心臓がバクバクするのはストレスのせい?
ストレスが原因で心臓がバクバクすることはあるのか、お医者さんに聞いてみました。
心臓がバクバクするときの対処法や、疑われる病気についても解説します。
監修者
平成かぐらクリニック
院長、メンタルアシストプログラム総責任者
伊藤 直
経歴
一般社団法人 健康職場推進機構理事長
医療法人社団 平成医会 理事
専門領域:精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科
著書:精神科医が教える 3秒で部下に好かれる方法
心臓がバクバクする…原因はストレス?
急に心臓がバクバクすることがあります。
ストレスが原因になることがあると聞きましたが、本当でしょうか?
はい、本当です。
緊張やストレスがあると、「交感神経」が優位になり、心臓がバクバクすることがあります。
交感神経が優位になると、体内に血液を大量に送ろうとするため、心拍数の増加や血圧の上昇を引き起こします。
一時的なストレスであれば「副交感神経」が働き、心臓がバクバクする状態もすぐにおさまります。
しかし、長時間ストレスがかかると、副交感神経が優位にならず、動悸が続いてしまいます。
こんなことに心当たりはないですか?
- 疲労やストレスがたまっている
- 不規則な生活リズムを送っている
- 風邪をひいている
- ケガをしている
という人は、ストレスで心拍数が上がりやすいです。
ストレスによる動悸の4つの対処法
- 深呼吸をする
- 安静にする
- ストレッチをする
- 信頼できる人と話をする
ストレスによる動悸がひどいときは、上記の対処法を実践しましょう。
対処法① 深呼吸をする
- 4秒数えながら、鼻から空気を吸い込む(お腹を膨らませるイメージ)
- 4秒数えながら、口からゆっくりと息を吐き出す
心臓がバクバクしたタイミングや、ストレスを感じた際に、深呼吸を1分間行いましょう。
心臓がバクバクしている状態は、呼吸が浅くなり、どんどん交感神経を優位にしてしまいます。
意識して深くゆっくりと呼吸をすることで、副交感神経が優位になりやすいです。
対処法② 安静にする
心臓がバクバクしたら、ベッドで横になったり、椅子に座ってボーっとしたりして、リラックスしましょう。
動くと心拍数が上がるので、いったん安静にして過ごします。
このときにスマホを見てしまうと、スマホの情報で交感神経が優位になる恐れがあるので、何もせずに目をつむるのがおすすめです。
余裕があれば、ラベンダーのお香を焚いたり、ヒーリング音楽を流したりするとよいでしょう。
対処法③ ストレッチをする
柔軟をメインに、静的ストレッチ(※)を行いましょう。
椅子に座った状態で、深呼吸をしながら体を伸ばすことも効果的です。
(※)反動や弾みをつけずに、筋肉をゆっくり伸ばして維持するストレッチ
ストレッチを行うと、副交感神経が優位になるため、動悸が落ち着きます。
なお、ストレッチは「気持ちよい」と感じる程度の強さで行いましょう。
対処法④ 信頼できる人と話をする
家族や友人など、信頼できる相手と話すことで気分が楽になるため、動悸も落ち着くでしょう。
どうしても話せる相手がいないときは、カウンセラーなどの専門家に相談することもおすすめです。
ストレスの原因について相談することで、根本的な解決につながる場合があります。
ストレス以外の原因は?
ストレス以外で心臓がバクバクする場合、
- 貧血
- 高血圧
- パニック障害
- バセドウ病
- 更年期障害
といった原因が考えられます。
よくある原因① 貧血
めまい・息切れなどの症状を伴う場合は、貧血が疑われます。
貧血によって赤血球に含まれる「ヘモグロビン」が少なくなると、酸素を全身に運ぶために心臓をバクバク動かします。
特に、月経のある女性は貧血を起こしやすいです。
貧血の対処法
鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」の場合は、鉄分を多く含む食事やサプリメントで改善が期待できます。
貧血の症状がつらいときは、安静に過ごして心臓の負担を減らしましょう。
鉄分を多く含む食品
- 肉
- 魚介類
- 卵
- 納豆
- 小松菜
- ほうれん草
- プルーン
など
よくある原因② 高血圧
高血圧が続くと「動脈硬化」を起こし、全身の血管が硬くなっていきます。すると、血管の弾力が弱くなり、強い力を加えて血液を運ぼうとします。
その結果、心臓をたくさん動かすようになり、心臓がバクバクしてしまいます。
高血圧になりやすい人の特徴
- 肥満
- 塩分をとり過ぎている
- 野菜や果物(カリウムなどのミネラル)不足
- お酒をたくさん飲む
- タバコを吸う
- 精神的なストレスが多い
- 自律神経が乱れている
- 運動不足
高血圧の対処法
高血圧を自然に治すことは難しいので、飲み薬による治療と生活習慣の見直しが必要です。
特に、
は、心臓のバクバクを誘発させるので控えましょう。
過剰なストレスもよくありません。普段からこまめにストレスを解消することを心がけてください。
よくある原因③ パニック障害
パニック障害とは、突然何の理由もなく、動悸・発汗・吐き気・めまいなどの発作が起きてしまい、日常生活に支障をきたす病気です。
パニック障害の人は自分の思考や不安によってストレスを受け、交感神経が優位になるため、頻繁に心臓がバクバクする傾向があります。
パニック障害の人の割合は100人に1人と言われており、誰にでも発症するリスクがあります。
パニック障害の対処法
パニック障害が自然治癒する可能性は低いため、薬や精神療法的アプローチを活用して治療をしていくことが必要です。
パニック症状を起こすきっかけが分かっていれば、その原因をなるべく避けて生活することが対策になります。
突然心臓がバクバクしたときは、
などして、気分を落ち着かせることが大切です。
また、パニック障害の人は、一人でいるよりも誰かと過ごす方が落ち着くケースが多いです。
よくある原因④ バセドウ病
バセドウ病とは、代謝をつかさどる「甲状腺ホルモン」や、交感神経系の「カテコールアミン」というホルモンが過剰に分泌されることで、代謝が活発化する病気です。
バセドウ病は交感神経が優位な状態が続くため、さらに交感神経を刺激するような行動をとると、心臓がバクバクしやすくなります。
バセドウ病の原因は不明ですが、なりやすい体質の人が、
- ウイルスに感染する
- 強いストレスを受ける
- 妊娠・出産をする
等のきっかけで発症することがあります。
バセドウ病の対処法
バセドウ病は自然治癒が見込めないので、薬・放射線治療・手術などの治療をする必要があります。
心臓がバクバクしてきたら無理をせず、いったん安静にして休みましょう。
よくある原因⑤ 更年期障害
更年期障害とは、更年期(一般的に45~55歳頃)にあらわれるさまざまな心身の不調です。
女性ホルモンの一つである「エストロゲン」の分泌が低下して発症します。
更年期障害では、自律神経をコントロールする「視床下部」という脳の一部がバランスを崩し、自律神経が乱れることで、心臓がバクバクすることがあります。
更年期障害の対処法
更年期の症状には個人差があり、自然に治まる人もいます。
ただし、日常生活に支障をきたしている場合は、病院で治療を受けることをおすすめします。
病院では、「ホルモン補充療法」を行うことが多いです。
症状や医師の治療方針によって、「向精神薬」や「漢方薬」を使用することもあります。
心臓がバクバクしている時には、無理をせずに休息をとりましょう。
家族などに家事をお願いして、ゆっくりと休憩すると楽になります。
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2022-12-23
更年期障害ってどんな症状が出るの?
なりやすい人の特徴は?
更年期障害について、分かりやすくまとめました。
普段の生活で心がけたいポイントや、病院に行く目安も紹介します。
更年期障害とは
女性は40代頃から、卵巣から分泌される「女性ホルモン」が急激に減少します。
これに伴ってあらわれる、さまざまな心身の不調を総称して、更年期障害と呼びます。
更年期障害は何歳から始まる?
更年期とは、閉経前後の5年ずつを指します。
50歳前後での閉経が平均なので、ほとんどの女性が45~55歳で更年期を迎えます。
更年期障害はいつ終わる?
更年期障害が、いつ終わるかは断言できませんが、長くても10年ほどです。
更年期障害の症状をチェック
のぼせ・顔のほてり(ホットフラッシュ)
息切れ・動悸
頭痛
めまい
不安を感じやすい、イライラしやすい
など
上記の症状は、更年期障害の主な症状の一例です。
更年期の症状は多岐にわたるため、上記以外の症状があらわれる人もいます。
「更年期の症状が出やすい人」の特徴は?
以下、それぞれの項目ごとに2~3個ずつ当てはまる場合、更年期障害を発症しやすいと考えられています。
▼睡眠
24時以降に眠り、10時以降に起床する日が週に3日以上ある
低血圧で、朝起きるのがつらい
夜中に目が覚めやすい
寝る前にスマートフォンやパソコンを使っている
浅い眠りしかとれず、熟睡感がない
▼食事
1日3食はとらない(よく欠食する)
食事の時間がバラバラ
食事量を過度に制限するなど「極端なダイエット」をしている
暴飲暴食している
好き嫌いがあり「偏った食生活」になっている
▼性格
人に比べて神経質
何事にも真面目
完璧主義
仕事などを頑張りすぎてしまう
怒りっぽく、些細なことでもイライラしやすい
▼その他
疲れやストレスが多い生活を送っている
休みが少なく、心身ともにリラックスできる時間がない
体が冷えやすい
運動する習慣がない
産後うつ・月経前症候群が重かった
※これらの症状に当てはまらない場合でも、更年期障害を発症する可能性はあります。
今からできる!更年期の症状を和らげる「5つの対策」
1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
1日7〜8時間程度の質のよい睡眠をとる
週3~4日、有酸素運動を行う
入浴のときは「湯船に浸かる」
こまめにストレスを発散させる
更年期の症状を和らげるには、自律神経を整えておくことが大切です。
上記の点を意識して、生活習慣を見直していきましょう。
こんな症状があったら「婦人科」で相談を!
眠れないことで憂うつな気分が続く
強い不安感がある
食欲がなく、体重が減った
息切れ・動悸がする
めまい・吐き気がする
激しい頭痛がある
上記のような症状が出ている方は、一度「婦人科」に相談してみましょう。
放置していると、症状が悪化して仕事に行けなくなるなど、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
また、更年期症状の影響により不眠が続くと、睡眠に対するこだわりが強くなり、眠れないことへの恐怖心から症状が慢性化する恐れもあります。
どんな検査を受けるの?
更年期症状で病院を受診した場合は、一般的に、
問診
身長・体重・血圧の測定
検査(血液・子宮・卵巣・甲状腺・心臓等の検査)
を行い、患者さんの症状に合わせて治療が選択されます。
※検査内容等は、受診する医療機関によって異なることがあります。
どんな治療法があるの?
治療法としては、エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンを飲み薬・塗り薬・貼り薬で補う「ホルモン補充療法(HRT)」や、「漢方薬」を使った治療法があります。
うつ症状が強く表れているときは、抗うつ薬や抗不安剤などの「向精神薬」が処方されます。
※飲み合わせの関係でホルモン補充療法や他の薬が使いにくい場合もあります。治療中の病気や飲んでいる薬は医師に伝えたうえで、薬を処方してもらいましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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要注意!こんな症状は「心臓の病気」かも
症状
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疑われる病気
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- 軽い動作だけでひどく息切れする
- 胸がしめつけられるように痛くなる
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- 脈がおかしい
- 少し動いただけで息切れする
- しめつけられるような胸痛が5分以上続く
といった症状が見られる場合は、すぐに「循環器内科」を受診しましょう。
手術が必要と判断されれば、医師が「心臓血管外科」へ紹介してくれます。
循環器内科を探す
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2021-05-13
心臓の鼓動を強く感じる…。これは病気なの?
動悸が起こる原因を、お医者さんに聞きました。
命に関わる危険な症状も含め、詳しく解説します。
心臓の鼓動を強く感じる…これ大丈夫?
「一時的にストレスを感じている」など、動悸の原因が明確で、短時間でただけで症状を繰り返さない・心臓などの病歴もない場合は、一旦様子を見てもよいでしょう。
ただし、その後の症状の経過には、十分注意を払ってください。
鼓動を強く感じることが多い場面
緊張を強いられる苦手な場所や場面にいる
極度の緊張や興奮状態
夜中の音がない静かな場所に一人でいる
精神的に過敏な状況で、通常より心臓の鼓動を大きく感じる
睡眠不足
ストレス過多
こんな鼓動は“病気”が原因かも…
胸が詰まるような鼓動
脈が飛ぶような強い鼓動
強い鼓動が数時間に渡る
強い鼓動が頻繁に起こる
息苦しさ・胸痛・めまい・意識障害などの症状を伴う
以上のような強い鼓動が出ている場合、何らかの病気が原因の可能性があります。
こんな諸症状にも要注意!
鼓動に併せて、次のような症状が出ている場合も、早急に医療機関を受診してください。
息苦しい
息切れ
ドキドキするような鼓動
突然強い動悸を感じる
胸痛
冷や汗
安静な状態で脈拍が1分間に100回以上
めまい
ふらつき
呼吸困難
失神などの意識障害
病院は何科?
心臓の鼓動を強く感じるときは、内科・循環器内科の受診をおすすめします。
強い鼓動を感じても、病気が原因ではない場合もありますが、心臓疾患や甲状腺疾患等の重篤な病気のこともあります。
そのため「動悸くらい大丈夫」と軽視して放置せずに、気になる症状が出たときは、早めに医療機関を受診してください。
内科を探す
「心臓の鼓動が強い」主な3つの原因
心臓の鼓動を強く感じるのは
ストレス
高血圧症
心不全
が原因の可能性があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
原因① ストレス
精神的なストレスが溜まると、ストレスホルモンが増えたり、自律神経のバランスが崩れたりして、心臓の鼓動が強くなるようです。
過剰な緊張・不安・興奮を感じている場合に、動悸が出やすいと考えられています。
ストレスで症状が出やすい人
過度の緊張、不安、興奮をしている
心配症
ストレスを抱え込みやすい
仕事熱心
負けず嫌い
睡眠不足
その他、こんな症状がでることも
めまい
頭痛
便秘
下痢
吐き気
貧血
冷や汗
どう対処すればいい?
まずは気持ちを落ち着かせて、ゆっくり深呼吸をしてください。
ただし、次に当てはまる場合は、精神的な問題ではなく、何らかの病気が原因かもしれません。早めに医療機関を受診してください。
深呼吸をしても症状が改善しない
動悸がなかなか改善しない
動悸とともに冷や汗が出る
胸痛がする
胸が締め付けられる感じがする
気が遠くなる など
注意!自己診断は禁物
心臓の鼓動が強く感じる原因を、精神的なものと判断するには、内臓などの病気が原因でないことを確認する必要があります。
検査などをする前に、自分で精神的なものと判断しないでください。
原因② 高血圧症
高血圧の状態が続いて、心臓に負担を掛けることで、強い鼓動を感じることがあります。
高血圧症の場合は、寒暖差が激しいとき、排便時に強くいきんだとき、アルコールを摂取したときに症状が現れやすいです。
高血圧症になりやすい人
高齢者
ストレスを抱え込みやすい
アルコールを過剰に摂取している
日常的な運動不足
肥満
睡眠不足
塩分の過剰摂取
喫煙者
家族に高血圧症患者がいる
ミネラルやカリウム不足
その他、こんな症状がでることも
息切れ
めまい
ふらつき
頭重感
倦怠感
肩こり
※高血圧症は、症状を自覚しにくいため、注意が必要です。
どう対処すればいい?
高血圧の改善には、減塩する、野菜・果物・魚を多く摂るといった、食事内容の見直しが大切です。
それに加えて、次のような生活改善を行いましょう。
肥満予防のため、ウォーキング等の運動を継続する
アルコールを摂り過ぎない
喫煙者は禁煙する
十分な睡眠時間を確保する など
また、毎日の血圧測定も、血圧のコントロールに大切です。
「高血圧かも」と思ったら…
一度、医療機関を受診するのがおすすめ
医療機関を受診することで、食事内容の改善法や日常生活での注意点等を、詳しく指導してもらえます。
また、受診するときに、毎日測定している血圧の結果を持参すると、治療がスムーズに進められます。
原因③ 心不全
「心不全」になると、心臓のポンプ機能が衰え、全身に血液が送りにくくなって、栄養素や酸素が不足し、動悸が起こると考えられています。
「心不全」の場合、坂道を上るとき、重い物を持つとき、仰向けで横になるとき、夜に寝ているときに症状が現れやすいです。
心不全になりやすい人
高血圧
糖尿病
高脂血症
心筋梗塞
狭心症
心筋症
弁膜症
ストレスを抱え込みやすい
疲労が蓄積している
肥満
運動不足
喫煙者
アルコールを過剰に摂取する
塩分を摂りすぎている
その他、こんな症状がでることも
息苦しい
息切れ
倦怠感
疲労感
足のむくみ
せきやたんが続く
体重が増減する
安静な状態でも動悸を感じる
どう対処すればいい?
心不全は、自分で対処することは困難な病気です。
早急に内科・循環器内科を受診してください。
内科を探す
▼参考
一般社団法人 日本臨床内科医会 自律神経失調症
国立研究開発法人国立循環器病研究センター [7] 心不全
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 高血圧
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット 高血圧
一般社団法人 日本臨床内科医会 高血圧
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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