解熱剤を飲んだのに効かない…!
この記事では、解熱剤が効かない場合に考えられる原因と対処法を解説します。
「もしかして病気?」
「大人と子ども、それぞれ特有の原因はあるの?」
このような疑問に、医師が詳しくお答えします。
監修者
経歴
福岡大学病院
西田厚徳病院
平成10年 埼玉医科大学 卒業
平成10年 福岡大学病院 臨床研修
平成12年 福岡大学病院 呼吸器科入局
平成24年 荒牧内科開業
解熱剤が効かない主な原因
解熱剤を用いても微熱が続いたり、熱の上下を繰り返してるときは、発熱の原因が細菌やウイルスではない・解熱剤を使うタイミングが悪いのかもしれません。
「ストレス」や「薬の副作用」
ストレス・薬の副作用・高体温症による発熱は、細菌やウイルスによる病気と発熱のメカニズムが異なるので解熱剤は効きません。
体内の水分不足
解熱剤は、発汗作用を利用して熱を下げます。
そのため、体の水分が不足していると充分に発汗できず、熱が下がりにくくなります。
熱が上がりきっていない
熱が上がりきっていないのに解熱剤を用いた場合、病気の原因の細菌やウイルスを退治しきれない内に解熱剤の効き目が切れてしまうことがあります。
その後、再び体の環境が細菌やウイルスが攻撃しやすい状況にするメカニズムが働き始めることで熱が上がります。
子どもの場合は、違う原因があることも
子どもならではの原因によって、解熱剤が効かないケースもあります。
免疫システムが未熟なため
「子どもだから解熱剤がちゃんと効かないのでは?」と思われるかもしれません。ですがこれは、解熱剤の効き目の問題ではなく、子どもの免疫システムが未熟なためです。
未熟な免疫システムでは、1度の発熱でウイルスを退治しきれず、熱が下がったころに生き残ったウイルスが活動を再開します。それを退治するため、再び発熱することがあるのです。
突発性発疹
多くの子どもが罹患する突発性発疹というウイルス性の病気があります。
この場合、解熱剤を用いても、熱の上下を繰り返して安定しない事も珍しくありません。
インフルエンザの場合、効き目を感じにくいことも
インフルエンザにも、解熱剤は有効です。
しかし、インフルエンザによる炎症が起こり始めて、熱が上がる勢いが高いときは、解熱剤を使用しても効き目が感じられない場合もあります。
インフルエンザには「アセトアミノフェン」の解熱剤を
インフルエンザの場合、解熱剤は何でも良いというわけではありません。
インフルエンザのときには、「アセトアミノフェン」という成分の解熱剤の服用が推奨されています。
反対に、イブプロフェン主剤・ロキソニン等、使用を避けた方が良い解熱剤もあります。それらはインフルエンザの時に服用すると、脳炎・脳症(※)を引き起こす可能性が高くなります。
※脳炎・脳症とは…(脳内の圧力が高まり、痙攣・意識障害・異常行動を起こすなどの神経症状がでる状態。命の危険もあります。)
解熱剤が効かないときの対処法
高熱で辛い時は、太い血管が通る部分(首、脇の下、足の付け根など)を冷やす「クーリング」を行うと良いでしょう。
放熱することで、つらさを緩和できます。
しかし、高熱であっても寒気があるようなら、体や手足を温めましょう。
脱水を防ぐため、水分や塩分補給も大切です。
解熱剤を追加で使用するのはNG!
解熱剤を追加で服用するのは避けましょう。
熱が下がりすぎることもあります。
前回の服用から6時間はあけるようにしてください。
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2020-01-30
「熱が出た!」と思ったら「朝にはすっかり下がっていた…」。
このような経験をお持ちの方も多いと思います。
一晩で下がる発熱の原因を、医師が詳しく解説します。
大人なのに…「熱が一晩で下がった?」
一晩で熱が下がった場合、心因性発熱(ストレス)または風邪のケースが主に考えられます。
それぞれのケースについて、次の項目で詳しく解説します。
原因① 心因性発熱(ストレス)
心因性発熱とは、主にストレスによって起こる発熱を指します。
過度のストレスで交感神経が活発になると、「熱を発生させる細胞」に刺激が加わり、一時的に発熱する場合があります。
◆心因性発熱の症状
心因性発熱の場合、一晩で熱が下がったり、高熱を繰り返したりします。
熱の程度には個人差があり、37度の微熱の人もいれば、38度以上の高熱になる人もいます。
また、
頭痛
腹痛
躁鬱などの気分障害
パニック障害などの不安障害
を伴うこともあります。
ストレスで発熱しやすい人の特徴
日常生活でストレスを感じやすい人
几帳面な人
頑張りすぎる人
神経質な人
心配性な人
心因性発熱の対処法
まずはゆっくり体を休めることが必要です。
落ち着いた環境(アロマ、音楽、間接照明など)を作り、眠れるようであれば、目を閉じて休みましょう。
なお、心因性発熱の場合、解熱鎮痛剤は効果を発揮しません。
原因② 風邪のケース
風邪のウイルスがそこまで強くなければ、自分の免疫が勝って一晩で熱が下がることもあります。
風邪をひくと、侵入したウイルスの繁殖を抑えたり、体の免疫機能を高めたりするために体温が上がります。
通常は、おおよそ3日くらいで下がることが多いです。
◆風邪の症状
くしゃみ
鼻づまり
喉の痛み
咳
など
風邪をひきやすい人の特徴
忙しくてなかなか休めない人
ストレスや疲労を溜めがちな人
睡眠不足の人
栄養バランスが偏っている人
上記の人は免疫力の低下によって、風邪を引きやすくなります。
風邪の対処法
そのまま眠れるようであれば、おでこや首などにタオルにくるんだ保冷剤を当てたり、冷やすシートを貼って休みましょう。
また、熱が高かったり、長時間も高熱が続く場合は、解熱剤を服用しましょう。
「夜に発熱を繰り返す」のは、疲れ・感染症が原因かも
夜に発熱を繰り返す場合、
尿路感染症
疲労・ストレス
関節リウマチ
がん
などの原因が考えられます。
① 尿路感染症
尿路感染症は、膀胱などに細菌感染を起こして発症する病気です。
症状が進むと、疲れのたまる夜間に発熱することがあります。
尿路感染症の症状
排尿痛
下腹部痛
頻尿
発熱
尿路感染症の対処法
軽い症状の場合、こまめに水分を補給していれば、細菌が尿で排出されて数日で快方に向かいます。ただし、重いものであると抗菌剤の投与が必要となるため、泌尿器科で治療を受けましょう。
泌尿器科を探す
② 疲労・ストレス
疲労やストレスがたまると、1日の疲れが出て夜間に発熱をするケースがあります。
また、免疫機能が低下するため、風邪も引きやすくなります。
疲労・ストレスによる症状
倦怠感
疲労感
食欲不振
めまい
頭痛
冷え
集中力低下
疲労・ストレスの対処法
ゆっくり休息を取る必要があります。仕事が休めないときでもこまめに休憩を入れましょう。
毎日の睡眠、食事が大事です。しっかり睡眠をとり、バランスの良い食事をとりましょう。
③ 関節リウマチ
免疫機能の異常によって、関節の痛み、関節の変形、発熱、倦怠感などを起こす病気です。
倦怠感も強く出るので、夜間に日中の疲れが出て発熱することもあります。
関節リウマチの症状
関節痛
倦怠感
微熱
関節の腫れ
関節の変形
関節リウマチの対処法
専門機関での治療が必要です。
朝起きた時の関節の腫れ、関節の動かしにくさなどが現れてきたら、早めにリウマチ科を受診しましょう。
リウマチ科を探す
④ がん
がんを発症していると、体に疲れが溜まりやすくなります。
そのため、1日の疲れが出る夜間に発熱するケースもあります。
がんの症状
倦怠感
食欲不振
気分が悪くなる
体に痛みが走る
不正出血(女性器のがん)
がんの対処法
専門機関での治療が必要です。早急に内科を受診しましょう。
早めに取り除かなければ、身体中にがんが広がって死に至る恐れがあります。
内科を探す
熱が下がった後の過ごし方
熱が下がって体が楽になっても、すぐに油断せず、熱以外の症状も治まるまでは、下記の点に気を付けてください。
安静にして体力を温存する。
消化の良い物を食べ、弱った消化器官の負担を軽くする。
辛味が強く刺激的な物や、油分の多い物を控え、消化器管の負担を軽くする。
ビタミン、ミネラルが豊富な物を食べ、免疫力を高めて感染などの再発を防ぐ。
アルコールを控え、肝臓を休ませる。
喫煙を控え、気道への刺激を軽減する。
高熱による発汗で失った分、水分と塩分を多めに摂り、脱水を防ぐ。
良質なたんぱく質を摂り、消耗した体力を補う。
熱が下がったら出社してもいい?
風邪の場合、熱が下がり、気分も良く、動くのに支障がないようでしたら、出社しても大丈夫でしょう。
ただし、だるさや、倦怠感がある場合は、まだ体力が戻っていないので無理しないようにしてください。
無理をすると、発熱を繰り返すことがあります。
出勤する場合は、マスクをしましょう。
咳やくしゃみが出ても、他の人に移さないように対策をして出勤しましょう。
こんな症状は病院へ
水分・食事がとれない
胸が痛くなるほどの酷い咳が出る
口の中の痛みが増し、喉の奥に腫れや水疱がでる
といった症状が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
「水分・食事を受け付けない」場合は、脱水や体力消耗の危険があるため、点滴などの治療が必要です。
「胸が痛くなるほどの酷い咳が出る」場合は、結核・喘息・肺炎・急性気管支炎・胸膜炎などの恐れがあります。
「口の中の痛みが増し、喉の奥に腫れや水疱が生じる」ときは、ヘルパンギーナのなどの可能性があります。
患者の多くが小児ですが、大人が感染すると、脳炎、髄膜炎、心筋炎などを誘発する恐れがあります。
病院は何科へ行けばいい?
受診すべき診療科は、出ている症状によって異なります。
以下の表を参考にしてみましょう。
受診すべき診療科
症状
内科
心理的な原因の発熱・吐き気・食欲不振
呼吸器内科
耳鼻いんこう科
喉の痛みや咳が続いている
「心理的な原因の発熱」も、まずは内科を受診して検査を受けることをおすすめします。
体に異常がないと判断された後は、心療内科を紹介してもらうことも可能です。
あまりにも高い熱が翌朝には平熱に下がっていたりすると不思議に思いますよね。
その場合は、他に目立った症状が現れなかったとしても、隠れた病気の前兆かもしれません。
少しでも気になるようなことがある時は、早めに医療機関を受診し、医師の診察を受けることをおすすめします。
内科を探す
▼参考
テルモ株式会社→テルモ体温研究所 体温から健康に:体温と生活リズム
ストレスと高体温 心因性発熱かもしれないと思ったら
テルモ株式会社→テルモ体温研究所 体温から健康に:体温と生活リズム
ストレスと高体温 心因性発熱と診察されたら
沖縄県医師会→広報関係 ドクターのゆんたくひんたく:2018年掲載分 原因探り、根本解決を
株式会社メディプラス研究所→オフラボ:「熱が下がらない」風邪薬が効かない長引く熱、ストレスが原因かもしれません【ストレス性発熱の処方箋①】
一般社団法人小金井市医師会→お知らせ:風邪について
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2020-02-12
「すぐに熱を下げるには、どんな薬を選べばいいの?」
「どこを冷やせば熱が下がるの?」
この記事ではすぐに熱を下げる4つの方法を、医師が詳しく解説します。
大事な予定があってどうしても休めない!という方も、ぜひ参考にしてください。
無理に熱は下げない方がよい
発熱は、体を守るための必要な働きです。
発熱しているということは、何らかの異物と体が戦っている状態です。
ウイルスや細菌が進入すると、熱を上げて退治しようとします。無理に熱を下げれば、逆に異物が優勢となり、体調悪化・症状悪化につながる可能性もあります。
一般的な発熱であまりに熱が高い場合(40度以上)は、体を楽にさせ、脳症や合併症を避けるため、ロキソニンなどの鎮痛剤(※)を使用します。
それ以下の熱の場合は、自然に任せておくのが本来はいいのです。
※インフルエンザの場合は、使用できない鎮痛剤もあるので注意が必要です。
なぜ?「熱が出る理由」
発熱は、体の中にウイルスや細菌などの異物が侵入してきたのを倒そうとする免疫反応で起こります。
そのため、熱が上がり切るまではウイルスや細菌も大量に増殖しているので、体は辛い症状を多く感じます。
熱が下がる頃には、ウイルスたちを押さえ込み、体調が徐々に快方に向かい始めます。
なぜ?「震え」がおきる理由
体温が上昇すると血液や他の部位も一緒に熱を作ろうと、体熱の放散を減少させ、体全体の熱産生を増やそうとします。
その際、皮膚の血流を少なくしたり、筋肉を震わせて熱を作ったりします。
方法①お薬を飲む
解熱鎮痛剤を使いましょう。
すぐに熱を下げたい場合、風邪薬に解熱剤が入っていれば、そちらを使用していただいても構いません。しかし、熱に関して対処するのであれば、解熱鎮痛剤を使います。
解熱剤・鎮痛剤は、一時的に熱を下げ、体を楽にすることはできます。
※インフルエンザの場合は、使用できない鎮痛剤もあるので注意が必要です。
風邪のひき始めなら漢方薬もおすすめ
風邪のひき始めであれば葛根湯(カッコントウ)がおすすめです。
生姜やクズの根配合で、体を温めて早く熱をさげる作用が期待できます。
ただし、葛根湯にも解熱作用があるため、解熱剤との併用は避けましょう。
成分によっては重複して思わぬ副作用が生じることがあります。
漢方薬を使用する際は、薬剤師、登録販売者に相談をしましょう。
方法②首・鼠径部・ワキの下を冷やす
血流が多い部分を冷やすと早く熱は下がります。冷やす場所としては、首・鼠径部・ワキの下などがおすすめです。
熱が出ると、額を冷やす方法をイメージする方が多いかと思いますが、 これには熱を下げる働きはあまりありません。
また、冷却シートは、熱を下げるというよりも、頭を冷やすことで気持ちがよくなり、すっきりして気分が落ちつくという働きが期待できるものです。
方法③食べ物・飲み物
温かい食事や、冬が旬の野菜・果物で体を内部から温めて発汗を促せば、 汗で熱は下がりやすくなります。
ココアや生姜湯、チャイ等(温かい飲み物)
加熱したトマト、にんにく等(温かい食べ物)
かぼちゃ、かぶ、りんご、ブドウ等(冬が旬の野菜や果物)
また、いちごやスイカは、薬膳の世界では熱冷ましとしての働きもあるようです。薬のようにはいきませんが、水分補給ができるので体が楽になるでしょう。
方法④ツボ押し
首の後ろ側にある、髪の生え際あたりに位置する左右二つのツボ「風池」 は、熱っぽい・咳などの症状を和らげる働きがあると言われています。
お風呂で汗をかくのは有効
発汗を促すことで解熱効果が期待できます。
ただし、熱が上がっている途中で入浴しても、熱を下げる働きは期待できません。
熱が上がりきった後に汗が出始めているのであれば、入浴や岩盤浴などで発汗を促すことで解熱効果が期待できます。
その際は、水分が急激に失われるので十分に水分補給をしてください。
逆効果!「発熱症状を悪化させる行動」
寒気を感じた時に、余計に体を冷やすのは避けましょう。体を冷やすと熱はどんどん上がり、体調も悪くなっていきます。
寒気を感じたら、体を温めましょう。
熱が上がりきって熱く感じるようになったら、衣類を脱ぎ体温を調節してください。
熱が下がっても「数日は安静」にしましょう
熱が下がっただけでは、まだ体は本調子ではありません。
熱が下がっても、数日は安静にして過ごすのがいいです。
熱が下がったからといって急に動くと、体力が落ちている体はすぐに疲れてしまい、症状をぶり返す原因になります。
熱が下がった後は、栄養を摂って快方に向かいます。
免疫力をつけるためにも、抗酸化作用のあるビタミンC、体力をつけるためにたんぱく源などを中心に、スタミナ補給を行いましょう。
ビタミンC…緑黄色野菜、果物 等
タンパク源…卵、豆腐 等
ただ、風邪のときは胃腸も弱っていることがあるので、消化をよくするためにも、加熱して柔らかく煮込んだものがいいです。
基本的に、熱は無理に下げる必要はありません。
何らかの病気にかかった信号と受け止め、病院を受診し、安静にできる場所・スケジュールを確保して体を休めましょう。
内科を探す