統合失調症の人が暴れたら、どうすればいい…?
統合失調症の人を落ち着かせる方法について、お医者さんに聞いてみました。
暴れているときの対処法や、サポート疲れを乗り越えた人の体験談も紹介します。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
統合失調症の患者を落ち着かせる方法
統合失調症の人を落ち着かせるには、
- 最後までしっかり話を聞く
- 落ち着くまで様子を見る
上記の方法が効果的です。
方法① 最後までしっかり話を聞く
相手の話を遮らずに、じっくり耳を傾けましょう。
否定や肯定をせずに、不安な気持ちに共感することが大切です。
話の内容に矛盾や違和感があっても否定せず、真意をくみ取るように努めてください。
方法② 落ち着くまで様子を見る
感情のコントロールができなくなったら、落ち着くまで何もせずに様子を見ましょう。
自身の感情をコントロールできずに暴れている場合、時間の経過とともに自然に気持ちが落ち着いてくるケースが多いです。
ただし、なかなか落ち着いてくれず、暴れ方がひどくなったり、暴力を振るわれそうになったりしたら、その場から離れて助けを呼ぶなどしてください。
また、公共の場や公共交通機関の中で暴れた場合は、可能であればその場から移動させて、病院に受診してください。
抗精神病薬の定期的に服用が大切
感情の暴走が起きる前に、担当医の指示のもと、抗精神病薬を服用してもらいましょう。
定期的に薬を服用することで、暴れる回数が徐々に減ると考えられます。
統合失調症の患者が暴れてしまうのはなぜ?
統合失調症は、脳内の情報を伝達する「神経伝達物質」のバランスが崩れることで発症します。
その結果、「ドーパミン」が過剰に分泌されて興奮状態が悪化し、暴れてしまうと考えられます。
なお、統合失調症は、「陽性症状」と「陰性症状」の2つのタイプがあります。
幻覚や妄想等の症状が出現する「陽性症状」がみられる人は、暴れてしまうケースが多いです。
家族・友人が統合失調病に…正しい対応の仕方は?
家族の場合
- 本人がパニック状態になっているときは、落ち着くまで待つ
- しっかり最後まで話を聞く
- 伝えたいことがあるときは、簡潔に分かりやすく話す
- 「できたこと」や「よかったこと」を褒める(多少の失敗は目をつむる)
- 何かしてもらったときは「ありがとう」と感謝の気持ちを伝える
- 回復を急かさずに、本人のペースを尊重する
- 本人ができることは任せる(手出ししない)
- 本人と話し合い、家事などの役割を持たせる
- 安心して過ごせる家庭環境を作る
- 近過ぎず遠過ぎない距離感を保つ
- 自己犠牲を伴わないようにする
- 自分の時間を確保する(趣味の時間・友人と会う時間など)
家族に統合失調症の人がいる場合は、上記を心がけましょう。
統合失調症の家族への対応に疲れたら…
家族だけで解決しようと思う必要はありません。
- 障害福祉サービス
- 心身障害者福祉ホーム
- お住まいの地域の障害福祉担当窓口
で相談することも視野に入れましょう。
「相談できるところに頼る」という選択肢があることを忘れないでください。
家族の心身の健康を維持するためにも、ゆとりを持ってサポートできる体制を作りましょう。
友人の場合
統合失調症の友人がいる場合は、冷静に声をかけて話を聞いてあげましょう。
過度に干渉せず見守ることをおすすめします。
友人の場合、家族のような近い関係性でない限り、それまでと同じように付き合っていくことは難しいケースが多いと考えられます。
つらい状況ですが、中途半端な気持ちで接していくと、自分自身のストレスとなったり、統合失調症に対する偏見を生んでしまったりする恐れもあります。
統合失調症の友人への対応に疲れたら…
イライラをぶつけられるなどして、心が疲れてしまったときは、
等の対応をとりましょう。
なお、暴力を伴う場合は、速やかにその場から離れてください。
【体験談】サポートに疲れたときは、こうやって乗り越えました
夫の友人が統合失調症を患っています。
サポートに疲れたときは友人に対応を代わってもらい、旅行に行くなどして気分転換をしていました。(30歳・女性)
一緒に住んでいる弟が統合失調症患者です。
話を聞き流したり、相槌を打ったりして真剣に聞きすぎないように気をつけています。
たまにですが、お酒を飲んでお互いに気晴らししていました。(52歳・男性)
弟が統合失調症を患っています。
症状が落ち着いているときは距離を取り、1日数分でも自分の時間を確保するようにしました。(39歳・女性)
母が統合失調症を患っています。
間違えていることを言っていても訂正しないようにしています。
話していることを受け流すようにしてから、少し気持ちが楽になりました。(41歳・女性)
もし、治療を受けていない場合は早めに病院へ
一時的に気持ちを落ち着かせることができたとしても、治療を受けなければ、根本的な解決にはなりません。
まだ治療を開始していない場合は、なるべく早く医療機関で相談してください。
治療せずに放っておくとどうなる?
- 妄想症状が激しくなる
- 自分が病気であることが分からなくなる
- 強い摂食障害を起こして栄養失調状態に陥る
といったリスクが高まります。
心配していることを本人に伝えて、一度「精神科」で相談してみることを勧めてください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2023-01-23
統合失調症の友人と距離を取りたいけど…どうすればいいの?
統合失調症の友人がしつこいと感じる場合の対処法について、お医者さんに聞いてみました。
友人との接し方や距離感を見直したい人は必読です。
統合失調症の友人がしつこい…!放っておいて大丈夫?
統合失調症の友人がしつこいです。チャットや電話で頻繁に連絡してきて困っているのですが…少し距離をおいても問題ないでしょうか?
はい。距離を取っても構いません。
ご自身の生活や精神の安定を優先しましょう。
基本的に、患者のご家族がサポートをしているはずなので、距離を置いても大丈夫です。
統合失調症の友人と今まで通り接するのは難しいので、精神的に疲れたときは、無理せず距離を置きましょう。
もし、サポートしたいと考えて悩んでいる場合は、いったん距離をおいて、自分自身のリフレッシュを心がけてください。共倒れになっては大変です。
こんなときは、距離を置いて様子を見ましょう
声をかけても無気力
活動の場に来ない
引きこもっている
上記の状態は、統合失調症の目立った症状が少なくなる「休息期」だと考えられます。
静かに過ごすことが大切な時期なので、過度に干渉しないようにしましょう。
そのまま治療が進めば、心と体が安定してくる「回復期」に移行する可能性が高いです。余計な刺激を与えないように心がけましょう。
こんなときは要注意!家族に連絡を
妄想が強い
「死にたい」と考えている
上記の状態は、幻覚や妄想などの症状が強く出る「急性期」だと考えられます。
放っておくと危険な状態です。
特に「死にたい」と考えている患者は、放置していると急な行動に出る場合があります。
行動管理が必要な状態なので、医療機関への相談が必要です。自殺願望を示唆する言動が見られたら、患者のご家族へ知らせてください。
統合失調症の人が「しつこくなる」理由は?
統合失調症の人は、妄想や幻聴が出現したり、強迫観念に追われてしまったりすることがあります。
そのため確認や声がけが多くなり、周囲の人から「しつこい」と思われやすいです。
そもそも、統合失調症ってどんな病気?
統合失調症とは、気持ちや考えがまとまりにくい状態が続く病気です。
「幻覚・妄想」「意欲の低下」「感情表現が少なくなる」といった症状が出現することがあります。
人生の転機などで強いストレスがかかると、発症のキッカケとなりやすいです。
強いストレス
仕事や受験などの重圧
結婚・引越しなどの生活の変化
長い緊張状態
などによって発症することが多いですが、はっきりした原因はわかっていません。
連絡の頻度を減らすにはどうすればいい?
急に連絡しなくなると、過剰な心配につながります。
最近、仕事が忙しくなったので集中したい
旅行に行く
など、連絡が少なくなる理由を伝えるとよいでしょう。
統合失調症の人へ正しい接し方
不安な気持ちに共感する
危険がないか見守る
やる気が出ない時期はそっとしておく
統合失調症の人と接するときは、上記を意識しましょう。
接し方① 不安な気持ちに共感する
特に危険がなければ、妄想や幻聴を肯定も否定もせず、不安な気持ちに共感してあげましょう。
否定されずに話を聞いてもらえると、本人が肯定感を得られるため、気持ちが上向きやすいです。
患者本人にとっては妄想も現実世界です。
まずは患者が生きている世界観を認めてあげましょう
妄想や幻聴などに対して「違う、間違っている」などと否定を示すと、余計にヒートアップする人もいます。
接し方② 危険がないか見守る
統合失調症の患者を見守る際は、
刃物やカッターなどを持っていないか
周囲に危険なものがないか
といった点を確認しましょう。
妄想が出現しているときに、事故やケガを招く恐れがあります。
接し方③ やる気が出ない時期はそっとしておく
統合失調症の人が「やる気が出ない」時期は、そっとしてあげましょう。
やる気が出ないときは、症状が落ち着いている「休息期」だと考えられます。
無理をすると、妄想や幻聴などが強くなる「急性期」に移行してしまう恐れがあります。
この時期は比較的コミュニケーションを取りやすいため、「元気なら動こう」とハッパをかけてしまいがちです。
しかし、見かけは元気でも、患者自身はかなりつらい状態なので、過度に干渉せず見守ってあげてください。
統合失調症の人に「してはいけないこと」は?
統合失調症の人に対して、
批判的なことを言う
過度に干渉する
ことは、病状の悪化につながる場合があるので避けましょう。
▼参考
MSDマニュアル 統合失調症
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2023-01-24
統合失調症って、どのくらい重症だと入院になるの?
統合失調症の入院レベルについて、お医者さんに聞いてみました。
平均的な入院期間や費用目安も紹介するので、身近に統合失調症の人がいる場合は参考にしてください。
統合失調症の入院レベルの目安
死にたいと強く思っている
死ぬための準備や具体的な方法を実行している
混乱が激しい
自宅では休みが取れない
本人が病気と思っておらず、通院では治療を受けられない
自力で食事や水分補給ができない
統合失調症で上記のような症状が見られる場合は、入院して治療を受ける必要があります。
死を意識するまで症状が悪化していると、発作的に死を選んでしまう人もいるので、入院して行動を管理しなければいけません。
入院せずに症状が進行すると、治療効果が出にくくなり、回復に時間がかかるようになります。
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統合失調症の症状の経過
統合失調症は、前兆期・急性期・休息期・回復期の4段階に分かれています。
それぞれの特徴は以下の通りです。
段階
特徴
前兆期
不眠が続く
物音に敏感になり落ち着かない
聴覚が過敏になっている
焦りを感じる
不安感に襲われる
急性期
幻聴が聞こえる
幻覚を見る
妄想を信じる
体力を消耗する・疲れが出る
休息期
無気力
起きられない
引きこもるようになる
回復期
気力が戻ってくる
心身の調子が安定してくる
入院させたいときは、どうすればいい?
医師に患者の普段の様子を詳しく説明して、自宅で過ごすことが難しい旨を説明しましょう。
ただし、最終的に医師が必要だと判断した場合に入院が決まるので、家族の希望だけでは入院できないケースがあります。
病院の環境もそれぞれ異なり、患者に合わないと悪化する恐れもあります。
医師とよく話し合うことが大切です。
平均的な入院期間と費用
個人差があるので一概には言えませんが、統合失調症の患者は平均して1ヶ月程度の入院となる人が多いです。
医療費は保険が適用されます。
入院費用は1ヶ月で平均20~30万円ほどかかります。
退院の目安は?
妄想や幻聴が減っている
睡眠を取れるようになっている
ことが確認できたら、退院できる場合が多いです。
統合失調症の治療法
統合失調症の場合、
薬物療法
リハビリテーション
といった治療を行うことが一般的です。
治療法① 薬物療法
薬物療法は、精神的な負担を軽減するために、薬を内服する治療です。
主に「抗精神病薬」を使用します。
抗精神病薬を使うことで、
妄想や幻覚が減る
考えがまとまる
興奮が落ち着く
意欲的に行動できる
といった効果が期待できます。
治療法➁ リハビリテーション
リハビリテーションは、社会で生活を送るためのトレーニングを行う治療法です。
作業を行うことで集中力を養い、「感情の安定」や「気力の回復」を図ります。
運動する
音楽を楽しむ
料理をする
パソコンのスキルを身につける
など、内容はさまざまです。
このほか、ロールプレイングやディスカッションを用いた対人関係の練習を行うこともあります。
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薬の中断・ストレスによる再発に注意が必要
統合失調症は、治療を継続的に行うことで回復期に入ります。
ただし、「服薬の中断」や「ストレス」がきっかけで再発する(急性期に戻る)ケースもあります。
再発が繰り返されてしまうと、再び回復するまでの期間が長くなってしまうので注意しましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
統合失調症ナビ 4つの病期の特徴