脳症や肺炎などを発症する恐れもあるインフルエンザは、予防接種を受けてなるべく避けたい病気です。しかし、インフルエンザの予防接種を受けると腕に腫れが出てしまうという人がいます。今回は、この「腫れ」が出るわけを解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
予防接種で腫れる原因は?
身体がワクチンを異物と認識、腫れや赤みが出ることも
インフルエンザワクチンに限らず、ワクチンは、その病気の微生物から作られています。弱めた感染力のないウイルスから作られるワクチン(インフルエンザワクチンは、不活化ワクチン)は、身体に入ると異物と認識されますので免疫が働き抗体を作ります。その際に局所的な腫れや赤みが出ることがあります。
アレルギーがある人は要注意
また、インフルエンザの予防接種は、つくられる過程において鶏卵を使用しています。そのため、卵アレルギーがある方は腫れをはじめとした、副反応が出る場合があります。しかし、卵アレルギーがあるからといって、必ず「腫れ」が出るわけではなく、体調不良や免疫が低下している時などにだけ、腫れるという人もいます。腫れが現れても通常は数日で腫れがひき元に戻ります。
卵だけでなく何らかのアレルギーがある人は、インフルエンザの予防接種を受ける前に医師に伝えた上で、接種を受けるようにしてください。
また、アレルギー反応が薄く、自分ではアレルギーがないと思っていても、何らかのアレルギーを持っている場合もあり、この様な方が疲労や免疫機能が低下している時などに予防接種を受けるとワクチンに入っている成分に反応して腫れが現れる場合もあるでしょう。
注射した部分を抑える時間が短いと腫れる?
注射した部分を抑えるのは、血が止まるために抑えているだけなので、抑える時間によって腫れる、腫れないということはありません。
腫れてしまったときの対処法
注射した部分がかゆい、痛い場合
接種箇所に腫れや痛みが現れても、ほとんどの場合は、2~3日で自然に治癒します。気になる場合は、濡れタオルや保冷剤をタオルで包んだものなどを使って、冷やしてください。
また、虫さされの薬には、抗ヒスタミン薬が入っている場合が多いので腫れや接種後のかゆみに働きかけてくれます。しかし、薬によって配合成分が違うので、塗る前には必ず、かかりつけの医師や予防接種を受けた病院の医師に相談するようにしてください。
腫れているとき、お風呂に入ってもいいの?
予防接種当日でも入浴は、可能です。しかし、腫れが悪化したり、雑菌が入ったりする場合もあるので接種箇所を強くこする・拭くのは避けましょう。
ひどいときは病院に行くべき?
腕全体や身体にまで腫れが広がる・我慢できないほどの痛みが現れた場合は、すぐに病院を受診してください。
また、発熱や悪寒、呼吸困難と言った、いつもと違う体の症状(歩けない・ふらつき・手足のしびれなど)が現れた場合も速やかに病院を受診し、診察を受けましょう。
予防接種後、腫れないようにするには
次に予防接種を受けたらまた腫れるの?
アレルギーや体調によっては、次回も腫れが出る場合があります。
腫れを軽減させる方法は?
腫れを長引かせない・軽くするためには、予防接種前には、体調を整えておく必要があります。
腫れやすいという人は、睡眠不足や疲労がたまっているといった体調不良がある状態での接種は、避けましょう。
まとめ
腫れや痛みが出ても、通常数日でなくなります。このような症状が出ている方は、特に予防接種後には、激しい運動や過度な飲酒は避け、安静に過ごしましょう。
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2019-08-30
インフルエンザの予防接種による副反応についてご紹介します。
「予防接種を受けたあとに発熱や下痢の症状が…これって副反応?」「大人と子どもで、副反応の症状に違いはあるの?」
そんな疑問を医師が解決します。
すぐに病院に行くべき重篤な症状も教えてもらいましたので、心配な症状があらわれた場合はぜひ参考にしてください。
予防接種の副反応の症状は?
比較的よくあらわれる副反応
接種した部位(局所)の発赤(赤み)・腫脹(腫れ)、疼痛(痛み)発熱、頭痛、悪寒(寒気)、下痢、倦怠感(だるさ)などがあらわれる場合があります。
インフルエンザワクチンは副反応の少ないワクチンではありますが、ワクチンに対するアレルギー反応で、じんましんやかゆみといった症状が現れる場合もあります。じんましんは、通常数時間でおさまり他の症状も2〜3日でほぼなくなります。
また、めまい・嘔吐・吐き気・一時的な意識障害・動悸・けいれん・筋力低下などが現れたという報告もありますので、インフルエンザの予防接種後にこのような体調に変化があった場合は、病院を受診しましょう。
インフルエンザワクチンの副反応は、多くが24時間以内に現れます。この期間の体調には気をつけるようにしてください。
非常に重い副反応として、ギランバレー症候群や急性脳症、脳脊髄炎、肝機能障害の報告もありますが、ワクチン接種との因果関係は必ずしも明らかではありません。
すぐに病院に行くべき重篤な症状
インフルエンザの予防接種後に意識障害や意識混濁、しびれ、けいれん発作がでた場合は、検査を受けましょう。また、38度以上の発熱が2日たっても下がらないといった場合にも病院を受診してください。体調の変化で受診した際には、インフルエンザの予防接種を何日前に受けたと医師に必ず伝えましょう。
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副反応はいつから出るの?
多くは24時間以内に症状が出る
すぐに出る場合もありますので、接種後30分以内は、予防接種を受けた病院のそば、もしくは連絡の取れる場所で安静にしましょう。
その後、多くは24時間以内にあらわれます。また、数日、数週間後にあらわれたという報告もあります。
特に自分で症状を伝えられない年齢の小さいお子さんの保護者の方は、体調に変わったことがないか、様子をみてください。
副反応が出る確率は大人と子供で違いますか?
子供だから副反応が多いという報告はありませんが、子供、高齢者は体力がなかったり、体調が万全でなかったりすると接種後に疲れが出て、発熱や体調不良を訴える場合もあります。
また、インフルエンザの予防接種を受けた後に子供の具合が悪い・発熱したなどいう話も聞きますが、それは多くの場合、予防接種を受ける前の親の様子や病院の環境で子供が緊張し、その後、疲労から発熱したとも考えられます。他にも、高熱が出たという場合は、すでにインフルエンザや風邪に感染していた可能性もあります。
しかし、乳児や小さなお子さんが初めて接種する場合は、急性のアレルギー反応が出ないか確認の意味も含め、接種後30分程度は院内で様子を見て、体調に急変があった場合はすぐに診察が受けられるようにしてください。
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できるだけ副反応が出ないようにするには?
インフルエンザワクチンに限らず、予防接種を受ける前は、睡眠不足や体調不良がないように体調を整えましょう。体調が良くない時に予防接種を受けると腫れやじんましんといった反応が出る可能性もあります。
最後に
インフルエンザは、妊婦や赤ちゃんが感染すると悪化する可能性が高く、脳症や肺炎を引き起こす場合もありますので、ワクチン接種が推奨されています。予防接種は、十分に研究され提供されています。避けられる病気は、予防接種を受けて家族を守りましょう。
<参考>
厚生労働省 新型インフルエンザ予防接種後の症状について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_04.html
東京都総合組合保健施設復興協会 インフルエンザ予防接種ガイドライン等検討委員会:厚生労働省:啓発資料抜粋
http://www.toshinkyo.or.jp/influenza_yobitishiki.html
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2019-09-02
インフルエンザの予防接種の前日、飲酒してもいいのでしょうか?予防接種当日はいつから飲酒できるのでしょう?お酒を飲んだせいで予防接種の効果が薄まるようなことがあるとしたら、困りますよね。この記事では、インフルエンザの予防接種を受ける前後に飲酒するとどうなるのか、お医者さんに解説してもらいました。
予防接種前日は飲酒していいの?
前日に飲酒してもいいですか?
飲酒自体は、問題ありません。適量を飲み、次の日にお酒が残っていないようならインフルエンザの予防接種を受けても良いでしょう。
また、適度な飲酒に関して、厚生労働省が発表している日本人の飲酒のガイドラインには、「1日平均純アルコールで20グラム程度の飲酒」と書かれています。これは、ビール中瓶1本・缶酎ハイ350ミリ缶1本(アルコール度数7%のもの)などに相当します。また、女性の場合は、男性よりもアルコール分解速度が遅く、男性と同じ量の飲酒をしても女性は臓器障害を起こしやすいとされていますので、男性の1/2~2/3程度に抑えるのが推奨されています。
前日飲みすぎてしまったら…
二日酔いの方には、インフルエンザの予防接種はお勧めしません。他にも具合が悪い・睡眠不足といった状態の方にも、同様に予防接種はお勧めしません。
当日、体調不良がある場合は、予防接種の日程を変更しましょう。
予防接種のあとは?
インフルエンザの予防接種の後の飲酒も、前日同様、「適量の飲酒」であれば問題ありません。特に予防接種後に何時間あけた方が良いと言った時間もありませんが、30分程度は体調に変化が出ないか見るためにも安静に過ごしましょう。
また、初めてインフルエンザの予防接種を受ける方は、アレルギー反応や副反応を考え、予防接種後30分は、病院か病院近くで待機しましょう。その後、体調に問題がないようであれば通常通りに過ごしてください。
インフルエンザワクチンの副反応は、主に24時間以内に発症します。この期間内は、体調を確認できるようにしておきましょう。
予防接種後、飲み過ぎるとどうなるの?
インフルエンザワクチンを打った後、摂取箇所が「腫れる・かゆい」といった症状が出る人がいます。これらは一時的な症状で、ほとんどの場合、普通に生活をしていれば2〜3日でなくなります。しかし、このような症状が出ているのにお酒を飲みすぎれば、症状は悪化します。かゆみが強くなると掻いてしまい、雑菌が侵入したり痕に残りやすくなったりします。インフルエンザの予防接種を受けた痕に腫れやかゆみが出る人は、その症状が落ち着くまで過度な飲酒は控えた方が良いでしょう。
お酒を飲んで体にかかる負担は個人差が大きいので、お酒に弱いという人は、予防接種前後は、お酒は控えた方が良いですね。予防接種の予約を入れたら、体調を整え接種を受けられるようにしましょう。
<参考>
厚生労働省e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html
東京都総合組合保健施設復興協会 インフルエンザ予防接種ガイドライン等検討委員会:厚生労働省:啓発資料抜粋
http://www.toshinkyo.or.jp/influenza_yobitishiki.html