フラッシュバックで泣いてしまうことがあるけど、これって大丈夫…?
フラッシュバックで泣く原因について、お医者さんに聞いてみました。
PTSDのセルフチェックリストも紹介するので、心当たりがないか確認してみましょう。
監修者
平成かぐらクリニック
院長、メンタルアシストプログラム総責任者
伊藤 直
経歴
一般社団法人 健康職場推進機構理事長
医療法人社団 平成医会 理事
専門領域:精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科
著書:精神科医が教える 3秒で部下に好かれる方法
なぜ?フラッシュバックで泣いてしまう…
つらいできごとを突然思い出して、泣いてしまうときがあります…。これはなぜなんでしょうか?
フラッシュバックで「泣いてしまう」場合、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」を発症している疑いがあります。
PTSDの症状として、「過去のつらい経験を思い出して不安な気持ちになる」ことがあります。
「防衛本能」が強く働き、恐怖や不安が増長して涙が出ているのかもしれません。
まずは深呼吸をして、気持ちを落ち着かせましょう。
「窓の外に鳥がいる」など、目に見えているものを声に出してみることも有効です。
「PTSD」とは
PTSDとは、強いショックを受けたときの「心の傷」が癒えないまま、後遺症となる病気です。
トラウマのきっかけとなる体験を思い出すことで、また同じ恐怖やショックを受けているように錯覚し、「うつ状態」「不眠」などの心身の不調を起こします。
PTSDを発症する原因の例
- 震災で被害にあった
- 事件事故に巻き込まれた
- 家庭環境が劣悪で、家庭内暴力やネグレクトを受けていた
- いじめを受けていた
- 対人関係でつらい体験をした
PTSDかも?セルフチェックで診断
- つらい記憶を呼び起こす場面・状況を避ける
- 集中できない
- 警戒心が強い
- 現実感がない
- 昔の記憶で抜けている部分がある
- 不安な気持ちが続いている
- 数ヶ月経っても、つらい経験による恐怖心が続く
上記のうち、4つ以上当てはまる人はPTSDの疑いがあると考えられます。
特に、家庭内暴力・ネグレクト・いじめを受けていた過去がある人は、PTSDを発症しやすい傾向があります。
こんなときは、すぐに病院へ!
- 「フラッシュバック」や「つらい気持ち」が1ヶ月以上続いている
- 不眠症状などで、日常生活に支障をきたしている
といった場合は、「精神科」または「心療内科」で相談しましょう。
不眠は体の不調を引き起こす原因となります。
また、病院に行かずに我慢してしまうと、不安から逃避するために飲酒量が増えるなどして、体を壊す恐れもあります。
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精神科・心療内科「初診の流れ」
- 電話やインターネットで予約
- 「トラウマとなっている体験」や「症状」に関する問診
- 症状にあった薬の処方や治療プランの説明
「精神科」「心療内科」では、上記の流れで診察・治療が進みます。
精神疾患は生活環境や遺伝も影響しているため、家族歴・生育歴を尋ねられる場合があります。
処方薬を選ぶために、初診時に採血を行うこともあります。
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2022-07-04
初めての精神科でちょっと怖い…。
初診では何を話すの?
「精神科の初診で話す内容」をお医者さんに聞きました。
医師に聞かれることや答え方の例、メモしておくとよいことについても解説します。
精神科で受診したことのある方の体験談も紹介するので、初診の雰囲気を知りたい方は必見です。
精神科の初診「何を話すの?」
今、ツライと感じている症状
いつから症状があるのか
心当たりのある「ツライ」原因(※)
現在服用している薬・服用していた薬
既往歴
飲酒・喫煙をしているか
精神科の初診では、上記の点について聞かれることが多いです。
※心当たりのある原因は、話せる範囲で構いません。詮索されたくないときは、「今は話したくない」旨を素直に伝えてください。
【体験談】初診では、こんなことを相談しました!
気分の落ち込みが激しくてつらい、と相談しました。
医師からは、「夜に睡眠はとれているか」「食事をとることはできているか」「どのような出来事があったか」を聞かれました。
(30代女性)
仕事での指導係の期待や厳しさに耐えきれなくなり、体にも不調が出ていることを相談しました。(30代女性)
精神科というと重く捉えてしまうかと思いますが、行ってみると自分だけ悩んでいるのではないと実感しました。
軽くお話しするだけでも楽になれると思います。(30代女性)
精神科と聞くとハードルが高いですが、行ってみると普通の場所ですし、内科の待合室と何ら変わりありません。
かかりつけ医の先生に相談して、紹介状を書いてもらうのも手です。(40代男性)
「うまく話せるか」が不安…
うまく話そうと気負いすぎなくて大丈夫です。
焦らずにリラックスして、抱えている不安や困っている症状について、お話できる範囲で医師に伝えるようにしてください。
多くの精神科では、患者さんの現状や症状を正確に知るため、初診の診療時間を長くとってくれるケースが多いです。
初診での受け答えの例
医師に聞かれること
答え方の例
今困っていることはありますか?
最近眠れないです
常に不安な気持ちがあります
動悸がします。胸が痛くなることもあります
最近、何もかも楽しいと感じなくなりました
食欲がわきません
人が自分の悪口を言っているように聞こえることがあります
人につけられている・監視されているように感じます
集中力が続かず、仕事ができません
気持ちが落ち着かないので、何も手につきません
自分の全てが悪く感じます
気分が落ち込むと、なかなか戻りません
朝は起きられないのに、夕方になると楽になって動けます。でもまた次の日はつらくて起きられません
症状はいつから出ていますか?
○週間前からです
飲んでいる薬はありますか?
○○を飲んでいます
生活での悩みはありますか?
人間関係で悩んでいます
家族関係に悩みがあります
嫌いな人が近くにいます
子どものことで悩んでいます
夫(妻)とわかりあえません
仕事が続きません
今までに何か病気を患ったことはありますか?
○年前に~~を患い、○○科に通院していました
飲酒や喫煙はしていますか?
タバコは吸っていません。お酒は1週間に1回程度の頻度で飲みます。飲む量は、缶チューハイ1本程度です
今抱えている精神的・身体的症状の中で、「最もつらく、苦しいと感じている症状」を医師に伝えるようにしてください。
患者さんが最も困っている症状に対する治療を丁寧に行うことで、医師との信頼関係が築けると考えられます。
また、飲み合わせに注意が必要な薬や併用してはいけない薬があるため、服用している薬がある場合は、診察時に伝えましょう。
メモを用意しておくのもおすすめ
医師に伝えたいことをノートに書いておくのもおすすめです。
スムーズに話が進むと考えられます。
メモに書いておくとよいこと
困っている症状
症状が出るタイミング
症状が出てきてから現在に至るまでの経過(症状の変化)
今、悩んでいること(仕事の内容・人間関係等)
泣いてしまったらどうしよう…
初診で上手にお話できず、泣いてしまってもかまいません。
精神科の医師・スタッフは、患者さんの気持ちをしっかりと受け止められるよう、心の準備をしています。
ご自分の言葉で、伝えられる範囲の内容をお話していただくことが、症状改善のために重要です。
精神科での初診の流れ
予約
問診表に記入
診察前の予診(予診がない場合もある)
医師による診察・カウンセリング
各種検査(尿検査・血液検査・血圧測定等)
薬の処方等、症状に合わせた治療開始
会計、経過観察のための次回受診の予約
一般的に、精神科での初診は上記の流れになることが多いです。
初診にかかる所要時間は?
初診の所要時間は、30~60分程度必要になるケースが多いです。
患者さんの状態や症状を正確に把握するために、初診は非常に重要です。
そのため、初診の時間を長くとるケースが多いと考えられます。
初診費用はいくらかかる?
精神科の初診費用の目安は、3,000~5,000円程度(3割負担の場合)のことが多いです。
薬の処方がある場合、さらに1,000円程度必要になることもあります。
上記はあくまでも目安です。
受診する医療機関や実施される検査内容等により、費用は異なります。
保険は適用される?
精神科の初診は、保険が適用されるケースが多いです。
うつ病等の精神疾患の場合は、病状によって継続した通院が必要となるケースがあります。
その場合、医療費が軽減される「自立支援医療制度」が適用になることがあり、3割負担が1割負担に軽減されます。
※世帯所得に応じて1ヶ月あたりの上限が設けられています
診断書を発行してもらう場合の費用は?
診断書を発行してもらう場合の費用は、2,000~6,000円程度のことが多いです。
障害年金申請等、内容が細かい場合は、10,000円ほど必要になるケースもあります。
診断書の発行は保険適用対象外のため、自費扱いとなります。
医療機関や診断書の内容により、費用は異なります。
初診で診断書は受け取れる?
初診で診断書を発行してもらえることもありますが、数回の通院が必要になる場合もあります。
受診する医療機関や患者さんの病状(症状)によって変わってきます。
精神疾患は、毎日状態が同じということがなく、日々変わるケースが多いです。
そのため、確定診断するまでには、患者さんの生活環境・性格・病状等をしっかり把握する必要があります。
まずは“はじめの一歩”を踏み出そう
現状のつらい状況を打破するためには、“はじめの一歩”を踏み出す必要があります。
ぜひ、風邪をひいた際に受診する「かかりつけ医」のような感覚で、リラックスして受診してください。
ためらってしまう方も多いと思いますが、少しでも受診を検討されているのであれば、「心が助けを求めている」状態だと考えられます。
心の病気を専門に扱う精神科で受診して、治療に専念できる環境を整えることにより、つらい症状の改善が期待できます。
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▼参考
元住吉こころみクリニック 精神科・心療内科の初診を充実させるには?
合わせて読みたい
2020-05-21
初めて心療内科に行くけど…実際には何を話すの?
心療内科で初診を受ける際の流れについて、お医者さんに聞きました。
当日準備していくことをはじめ、初診でかかる料金、診断書はもらえるのかどうかも解説します。
心療内科の初診の流れ
初めてで緊張する方もいらっしゃるかと思いますが、基本は一般の内科などと変わりません。
問診→診察という通常の病院受診と同じ流れで行われます。
<治療開始までの流れ(一例)>
電話やウェブで予約
来院、問診表を書く
診察を受ける
必要であれば検査
治療の開始
心療内科の予約のしかた
電話予約が一般的かと思われますが、最近ではウェブ予約ができるところも増えてきています。
時間がなくて電話ができない、電話が苦手という方でも予約することができます。初診は日時が決まっているところが多いため、調べてから行くのがよいでしょう。
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受診前に準備しておいたほうがいいことはある?
次のことが伝えられるように準備しておくと良いでしょう。
今、何に困っているのか
受診に至った経緯
いつから困っているのか
どのようなときに、どのような症状がでるか
思い当たるストレス要因 等
初診で聞かれること
(症状や状態にもよりますが)ストレス要因に関連するような質問をされる可能性があります。
例えば、家族との関係や本人の職業・仕事内容、交友関係や休日の過ごし方、趣味などの話です。あくまで関連のある事柄に対してなので、あまり言いたくないことは言わなくても大丈夫です。
いずれにしても専門家がお話を聞くので、安心して相談してみてください。秘密は守られます。
初診で持っていくもの
心療内科の初診には、次のものを持参すると良いでしょう。
保険証
お薬手帳(あれば)
現状「困っていること」や「医師に相談したいこと」を受診の経緯をスムーズに話せるようにメモを持っていくのもよいでしょう。
初診の費用目安
自己負担3割の方で、初診時は約2,500円~3,000円、2回目以降は1,500円程度です。
薬を処方された場合、診察とは別に薬代が5000円前後かかります。
検査を行った場合には別途1,000~3,000円かかりますが、検査の種類にもよります。
こんなときは、悩まず心療内科に相談してください
「ストレスで胃が痛い」「悩み事があり夜眠れず、不眠気味だ」「ストレスが多く髪が抜ける」「イライラが収まらない」などの症状がある場合は、早めに専門医に相談してみましょう。
心配事や悩み事、ストレスがあり、気持ちや情緒が不安定で「いつもと違う」と感じられているのであれば、受診することをお勧めします。
辛い、苦しい、不安な状態を長く我慢してしまうと、症状がより重いものになる可能性もあります。
早期受診のメリット
早期に治療を始めることで、治療期間が短く済む、正常な状態に戻るのも早くなる、通院の回数や医療費も安く済むというメリットがあります。
ストレスが要因の病気は特に、放置し続けることで症状が悪化してしまうケースが多く、うつ病もそのうちの一つです。
何よりも、軽い症状のうちに治療を受けた方が心身の負担もあまりかからずに済みます。
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はじめての心療内科「よくある質問」
「診断書はもらえるの?」「心療内科に行ってはいけないと言われるのはなぜ?」
心療内科に関するよくある質問にお答えします。
質問1.診断書が欲しいのですが…
休職等の申請に診断書が必要な場合、すぐにもらえるものなのでしょうか?
診断書は本来診断がついて初めて発行されるものです。しかし診断書は医師に申し出れば、比較的速やかに発行されるところも多いです。
休職や職場に提出が必要な書類として、すぐに必要な場面が多いためです。病院によっては別に窓口が設けられている場合もあるため、受診の際に確認すると良いでしょう。
質問2.よく「心療内科に行ってはいけない」と言われるけど…
「行ってはいけない」「行ったら最後」と言われているのは、なぜなのでしょうか?
「行ったら最後」ということはありません。
そう言われるのは、精神科や心療内科のお薬を服用すると、患者さん自身の判断で勝手にやめることができず、飲み続けなければならないことが要因となっている可能性があります。
もしくは、薬の副作用が強くて日常生活により支障が出るなどという想像での発言かもしれません。
また、精神科・心療内科に行って診断を受けた時に、自分が精神病患者なのだと認めてしまうのが怖いと思ったり、周りの目を不安に感じる方もいらっしゃいます。
精神科や心療内科は、重い精神疾患を持つ人が行く場所というネガティブなイメージが少なからずあるというのが背景にあるようです。
つらい時は我慢せずに病院に行った方が良いのでしょうか?
ネット上でも多くの情報が錯綜していますが、自分の体の声を聞き、本当に辛い、苦しいと感じていて、日常生活に支障が出ているのであれば、相談だけでもいいので受診してみてください。
実際に、精神的な症状や心身症が現れているにも関わらず、受診を躊躇している方が多くいらっしゃいます。
しかし、自己判断で市販の漢方薬などの薬を飲み続けていたとしても、根本的な治療にはなりません。その点、専門の医師に相談することで、症状の要因をふまえた治療を受けることができます。
一人で抱え込まずにまずは相談してみましょう。
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参考URL
・心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやすく解説!/ひだまりこころクリニック栄院
https://hidamarikokoro.jp/sakae/blog/心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやす/
・精神科・心療内科の診察料金 | こころみ医学
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/other/psychiatry/cost/
・診察にはどれくらいの費用がかかりますか? | 心療内科・精神科
https://namba-minato.com/faq/faq09/
・心療内科に行くべきかどうか迷う。受診すべき兆候とは?/神楽坂こころのクリニック
https://www.kagurazaka-mc.com/colum/psychosomatic-medicine/
PTSDの治療方法は?
薬物療法では、「睡眠薬」や「抗不安薬」が処方されます。
認知行動療法では、トラウマをあえて思い出して「危険ではない」と感じさせる治療(持続エクスポージャー療法)を行う場合があります。
気構えずに、病院で相談してみよう
精神科や心療内科は、「なんだか行きづらい…」という印象をお持ちの人も多いでしょう。
しかし、つらい気持ちを抱えたまま生活するのは苦しいものです。
精神科に勤めている医師は精神科疾患のプロであり、つらい症状を和らげる選択肢を提供してくれます。
どうか安心して受診なさってください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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