「頭をぶつけてから、頭痛が続く…。」
「この頭痛、大丈夫?病院に行くべき?」
頭部打撲で一週間“頭痛”が続く場合に考えられる原因を、お医者さんに聞きました。
病院を受診する目安や要注意な症状について詳しく解説します。
放っておくと命に関わることもあるので、心当たりのある症状がないかチェックしましょう。
監修者
経歴
平成14年福井医科大学(現福井大学医学部)卒業
岐阜大学高齢科神経内科入局後松波総合病院にて内科研修、
岐阜大学高次救命救急センター出向。
美濃市立美濃病院内科。
東京さくら病院及び同認知症疾患センター勤務の後
令和元年7月かつしかキュアクリニック開業。
なぜ?頭部打撲のあと「一週間も頭痛続く」
頭部を打撲してから、一週間頭痛が続いている場合、
- 「たんこぶ」ができている
- 頭の内部で出血が起こっている
といった原因が考えられます。
「たんこぶ」は、皮膚の下で出血が起こっている状態で、基本的に心配いらない症状です。
たんこぶによる腫れ・痛みは、1~2週間程度で症状が改善していくケースが多いと考えられています。
一方、「頭の内部の出血」は、命に関わるケースもあるので要注意です。
内部で出血が起こっている場合、通常は頭を打ってから24~72時間で、体に異常が見られることが多いです。
ただし、ずっと遅れてから異常が出てくるケースもあるので、油断は禁物です。
「危険な状態」の例
▼急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)
脳を包んでいる膜である「硬膜」と「くも膜」の間で出血が起こり、血が溜まっている状態。
血の塊が脳の広範囲を圧迫することで、脳のむくみや血流障害を引き起こす。
▼慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)
頭部打撲によって、頭の内部で少しずつ出血が起こっている状態。
数ヶ月ほどかけて血の塊が大きくなっていき、徐々に「頭痛」などの症状が出てくる。
「健忘」の症状が出てくることがあり、高齢者の場合は症状を見逃してしまうケースもある。
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なぜか頭痛が一週間続いている…。
目の奥やこめかみも痛むけど、これってストレス?
一週間頭痛が続いている時の原因を、お医者さんに聞いてみました。
目の奥やこめかみも痛む場合に、要注意な病気についても紹介します。
一週間も頭痛が続く…原因はストレス?
頭痛と吐き気がある
他に目立った症状がみられない
目の奥・こめかみ・後頭部が痛い
上記のような頭痛が一週間続く場合は、ストレスが原因となっている可能性があります。
ストレスによって自律神経の乱れや脳の機能低下が生じると、緊張型頭痛や片頭痛、群発頭痛などの「一次性頭痛」があらわれることがあります。
一次性頭痛は脳に異常があるわけではなく、命に関わることもないため、「怖くない頭痛」とされています。
ただし…
突然の激しい頭痛
今まで感じたことのない頭痛を自覚している
嘔気や嘔吐症状を伴い意識レベルが悪化している
言語障害
半身麻痺症状が出現している
という場合には生命に危険を及ぼす疾患が関係しているおそれがあります。
早急に脳神経内科で適切な検査を受けるようにしてください。
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ストレスによる頭痛① 緊張型頭痛(締め付けられる痛み)
緊張型頭痛とは、首や肩の筋肉が緊張して凝り固まることにより生じる頭痛です。
頭が締め付けられるような痛みを感じます。
緊張型頭痛になりやすい要因
長時間のデスクワーク
睡眠中の姿勢の悪さ
枕の高さが合っていない
慢性的な首のこりや痛み
緊張型頭痛のセルフケア方法は?
普段から首周りの筋肉を強く緊張させない、あるいはなるべく同じ姿勢を続けたりしないように意識しましょう。
ストレスによる頭痛② 片頭痛(こめかみのズキズキ痛)
片頭痛とは、目の奥からこめかみにかけて、発作的に生じる頭痛です。ズキズキと脈打つような痛みを感じます。
片頭痛は起床時にあらわれることが多いです。就寝中は穏やかだった血流が、起床時に勢いよく巡ることにより、痛みが生じると考えられます。
血流の変動が大きくなるため、睡眠時間が長ければ長いほど、起床時に痛みが起こりやすいです。
片頭痛になりやすい要因
水分不足
寝すぎ・寝不足などの生活リズムの乱れ
飲酒習慣
月経などの女性ホルモンの影響
気候や気圧の変化を
片頭痛のセルフケア方法
片頭痛がある場合は、無理せず休息をとりましょう。
安静にして、痛む部位をアイスパックや氷枕で冷やすと、改善が期待できます。
また、趣味の時間や運動習慣を取り入れて、なるべくストレス解消を図りましょう。
一般的に、片頭痛が自然治癒するには、おおむね1週間から2週間程度の期間を要します。
ストレスによる頭痛③ 群発頭痛(目の奥や後頭部の頭痛)
群発頭痛は、頭の片側や後頭部、特に目の奥に激痛が起こる症状です。
群発期と呼ばれる特定の1~2か月間の間、毎日ほぼ同じ時間に起こります。
主に男性に罹患率が高いことが特徴的です。
群発頭痛になりやすい要因
原因は明らかにされていませんが、アルコールの摂取や喫煙習慣がある人は、発症しやすいと考えられています。
群発頭痛のセルフケア方法
群発頭痛の原因は明確に判明していないため、確立された予防法はありません。
ただし、アルコールや喫煙によって頭痛が起きるとする見解もあるため、少なくとも禁酒や禁煙を徹底してください。
また、頭痛が起きる特定の期間が過ぎても頭痛を繰り返す場合や、日常生活に支障が出る場合は、専門の医療機関を受診しましょう。一般的に、数週間前後で改善が期待できるので、焦らずに治療を受けましょう。
頭痛で病院に行く目安
セルフケアを行った上で、一週間以上経っても症状が改善しない、あるいは日常生活に支障が出ている場合には病院に行きましょう。
脳神経内科や脳神経外科などで相談しましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』HP:頭痛
この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。
病院に行った方がいいの?
頭部を打った場合、基本的に注意が必要です。
頭痛が続いていて心配なのであれば、一度病院で診てもらうことをおすすめします。
なお、明らかに「たんこぶ」によるものと判断できるのであれば、一旦様子を見ることもできます。
下の表を参考に、受診を検討してみるのもよいでしょう。
一旦様子を見てもよい
|
受診が必要
|
|
- 頭痛が急に出てきた
- 痛みが強くなっている
- 頭を振ると痛みが強くなる
- 意識がぼんやりとしてきた
- 他にも不調が出てきた
|
※上記はあくまでも目安です。
こんな症状は、早急に病院へ!
- 経験したことがないほどの強い頭痛が続く
- めまい・ふらつき
- 吐き気・嘔吐
- 耳鳴り
- 物が二重に見える
- 左右の瞳の大きさが異なる
- 手足の痺れ・麻痺
- けいれん・ひきつけ
- 歩きづらさを感じる
- 物忘れが頻繁になった
上記の症状がある場合は、頭の中で出血している可能性があります。
放置していると、命に関わる恐れがあるので、早急に医療機関を受診しましょう。
頭の内部での出血は、精神面での不調・アルツハイマー病といった後遺症が出るリスクもあります。
これらのリスクを防ぐためにも、できるだけ早めに治療を受けることが大切です。
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病院は何科へ行けばいい?
頭部打撲で頭痛が一週間以上続いている場合は、「脳神経外科」での受診をおすすめします。
脳神経外科では、頭部に異常がないか調べるために「CT検査」や「MRI検査」を行います。
頭蓋内出血などの異常が見られた場合は、手術も検討されます。
医師に伝えるポイント
- 頭部を打撲した日時・場所・シチュエーション(どのように頭を打ったのか)
- 現れている症状
- 症状が現れた日時
- 打撲した場所
- 痛みの変化
受診の際は上記の点を医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
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絶対NG!「今、やってはいけないこと」
- 運動・入浴・飲酒
- 車や自転車等の乗り物の運転
- 自己判断での薬の使用(湿布・鎮静剤など)
上記は症状を悪化させたり、危険なサインを見逃したりすることにつながります。
体が温まると頭痛が悪化する可能性があるため、運動・入浴・飲酒は控えましょう。
車や自転車は、運転中に意識を失う危険性があります。
病院で診てもらうまでは控えてください。
また、自己判断で「湿布」や「鎮痛剤」を使用するのもよくありません。
痛みをなくしてしまうことで、異常が生じているサインに気づかなくなるリスクがあります。
頭部の打撲による頭痛は、注意が必要な症状です。
一度「脳神経外科」で受診して、問題がないか診てもらいましょう。
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頭を強く打った数日後に頭痛が…これはなぜ?
お医者さんに「頭部外傷」によって生じる頭痛のリスクを聞きました。頭痛に伴って現れる症状や、病院に行く目安も解説します。
なぜ?頭を打った数日後の頭痛
頭を打ったことで、脳に損傷が起こります。
脳の損傷が悪化して、数日後に頭痛が起こることがあります。
急性硬膜下血腫
急性硬膜外血腫
脳震盪
という状態の可能性もあります。
頭部外傷の「受診の目安」
頭を打った数日後に頭痛が生じている場合、脳が損傷している可能性があります。 放っておくと命に関わることもあるので、必ず病院に行きましょう。
特に
・激しい頭痛がある
・痛みが増していく
というときは、すみやかに病院を受診してください。
頭痛以外にも、次のような症状があるときは、病院へ行きましょう。
歩行が安定しない
しびれや痙攣(けいれん)が起こる
うまく話せなくなる
やる気や集中力がなくなる
知能が低下する
めまいや耳鳴りがする
においや味を感じなくなる
吐いてしまう
大小便を漏らしてしまう
ものが二重に見える
一時的に錯乱する
光を見たときに過剰に反応する
意識が遠くなる、異常な行動・言動をする
記憶が抜け落ちてしまう
受診するのは何科?
頭を打ったあとに頭痛があるときは、脳神経外科を受診しましょう。
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今、この行動は絶対避けて!
すぐ病院に行けない場合は、病院へ行くまでの間、次のような行動は避けてください。
テレビやパソコン、スマホなどを使用する
一人で過ごす
お酒を飲む
激しい運動やトレーニングをする
医師の指示なしに薬を飲む
車を運転する
以上の行動によって、命にかかわるような脳のむくみが生じたり、頭痛などの症状が長引いたり、認知症やパーキンソン病のような症状が起こったりする可能性があります。
薬に関しては、特に睡眠薬やアスピリンなどの抗炎症薬、鎮痛薬は止めてください。
薬を控える理由は、薬の作用で眠っているのか、意識を失っているのかの判断が難しくなったり、頭痛などの重要な症状を見逃したりする恐れがあるためです。
また、頭を打ったあとに一人で過ごすと、容体が急変したときに対応が遅れ、最悪の場合には命を落とすこともあります。家族などがそばについて、様子を見てもらうとよいでしょう。
放置はNG!必ず病院へ
頭を打った数日後に起こる頭痛では、次の病気が考えられます。
1.急性硬膜下血腫
脳の表面で出血が起こると、硬膜と脳の間に血液がたまり、短時間でゼリー状にかたまります。これが脳を圧迫して、症状があらわれます。
脳の損傷が少なく、脳の表面の静脈や動脈から出血した場合は、ゆっくりと症状が進行していきます。
2.急性硬膜外血腫
硬膜の動脈や静脈から出血して、頭蓋骨と硬膜の間に血液がたまり、脳を圧迫するために症状が起こります。
血腫が増えるにつれて、症状が悪化していきます。
3.脳震盪
頭を打った衝撃によって頭蓋骨の中で脳が激しく揺さぶられた結果、脳細胞が一時的に機能停止したり、一部が損傷を受けたりして症状が起こります。
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参考
日医大医会誌 2019; 15(2)頭部外傷の病態と治療
https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/015020071.pdf
MSDマニュアル家庭版 頭部外傷の概要
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/25-外傷と中毒/頭部外傷/頭部外傷の概要
独立行政法人労働者健康安全機構 関東労災病院 頭部外傷(スポーツ外傷、慢性硬膜下血腫)
https://www.kantoh.johas.go.jp/hanasi/tabid/539/Default.aspx