ラム肉を食べて食中毒を起こすと、どんな症状が出るの?
ラム肉による食中毒の症状について、栄養士の先生に聞いてみました。
危険なラム肉の特徴も紹介するので、注意点を押さえておきましょう。
監修者
株式会社Luce
栄養士・食育栄養インストラクター
神原 李奈先生
経歴
株式会社Luce・健康検定協会 所属
CA(客室乗務員)の仕事をきっかけに、健康と食の強い結びつきを実感し、食の世界に興味を持つ。大手料理教室の講師の経験を経て、栄養士を目指すことに。栄養士免許を取得後の現在は、現役CAとして世界中を飛び回りながら、栄養士として健康や食に関する情報を発信している。
ラム肉による食中毒の症状は?
- 腹痛
- 吐き気・嘔吐
- 下痢・血便
- 発熱
- 倦怠感
- 頭痛
など
ラム肉に限らず、食中毒を起こすと下痢や嘔吐などの症状があらわれます。食中毒は細菌やウイルスに感染することで起こるため、これらを体から排出しようとするためです。
体に有害な細菌・ウイルスが排出できないと、体の状態が悪化したり、症状が治りにくくなったりします。
食中毒と思われる症状はある場合は、自己判断で「下痢・嘔吐を止める薬」を飲まないようにしましょう。
こんなラム肉に気を付けて!
- 専門の肉解体業者が解体していない
- 常温で長時間放置されている
- 不衛生な環境で調理されている
一般的に、肉の解体は専門の解体業者が行いますが、そうでない場合は、食中毒の原因となる微生物が付着しているおそれがあります。
また、ラム肉に限らず、食中毒を起こす微生物は常温だと増殖するので、冷凍保存・十分な加熱が必要です。
調理中に、食中毒菌に汚染された他の食品を介して、菌が付着する恐れもあります。調理場の衛生状態にも注意しましょう。
レアのラム肉は大丈夫?危険?
ラム肉は馬・牛と同様に、レアで食べられるとされています。
ただし、調理する環境の衛生管理状況や、食べる人が「微生物に対抗する力をどれだけ有しているか」によるため、きちんと加熱した方が安全です。
特に、抵抗力の弱い子ども・高齢者、妊娠中の方は、重篤な症状を引き起こすおそれがあります。85度以上・90秒以上で加熱をして食べましょう。
【要注意】ラム肉の食中毒は、トキソプラズマ症のリスクも
生のラム肉を食べることによって、トキソプラズマ症(※)という寄生虫病に感染するおそれもあります。
妊娠中の方は、胃腸の症状にくわえて、流産・死産のリスクが高まります。
(※)トキソプラズマという微生物で起こる感染症で、リンパ節の腫れや発熱や倦怠感のような症状が出ることがあります
トキソプラズマ症に限らず、食中毒で脱水症状を引き起こすと死に至るおそれもあるため、注意が必要です。
食中毒を防ぐためにできること
お肉を加熱したら、内部を竹串などで刺して、肉汁が透明になっているか確認しましょう。
薄く切って加熱すると、中まで火が通りやすいです。
野菜などの食材はきちんと水で洗い、手や調理器具もきちんと殺菌・消毒してください。
食中毒かも…病院に行くべき?
症状があまりないのであれば、しばらく様子を見てもよいでしょう。
ただし、下痢・嘔吐などの症状が強く出ている場合は、病院で受診してください。
特に、子どもや高齢者は重症化のおそれがあります。
妊娠中の方も、胎児に影響するリスクがあるため、少しでも症状がある場合は早急に受診してください。
何科で受診すればいい?
「内科」に相談しましょう。
子どもの場合は「小児科」で受診してください。
病院では、
などが行われます。
治療内容は、整腸剤や解熱剤などを使用し、症状が治まるのを待つ「対症療法」が一般的です。
他にも、「抗菌薬」を使用する場合や、脱水症状がある人に「点滴治療」を行う場合があります。
セルフケア方法は?
自宅で療養する場合は、水分をこまめに摂取しましょう。
脱水症状を防ぐために、ミネラルを補給できる「経口補水液」を飲むとよいです。
経口補水液がない場合は、1リットルの水に「塩3g」「砂糖40g」「果汁を少々」加えたものを飲むとよいでしょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2022-07-04
「食中毒って病院に行かなくても大丈夫なの?」
食中毒になったときの受診目安を、お医者さんに聞きました。
症状の悪化を防ぐために、避けるべき食べもの・服用していい市販薬を知っておくと安心です。
正しいセルフケアの方法についても紹介するので、食中毒を悪化させたくない方は必見です。
食中毒で「病院に行くべき?」
症状が軽い食中毒の場合、基本的に病院には行かなくても大丈夫です。
自宅で様子をみる場合は、しっかりと水分・栄養補給を行い、菌が体の外に出るまで待ちましょう。
食中毒は、食べ物に付着した細菌・ウイルスが原因なので、病原体を外に排出することで快方に向かっていきます。
ただし、症状が重い場合は治療が必要です。
以下のような症状がある人は、受診を検討しましょう。
こんな症状があったら、病院に行こう
嘔吐が酷く水も飲めない
水が飲めない状況が続く
めまいがする
尿量が少なくなる
高熱が出る
腹痛がひどい
吐いたものや便に血が混ざる
食中毒って、「病院は何科?」
食中毒が疑われるときは、内科で受診しましょう。
診療では、まず問診を行います。
必要に応じて「血液検査」や「細菌をとって培養する検査」、「レントゲン検査」などを行い、体の状態を調べます。
症状が重い方は、薬が処方されたり、点滴が行われたりすることが多いです。
嘔吐がひどい場合は「吐き気を止める薬」が処方され、下痢がひどい場合は「腸を整える薬」が処方されます。
治療費の目安
食中毒の治療は基本的に保険適用で、費用目安としては3000〜5000円程度です。
※症状によっては、実際の費用が目安と異なるケースもあります。
なお、「確定検査」を行う場合は、通常の検査とは異なるため、自由診療となります。
確定検査は、「職場に診断書を提出する必要がある」といったときに行われることが多いです。
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食中毒になってしまったときの「過ごし方」
まずは安静にして過ごしましょう。
自宅では、こまめに水分補給を行うことが大切です。
下痢や嘔吐がひどいときは…
ひどい下痢・嘔吐が症状は、胃腸が弱っている証拠です。
セルフケアする場合は、
食事を控える
温かい白湯などを飲むなどして体を温める
といった点を心がけるとよいでしょう。
「市販薬」は飲んでもいい?
基本的に、自己判断での市販薬の服用はおすすめできません。
特に下痢止めの使用は避けましょう。
食中毒のときは、菌を体の外に排泄しないといけない状況です。
下痢止めを使用してしまうと、菌が体の中にとどまり、回復が遅くなるリスクがあります。
なお、「整腸薬」や「胃腸薬」を使える場合もありますが、市販薬だと下痢止めが配合されている可能性もあります。
市販薬を使用する場合は、必ず薬剤師に相談しましょう。
治るまでにどれくらいの期間かかる?
菌によりますが、一般的に数日から2週間程度で治ります。
2週間以上症状が長引く場合は、早めに病院で治療を受けましょう。
毒性の強い菌が腸内に長くとどまっていると、症状をさらに悪化させてしまう恐れがあります。
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今は「避けたほうがよい食べ物」一覧
消化の悪いもの(繊維質・脂肪が多い)
刺激が多いもの(香辛料・酸味がある)
塩分の多いもの
など、胃腸に刺激を与えるようなものは避けましょう。
消化が悪い
脂の多いお肉
きのこ
海藻類など
刺激が多い
香辛料(トウガラシ)
酸味が強い料理
レモン
塩分が多い
ラーメン
パスタ
ハンバーガー
カレーなど
胃腸が弱っている時に上記のようなものを食べると、胃の粘膜を傷つけたり、胃腸の動きを刺激したりする可能性があります。
早く治すためには胃腸を休ませる必要があるので、刺激を与える食べものは避けましょう。
「アルコール」や「コーヒー」なども控えよう!
アルコールやカフェイン(コーヒー・紅茶など)、炭酸飲料といった飲み物は、胃腸を刺激してしまうので避けましょう。
水分補給には、常温水・麦茶・スポーツドリンク・経口補水液がおすすめです。
▼参考
新百合ヶ丘総合病院
秋本病院