「LDLコレステロールだけ高い…」
「すぐに病院へ行くべき?」
20代女性のLDLコレステロールだけ高い原因をお医者さんに伺いました。
動脈硬化が進行する恐れもあるため、毎回指摘されている方は要注意です。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
20代女性の「LDLコレステロールだけ高い」3つの原因
20代の女性で「LDLコレステロールの数値だけが高い」場合、
- 食生活の乱れ
- 運動不足
- ストレス過多
といったことが原因となっているケースが多いです。
その① 食生活の乱れ
揚げ物・脂身の多い肉類・インスタント食品・スイーツ・加工食品などをよく食べると、LDLコレステロールが高くなる場合があります。
揚げ物やインスタント食品などを多く食べると、肝臓でのコレステロール合成が促進されます。
その結果、余分なコレステロールが血中で溢れるため、血中のLDLコレステロール値が上昇すると考えられています。
こんな人は要注意!
- 1日3食規則正しく食事を摂らない人
- 毎日外食やコンビニ弁当を食べている人
- 野菜の摂取量が少ない人
- アルコールをたくさん飲む人
その② 運動不足
運動不足で体の消費エネルギー量が減少し、脂質の代謝が悪化すると、血中のLDLコレステロール値が上昇する場合があります。
こんな人は要注意!
- 運動習慣がない人
- エレベーターやエスカレーターを頻繁に利用する人
その③ ストレス過多
過度のストレスを抱えると、ストレスに負けないよう体の中で戦闘準備が始まります。
すると、血液中に糖分・脂肪分・カルシウム等のミネラル成分が分泌されて、LDLコレステロールや血糖値が上昇する場合があります。
こんな人は要注意!
- ストレスを感じやすい人
- 疲労がたまっている人
- 睡眠不足の人
遺伝による「家族性高コレステロール血症」のケースも
家族性高コレステロール血症とは、生まれたときから血中のLDLコレステロール値が異常に上昇する病気です。
日本では軽症から重症まで含めると25万人ほどと推定されています。
この病気は、肝臓細胞の表面にある「LDL受容体(蛋白)の遺伝子」などに異常が生じている状態です。
LDLコレステロールが細胞に取り込まれ、破壊(代謝)されず血中に溜まるため、動脈硬化を起こす可能性もあります。
どんな人に多い病気?
男性では55歳以下、女性では65歳以下に多くみられます。
ご両親のどちらも、または一方が高コレステロール血症を患っている人に多くみられると考えられています。
こんな症状を伴うことも
10歳頃までに膝・肘・手首・手の甲・アキレス腱等に、黄色のいぼ状のもの(黄色腫)が発生するケースがあります。
家族性高コレステロール血症を放置して、幼少期の段階で動脈硬化が進行すると、胸の痛みが出たり、心筋梗塞等の重篤な病気を発症したりする恐れがあります。放置すると、20代でも心筋梗塞を発症するケースもあります。
LDLコレステロールだけ高かったら、病院行くべき?
食事内容に問題があったなど、理由が明確な場合は、一旦様子をみてもいいでしょう。
こんな原因に心当たりはありませんか?
上記の原因に心当たりがある場合、一時的に数値が高くなることがあります。
ただし、こんなときは病院へ!
健康診断で「LDLコレステロール値が高い」と毎回指摘されている場合は、早めに医療機関を受診してください。
心筋梗塞・脳卒中など、重い病気を発症する恐れがあります。
高LDLコレステロール血症は自覚症状が出現しない場合が多く、放置して状態が悪化するケースもよくあるため、注意が必要です。
知らず知らずのうちに「動脈硬化」に…
体内のコレステロールを運ぶ役割を担っている「LDLコレステロール」が血中に溜まり過ぎると、血管内へと侵入します。
その結果、血管に小さいコブ状のものが発生して、「動脈硬化」を発症します。
血管の詰まりが発生しやすい状態なので、循環器疾患の発症リスクが上昇します。
基準値をどのくらい超えると危険なの?
140mg/dL以上は危険な状態になっていると考えられます。
20代女性のLDLコレステロールの基準値は60~119mg/dLです。
病院は何科?
LDLコレステロール値が高い場合は、内科や循環器内科を受診しましょう。
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LDLコレステロールを下げる対策は?
LDLコレステロールを下げるためには、
- 飽和脂肪酸の摂取を控える
- 食物繊維を多く摂取する
- 多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)を摂取する
など、食事内容の見直し・改善が重要になります。
対策① 飽和脂肪酸の摂取を控える
飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取を控えてください。
食事内容の見直し・改善を行い、意識的に飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取を控えるとLDLコレステロール値の低下が期待できます。
脂肪酸の一つである飽和脂肪酸を多く含んでいる食品を摂取すると、肝臓でのコレステロールの合成が促されLDLコレステロール値が上昇します。
<NG>飽和脂肪酸を多く含む食品
- ラード・牛脂・バター・マーガリン
- 鶏皮
- 魚卵・鶏卵
- ベーコン
- ココナッツオイル・パーム油
- フライ製品
- 洋菓子
対策② 食物繊維を多く摂取する
食物繊維を多く含む食品を1日25g以上食べましょう。
食物繊維は、コレステロールの吸収を抑制する働きをもっています。
食物繊維を多く含む食品
- キノコ類(しいたけ・しめじ・えのきなど)
- 果物(バナナ・干し柿・りんごなど)
- 野菜(かぼちゃ・ごぼう・とうもろこし・切り干し大根・ブロッコリー・モロヘイヤなど)
- 海藻類(ひじき・わかめなど)
- イモ類(さつまいも・こんにゃくなど)
- 大豆類(大豆・おから・納豆など)
- 雑穀米
- 玄米
対策③ 多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)を摂取する
多価不飽和脂肪酸を多く含む食品を食べましょう。
多価不飽和脂肪酸の中でも、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)という成分にはLDLコレステロールを減少させる効果があります。
その他に、中性脂肪を減少させたり、血液をサラサラにしたりします。
多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)を多く含む食品
- 青魚(サンマ・サバ・イワシなど)
- マグロ(トロ)
- 鮭
多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)の目安量
成人男性(18-49歳)2.0g
成人男性(50-74歳)2.2g
成人女性(18-49歳)1.6g
成人女性(50-74歳)1.9g
きちんと対策を!そのまま悪化すると…
LDLコレステロール値が高い状態がずっと続くと、血管が硬くなって動脈硬化を発症します。
血管にダメージが加わっていくため、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気を発症するリスクも高まります。
コレステロール値を指摘されたときは、普段の食生活を見直すようにしましょう。
また、健康診断で毎回指摘されている場合には、医療機関で適切な治療を受けることをおすすめします。
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2021-09-01
「中性脂肪が急上昇したけど大丈夫?」
「もしかして病気?」
中性脂肪が急上昇する原因と、中性脂肪の値を下げるためにできることをお医者さんに伺いました。
脂質異常症や甲状腺機能低下症といった病気も考えられるため、注意が必要です。
中性脂肪が急上昇した…これはなぜ?
中性脂肪が急上昇した場合、
検査前日に脂質の多い食事を摂った
検査前日にアルコールを過剰に摂取した
急激に太った
病気を発症している
といった原因が考えられます。
原因① 検査前日に脂質の多い食事を摂った
脂質の多い食事はエネルギー量が多く、消費しきれずに体に脂肪として蓄積されやすくなります。
中性脂肪は食事の影響を受けやすく、食後4~6時間が最も高くなります。
そのため、検査の前日に脂質の多い食事を摂った場合、数値に影響することがあります。
脂質の多い食べ物
バターや生クリームなどの乳製品
牛肉や豚肉などの動物性脂肪
お菓子やジュースなどの糖質を多く含む食品
原因② 検査前日にアルコールを過剰に摂取した
アルコールの摂取量が多いと、アルコールの分解が優先的に行われます。
その際、分解が追い付かなくなったものが、脂肪として肝臓に蓄積されていると、中性脂肪の数値が高くなります。
原因③ 急激に太った
食べ過ぎなどで急激に太った場合、余分な糖質や脂質は中性脂肪として蓄積されます。
そのため、急激に太ると同時に中性脂肪も上昇することがあります。
原因④ 病気を発症している
脂質異常症
甲状腺機能低下症(橋本病)
などの病気を発症していると、中性脂肪の急上昇することがあります。
特に、慢性的なむくみや疲労感といった不調もあらわれている場合は、注意が必要です。
脂質異常症
血液中の脂質の値が、基準値から外れている状態を指します。
自覚症状はほぼなく、検査などで判明することが多いです。
動脈硬化の原因となるため、放置すると心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクがあります。
甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺のホルモンの分泌量が、なんらかの原因で低下してしまう病気です。
新陳代謝が悪くなるため、太りやすくなったり、毛が抜けたりします。
女性は更年期が原因かも
女性ホルモンの「エストロゲン」には、体内のコレステロールを調節する機能があります。
更年期になると、このエストロゲンの分泌が減少するため、脂肪がつきやすくなってしまうのです。
更年期とは、閉経前の5年、閉経後の5年を合わせた10年間を指します。
時期には個人差がありますが、日本人の平均では45~55歳に更年期を迎えることが多いです。
20~30代の頃は、食生活が多少乱れていても太らなかったかもしれません。
更年期になると、加齢によって代謝能力も低下するため、肥満対策に気をつける必要があります。
こんな症状は更年期かも
めまい、頭痛
関節痛
体のほてり、発汗
気分の落ち込み、イライラ
中性脂肪を下げるには?
中性脂肪を下げるには、
食生活を改善する
食物繊維をとる
30分以上の運動する
といった対策をしましょう。
その① 食生活を改善する
自分にとっての適正な食事量を把握し、その量を食べましょう。
エネルギー量だけでなく、炭水化物や脂質が多い食事に偏らないよう、たんぱく質・ビタミン・ミネラルを摂るよう栄養バランスを意識してください。
食べ過ぎると余分なエネルギーが脂肪として蓄積され、中性脂肪が高くなります。
栄養バランスが良い、適正な量の食事を摂りましょう。
その② 食物繊維をとる
根菜類、キノコ類、海藻、玄米、雑穀など、食物繊維が含まれたものを積極的に食べましょう。
食物繊維には中性脂肪を下げる働きがあります。
噛みごたえがあるものが多いので、自然とよく噛んでゆっくりと食べるようになります。
よく噛んで食べることで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐことにもつながります。
その③ 30分以上の有酸素運動する
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を1日30~60分程度行いましょう。
運動が難しい場合は、一駅多く歩いたり、遠回りをしたり、日常生活の中で活動量が増えるよう意識してください。
運動不足は中性脂肪を高める原因になるので、気をつけましょう。
病院に行った方がいいの?
中性脂肪の急上昇には病気も考えられます。
念のため医療機関を受診して、体の状態を確認してもらうと良いでしょう。
脂質異常症は自覚症状が出にくく、放置されやすい病気です。
特に体のむくみや疲労感がある場合は、病気の進行が疑われるため要注意です。
ただし、検査前日の「脂っこい食事」や「過度の飲酒」に心当たりがある場合は、過剰に心配いらないケースが多いです
何科で受診すべき?
中性脂肪が急上昇したときは、内科や内分泌内科を受診しましょう。
放置すると…脳梗塞に引き起こすことも
中性脂肪が高くなると、血管が細くなり、脳梗塞・心筋梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症などの病気を引き起こします。
健康を大きく損なう恐れがあるので、中性脂肪が高い場合は、再検査や治療を受けましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
e-ヘルスネット
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2022-03-31
「朝食を食べないほうが調子いいことがある。」
「朝食を食べると調子が悪くなる…」
「朝食を抜く」ことを続けてもよいのか、栄養士さんに聞いてみました。
毎日朝食を抜くデメリットや、調子が悪くなる悪循環を断ち切る方法も解説します。
なぜ?「朝食を食べないほうが調子いい」
「朝食を食べないほうが調子がいい」と感じている人は、胃が疲れている可能性が高いです。
朝に食べると調子が悪くなる場合、胃酸逆流が起きやすくなっていると考えられます。
特に、
夜遅く食事をとっている
夜ごはんを食べすぎる
などの人は、朝に胃の調子が悪くなりやすいです。
「毎日朝食を抜いている」と…どうなる?
朝食を抜くデメリット
集中力・記憶力が低下する
体が冷える
体がだるくなる
イライラしやすくなる
便秘になりやすくなる
太りやすくなる
糖尿病の発症リスクが上昇する
朝食は「体内時計のリセット役」を果たしているため、食べないと自律神経が乱れやすくなります。
だるさ・イライラなども感じやすく、日中のパフォーマンスが低下することもあります。
「糖尿病の発症リスクが上昇する」のはなぜ?
「朝食の分を昼食で補おう」と空腹状態で一気に食べると、血糖値が急激に上昇します。
この状態はインスリンを分泌する「膵臓」に負担を与えてしまうため、繰り返すことで糖尿病の発症リスクが高くなっていきます。
「朝食を食べると調子が悪くなる」悪循環を断ち切るためには?
朝食は、糖質だけでなくタンパク質・脂質・食物繊維も含めてバランスよく食べましょう。
「食パン・菓子パン・ごはんのみ」のような朝食は、調子が悪くなりやすいため避けてください。
栄養素
食材例
糖質
パン/ごはん
タンパク質
乳製品/卵/肉類/魚類
食物繊維
野菜サラダ
特にタンパク質をとると代謝が上がり、調子が整いやすくなります。
朝が不調な人のための「おすすめメニュー」
洋食の場合
おすすめメニュー
ツナサンド
野菜スープ
ヨーグルト
バナナ
「ツナサンド」や「ヨーグルト」からタンパク質を補給できます。
「野菜スープ」や「バナナ」は、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富です。
和食の場合
おすすめメニュー
焼き魚
野菜や海藻の味噌汁(減塩)
青菜のおひたし
玄米ごはん(おにぎりにしてもOK)
「魚」から主にタンパク質、「野菜や海藻の味噌汁」や「青菜のおひたし」からビタミン・ミネラル・食物繊維を補給できます。
また、ごはんは「玄米」にすることで、血糖値の急上昇を抑えられます。
まずは、1週間朝食を食べてみよう
最初の数日はリズムが作りづらいかもしれませんが、朝食を食べる習慣がついて体が朝型になっていくと、調子も上がりやすくなります。
まずは焦らず1週間、できることから始めてみましょう!
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。