「足の指が痛い!これは骨折…?」
“足指の骨折の見分け方”をお医者さんに聞きました。
自分でできる対処法や、治るまでの期間も併せて解説します。
監修者
経歴
医療法人藍整会 なか整形外科 理事長
医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック 院長
帝京大学医学部卒業、日本整形外科学会認定専門医
Vリーグ「サントリーサンバース」チームドクター
帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。バレーボールVリーグのサントリーサンバーズのチームドクターも務める。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。Vリーグ サントリーサンバーズの選手の治療の経験を含めて、スポーツ整形外科医として、患者さんの個々のケース、タイミングを共に考え最善の治療を行なっている。
クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療が信条。
【見分け方】これは骨折?打撲?どっち?
足指の骨折と打撲を見分ける時は
- 痛みの強さ
- 痛み方
- 腫れ
- 皮膚の色
- 指の向き
の5つのポイントに着目してみましょう。
骨折の場合は骨自体が損傷しているため、骨の内部にある神経や骨膜(骨を多く幕)が直接刺激されます。
骨膜には非常に多くの神経があるので、骨膜が傷つくと鋭い激痛が生じます。そのため骨折は非常に痛みが伴うことが多いのです。
打撲の場合は主に筋肉や皮下組織、血管の損傷のため、骨膜の損傷ほど敏感に、鋭い痛みを感じることが比較的少ないとされています。
骨折と打撲の違い① 痛みの強さ
骨折と打撲では、痛みの強さや程度に差が出ることが多いです。
骨折は骨内部の神経やその周りの組織や血管なども傷つけているため、動かすたびに神経が刺激され、触るだけでも激痛が走ります。
痛みの強さ:骨折の場合
- 痛みが非常に強く、触るだけでも激痛
- 足を地面につけるだけでも痛みが走り、体重をかけるのが難しい
痛みの強さ:打撲の場合
- 痛みはあるものの、時間が経つにつれて和らぐ
- 痛みはあるものの、少量の体重をかけても耐えられる場合が多い
骨折と打撲の違い② 痛み方
骨折は骨自体の損傷だけでなく、骨の破片が周囲の組織や血管を傷つけ、炎症が発生していることが多いです。そのため動かすたびに鋭い痛みが生じるため、指を動かすことが困難です。
痛み方:骨折の場合
- 指を動かすことが非常に困難で、動かそうとすると鋭い痛みが生じる
- 特定の方向に動かしたときに鋭い痛みが出やすい
痛み方:打撲の場合
- 圧迫しても激痛になることは少ない
- 動かしたときに多少の痛みがあるものの、骨折ほどの激しい痛みはない
骨折と打撲の違い③ 腫れ
骨折の場合、骨膜や骨に付随する血管だけでなく、周囲の筋肉や靭帯なども傷つくため炎症反応がより強くなり、腫れがひどくなる場合が多いです。
骨折した部位が腫れるのは、骨膜や骨に付随する血管が大きく損傷するため。損傷によって血液やリンパ液が大量に漏れ出すことで腫れが引き起こります。
加えて、骨折では骨片が周囲の軟部組織(筋肉、靭帯など)を傷つけて炎症反応がより強く引き起こされます。この炎症によって血管が拡張し、血しょう成分が周囲の組織に漏れ出すことで腫れが促進されるので、腫れがひどくなるのです。
腫れ:骨折の場合
- 短時間で腫れが大きくなる
- 骨折した部分の周辺も腫れることがある
腫れ:打撲の場合
骨折と打撲の違い④ 皮膚の色
骨折の場合は大量の血液が骨の周辺に漏れ出すため、青紫色や黒色っぽい色が広範囲に広がる場合が多いです。打撲の場合は損傷の範囲が少ないため出血量も少なく、内出血が小さい範囲で済むため変色箇所が小さい場合が多いです。
内出血がひどいと、皮膚の色が青紫色~黒色になります。
反対に内出血が浅いと赤み~軽い紫色で終わることが多いため、皮膚の変色具合で内出血の具合を判断し、骨折か打撲かを見分けるひとつのポイントになります。
皮膚の色:骨折の場合
- 内出血の変色が広範囲に広がる
- 青紫や黒色など濃い色に変色する
- 長期間変色が消えない
皮膚の色:打撲の場合
- 内出血の変色が局所的、狭い範囲
- 赤み~軽い紫色など比較的薄い色
- 比較的早く消える
骨折と打撲の違い⑤ 指の向き
骨折では指の向きが不自然に曲がったり、ねじれたりすることがありますが、打撲は骨に損傷がないため、指の向きに明らかな異常が現れることは少ないです。
骨折は骨自体が損傷したり、骨折部位がずれたりするため、指が正常な向きを保てなくなることがあります。
逆に、打撲の場合は骨に損傷がないため指の骨格はそのまま保たれており、向きが変わることはありません。
指の向き:骨折の場合
指の向き:打撲の場合
【セルフチェックシート】骨折と打撲の違い表

特に、
- 強い痛み
- 大きく腫れる
- 少し触れただけでも激痛がする
- 内出血によって紫色になっている
- 指の向きがおかしい
のいずれかに当てはまっている場合は、骨折の可能性が高いです。
骨折の場合、患部をいつも通りに動かすことはできず、数日程度では痛みや腫れは引きません。関節ではないところが腫れて強く痛む場合もあります。
早めに病院を受診するようにしましょう。
よくある質問「腫れてない…これは骨折?」
Q:骨折で「腫れない」ケースもあるのでしょうか?
ごく小さな不全骨折(ひび)などで腫れが小さくなる可能性はありますが、全く腫れが出ないことは通常考えにくいです。
全く腫れていない、痛みだけがある場合は打撲の可能性が高いです。
ですが、痛みが引かない場合は生活にも支障をきたすため、早めに病院を受診するといいでしょう。
【対処法】骨折かも!今すぐできる応急処置
骨折が疑われる場合、
- 患部を冷やす(冷却)
- 患部を固定する(動かさない)
の2つのポイントが大切です。
応急処置① 患部を冷やす(冷却)
保冷剤や氷のうなどを使って、患部を冷やしてください。
1回に15分~20分間冷やします。それを1~2時間おきに繰り返しましょう。
保冷剤などがない場合は、ジップロックに氷などを入れたものでも大丈夫です。
患部を冷やすことで血管が収縮し、出血や体液の流出を減らすことで腫れを和らげることができます。
さらに、冷却により神経の伝達が低下することで痛みを一時的に軽減することにもつながります。
応急処置② 患部を固定する(動かさない)
テーピングや包帯を使って、隣の足指と一緒に固定しましょう。
隣の足指が添え木の代わりとなり、骨折部位が動くことを防げます。
テーピングや包帯がない場合は、絆創膏などでも代用可能。とにかく隣の指と一緒に固定し、動かないように固定することが大切です。
骨折部分を動かすと周囲の筋肉、神経、血管を傷つけ、損傷が悪化する恐れがあります。
しっかり患部を固定することで骨や関節が動かなくなり、さらなる損傷や痛みを減らすことにつながります。
上記のケアを行ったら、すみやかに医療機関を受診してください。
医療機関に向かう際には、骨折した足に負荷をかけないよう、慎重に歩いてくださいね。
おすすめの市販薬は?飲み薬・塗り薬・湿布など
飲み薬のおすすめ:鎮痛薬で痛みをおさえる
骨折自体は骨の損傷であり、薬で治すことはできません。ですが、痛みの軽減や腫れの抑制を目的に市販薬を活用することはできます。
- アセトアミノフェン
- イブプロフェン
- ロキソプロフェン
の成分が入っている鎮痛薬は、一時的に痛みを和らげることが期待できます。
アセトアミノフェンが入っている市販薬の例
イブプロフェンが入っている市販薬の例
ロキソプロフェンが入っている市販薬の例
塗り薬・湿布のおすすめ:冷却効果で炎症をおさえる
骨折の炎症を少しでも和らげるには、患部を冷やすことが重要。
湿布や冷感ゲルなどは直接患部につけることができるため、手軽に冷却が可能です。
痛み止めシップの例
冷感タイプがおすすめです。
外用ゲル・クリームの例
上記の市販薬はあくまでも応急処置です。
痛みがひどい場合には自己判断で市販薬に頼らず、絶対に病院を受診するようにしてください。
これはNG!間違った対処法
- 自分で骨の位置を元に戻す
- 患部を動かす
- 無理して歩く
といったことは、危険ですので止めてください。
自分で骨を戻そうとする行為は、周りの組織を余計に傷つける原因となり、変形などの後遺症が残る恐れがあります。
また、足の指は歩行時に力がかかるようになっています。
そのため、治療を受けていない状態で無理に歩くと、骨折が悪化して痛みが強くなってしまいます。
骨折が疑われる場合はとにかく「患部を動かさない」ことが最重要です。
病院は何科?

足指の骨折が疑われるときは、整形外科を受診しましょう。整形外科では、レントゲンやCT検査によって骨折の有無がわかります。
骨折の後遺症を防ぐためには、早めに適切な治療を受けることが大切です。
どんな治療を受けるの?
骨折した指と隣の指を一緒に巻く、テーピング(バディテーピング)を行います。
手術はあるの?
足指の骨折で手術が必要になることは、ほとんどありません。
ただし、骨の損傷が激しい場合は、手術を検討するケースもあります。
骨折はどれくらいで治る?
足指の骨折の場合、年齢などによっても個人差はありますが、通常3~4週間で快方に向かいます。
足指の骨折は、炎症期・修復期・リモデリング期の3段階を経て、回復していきます。
炎症期:
骨折したあたりが、炎症を起こして赤く腫れて、押すと痛みます。
免疫細胞が患部に移動し、傷ついた血管から漏れた血液や、損傷した組織、骨片を取り除きます。
修復期:
骨折から数日のうちに始まり、数週間から数カ月間続きます。
骨折の修復のために、新しい骨が作られます。新しい骨は軟らかく弾力があります。そのため損傷を受けやすく、治癒途中で骨が本来の位置からずれてしまうケースもあります。
リモデリング期:
リモデリングでは、骨の分解と再構築が行われ、骨が以前の状態に回復します。
放置するとどうなる?
治療を受けずに放置すると、骨が曲がった状態のままくっつく“変形治癒”を招く恐れがあります。
骨がずれたまま治癒してしまうと、指が曲がったり短くなったりしてしまい、脚のバランスが崩れることもあります。
変形治癒ってなに?
正常と異なる状態で骨折が治ることを指します。
変形治癒によって、歩きにくくなる、痛むなどの後遺症が残るケースもあります。
また、後遺症がある足をかばって歩いてしまうため、膝や股関節、腰の不具合も発生しやすくなります。
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2021-03-16
指の骨にひびが入るとどんな症状があらわれるのか、お医者さんに聞きました。
正しい対処法も併せて解説します。
放置すると、正常に骨がくっつかなくなる可能性があるので、要注意です。
指の骨にひびが入ったかも!どんな症状がある?
指の骨にひびが入った場合、次のような症状があらわれます。
指が腫れる
内出血する
押すと痛い
触らなくても痛い
体を動かすと痛い
骨が完全に折れていないだけで、ひびの入っただけの状態も骨折と言います。軽く考えずに、応急処置をしましょう。
ひびが入っていたときの応急処置
指の骨にひびが入った場合は、腫れを抑えるため、可能ならひびの入った指を心臓より上に挙げてください。
腫れが大きくなったり、ケガが悪化したりするのを防ぐため、安静した状態を保ちつつ、できるだけ早く病院へ行ってください。
指には、小さい骨などがあって、人によってはもろく、折れやすくなっています。思わぬことでひびが入ることもあります。
「そんな簡単に、骨にひびが入るわけがない」と決めつけずに、痛みや腫れがある場合は、一度病院を受診しましょう。
整形外科を探す
お風呂はNG!ぬるめのシャワーを
腫れがひどいときは、お風呂に入るのを控えましょう。
体を温めると、かえって腫れがひどくなる可能性があります。ぬるめのシャワーを、患部以外に浴びる程度にしておいて下さい。
ひびの入った指を無理に動かす・運動するなども控えてください。また、飲酒や喫煙は、指のひびが治る妨げとなります。ケガをしているときは避けましょう。
必ず病院へ!ひびを放置すると…
指の骨にひびが入ったまま放置すると、骨がくっつかないままになってしまうこともあります。
骨がくっつかないままだと、手の動きや神経に影響を与える可能性もあるので、指を強く打ち付けたり、転んだりして痛み・腫れ・内出血などがある場合は、放置せずに病院で診察を受けましょう。
病院は何科?
指の骨にひびが入った疑いがあるときは、整形外科を受診しましょう。
病院での治療方法は?
指の骨にひびができたときは、患部の指にギブスや副木(そえぎ)を当て、固定します。また、骨のズレが大きいときは、手術が必要になる場合もあります。
治療を行う前に、医師が診察の上、レントゲンやCT撮影を行い、骨の状態を確認します。ひびが確認されると、治療を始めます。
完治までの期間は?
指の骨であれば、一般的には1ヶ月程度が必要です。
※ひびの状態やその人の体質などによって個人差があります。
整形外科を探す
▼参考
公益社団法人日本整形外科学会 骨折
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2021-03-16
突き指と骨折の見分け方をご紹介します。
「骨折していたら、どう対処すればいいの?」
「病院は何科?」
といった疑問にお答えします。
突き指と骨折はどう見分ける?
突き指は時間が経つと痛みが引いていきますが、骨折の場合は、痛みが徐々に強くなるという特徴があります。
通常、骨折を起こすと、突き指や打撲より重く症状があらわれます。
特に、ケガをした直後5~15分以内に、みるみる指の形が変わるほど腫れるようであれば、骨折を疑いましょう。
突き指・骨折の「正しい対処法」
突き指や骨折をしたときは、応急処置であるRICE処置を行ってください。
RICE処置とは、安静(Rest)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)のことで、ケガをしたときに行う応急処置のことです。
RICE処置の方法
安静:ケガをしたら、それ以上動かさず、安静にする
冷却:保冷剤や冷たいものを患部に当てて冷やす
圧迫:副木(そえぎ)を指に当て、軽く圧迫気味に固定する
挙上:固定したら、心臓よりも高い箇所に指を置く
骨折している場合は、骨折した箇所が動かないように、上下の関節までしっかり、副木で固定してください。
この対処法はNG!
自分で骨の位置を戻すのは、大変危険なのでやめてください。
骨折の疑いがある場合は、必ず病院へ!
骨折していると思われる場合は、痛みの強さなどに関係なく、できるだけ早く病院を受診してください。
治療せずに放置すると、後遺症などが出るおそれがあります。
骨折を放置すると、指が曲がってしまったり、神経などに影響を与えたりするおそれもあります。
突き指は、通常1週間程度で痛みや腫れがなくなります。1週間以上経っても、痛みや腫れなどの症状が続く場合は、病院を受診しましょう。
こんな場合は救急です!
骨折した箇所が次の状態になっているときは、応急処置をして、救急病院を受診してください。必要であれば、救急車の手配も考慮してください。
出血がある
骨が飛び出している
指が曲がっている
指が腫れ、膨らんできた
病院は何科?
骨折や突き指をしたときは、整形外科を受診しましょう。
指に痛みや腫れがあるときは、迷わず病院を受診してください。
どんな治療をするの?
指を骨折している場合は、ギプスや副木を当てて、動かないように固定します。骨が大きくずれてしまっているときは、手術を行うことがあります。
治療期間は、指の骨折の場合であれば1ヶ月程度かかります。
突き指だった場合、軽傷であれば湿布薬などで症状が落ち着くことがあります。靱帯損傷など、症状が重いときはテーピングなどで固定します。治療期間はさまざまで、1週間~6週間と症状の重さによって変わります。
整形外科を探す
突き指・打撲・骨折の違い
「突き指」は、関節や腱といった部分を傷めたケガのことです。
「打撲」は、強い衝撃で筋肉などが損傷することを言います。
「骨折」は、骨の形が変わる、骨のつながりが途絶える(折れる、ひびが入るなど)ことを言います。
状態や原因によって、骨折は、さまざまな種類に分けられます。
<骨折の程度による分類>
不全骨折…骨が完全に折れていない、ひびが入っている状態
完全骨折…骨が完全に折れて、つながっていない状態
<骨が外に出ているかどうかによる分類>
閉鎖骨折(単純骨折・皮下骨折)…折れた骨が、体の外に出ていない状態
開放骨折(複雑骨折)…骨が折れて皮膚から飛び出している状態
<骨折の原因による分類>
外傷骨折…体の外から力が加わって骨が折れた状態
疲労骨折…同じ骨に繰り返し体の外から力が加わって折れた状態
病的骨折…病気によって骨が衰え、小さな力で折れた状態
▼参考
公益社団法人日本整形外科学会 骨折
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。