳に悪影響を及ぼし、脳梗塞を起こす場合もあります。子どもの脳卒中の約40%はもやもや病であると考えられています。
症状がでるきっかけ
ほとんどの場合、過呼吸をきっかけに脳の虚血発作が誘発されます。
例えば、
- 大泣きした
- 大きな声で歌った
- 笛やハーモニカを吹いた
- 全力で走った
あとなどに、脳内の二酸化炭素濃度が低下して脳血管が収縮し、血流不足が原因で起こります。
大人の症状の特徴
といった軽度の症状が時々起こるため、頭部の検査を行ったところ、この病気だと判明することもあります。
大人の場合では血管から出血し、脳出血やくも膜下出血を起こすケースが多くみられます。 出血量と場所によっては、重い後遺症を残し、命に危険がおよぶ場合もあります。
もやもや病の原因は?
もやもや病のはっきりした原因やメカニズムは現在まだわかっていません。
最近の研究ではある特定の遺伝子を持つ方に発症しやすい傾向が明らかになってきました。
もやもや病の患者の子供や兄弟が必ずしも発症するわけではありません。 しかし、本人がもやもや病の場合、その親や兄弟・いとこなどに、もやもや病の方がいる可能性が、10%程あるといわれています。
もやもや病の治療方法は?
治療方法として、血液を流れやすくする薬を使用される場合がありますが、原因となっている内頚動脈の閉塞を直接治す方法はありません。
そのため、常に不足している脳への血流量を補うための手術やバイパスをつくって細い血管への負担を軽くする手術などが、外科的治療で行われます。
治療すれば、日常生活に戻れる?
特に子どもの場合、症状がしばしば現れる時は、激しい運動や楽器の演奏など制限する必要があります。 外科的治療を行ったあとは、特殊な運動(ラグビーやボクシングなど)を除けば、ほとんど普通に生活できるようになります。
大人の場合は最初の診断時と同じ状態が何年も変わらない人もいれば、徐々に進行していく人もいるといわれています。 定期的なMRIでの検査を行い、適切な管理や治療を行うことで症状的に安定して、日常生活を送れます。
脳ドックやMRI検査などを受けることが、病気の発見への大切な第一歩になります。
検査を受けて、早期発見しましょう。
脳神経外科を探す
合わせて読みたい
2021-02-19
なんだか皮膚の感覚がおかしい。
これってもしかして…病気?
皮膚の感覚異常とその対処法について、お医者さんに聞きました。
病気の可能性がないか、ご自身の症状をチェックしましょう。
なんだか皮膚の感覚がおかしい…これ大丈夫?
長時間同じ姿勢で作業をしていると、血行が悪くなり皮膚にしびれが起きやすくなりますが、特に危険な症状ではないため、一旦様子を見ても大丈夫でしょう。
この場合は、感覚がおかしい部分を温めたり、ストレッチをして、血流をよくすることで症状が緩和できるケースがあります。
しかし、「何もしていないのに急に発症した」、「原因に心当たりがない」という場合は、何か病気が隠れている可能性があります。
皮膚の違和感はどう対処する?
原因不明のしびれが数日続く場合は、病院に行くことをおすすめします。
また、血糖値や血圧値が高めな人は生活習慣病による合併症の可能性があるため、早めに受診しましょう。
特に注意が必要な症状
じんじんする感覚
大きな手につかまれるような感覚
体の片側だけ感覚が異常
呂律が回りにくい
という場合は注意が必要です。
脳梗塞などのリスクがあります。
受診するのは何科?
皮膚の感覚異常だけのときは、まず皮膚科を受診しましょう。
その他にも症状があるという場合は、脳神経内科、脳神経外科を受診しましょう。
皮膚科を探す
脳神経外科を探す
皮膚の感覚がおかしい「3つの原因」
皮膚の感覚異常は
自律神経失調症
椎間板ヘルニア
糖尿病性神経障害
が原因となっているケースが多いです。
それぞれを詳しく解説していきます。
原因① 自律神経失調症
自律神経のバランスが崩れてしまい、心身に不調が起こる病気です。
自律神経失調症は、極度の過労やストレスによって、自律神経の乱れが起き、それが戻らなくなっている状態です。自律神経失調症になると体の様々な部分が不具合を起こします。皮膚の感覚の異常もそのひとつです。
皮膚の違和感の特徴
しびれる感覚や、痛みなどを生じます。
片方だけに出るケースもよくあります。
皮膚の感覚異常が出やすい場所
手足
指
など
どんな人が発症しやすい?
ストレスの多い人に発症しやすい傾向があります。
女性では、更年期を迎える時期に多く見られます。
自分でできる対処法は?
休息をとる
生活リズムを整える
過度のアルコール・カフェイン摂取を制限する
の3つを意識してください。
自律神経は、少しの生活習慣の乱れやホルモンの乱れでも混乱しやすい器官なので、適度な休養や休暇が必要となります。
休暇や休息は、家族や職場の協力も必要になります。
病院は何科?
心療内科、精神科を受診しましょう。
病院に行かずに症状を放置するとうつ症状が悪化したり、治療に時間を要するようになります。症状が1ヶ月以上続く場合は受診をしましょう。
心療内科を探す
原因② 椎間板ヘルニア
背骨一つ一つの間にある「椎間板」という骨の間にあるクッション材が、飛び出てしまう病気です。
長時間の運転する人、猫背の人、同じ姿勢で仕事を続けなければいけない人など、椎間板を圧迫する姿勢を長く取っていると発症しやすいです。
皮膚の違和感の特徴
椎間板が飛び出すと、皮膚の神経が圧迫されて、しびれやピリピリと電気が走ったような感覚を感じるようになります。
皮膚の感覚異常が出やすい場所
<腰の椎間板ヘルニアの場合>
腰周りや太もも
すね
足指
足の甲
足の裏
<首の椎間板ヘルニアの場合>
肩や腕
手のひら
手指
に多く現れます。
自分でできる対処法は?
自己流ケアで治そうとするのはおすすめできません。
椎間板ヘルニアは、放置せず専門医の治療を受けましょう。
悪化すれば、強いしびれ・痛みで歩行困難になる人もいます。
病院は何科?
整形外科を受診しましょう。
整形外科を探す
原因③ 糖尿病性神経障害
糖尿病によって生じる合併症の一つです。神経に不調を生じさせます。
糖尿病を持っている中高年以上の男女、運動不足、食べ過ぎ、不規則な再喝が長く続いている人に多いです。
皮膚の違和感の特徴
違和感は、左右対称に起こるのが特徴です。
しびれや刺すような痛み、じんじんする感覚、虫が這っているような感覚などを生じさせます。
皮膚の感覚異常が出やすい場所
足の先
足の裏
※ただし、手・指・顔など、いたるところで発生する。
自分でできる対処法は?
血糖値のコントロールが必要です。
糖尿病がある人が、足の異常を感じたらすぐにかかりつけ医に相談するようにしましょう。
医師の指示のもと食事療法、運動療法、薬での治療を受けてください。
病院は何科?
内科、糖尿病内科を受診しましょう。
病院に行かずに症状を放置すると、合併症を発症したり、指が壊疽したりする恐れがあります。
内科を探す
早期受診をおすすめする理由
もし重病だった場合、早期受診が治療の鍵となります。
心当たりのある方は、早めに病院へ行きましょう。
▼参考
糖尿病サイト 糖尿病性神経障害
合わせて読みたい
2021-08-23
「頭が回らず、言葉が出てこないのはなぜ?」
「原因はストレス?」
認知症や適応障害を発症している可能性も。
対処法や何科で受診すべきか医師が解説します。
ストレスがたまっている人や物忘れがひどくなっている人は注意が必要です。
「頭が回らない・言葉が出てこない」は病気サイン?
頭が回らない・言葉が出てこないという症状は、
心や自律神経が不安定な状態になっている
脳に異常が起きている
のいずれかが考えられます。
「私…大丈夫?」疲れて頭が回らないときの対処法
睡眠不足や疲れによって頭が回らず、中々話すことが出てこないときは、一旦様子を見てもいいでしょう。
好きなものを食べる
ゆっくりお湯に浸かる
睡眠前に液晶画面(スマートフォン、PC、テレビなど)を見ない
ゆっくり休む
といった対処を、まずはおすすめします。
様子を見て元に戻るようであれば、心配いりません。
ただし、「なかなか調子が戻らない…」という場合には、医療機関で相談してみましょう。
「脳梗塞」の疑いあり。すぐ病院に行くべき要注意症状
会話ができなくなる
人の話していることの意味がわからない
激しい頭痛
体の片のしびれ(手足など)
めまい、吐き気
耳鳴り
片手が動かなくて作業が進まない
物が二重に見える
上記の症状には脳梗塞が疑われます。
脳梗塞は発症から時間が経てば経つほど、後遺症や命を失うリスクが上がります。
心当たりがある場合は、早急に救急車を呼んでください。
病院は何科に行けばいい?
頭が回らない・言葉が出てこない場合は、脳神経内科を受診しましょう。
まずは脳に異常がないか調べることが大切です。
※脳に異常がなく、精神的ストレスが原因として考えられる方は、心療内科・精神科で治療を行います。
病気が隠れていた場合、悪化すると手術や入院が必要になるケースもあります。
早めの受診を心がけ、治療の負担軽減につなげましょう。
脳神経内科を探す
心療内科を探す
考えられる2つの病気
頭が回らない・言葉が出てこない場合
適応障害
認知症
などの病気の可能性があります。
病気① 適応障害
ストレスを抱えきれなくなり、行動や感情に様々な障害があらわれる病気です。
頭が回らない状態になり、通常通りの判断ができなくなったり、感情の起伏が激しくなったりします。
適応障害の症状
言葉が出てこない
何があっても楽しくない
イライラする、暴力的になる
虚しくなる、悪いことばかり考える
不安が強くなる
緊張が解けない
仕事へ行けない
暴飲暴食する
適応障害の原因
ストレスが原因で発症します。
具体的なきっかけとしては、地震や台風などの自然災害、慢性的な疲れ、睡眠不足、気温の変化、未来への不安、人間関係などが挙げられます。
どんな人に多い?
普段から真面目で、物事に慎重に取り組む人
ストレスに弱い人
神経質、人に物事を相談できない人
どう対処する?
ストレスの原因から離れることが大切です。
仕事が合っていないのであれば、休職も考えましょう。
また、ストレスを与えてくる人とは距離を置いてください。
病院に行く目安
ストレスが原因となってうまく立ち回れない
仕事ができない
食やアルコールに依存してしまう
などの症状が数週間〜数ヶ月続いている場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
適応障害が疑われるときは、心療内科・精神科を受診しましょう。
医療機関では、主に認知療法やカウンセリングを行い、ストレスから解放されるようにサポートします。
心療内科を探す
病気② 認知症
脳細胞の破壊や減少で、日常生活を通常通りに送れなくなる進行性の病気です。
頭が回らなくなり、今まで行っていた普通のことも忘れてしまいます。
主な症状
言葉が出てこない
直前に行っていたことを忘れる
人の名前を思い出せない、周りの人のことを忘れる
現在の年月日・場所・状況がわからなくなる
善悪の区別がつかなくなる
徘徊する、幻覚をみる
暴言・暴力をふるう
眠れなくなる
うつ病になる
排泄障害を起こす
認知症の原因
脳細胞の壊死や減少が原因です。
脳に特殊なタンパク質(アミロイドβ)が溜まってしまい、脳細胞が減って発症すると考えられています。発症には、遺伝や加齢も関係していると言われています。
どんな人に多い?
人との交流を避ける人
傷つきやすい人
女性
若年性アルツハイマー型認知症を発症している家族がいる人
どう対処する?
進行を緩やかにする治療薬を使う必要があるので、まずは医療機関を受診してください。
通院と並行して、ご自身では脳の活性化や運動を行いましょう。
患者本人は自覚がないことが多いです。
家族は不安にさせず、きつい叱り方をしないで、感情をむやみに高ぶらせない努力が必要になります。
\自分でできる! 脳を活性化させる運動/
早歩きで散歩をする
今までやったことのない新しいことにチャレンジする
ラジオ体操を行う
病院に行く目安
物忘れが増えた
覚えていないことが多いと人に指摘された
物忘れが影響して人間関係や仕事などに支障が出た
などの症状があらわれている場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
認知症が疑われるときは、脳神経内科を受診しましょう。
医療機関では薬物治療(抗認知症薬・抗精神病薬・漢方薬・抗うつ剤など)を中心に治療していきます。
また、脳を活性化するためにリハビリテーションも行います。
脳神経内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 適応障害
▼参考
「脳梗塞 脳出血 くも膜下出血 もやもや病 慢性硬膜下血腫 脳動脈解離ほか」高木誠著
主婦の友社刊 難病情報センターもやもや病(指定難病22)
もやもや病 治療法 絵で見る脳と神経の病気 東海大学病院脳神経外科