男性の不妊症に、見た目で判断できる特徴はあるのでしょうか?
「不妊症なのでは…」と不安な方は、まずセルフチェックで確かめてみましょう。
男性の不妊症の原因や、受診すべき診療科を、お医者さんにお聞きしました。
改善するためにご自身でできることも紹介します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
男性の不妊症、見た目に特徴はあるの?
- 精液の量が極端に少ない
- 精液に血液が混ざっている
- 精液が白くなく、透明な色をしている
といった場合は、不妊症の可能性があります。
男性不妊セルフチェック
- 陰嚢に熱感、痛みがある
- 陰嚢に違和感がある
- 大人になってから流行性耳下腺炎(おたふく風邪)を発症した
- 鼠径ヘルニアの手術を受けている
- 抗がん剤治療を受けた
- 勃起しにくい
- 射精障害がある(早漏、遅漏、射精反射がない)
- 糖尿病を患っている
見た目の特徴に加え、上記の症状に2、3つ以上当てはまる人は、男性不妊の可能性があります。
男性不妊を改善したい場合は、医療機関に行って相談しましょう。
男性不妊は何科?
男性不妊症を疑う場合は、泌尿器科を受診しましょう。
妊娠を目指すには、医療機関で検査を受け、不妊の原因をきちんと調べる必要があります。
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男性不妊の主な原因
男性の不妊には、
- 乏精子症
- 無精子症
- 精子無力症
といった原因が考えられます。
原因① 乏精子症
精液中に存在している精子の数が、通常よりも少ない状態です。
乏精子症は、「精巣静脈瘤」や「遺伝的な要因」で起こる場合があります。染色体異常であるクランフェルタ―症候群やY染色体のAZF領域の欠失などが乏精子症(無精子症)の原因となることがわかっています。
乏精子症を引き起こす「精巣静脈瘤」
「精巣静脈瘤」とは、精巣周辺の陰嚢部に発達した静脈瘤(静脈の拡張したこぶ)がある状態です。
「精巣静脈瘤」は、精巣機能を低下させます。
長い時間座っている、自転車に乗るなど、精巣をあたためる、圧迫や摩擦を加える習慣は、精巣静脈瘤を引き起こすことがあります。
精巣静脈瘤の特徴
- 陰嚢サイズに左右差がある(左が小さい)
- 陰嚢の表面にしわがより、でこぼこしている
- 立ち上がった時に、痛みを感じる
- 陰嚢の表面触ると、ブヨブヨしたコブのようなものを感じる
- ミミズのようなものが陰嚢部分に見られる
どんな治療が必要なの?
乏精子症の治療には、ホルモン療法や漢方療法などを行います。
精索静脈瘤が原因であれば、精索静脈瘤の治療を行います。
原因② 無精子症
なんらかの原因で、精液の中に精子がいない状態を指します。
無精子症には、
があります。
「閉塞無精子症」は、精子が作られてはいますが、精子の通り道に問題があって排出されていない状態です。
「非閉塞性無精子症」は、精子を作る能力が低下している状態です。
無精子症の原因
- 染色体や遺伝子の異常(生まれつきのもの)
- 抗がん剤治療
- 成人後のおたふく風邪の発症
などが原因であると考えられています。
どんな治療が必要なの?
顕微鏡下精巣内精子採取術:顕微鏡を用いて精巣内の精子を探し出します。
精路再建術:精子の通り道が塞がっている場合、その部分を取り除いて精路を再建します。
精巣精⼦採取術:陰嚢の皮膚を切開し、精巣組織の一部をとり、そこの精子を探し出します。
原因③ 精子無力症
精子の運動率が低い状態を指します。
精子の動きが悪いため、子宮・卵管を通って卵子のところまで行く、卵子の中に侵入する、といったことができません。
通常の精子の運動率は60~80%ほどですが、これが40%未満になると「精子無力症」と診断されます。
精子無力症の原因
- 体が有害物質にさらされる
- ストレス
- 不規則な生活
- 精索静脈瘤
などが関係していると考えられています。
ただし、多くの場合は原因不明です。
どんな治療が必要なの?
生活改善指導、またビタミン剤や漢方薬などの投薬、人工授精や体外受精、顕微鏡受精などを試みます。
精索静脈瘤がある場合は、手術を行います。
男性不妊を引き起こすNG行動
長時間の入浴、サウナは精巣を温めてしまうため、精子がダメージを受ける原因となります。
また、喫煙は精子の形成に悪影響を与え、運動率を低下させると言われています。
不妊を改善するためにできることは?
規則正しい生活と、栄養バランスの整った食事を心がけましょう。
不妊症の改善には、体の健康づくりも大切です。
適度な運動で体を動かす、十分な睡眠などの工夫によって、ストレス対策も行ってください。
なお、これらは不妊のケアの一環に過ぎません。
妊娠に向けた根本的な解決方法を探すには、医療機関で相談する必要があります。
「男性の不妊」は病院で相談を
医療機関を受診すると、検査によって不妊の原因を調べることができます。
男性の不妊でお悩みの場合は、医療機関で相談してみましょう。
どんな検査を受けるの?
採血、尿検査、精液検査、超音波検査などを行います。
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2021-03-04
40歳以降の男性は、だれでも「男性更年期障害」になってしまう可能性はあります。
「なんとなく調子がおかしい状態が続く」
「突然、汗やほてりがでてきた」
という場合は、男性更年期障害の可能性があります。
放置すると、「うつ」を発症することも…。
つらい症状は我慢せず、病院を受診することをおすすめします。
「男性更年期障害」と診断される基準は?
男性ホルモンの量を調べたり、どんな症状がでているかを聞いたりして診断します。
具体的には、血液検査(フリーテストステロンの値の検査)と、問診を通して診断します。
フリーテストステロンの値が基準未満(8.5pg/mL未満)だったり、更年期障害の症状の症状が強くでていると、「男性更年期障害」と診断されることが多いです。
男性更年期障害の症状例
不安感が増して、気分が落ち込む
イライラして、怒りっぽくなる
集中力の低下
判断力の低下
記憶力の低下
意欲の低下
性欲の低下
眠れない
疲れやすい
筋肉痛・関節痛
肥満(メタボリックシンドローム)
頻尿
発汗・ほてり など
男性更年期障害の「治療方法」
男性更年期障害の主な治療は
男性ホルモン補充
生活指導
お薬の処方
です。
男性ホルモン補充療法
男性ホルモン(テストステロン製剤:エナント酸テストステロン)を注射で投与する治療方法です。
直接、血液中に男性ホルモンを補填するので、即効性があります。1ヶ月に1回~2回程度、腕やお尻などに注射します。
ただし、テストステロンを注射することで、精巣機能が低下することがあるため、子どもを希望する場合は、テストステロンに替わる別のホルモンを注射することもあります。
また、ホルモン投与量が多すぎると、脳梗塞のリスクにつながることもあります。そのため、治療中は血液検査を定期的に行ないます。
生活指導
食生活
運動
睡眠
ストレス対策
など、日常生活の観点から「症状改善につなげる方法」をアドバイス・指導します。
お薬の処方
症状が比較的軽いときは、飲み薬で治療もできます。症状に合わせて、漢方薬を処方することもあります。
治療にかかる費用は?保険適用?
保険適用の場合、治療は数千円で済みます。
ただし保険適用外の治療を希望する場合は、組み合わせる治療によって金額が異なります。
保険適用になるケース
医師に「男性更年期障害」と診断されて治療を受けた場合は保険適用です。
保険適用の検査は1万円程度、その後治療に1ヶ月あたり数千円〜2万円程度かかるのが目安です。
保険適用外になるケース
予防やアンチエイジングのために治療を行う場合は、保険適用外になります。
また保険適用薬となっているエナント酸テストステロン以外の薬を使った場合も、自費になります。
男性更年期障害の治療は何科で受ける?
泌尿器科や内科で診療をしていることが多いです。
事前にHPなどで対応しているか確認してください。
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改善するために日常でできること
男性更年期障害の症状を改善させるために、
筋トレをする
ストレス・疲れをためない
といったことを意識するとよいでしょう。
その① 筋トレで下半身を鍛える
ウォーキングなどの有酸素呼吸運動よりも、筋力トレーニングがより効果的です。
腹筋や太ももの筋肉など、大きな筋肉を鍛えるようにしましょう。
大きな筋肉がある下半身を動かすと、男性ホルモンの分泌量が増えるといわれています。
また、基礎体力をつけるためにも毎日の生活の中で、「1万歩以上歩く」「1駅分は歩く」と決めたり、ジョギングや水泳などを習慣的に取り入れるのもよいでしょう。
その② ストレスや疲労をためない
すっきりと日々生活できるようなストレス発散方法を作りましょう。
よく眠ることでストレス発散する人もいますし、趣味を楽しむ人もいます。
仕事や体の不調を忘れて、すっきりできる独自のストレス発散を行ってください。
男性更年期障害を放置すると…「うつ」になるリスクも
長い期間、男性更年期障害のつらい症状を我慢していると、「うつ病」や「自律神経失調症」になってしまう人もいます。
おかしいなと感じたら、男性更年期障害を疑い、早めに治療を受けましょう。
男性ホルモンは「健康の大事な相棒」です
男性ホルモンの減少は、様々な病気につながるという研究結果がでています。
例えば、「うつ状態」「認知症」「糖尿病」「骨粗しょう症」「動脈硬化」などに影響するという報告や、「男性ホルモンの量が多い人ほど、長生きする傾向がある」という報告もあります。
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▼参考
一般社団法人日本内分泌学会 男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)