「少し動いただけで息苦しい…」
「もしかして肺の病気…?」
肺疾患の初期症状を、お医者さんにお聞きしました。
治療を受けずに放置した場合のリスクも解説します。
監修者
経歴
福岡大学病院
西田厚徳病院
平成10年 埼玉医科大学 卒業
平成10年 福岡大学病院 臨床研修
平成12年 福岡大学病院 呼吸器科入局
平成24年 荒牧内科開業
肺の病気の初期症状
肺の病気に共通する初期症状には、次のものがあります。
- 少し動いただけで息苦しさを感じる
- 呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音が鳴る
- 咳や痰が出る
- 動悸
この初期症状に当てはまる肺の病気には、次のものが考えられます。
それぞれの病気について解説します。
肺気腫
「肺気腫」とは、肺の肺胞という器官が壊れて、酸素と炭酸ガスの交換がうまくできず、咳やたん、息苦しさなどを感じる病気です。
たばこの煙などで肺胞が壊れて、弾力性が低下したり、気道が狭くなったりして、息切れや呼吸困難が起こります。
肺は、酸素と炭酸ガスの交換を行っている肺胞が集まってできている臓器です。
肺胞が壊れていって肺気腫になると、正常な肺胞が減って、肺がスカスカな状態になります。
肺気腫の主な症状
肺気腫の症状が進むと、少しの動作でも息切れがし、呼吸に多くのエネルギーが必要となって、どんどん体重が減って痩せていきます。
肺気腫の治療
医療機関では、お薬による治療やリハビリなどを行います。
また、喫煙者は、必ず禁煙が必要です。
喫煙は症状を悪化させてしまいます。
肺気腫の場合、すでに壊れた肺胞は元に戻すことができません。そのため、これ以上悪くならないように症状の進行を防ぐことと、現在起こっている症状の緩和を行います。
症状の緩和として、気管支拡張薬など薬を用いて、呼吸症状の緩和を行います。
そのほか、症状によって、点滴や抗生物質の使用、利尿剤などその症状にあった治療を行います。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
「CCOPD」とは、慢性的に気道が狭くなる肺の病気を指します。
肺気腫や慢性気管支炎などもCOPDに含まれます。
現在の日本では、COPDの原因は、ほぼ「たばこ」の煙が原因と言われています。
気道が慢性的に狭くなっているため、空気の流れが悪く、息がしにくく、苦しさを感じる病気です。
有害な物質やたばこの煙などを吸うと、肺や気管支が炎症を起こします。その炎症によって、咳や痰などが出たり、気管支が狭くなったりします。そのため、空気が流れにくく、息切れなどの症状が出ます。
COPDの主な症状
症状が進行すると、体重減少を起こしたり、肺炎などの感染症にかかりやすくなったりします。
COPDの治療
まずは、原因となる「たばこ」をやめます。
また、息切れの改善のために、気管支拡張薬で呼吸をしやすくします。
COPDを発症している人は、感染症にかかりやすいため、インフルエンザワクチンを打つなど、予防することも治療の1つです。
また、進行していくと体重減少も伴うため、食事指導を行い、体重が減らないようにします。
肺がん
「肺がん」とは、肺の細胞ががん化した病気です。
進行すると、がん細胞がどんどん増殖していきます。
がん細胞は、血液やリンパ液にのり、体の様々な器官に転移します。特に、骨や脳、肝臓等に転移しやすいです。
がんの主な症状
肺がんでは、すべての人に同じ症状があるとは限りません。
何の症状も出ない人もいる一方で、次のような症状が出る人もいます。
肺がんの治療
治療は主に「手術」と「薬物療法」を行います。
手術では、がんを摘出します。摘出後は再発防止のため、後治療として抗がん剤などの薬物療法を行うこともあります。
肺がんの治療は、がんの進行状況、年齢、体の状態、合併症などを考慮しながら治療を行います。
年齢や体の状況等を見て、手術ができない場合は、放射線治療や薬物療法を行います。
肺の病気はどんな人に多い?
次に当てはまる人は、肺の病気になりやすい傾向があります。
- 喫煙者(受動喫煙を含む)
- 家族に肺の病気になった人がいる
- 生活習慣が乱れている
- 食生活が乱れている(特に野菜や果物不足)
- 肺気腫や間質性肺炎などの病気がある
「病気かも…」何科の病院に行けばいい?

肺の病気が疑われるときは、まず、内科や呼吸器内科を受診しましょう。
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放置はNG!肺機能が低下する前に治療を
肺の病気を治療せずに放置すると、肺の機能が低下して、呼吸しにくくなるなど、日常生活に支障をきたします。
肺気腫やCOPDになると、治療しても壊れた肺胞が再生して戻るわけではありません。
そのため、肺の機能が落ちる前に、早期に禁煙をして治療することが大切です。
肺がんは、肺だけではなく、がん細胞が骨や肝臓に転移するおそれがあります。
また、症状のない人もいるため、なかなか肺がんに気づけないことや、気づいたときには病気がかなり進行して、悪くなっている場合もあります。
最悪の場合、命を落とすリスクもあるので、肺の病気が疑われるときは、早めに医療機関を受診しましょう。
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2020-04-17
「胸が痛い…」
「病院で相談したいけど、何科を受診すればいいの?」
胸の痛みの原因には“胃の病気”や“心臓の病気”などが考えられ、それぞれに適した診療科は異なります。
痛む場所・痛み方に合わせて、医師が診療科をご紹介します。
「胸が痛い!」は何科?
胸に痛みを感じるときは、まずは症状に当てはまる診療科に相談してください。
胸の痛み方
相談する診療科
胸骨の裏側やみぞおちが痛む(内臓周辺)
内科
胸の痛み・息苦しさがある(肺周辺)
呼吸器内科
胸全体に強い痛みや圧迫感がある(心臓周辺)
循環器内科
胸全体に強い痛みや圧迫感がある(心臓周辺)
心臓血管外科
助骨(胸~脇腹辺りの骨)が痛む(骨周辺)
整形外科
強い胸の痛みや不快感・圧迫感がある(全体)
心療内科
胸・脇腹が痛み、かゆみもある(皮膚表面)
皮膚科
乳房が痛む・発熱がある(胸周辺)
婦人科
早急に病院を受診すべき危険な症状
強い胸の痛みや圧迫感
意識障害
ふらつき・めまい(血圧の低下)
などの症状があらわれたら、早急に医療機関を受診しましょう。
命にかかわる病気の可能性があります。
循環器内科を探す
「胃の病気」の例
胃の病気の場合、
胃食道逆流症
胃十二指腸潰瘍
などが考えられます。
それぞれ詳しく解説します。
胃の病気① 胃食道逆流症
胃酸が食道へ逆流することによって、胸やけや酸っぱい液体が上がってくるなどの不快な症状を感じる病気です。
<胃食道逆流症の主な症状>
胸骨(胸辺り)の裏側が痛む
のどが痛む
咳が出る
声が枯れる
息苦しさを感じる
胃食道逆流症は何科を受診する?
「胃食道逆流症」が疑われる場合、内科・消化器内科を受診しましょう。
内科を探す
胃の病気② 胃十二指腸潰瘍
胃と小腸を結ぶ十二指腸の粘膜が、過剰に分泌された胃酸によって傷つくことで炎症を起こす病気です。
<胃十二指腸潰瘍の主な症状>
みぞおち辺りが痛む
胃がむかむかする(胸やけ)
血を吐く
血便が出る
比較的男性に多く発症します。
胃十二指腸潰瘍は何科を受診する?
「胃十二指腸潰瘍」が疑われる場合、内科・消化器内科を受診しましょう。
内科を探す
「肺・胸膜の病気」の例
肺・胸膜の病気の場合、
肺血栓塞栓症
緊張性気胸
胸膜炎
肺ガン
などが考えられます。
それぞれ詳しく解説します。
肺・胸膜の病気① 肺血栓塞栓症
血栓によって肺動脈が詰まり、肺から酸素が送られなくなることで発症する病気です。
同じ姿勢を長時間撮り続けることが原因で、血流が悪くなり血栓ができやすくなることもあります。エコノミー症候群とも言われています。
<肺血栓塞栓症の主な症状>
胸が痛む
突然の呼吸困難
心臓がドキドキする(動悸)
息切れ・息苦しさ
背中が痛む
咳・発熱がある など
肺血栓塞栓症は何科を受診する?
「肺血栓塞栓症」が疑われる場合、まずは循環器内科を受診しましょう。
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肺・胸膜の病気② 緊張性気胸
胸腔(※)に空気が溜まることで胸腔内の圧が上がり、心臓への血流が悪くなり、胸の痛みを感じる病気です。
※胸腔(きょうこう):あばら骨(助骨)の中の空間
<緊張性気胸の主な症状>
胸が痛む
心臓がドクドクする(動悸)
息切れ・息苦しさを感じる
脱力感・めまいがある など
比較的男性に多く発症します。
緊張性気胸は何科を受診する?
「緊張性気胸」の疑いがある場合、呼吸器外科を受診しましょう。
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肺・胸膜の病気③ 胸膜炎
胸膜(※)に炎症が起こることで胸に痛みを感じる病気です。
※胸膜(きょうまく):左右の肺を覆う薄い膜
<胸膜炎の主な症状>
胸が痛む
息苦しさを感じる(呼吸困難)
発熱がある
疲労感がある
咳・痰(たん)が出る など
胸の痛みは、くしゃみをしたときなどに感じることもあります。
胸膜炎は何科を受診する?
胸膜炎の疑いがある場合、呼吸器内科を受診しましょう。
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肺・胸膜の病気④ 肺ガン
肺から発生するガンの総称です。喫煙が原因で発症することが多いです。
<肺がんの主な症状>
胸が痛む
咳が出る
咳と同時に血を吐く
食欲が無い
疲労・脱力感がある
息苦しさを感じる(呼吸困難)
比較的、男性に多く発症します。
肺ガンは何科を受診する?
「肺ガン」の疑いがある場合、呼吸器外科を受診しましょう。
呼吸器外科を探す
「心臓・血管の病気」の例
心臓・血管の病気の場合、
狭心症
急性心筋梗塞
大動脈弁狭窄症
などが考えられます。
それぞれ詳しく解説します。
① 狭心症
冠動脈の血流が悪くなり、心臓の筋肉の一部が酸欠になることで胸の痛みを感じる病気です。
<狭心症の主な症状>
胸の痛み、息苦しさが代表的な症状です。
痛みの持続は長くても15分程度です。
加えて、
胸骨の後ろ
肩
背中
のど
顎
歯
に押しつぶされるような不快感が生じることがあります。
男性に多く発症します。
狭心症は何科を受診する?
狭心症の疑いがある場合、循環器内科・心臓血管外科を受診しましょう。
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② 急性心筋梗塞
心臓の周囲にある動脈が詰まることで、心臓の筋肉に血液が届かず、激しい胸の痛みなどがあらわれる病気です。
<急性心筋梗塞の主な症状>
胸全体の強い痛みや圧迫感
息苦しさ
呼吸困難
などがみられ、冷や汗や吐き気を伴う場合もあります。
痛みは30分~数時間持続する場合もあります。
急性心筋梗塞は何科を受診する?
急性心筋梗塞が疑われる場合、循環器内科・心臓血管外科を受診しましょう。
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③ 大動脈弁狭窄症
大動脈から心臓へ血液が逆流しないための「大動脈弁」が硬くなる病気です。
血液が流れる面積が小さくなることで、胸の痛みを感じます。
<大動脈弁狭窄症の主な症状>
運動時の胸の圧迫感や息苦しさ(安静にすると治まる)
失神(重度の場合)
男性に多く発症します。
大動脈弁狭窄症は何科を受診する?
大動脈弁狭窄症の疑いがある場合、循環器内科・心臓血管外科を受診しましょう。
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「神経の病気」の例
神経の病気の場合、肋間神経痛が考えられます。
肋間神経痛
肋間神経が損傷したり、圧迫されたりすることによって神経痛が引き起こります。
<肋間神経痛の主な症状>
助骨(胸から脇腹辺りの骨)の痛み
原因によって痛みの強さや頻度は異なり、くしゃみや呼吸で胸が痛む場合もあります。
肋間神経痛は何科を受診する?
「肋間神経痛」の疑いがある場合、整形外科を受診しましょう。
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「皮膚の病気」の例
皮膚の病気の場合、帯状疱疹が考えられます。
帯状疱疹
「帯状疱疹ウイルス」が神経を通って皮膚に達し、皮膚湿疹を起こす疾患です。
胸部に発症すると、肋間神経痛を起こします。
<胸部に発症した帯状疱疹の主な症状>
胸・脇腹が痛む
胸辺りがピリピリとする痛みや違和感がある
身体にかゆみ・赤い斑点ができる
発熱がある
帯状疱疹は何科を受診する?
「帯状疱疹」の疑いがある場合、皮膚科を受診しましょう。
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「女性特有の病気」の例
女性特有の病気の場合、乳腺炎が考えられます。
乳腺炎
乳腺に炎症が起こることで、胸に痛みを感じます。
<乳腺炎の主な症状>
乳房が痛む
頭が痛い
発熱がある
関節が痛む
だるい・倦怠感がある
乳腺炎は何科を受診する?
「乳腺炎」の疑いがある場合、産婦人科を受診しましょう。
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「ストレスによる痛み」のケース
ストレスによる痛みの場合、たこつぼ心筋症が考えられます。
たこつぼ心筋症
左心室心尖部(※)が一時的に収縮しにくくなったとき、胸に痛みを感じます。
(※)左心室心尖部:心臓の血液を全身に送り出す働きをもつ「左心室」の先の方にあたる部分
<たこつぼ心筋症の主な症状>
強く胸が痛む
胸に不快感・圧迫感がある
息苦しさを感じる(呼吸困難)
たこつぼ心筋症は何科を受診する?
「たこつぼ心筋症」の疑いがある場合、心療内科を受診しましょう。
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▼参考
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 胸の痛み…生命に危険な場合
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2019-12-27
ストレスが原因で背中痛が生じるケースがあります。
ときには「息苦しい」「胃が痛い」といった症状がでることも…。
対処法を、お医者さんに聞きました!
「背中が痛い!」原因はストレスのケースも
自律神経の影響で、ストレスが原因で背中痛が出る人もいます。
ストレスは、体のあらゆる器官の働きを調節している「自律神経」の働きにも影響を及ぼします。
痛みに加え「息苦しい」ことも
ストレスが多くなり、うまく自律神経の調節ができなくなると、
体や手足が冷たくなり血流が悪化する
動悸・息が苦しくなる
という症状が現れる人もいます。
痛みに加え「胃痛」がある場合は…
「胃痛」や「胃酸の上昇」などを伴って背中の痛みがある場合、逆流性食道炎等の可能性もあります。
逆流性食道炎は、胃液が何度も食道側に逆流して食道に炎症をきたす病気です。背中痛を同時に訴える患者さんも多くいます。
ストレスによる背中の痛みにはマッサージも
背中のマッサージは、体全体の血流を良くしてくれます。
体の血流が良くなるとストレスや痛みの緩和にも有効です。
市販薬は「使ってもいいが…長期はNG」
市販の鎮痛剤で一時的に背中の痛みがおさまる場合もあります。
ただし、長期的な使用は控えましょう。
1週間ほど痛みが続く場合は、痛みの原因を確認する必要があるので病院を受診しましょう。
原因不明のまま、痛み止めだけで対処していると、何か大きな病気を見過ごしてしまう可能性もあります。
また、痛み止めを連用していると、胃潰瘍や腎障害、肝障害などの副作用を引き起こすケースもあります。
「病気」の可能性も
「背中を使う運動をしたりしたわけではないのに背中が痛い、違和感がある」場合や、「安静にしているのに痛みがある」という場合は、何か病気が隠れているかもしれません。
特に、痛みが強くなったり、他の頭痛、腹痛、胸痛などの症状が併せてあるようなら、早めに病院を受診してください。
背中の「右側が痛い」病気
「背中の右上方が痛い」場合は、肺炎、胸膜炎、肺結核、気胸など肺の病気、「背中の右下部が痛い」は、膵炎、肝炎、十二指腸潰瘍、腎盂炎、腎結石などの可能性があります。
痛みの特徴の違い
肝炎:体全体の倦怠感と背中の痛み
十二指腸潰瘍:差し込んでくるような痛み
腎臓に異常がある:発熱と背中痛
背中の「左側が痛い」病気
「背中の左上方が痛い」場合は、狭心症や心筋梗塞、解離性大動脈瘤といった心臓に関わる病気、「背中の左下方が痛い」場合は、膵炎、膵臓がんなどの可能性があります。
痛みの特徴の違い
狭心症:押さえつけられるような圧迫感
解離性動脈瘤:体が引き裂かれるような強い痛み
膵臓の異常:少しの痛みから徐々に痛みが増し、今まで感じたことのないような激痛に変化する
何科を受診すればいい?
体を動かすときに痛みがある場合や体をひねると痛みがある場合等は、筋肉や骨などに異常がある場合が多いです。
整形外科を受診して血流の状態や筋肉の張りやコリを診察してもらいましょう。
整形外科を探す
※その他は内科や循環器科、呼吸器科などに相談してみてください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。