子どものアレルギー性鼻炎が治らない…。
自然治癒しないの?
症状を改善する方法は?
お医者さんに、子どものアレルギー性鼻炎の対策を聞きました。
監修者
経歴
公益社団法人 日本小児科学会 小児科専門医
2002年 慶應義塾大学医学部を卒業
2002年 慶應義塾大学病院 にて小児科研修
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室勤務
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務
2017年 「なごみクリニック」の院長として勤務
2020年 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任
子どものアレルギー性鼻炎の「原因」
よくある原因としては
- 花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサ、ガモガヤなど60種類)
- ハウスダスト
- ダニ
- カビ
- ペットの毛
などが考えられます。
アレルギー性鼻炎の「症状の特徴」
鼻水が出たり、鼻づまりを起こします。
水っぽく透明なサラサラの鼻水が特徴です。鼻水の他にも、”耳の閉塞感”を感じます。
鼻づまりが長期化すると、副鼻腔炎や難聴、中耳炎などを発症することもあります。
合わせて読みたい
2023-01-30
副鼻腔炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
副鼻腔炎の主な症状も紹介するので、「副鼻腔炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしましょう。
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎とは、副鼻腔(鼻の奥にある空洞)や鼻の粘膜に、細菌やウイルスが侵入し、炎症が起こる病気です。
副鼻腔に膿が溜まったり、腫瘍が発生したりすることで、目の下の骨に痛みが生じることがあります。
副鼻腔炎の症状
鼻がつまる
黄色や緑色の鼻水(膿性鼻水)が出る
発熱する
痰がからむ咳が出る
ほほ、おでこに痛みが出る
頭が痛い
目が痛い
歯が痛い
副鼻腔炎の原因
副鼻腔炎にかかる原因としては、下記が挙げられます。
風邪
ハウスダスト
花粉
カビ
風邪以外の原因に関しては、それらが鼻から入って副鼻腔にまで侵入し、炎症を起こして鼻水が臭うこともあります。
副鼻腔炎になりやすい人
副鼻腔炎は、誰にでも発症する可能性のある病気ですが、次のような人は特に注意が必要です。
75歳以上の高齢者
糖尿病、慢性肺疾患、慢性腎疾患などにかかっている方
ウイルスや細菌感染による鼻症状を繰り返している方
過去一ヵ月に抗菌薬を使用した方
肥満傾向の方
喫煙習慣のある方
ぜんそくや気管支炎のある方
副鼻腔炎に使える市販薬は?
市販の鼻炎薬を使用することで、回復することもあります。
市販薬の例
アレルギー性副鼻炎の場合…
ナシビンメディ:佐藤製薬
アルガード鼻炎クールスプレーa:ロート製薬
風邪による副鼻炎の場合…
パブロン鼻炎アタックJL:大正製薬
アレルギーによる場合には、副鼻腔炎だけでなく鼻閉(鼻づまり)も併発している可能性があるため、点鼻薬がおすすめです。
また、最近では漢方薬による副鼻腔炎の治療薬も出始めています。
蓄膿症の漢方薬としても用いられている辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)がおすすめです。
こんな症状は早く病院へ
副鼻腔炎が悪化している場合、自然に治りにくいです。症状が2週間以上続いているときは、早めに受診しましょう。
副鼻腔炎が悪化すると、症状の慢性化や中耳炎を発症するリスクがあります。
中耳炎は聴力に悪影響を及ぼす恐れがあるため、注意したいものです。
さらに、重症化して髄膜炎(※)を引き起こすケースも稀にあります。放置しないようにしましょう。
※「髄膜炎」…頭蓋骨と脳の間にある「髄膜」という膜に、細菌・ウイルスなどが感染し、炎症を起こす病気。頭痛や嘔吐、錯乱などの症状が現われ、最悪の場合命に関わることもある。
病院は何科?
副鼻腔炎の症状は、耳鼻いんこう科で相談しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
副鼻腔炎の治療法
薬の処方、点鼻噴霧ステロイド、鼻洗浄を行います。
処方するお薬には、鼻の中の環境を整える「抗菌薬」、痰を出しやすくする「去痰薬」などがあります。
症状によっても異なりますが、2〜3ヶ月程度で治るケースが多いです。
なお、薬物療法で改善が見られない場合には、内視鏡での手術も検討されます。
「機嫌が悪い」「泣き止まない」が症状のサインのケースも
子どもが小さければ小さいほど、「鼻がつまっている」と訴える回数は少ないです。
しかし、鼻水、鼻づまりの症状は不快なので、「機嫌が悪くなりやすい」「泣きやすい」「イライラしやすい」「頭痛がする」といったサインを出す子どももいます。
風邪とは何が違う?
風邪とは、症状や鼻水の特徴が異なります。
|
風邪 |
アレルギー性鼻炎 |
症状 |
発熱、喉の痛み、時々腹痛・下痢など |
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、耳の閉塞感など(発熱、下痢などはない) |
鼻水 |
はじめ水っぽいこともあるが、症状が進むと、ドロっとした緑色・黄色に変化 |
透明で水っぽい鼻水 |
アレルギー性鼻炎は自然治癒する?
子どものアレルギー性鼻炎は、自然に治ると聞いたのですが…?
子どもは体が成長過程にあるので、成長に伴いアレルギーの反応が少なくなる人もいます。
しかし、個人差があるので、「こんな子どもの場合は治る」とは一概には言えません。
鼻づまりは解消しないままでいると、慢性副鼻腔炎や中耳炎の原因になる場合もあります。「自然に治るかもしれないから」と放置せず、鼻づまりを繰り返すときは病院を受診しましょう。
自宅でできるケア対策
アレルゲンの除去をしてあげましょう。
例えば、花粉が原因の場合は、メガネや花粉がつかない生地の洋服(ツルツルした生地)を着用させたり、家族も花粉を自宅に持ち込まないようにするなどです。
また、ダニやハウスダストが原因の場合は、布団や枕のカバーは毎日変える、ホコリをためないようにするなどです。お部屋は加湿するのがおすすめです。
アレルギー性鼻炎は、体調が悪いと症状が重くなる傾向があります。ストレスや疲労をためるような生活は避けてあげましょう。
「食べ物の見直し」や「体質改善」は必要?
どの食べ物・生活習慣がよいのかは、個人差があります。
「この方法がベスト」というのはひとりひとり違うため、子どもに合った対策を見つけてあげましょう。
食べ物に関しては、「アレルゲン物質と取り込まないこと」が必要です。
アレルギー性鼻炎には、シソ、甜茶(てんちゃ)、シジュウム茶などがよいとされています。また、乳酸菌やトマト、カルシウム、クロレラなどは体質を変えるのに役立つといわれています。
また、基本的な「免疫力をアップさせること」がアレルギーの症状を悪化させにくくします。
生活習慣では、緑黄色野菜を取る、運動をする、腸の調子を整える(ヨーグルトなどを定期的にとる)、入浴する、運動する、お部屋の加湿をするのがおすすめです。また、睡眠をたっぷりとって、ストレスや疲労を溜めないようにしましょう。
市販薬でも対処できる?
原因となるアレルゲンによっては、市販薬で症状を軽くすることもできます。
市販薬を使う前に、「何のアレルギーなのか」医師の診察を受けましょう。
アレルギーの場合は、急に薬が必要な場合もあるでしょう。アレルギーを把握した上で、手軽に使える市販薬を使うのも良いでしょう。
病院治療をおすすめする目安
風邪ではないのに何度も鼻水や鼻づまりを繰り返している場合は、病院に相談しましょう。
アレルギーの原因をはっきりさせれば、アレルゲンを避けて、快適に生活することも可能になります。
病院は何科?
耳鼻いんこう科、もしくはアレルギーの取り扱いもしている小児科を受診しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
アレルギー性鼻炎、どんな治療をするの?
1.抗アレルギー薬の処方
軽傷・中等度・重症、それ以上に症状を分けて必要な薬を処方します。くしゃみ、鼻水、鼻づまりに対しての薬です。
2.点鼻薬
ステロイド点鼻薬、血管収縮薬などを処方します。
鼻づまりを快方に向かわせる薬を鼻から入れます。使用期間は医師の指示を守って使いましょう。
3.レーザー治療
レーザーを用い、鼻粘膜を焼いて変形させてアレルギー症状を軽くさせる治療です。特に鼻づまりの解消につながります。
4.舌下免疫療法
スギ花粉、ダニアレルギーに対して舌下免疫と呼ばれる、アレルギーに慣れる治療法です。決まった期間、薬を3年程度の長期間服用します。薬は、舌の下に入れるので舌下療法と言います。特に5歳以上の子どもが受けられ、自宅でできるケアです。